NOVEL REVIEW
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02/28 『キノの旅 II −the Beautiful World−』 著者:時雨沢恵一/電撃文庫
02/28 『レベリオン 彼女のいない教室』 著者:三雲岳斗/電撃文庫
02/26 『レベリオン 炎を背負う少年たち』 著者:三雲岳斗/電撃文庫
02/25 『レベリオン 弑殺校庭園』 著者:三雲岳斗/電撃文庫
02/24 『レベリオン 放課後の殺戮者』 著者:三雲岳斗/電撃文庫
02/23 『僕にお月様を見せないで6 アヒル探して三千里』 著者:阿智太郎/電撃文庫
02/21 『僕にお月様を見せないで5 思ひでぼろぼろ』 著者:阿智太郎/電撃文庫
02/21 『僕にお月様を見せないで4 北極色の転校生』 著者:阿智太郎/電撃文庫
02/20 『僕にお月様を見せないで3 あぁ青春の撮影日記』 著者:阿智太郎/電撃文庫
02/19 『僕にお月様を見せないで2 背中のイモムシ大行進』 著者:阿智太郎/電撃文庫
02/18 『僕にお月様を見せないで1 月見うどんのバッキャロー』 著者:阿智太郎/電撃文庫
02/18 『ダブルブリッド VII』 著者:中村恵里加/電撃文庫
02/17 『シンフォニア グリーン』 著者:砦葉月/電撃文庫
02/16 『陰陽ノ京 巻の二』 著者:渡瀬草一郎/電撃文庫


2002/02/28(木)キノの旅 II −the Beautiful World−

(刊行年月 H12.10)★★★ [著者:時雨沢恵一/イラスト:黒星紅白/メディアワークス 電撃文庫]  旅人キノと相棒である喋るモトラド(二輪車で空を飛ばないものを指すバイクのような もの)エルメスの諸国巡りの旅。この物語、本当の意味で主役を張ってるのはそれぞれの 『国』だという気がするのですが。キノとエルメスはあくまで旅人として深入りしない程 度で済ませる傍観者のような感じ。相変わらず凄惨なシーンも淡々と語られているために ダークなイメージはなく、むしろ国も人も滑稽に映ってしまう所が面白い。  とりあえず2巻読了時点ではまだマンネリ化による飽きってものはなくて、国もそこに 住む人々にしても千差万別様々に描かれていて楽しませてくれました。  全話に感想付けてると膨大になりそうなんで、気に入ったのだけ挙げると第八話『優し い国』とラストの『続・絵の話』。前者はもうどうしようもないやるせなさがかなりキま した(ほとんどの話にそういうのあるんですけどこの話は特に)。あとキノが所有してい る『森の人』と呼ばれるパースエイダー(拳銃の事)の入手話が描かれてたので。後者は 前巻に引き続いてのシズとお供の犬・陸の登場で、ちゃんとシリーズものと思わせてくれ るエピソードだったのが良かったです。この1人と1匹には今後も登場して欲しい所。  インパクトの強さで言ったら第一話『人を喰った話』と第六話『帰郷』。惨たらしいエ ピソードなのにそう感じさせない部分もこの作品の不思議な魅力の一つなのかなと。  既刊感想:
2002/02/28(木)レベリオン 彼女のいない教室
(刊行年月 H14.02)★★★★ [著者:三雲岳斗/イラスト:椋本夏夜/メディアワークス 電撃文庫]  シリーズ第4巻。今回は全編に渡って余す所なく面白かった。ホントに良かったです。 と言うのもずっと引っ張られ続けて歯痒い思いしてた1巻から隠れていた部分が、ようや くほぼ全て剥がれて明らかにされたので。不満点や消化不良起こしてたのをいっぺんに吹 っ飛ばしてくれたって感じでしょうかね。一気に読めてスカッとしました。  毎度イマイチに感じてた謎解きは香澄の残した暗号解読という形で今回も含まれてまし たが、これもうまく描かれていたと思います。