NOVEL REVIEW
<2001年11月>
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11/27 『クロスカディア1 月メグル地ノ来訪者タチ』 著者:神坂一/富士見ファンタジア文庫
11/19 『天国に涙はいらない3 あだ討ちヶ原の鬼女』 著者:佐藤ケイ/電撃文庫
11/13 『猫の地球儀その2 幽の章』 著者:秋山瑞人/電撃文庫


2001/11/27(火)クロスカディア1 月メグル地ノ来訪者タチ

(刊行年月 H13.11)★★★ [著者:神坂一/イラスト:谷口ヨシタカ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  やはりずーっとシリーズ続いてきたスレイヤーズの濃いキャラクター達と比較すると、どう してもキャラの印象度の弱さは否めないけれど、まあそれはまだ1巻目だし。マンネリ感一杯 で、私はいい加減飽きていたスレイヤーズから離れた新シリーズって事で新鮮に感じました。  それでも読んでいて、良くも悪くも料理の仕方は神坂テイストだなと感じたけれど。  弱い、とは言ってもそれは比較してしまったからで、ヒロインのメイは可愛いよりオモシロ オカシイ方が先に立ってた程に読み手に与えるインパクトは充分。物語の中枢を担ってる役所 でもあるようなので、どんな秘密があって今後どう明かされてゆくのか楽しみでもあります。  その過程で主人公のシン(部下その2)に守られながら惹かれてゆくような展開とかもあっ たり……はしないでしょうなこの人の作品の場合。多分あっても微々たるもんだろう。  シン君が最初弱っちいのも主役級でふつーなのはある意味新鮮に感じたけど、何か隠れた能 力があるような無いようなで、彼の成長過程も気になったり楽しみだったり。  人間と違う異種族という所で、角川スニーカーの『日帰りクエスト』シリーズに似てるなと。 あっちは竜人族だったかでこっちは魔妖族(ディーヴァ)や麟王族(ドラグノ)などで種族は 全然違うけど。敵側にも色々心情事情があって、その見せ方というか主人公達との関わらせ方 というか、その辺りが近いような気がしました。  で、ストーリーは初っ端から伏線張りまくりで、まだまだ続くんだよーと終始アピールされ てるような感覚でした。1巻だけじゃ隠れてる部分が多いから、本当に作品の面白さとかを感 想で書こうとするなら2巻以降になるかな? ただ、この巻読んで「面白かったし先が気にな るし次も読んでみたい」とは思いました。今回特に印象に残ったのは、見せ場でもあった後半 のケルミゾとの戦闘。交互の動向や心情などが見て取れる描き方が良かったです。 2001/11/19(月)天国に涙はいらない3 あだ討ちヶ原の鬼女
(刊行年月 2001.10)★★★☆ [著者:佐藤ケイ/イラスト:さがのあおい/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  ギャルゲーとかたんまりプレイしてるでしょ? とか毎回読む度にこの作者さんに問いたい んだが。でなきゃ『萌え』なんて出てこないだろうしアブデルにあんなに熱く語らせる事も出 来ないと思うんだがなぁ。12月発売の電撃hpのエンターテイナー・クローズアップは佐藤 ケイさんだから、どんなコメントが載ってるか今から楽しみだ。ふふり。  3巻目は大変です! 一応主人公の賀茂が何気に脇役以下に成り下がってます!  ってくらい地味だったなぁ今回の加茂君。所々でツッコミ入れてはいるんだけど何かそれだ けって感じで、今後新キャラ増えてく度に存在感が薄れてって唯のツッコミキャラと化すんで はないだろか? と危惧してるんですが。う〜ん、まあいいかと片付ける。  代わりに前回出番少なめだった鬱憤を晴らすかのように躍動してたアブデル。ああ、2巻は 面白かったけど、感じてた物足りなさがあったのはこれだったのか……と思ってしまう。  で、ブラコン巫女みきさん。ちょっとズレたキャラだけど怖いです特に終盤。萌えどころじ ゃねーなこれじゃ、とか頭ん中で呟きながら読んでましたが。  しかしながら復讐の鬼に徹し切れなかったのは予想通りの展開で、変な風に続いたり捻くれ た方向に行かなかったんでよかったです。いや、たまちゃんの健気さが引き立ってたね。  あと最後のみきのお兄さんには笑わせてもらいました。まあ哀れと言えば哀れだよなぁ。  そういや、このシリーズはどこまで続くんでしょうかね〜と考えたりしてるんですが。特に 大きな目的ある訳でもなし、これからそういう展開になって行くんだろうか。それとも萌えキ ャラを1巻1人ペースで新キャラとして出し尽くすまで続けるつもりだろか?  …………何かこっちの方が可能性としてあり得そうな気もする。 2001/11/13(火)猫の地球儀その2 幽の章
(刊行年月 2000.04)★★★★☆ [著者:秋山瑞人/イラスト:椎名優/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  とかく電撃文庫ってのはパラパラ内容立ち読みして気に入ったとしても、その前に表紙イラ ストに惹かれて手に取ってしまうという事実が付いて回ると。  この小説も例に漏れずって事で。言い訳臭いが購入決めたのは最初の数頁読んで良さそうだ ったから。ただ惹かれた最初が「椎名優さんの絵が好きだから」にあったというわけです。  それはさておき焔の章の続きで完結編。キャラクターでも、物でも、状況でも、まず最初に いきなり放り出す。そこから徐々に徐々に外堀を埋めて行くような書き方。必要最小限のピー スを散りばめてあっても必要以上の説明はしない。これで読み手の想像力を掻き立てる。  前巻同様さり気ない仕草と言うか行動というか、そういう表現力がずば抜けて高く、頁を捲 らせて先を読ませる力に直結してると感じました。もっとも頭の中にイメージが浮かぶまで時 間が掛かってしまったのも前巻同様で、秋山さんの文体に拠るものなのか、単に私の想像力が 欠けてるだけなのか。……と、いちいち書かんでも後者なのは分かりきってるけど、中盤まで 少々分かり難い部分もあったかなと私は感じた。  猫が嫌いでも問題なく読めるだろうけど猫が好きならより一層感情移入で楽しめる、と言っ た所かな。きっと楽が側にいたら溺愛してるよ私は……ってのはまあどうでもいいとして。  トルクに猫とロボットしかいないのは何故かという事がほとんど説明されてないけど、やっ ぱりそういうの気にしないですぅ〜っと入っていけるような書き方が出来るのは凄いと思う。  幽は求め、焔はそれを見届けた。そしてクリスで始まりクリスに終わる。このスカイウォー カーに付いて来たロボットの視点から語られたラストシーンが本当に良かった。幽は生きて地 球儀に降り立っただろうか? 焔の未来は? クリスの次の拾い主は? 実はまだまだ続いて 行くスカイウォーカーとスパイラルダイバーのお話。次世代の物語に想像めぐらせてみるのも それはそれで面白いかも知れない。  以下、大きなネタバレ入るんでちょっと反転表示。  楽の死は、登場猫の中では一番好きだっただけに脳天直撃食らいました。前触れあったのは 分かってたんだけど正直あんなにあっさり消さなくても……と思ってしまった。その時は。  でも楽の事が無ければその後の焔と幽、特に事前に予行演習で接してた幽は地球儀に降り立 つ本番の時にどうなってたか? これ考えると辛いけど納得も出来てしまう。多分、揺るがぬ 意思と決意があったとしても、それだけじゃ地球儀には辿り着けなかんじゃないか。幽の背中 を後押ししたのが心にだけ残った楽だったんじゃないかな、と思った次第です。  既刊感想:焔の章


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