萌恵や梨夏と一緒に答えを探すシーンや、 解読した時にメッセージから溢れ出てくる香澄の想いがとてもよく伝わってきました。  この巻で怒涛の如く謎が明かされ続けてるので、途中までは正直ちょっと詰め込みすぎ かなという気もしたんですが、第二段階レベリオンの少女・Yの能力や真澄美が彼女と統 合計画局を去った理由、それからアメリカに戻った香澄が目にした統合計画局に隠された 真の目的、この辺りからぐいぐい引き込まれると些細な不満はあまり関係なかったですね。  そしてもはや誰が味方で誰が敵か混戦模様で激化する戦いも、レベリオンの能力を駆使 した戦略でアレス・システムに挑むという所が読んでいて面白かった。誰かが危機に陥る と別の誰かが助けに登場ってのも、お約束な展開で予想できるんだけど挿入の仕方が絶妙 で、特に香澄は最初からずっと離れてただけにその瞬間の感慨もひとしおでした。  紐解かれてゆく謎や激しく展開する戦いの陰に隠れて、描写が弱くなってしまうんじゃ ないかと心配してた恭介、香澄、萌恵の関係もそれぞれしっかり揺れ動く心情が描かれて たなと。離れてしまった事でお互いに与えられていた存在の大きさを知った恭介と香澄も 良かったですが、個人的には萌恵自身で語る事ってあまりなかったので、恭介が自分を好 きだとハッキリ知った彼女の気持ちの動きがいいなと思いました。   最後に『彼女のいない教室』というタイトル、『彼女』が誰の事を指しているのかは一 目瞭然……だったんですが、読了した直後に「なるほどそういう意味でもあったのか」と やられた気分でした。次が最終巻だそうですが、レベリオンとしての恭介の戦いに三角 (Yも含めて四角?)関係の行方や、関わっている人達のそれぞれの結末に……これだけ の事があと1冊でちゃんとまとまるのかちと心配ですが(^^;)、かなり気になる所で終 わってしまってるので早く続きが読みたいです。  既刊感想:
放課後の殺戮者       弑殺校庭園       炎を背負う少年たち 2002/02/26(火)レベリオン 炎を背負う少年たち
(刊行年月 H13.11)★★☆ [著者:三雲岳斗/イラスト:椋本夏夜/メディアワークス 電撃文庫]  シリーズ第3巻。前巻まででミステリ風味がイマイチだと感じてたのに、また密室殺人 とかのミステリ盛り込みかよ〜と思ってたら、やっぱり前巻までのそれに輪をかけてイマ イチだった……。「本作のウリはそんな謎解き部分ではなくて」とあとがきで著者の三雲 さんは書かれてましたが、だったら無理に盛り込まんでよと思わず突っ込み入れたくなっ てしまいました(^^;)。そもそも今回の話の中で犯人に宛がう事の出来る人物はどう考 えてもたった1人しか存在しないわけで。それでも前巻までの話は恭介と犯人に深い部分 で結び付きがあった為、ミステリしてるのは今一つでも「描かれるべき部分」として感じ られたんですが、今回の場合は別に入れなくてもよかったんではないかなぁ。    ……とまあ最初から不満たらたらだけど、面白いからこそ気になる部分が目立ってしま って惜しいなと言った所です。これまでチラッとしか見せてくれなかったR2ウィルスの 原点や、それを巡る人間関係の一部がレベリオン原種と呼ばれる高崗陸也とアレス・シス テムの登場によってようやく少しずつ見えてきた感じ。レベリオン抹殺が任務のアレス部 隊と敵対するアーレンや高崗らの戦いにアレス部隊に従わざるを得ない状況下にある香澄 の憤り、そして高崗とリチャードの間に秘められてた過去の事など、謎が明かされるに連 れてこの辺の展開が俄然面白くなってきました。あとは過去の香澄と真澄美との間に何が あったのか……ここはまだ殆ど語られてないので次巻に期待。  恭介と香澄と萌恵の関係の方はあまり変化なしでしたかね今回。恭介は単に香澄の気持 ちの変化に気付いてないだけの鈍感だし、香澄の方は恭介を巻き込んだ責任で踏み込めな いのと自分の気持ちを持て余してるような感じで、萌恵は恭介に対してまだ「特に親しい お友達」の域を出てないようだしそれ以前に出番自体少なめだったし。何か戦いが激化し てくると恋愛どころじゃねーよな展開になりそうな気もしないでもないですが(笑)、こ っちはこっちでそれぞれの心情をしっかり描いてみせて欲しい。  既刊感想:
放課後の殺戮者       弑殺校庭園 2002/02/25(月)レベリオン 弑殺校庭園
(刊行年月 H12.11)★★★ [著者:三雲岳斗/イラスト:椋本夏夜/メディアワークス 電撃文庫]  シリーズ第2巻。ん〜、今回は次巻以降に向けての繋ぎのような展開だったかな。プロ ・レベリオン同士の戦闘が多くを占めてたのでその辺がメインだったのですが、前巻で無 敵状態だった恭介のブラスティング・ハウルや香澄のスクリーミング・フィストが相手の 能力との相性によっては無力化されるほど効果が無かったりで、焦燥と緊張感を含みなが ら勝つ為の手段を模索して行くという戦いの見せ方は読んでいて面白く感じました。  今回に限って一番強いと思わされたのは、何の能力もレベリオンやウィルスとの関係も 持たず知らずな萌恵だったでしょうかねやっぱり。か弱い女子高生だと平気じゃいられな い状況なんだけど、そんな中で過去の自分の弱さを克服した彼女の強さと優しさを見た気 がします。まだ恭介の口からちゃんと事実を知らされてないですが、萌恵が今後どう関わ ってくのか興味深い所。それに伴い恭介と香澄、それから萌恵との関係は前回ほどではな かったけど、いいなと思わせる描写が多くて(特に香澄は)良かったです。  対して不満だったのが前回と全く同様の理由で、今回の主犯である「インコグニート」 の事。この物語に恭介たちに謎解きさせる要素はいらないと思うんだよなぁ……。  (ネタバレ反転)どうしても真実を隠してる以上、インコグニート=美古都のキャラが 立ってなくて弱く感じてしまう。美古都のキャラクター性から見ても生かし切れてないの が凄く勿体無いなと思ってしまいました。せめて引き金となった事や動機や衝動などの心 情をもう少しだけでも余計に見せてくれたらなぁという惜しい気持ち。  R2ウィルス絡みの背後関係の方は2巻を終えてもまだまだ謎が多い。ウィルスを開発 した生物戦防衛統合計画局に属するリチャード・ロウに、相対する感じの香澄の姉・真澄 美と彼女側に付くアーレン・ヴィルトール、それと第2段階レベリオンと呼ばれる少女・ Y……などようやく役者が出揃ってきたようで、シリーズ作品として次に向けて少しずつ 伏線を明かしてゆくような描き方は上手いと思うんですが、どれも断片的な描写ばかりだ ったのでちと歯痒かったです。繋ぎと感じたのはこういう部分からですが、実際2巻から 3巻出るまで1年掛かってるから刊行当時読んでたら更に歯痒い思いをしてたかも(^^;)。  既刊感想:
放課後の殺戮者 2002/02/24(日)レベリオン 放課後の殺戮者
(刊行年月 H12.05)★★★☆ [著者:三雲岳斗/イラスト:椋本夏夜/メディアワークス 電撃文庫]  レベリオンシリーズの第1巻。3巻が全然出なかったからこの1巻だけで読むの止めてた んですが、最近スパート気味に3、4巻と立て続けに刊行されたんで最初から再読&感想。  初読了時も再読了してみても、素直に面白いと言える内容でした。学園青春ドラマとして 読んでも、あらすじ通りSFサスペンスとして読んでも、もしくは主人公・緋村恭介を中心 とした恋愛話として読んでも楽しめる。  ただ、高校生連続殺人事件を軸にしたミステリ風味の推理モノとして読むにはちとイマイ チ。というより推理させるのを重点として書かれてるわけじゃないんで特にその点で不満あ ったわけじゃないんだけど、最後の最後でしか事件の真相と真犯人の事が書かれてないので 恭介との関係を考えると真犯人の心理描写が弱かったような気がする。何となくこの巻だけ の切捨てキャラのような感じがしてなんだかな〜と(実際その通りなんだけど)。別に推理 に持ち込むような隠し方とかしないでも、真犯人サイドの殺戮衝動なり動機なりの心情面を もっと表に出して見せてくれたら良かったのにと思ったのですが……。  メインはR2ウィルスによってプロ・レベリオン化した恭介の迷走とか葛藤とか、あと香 澄との関係とかレベリオンとしての戦いとかにあるようなので、推理から真相に導く構成な のを考ると隠さなければならない真犯人の描写を深く書けない所は仕方ないのかな。  逆に恭介と香澄の関係を描くシーンはどれもこれも良いものばかりでした。特に自分の足 りないものを相手の中に見出す事で、お互いの存在を認め合い確かめ合ってゆく過程が実に 良い感じ。この巻はここら辺だけに読み浸れていればある程度満足出来るのかもしれない(笑)。
2002/02/23(土)僕にお月様を見せないで6 アヒル探して三千里
(刊行年月 H14.02)★★★ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]  ようやく追いついた〜の僕月最新刊第6巻。  今回も中編作3本立て。唐子と楓の火花バチバチ弁当対決に銀花と新キャラ・桃花のアヒ ル探しに風邪引き銀之介のお見舞いでまたも唐子と楓が火花バチバチ撒き散らし……と書く と何がなにやらよく分からん内容っぽいですが。  唐子の一方的な友達付き合いで辟易しながらもしっかり一緒に行動してる楓。この二人の 女の意地みたいな対決というか張り合いのようなものがメイン。ただ悲しいかな、一見対象 であるはずの銀之介が見事に置いてけぼりを食らってるので、どうも三角関係の構図が成り 立たずそれには程遠い所が惜しいというか何というか(それでも何故か楓の銀之介に対する 好感度は僅かずつながら上昇している)。  しかしそれは銀之介の情けなさが邪魔をしているとしか思えない今回の内容。前巻の過去 話だと変身時だけは格好良かったのに、それが全て帳消しになるくらいのへなちょこぶりに はさすがにちょっと萎えました。なかなか難儀な体質ではあるけれど、騒ぎの原因も元はと 言えば銀之介が作ってるようなもんだし、主人公なんだからたまには肝心のキメる所くらい ビシッとキメて欲しいよなぁ、と思わされるくらいダメ過ぎでした銀之介。上乗せでロリコ ンのレッテルまで貼られてるし(笑)。まあ銀花を助けた所や風邪の真っ只中で唐子と楓を 助けに走った所で多少持ち直してるからギリギリで面目躍如ってとこでしょうかね。  このシリーズは終わりが全然見えないのでまだまだ続きそうな感じですが、逆に完結する としたらどういう展開になるのかなと。この辺もあんまり予想立てられないですが、銀之介 の体質の秘密が全校生徒にバレるか、もしくは狩谷兄妹の仇であるオオカミに関連するエピ ソードか……。ともあれそろそろ3巻以来の長編を次巻あたりに持ってきて欲しい所。  既刊感想:
2002/02/21(木)僕にお月様を見せないで5 思ひでぼろぼろ
(刊行年月 H13.11)★★★☆ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]  サブタイトルの「ぼろぼろ」とは、果たして音を示す「ぼろぼろ」なのかそれとも状態を 表す「ぼろぼろ」なのか……と考えてたのですが、どうやら両方の意味が込められてた模様。 音は思い出のイメージが「ぼろぼろ」こぼれるというもので、状態は過去の銀之介が色んな 意味で「ぼろぼろ」だったって事でしょうおそらく(笑)。  僕月5巻は今までと違って銀之介の過去回想話の中編3本。幼少の頃のが2つと現在の飯 波市に転校してくる前の長崎での事が1つ。さすがに二十二回の転校は伊達じゃないって所 を見せ付けられた感じのエピソードでしたが、銀之介が揃いも揃って女性(女の子)に好意 を持たれて最後は別れて泣かせてしまうのは何だか釈然としなかったなぁ(笑)。もしかし たらオオカミ男な故に疎まれ続けてきた銀之介の記憶の中では、トップ3に入るくらい良質 なエピソードだったのかもしれない。  でも貧弱な所が母性本能を擽りそうな銀之介の事だから、他にも過去の転校先で女性(女 の子)絡みのエピソードがごろごろしてたりして。生み出すのは作者さん次第だけど、何と なくまだまだありそな気がしてならないです。過去話第2弾ってやるかな〜? 色々出てき そうだからまた読んでみたいかも。  今回は3本全て出会いと別れが描かれてるので笑いはちと控え目、そのかわりどれもしん みりと浸らせてくれます。3巻で登場したあずちゃんことあずさとの幼少の頃の話とか、卵 の黄身だけ克服出来なかった理由とか、知りたい所を読めたのは嬉しかった。  もし銀之介が成長したサナちゃんと再会を果す事になったら、その時に卵の黄身も克服出 来るのかな? とか思うと、サナちゃんや最後に非常に勿体無い別れ方をした織川先輩も再 登場の機会を与えて欲しいと望みたくなりますね。  こういう内容だったから、苦い過去を払拭するように唐子と写真を撮るラストシーンは珍 しく笑いより安堵感を覚え、多分大丈夫だよと言ってくれた唐子の言葉に銀之介も同じ気持 ちをを抱いてたんじゃないかなという気がしました。  既刊感想:
2002/02/21(木)僕にお月様を見せないで4 北極色の転校生
(刊行年月 H13.07)★★★ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]  僕月4巻目。銀之介を巡る?唐子の対抗馬座席がこれまで空いていたのですが、今回いよ いよ登場。2巻で銀之介の命を狙った英語教師・狩谷森彦の妹、狩谷楓。当然兄同様、両親 を殺したオオカミ男に復讐を誓ってるわけで、これまた当然の如く勘違いで巻き込まれてし まうへなちょこ主人公銀之介。正体バレた時の二人の邂逅シーンはいつになくシリアスだっ たってのに、この作者さん何が何でも笑いを盛り込まなきゃ気が済まないみたいですな(笑)。  間の悪さを競ったら右に出るものなしの銀之介だけど「教室で楓を無理矢理脱がせて押し 倒してる」と唐子や体育教師の森本に誤解された時の仕打はちょっと気の毒だったかも。  今回は全編に渡って楓の為の話だったかなという印象。私は勝手に三角関係確立要員と解 釈してますが、まだまだ唐子も銀之介も楓に対しては友達とかちょっと気になるクラスメイ トの域を出てないような感じ。でも楓が銀之介と接する事で心の氷を溶かし始めてるのも事 実だし、それによって唐子がよく分からないもやもやを抱えてるのも事実だし、今後の展開 次第では三角関係に発展する可能性も無きにしも非ず。  まあ笑いがメインだからそう簡単に表立ってはこないでしょうけど。クールな少女がへな ちょこ男に惹かれてゆくのはありがちだけど嫌いじゃないです。ラストの楓の微笑がとって も印象的でした(銀之介の阿呆は肝心なこの微笑に気付いてなかったようだけど(笑))。  既刊感想:
2002/02/20(水)僕にお月様を見せないで3 あぁ青春の撮影日記
(刊行年月 H13.04)★★★ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]  シリアスもしみじみもちょとだけのラブもほのぼのも、もれなく笑いに変換され笑いに吸 収されてしまうシリーズ第3作。今回は長編ストーリーと飯波市の夏祭りを描いた短編。  長編の方は銀之介の父である漫画家の銀一郎(ペンネーム:こまぎん)が描いた漫画の一 つがテレビドラマ化される事になり、夏休みでロケ見学に来ただけだったはずの銀之介と唐 子がドラマ撮影の裏に潜んだ麻薬取引の犯罪に巻き込まれてゆく……というお話。  しかしながら当然こんなシリアス調な展開などではないです(笑)。ただ前2巻と違うの は笑いだけの中身の軽い短編じゃなくて、ドタバタ騒ぎなのは相変わらずたけど笑い以外で もキャラ同士の絡みを長編一本で存分に見せてくれた所。まあ結局はヒロインピンチで銀之 介オオカミ化、力で捻じ伏せ事件解決って簡単に略せるお定まりのパターンではあるんです が。どうも個人的にこの話(というより作家さんか?)の笑い所を含ませたしょーもない描 写に弱くて、読んでて随所でくすりと漏らしてしまうのがなんとも(^^;)。    短編の方は後日談というかおまけのようなものでしたが、夏祭りというイベントの中で銀 之介と唐子の雰囲気がほんのちょっとだけ良い感じだったのは、今まで全くと言っていい程 シチュエーションが無かっただけに良かったかな(せめてこういう所ではギャグを控え目に してくれと言いたいんですが)。長編の方のあずさと銀之介にしてもお互い過去に共有する 思い出があるんだから、もう少し唐子をやきもきさせるような雰囲気であったらもっと面白 かったのになぁ、てとこでしょうかね不満を言うなら。    脇役達は今回も面白過ぎで満足でした(笑)。特に漆野刑事が気に入ってるんですが、他 にも健とヤスのやくざ崩れコンビとか七味うどん亭常連のジョーンズさん達とか。出番が毎 回じゃないのが残念なんですが(今回夏休みって事で学校関係者は殆ど出番なしだったし)、 今度登場キャラ総出演な長編ってのも読んでみたいかも。  既刊感想:
2002/02/19(火)僕にお月様を見せないで2 背中のイモムシ大行進
(刊行年月 H12.12)★★★ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]  前巻に引き続き、登場人物紹介用中編集という感じのお話。銀之介の従妹で彼と同じく狼 の変身能力を持った銀花、(色んな意味で)危ない刑事・漆野刑事、家族の仇と勘違いして 狼男(銀之介の事)の命を狙う英語教師・狩谷森彦の3人が今回の新キャラ達。  やはり前回同様どいつもこいもお馬鹿だらけ(笑)。こう変な奴等に囲まれると、貧弱君 な銀之介が身体的にはともかく性格的には一番まともな気がするなぁ。ギャグストーリーで 主人公が一番正常で苦労人ってのもお約束っぽい設定ではありますが。  唐子を始め周りが変な人たちばかりなので銀之介の変身能力がバレそうでバレない、もし くはバレても広がらない(既に唐子と漆野刑事にバレてる)。そんなだからちょっと調子に 乗って変身しまくってるような印象で、バレて転校するの恐れてる癖に変身ばっかしてんな よと突っ込み入れてやりたくなりました(笑)。まあ実際は不可抗力が多いんだけど。  相変わらず話的には全然大した事やってないのに、個性的過ぎるキャラクター達が引っ張 ってくれて面白かった。パラっと見た感じだと3巻はどうやら長編のようなので、どう転ん でもシリアスにはならんでしょうが(^^;)、笑いを含めて楽しませて欲しいものです。  既刊感想:
2002/02/18(月)僕にお月様を見せないで1 月見うどんのバッキャロー
(刊行年月 H12.10)★★★ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]  そういや新刊出ると買ってるくせに全然読んでなかった阿智さんの作品。読んだのは受賞 作でもあった「僕の血を吸わないで」の1巻以来でしたが、あまり当時と作風変わってない なぁ〜という印象(良い意味で)。笑わせるツボがあって読み易く分かり易い内容ってのは、 人によって感想にどう影響出るのかまちまちでしょうが、個人的にそういう作風はプラスに 作用します。簡単な話ながら寒い部分も含めて笑い所が多くて面白かったです。  丸い卵の黄身を見ると狼男に変身してしまい、満月を見ると更に理性を失い凶暴化してし まう駒犬銀之介が二十三回目の転校先で目を覚ました所から物語の始まり。  舞台である飯波市に銀之介が通う事になる飯波高校は「僕の血を吸わないで」と同じだそ うで、一部関連キャラは引き続き登場してておぼろげながら「そういやこんなキャラもいた な〜」と思い返しつつ懐かしさを感じました。  今回は銀之介の狼男に変身してしまう特性とか、七味唐子の変な性格とか、学校内の変な 人たちとか、キャラクターの紹介と描写に重きを置いていたように思えたかなと。キャラの 面白可笑しさに引き摺られて物語を楽しめたような感覚でした。今後キャラも更に増えてく るだろうし、既に6巻まで刊行されているので少しずつ読み進めてみたい作品。
2002/02/18(月)ダブルブリッド VII
(刊行年月 H14.01)★★★★ [著者:中村恵里加/イラスト:たけひと/メディアワークス 電撃文庫]  今回は完全に八牧さんの独壇場。前巻の凄惨さと負傷者続出な展開から主人公の優樹に行 動制限かかってる以上、必然的に元六課のメンバーが矢面に立たされたというわけなんです が、冒頭の八牧さんの台詞からもう彼の辿る結末がどうなるのか予想できてしまって「ああ、 やっぱりこうなってしまったか……」というような感じでした。  怪我がなくて万全な状態の面々としては夏純と大田もいたけれど、夏純は代役を張れる程 まだ優樹から離せないだろうし大田は『傍観者』で直接手は出さないだろうから、アヤカシ 殺しの『童子斬り』を得た太一朗にぶつけるなら八牧さんが適任だったのかなと。  元六課のメンバーで最後の夕餉を囲む所からも予感はひしひしと伝わってきましたが、そ こから太一朗との死闘を経て、最初非常食として拾ったみっちゃんに後の事を全て託した八 牧さんの姿がどうしようもなく悲しかったです。全然アヤカシの心情とはかけ離れていたけ れど、そこに一番強い本心を見たような気がしました。  なんか読了して、1巻ラストで太一朗が優樹の頭を撫でてた事とか2巻のラストで見せた 優樹の微笑とか3巻で2人一緒に六課の屋上で豆腐を食べてた事とか……そういうのが二度 と訪れる事のない、遥か遠くで夢見た幻想のような儚い虚しさを感じてしまいました(とは 言っても現在電撃文庫の中では個人的に一番好きなこのシリーズ、本当に面白く感じてきた のは太一朗と優樹が決別した所からなのですが)。  実際今回のラストで太一朗がああなってしまっては、優樹との過去の修復はもう望めない のかもしれない。まだ見ぬ空木が今後の鍵となってる部分もあるようですが、ラストで遂に 優樹にも知れてしまったし……つーかあんな引っ張りまくりな終わり方はずるいだろ〜(笑)。  今回が助走段階の『溜め』とするなら、果たして次巻は爆発的に終局へ向かうような『加 速』となるのかどうなのか。もう早く続きが読みたくてしょうがないです。
2002/02/17(日)シンフォニア グリーン
(刊行年月 H14.01)★★★ [著者:砦葉月/イラスト:秋津たいら/メディアワークス 電撃文庫]  電撃hpVol.14での誌上掲載4編に書き下ろし1編を加えた連作短編。  人々の生活の全てが植物を基盤として成り立っている世界で、植物を運び植物の声を聴き 植物の回復と再生を導き植物の為の仕事を生業とするプラントハンター・リィンの物語。  とにかく街や村を護る要となる領樹・領草と呼ばれるものから家屋や武器、飛行船や水上 船や砂漠船や貨車のレールにやオルガンに至るまで、その全てが植物で構成されているとい う世界観が凄く気に入ってしまいました。淡い水彩画で描かれたような風景を絵本で眺めて いるような感覚。でもそこに生きている人達はとても力強く逞しく優しい。  世界が特殊ならば生きる植物達もまた特殊で、多種多様のその姿は幾度もリィンに力を貸 したり逆に彼女から力を注いでもらったりしてます。ただちょっと普通と違い過ぎる植物達 ばかりなので、名前だけではなかなかイメージが沸き難いという所が難点かもしれない。巻 末に植物図鑑のような図解説明でも付録であったら面白いかなぁと思ったのですが。  物語の方も和むような淡さで描かれてます。少々盛り上がりに欠けて印象が弱いというの もあったんですが、世界観に合わせた作風なのでこれで丁度良い位と思いました。  しかし、おそらく印象弱くしてしまってる原因はリィンの登場の仕方にあるんではないか なと。彼女が主役を張ってる話ってのは実は第一話『沿声の絆』だけで、他は全て別の主役 の手助けをする助演のようなものとして書かれてるんですよね。だから本来主人公であるリ ィンというキャラクターの深い部分が全然見えてこなくて、魅力が半減してる所から印象の 弱さに繋がってるような気がします。  続編予定してるけどまだどうなるか分からない……とありましたが、あとがきでこう書い てるなら、電撃文庫って事を考えるとおそらく刊行されると見て間違いないでしょう(笑)。  今度は最初から最後までリィンを主役に据えて、今回で足らなかったように思えた彼女の 行動や内面の深い部分をもっともっと見せて欲しいですね。
2002/02/16(土)陰陽ノ京 巻の二
(刊行年月 H14.02)★★★☆ [著者:渡瀬草一郎/イラスト:洒乃渉/メディアワークス 電撃文庫]  実に前作から1年ぶりの続編。私は2巻と同時に買ったので立て続けに読めたのですが、 刊行当時に読んで続編望んでた人は随分待たされただろうなぁ。というより1巻の面白さか らずっと続き出てなかったのは意外でした。前巻で晴明から保胤が預かった怨念によって生 まれた『手の住まう皿』が、冒頭であんな風に再登場したのは妙に嬉しかった。  前回より登場人物は抑えられて少な目ながら、それ故にそれぞれが前回以上に魅力的に描 かれていたなと感じました。物語的にはそう複雑な事やあっと驚くように目を引く展開があ るわけじゃないんですが、著者の渡瀬さんは人と人との関わりやその中で発生する内情など の描き方が実に長けているなと。これはパラサイトムーンを読んでも思った事で、そういう 部分を物語の中心に据えて読み進めさせる所が本当に上手いです。  今回のメインは安倍晴明と氏家千早との過去の因縁が絡んだ部分。晴明や保胤の兄・保憲 らが嫌々ながらも陰陽師として貴族を護る立場の複雑さや、千早の過去と民から譲り受けた 貴族達に対する怨念と本来ある優しさ故の葛藤などの辺りから、前作同様ぐいぐい物語に引 き込まれました。保胤は前半あまり目立たなかったけど、やはり主人公らしくおいしい所は 彼がしっかり押さえてます。結局保胤の一人勝ちみたいなもんでしたが、千早との心理戦と いうか言葉の駆け引きみたいなものは、力を行使しようとせず話し合いで解決したいという 彼の性格がよく表れていて一番読み応えのある場面でした。  終章は吉平と貴年に持っていかれた感じだったけれど、前巻の感想で書いた通り私はこの 二人が大好きなので非常に満足でした。やっぱり貴年は吉平の前だと彼の言うように年相応 な可愛さが出て良いですね。しかしながら二人の会話を見て吉平の年齢を十歳と考えると、 陰陽道の才も含めて色んな意味で末恐ろしいなぁと感じずにはいられなかったです(笑)。  既刊感想:
陰陽ノ京


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