NOVEL REVIEW
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03/30 『Missing2 呪いの物語』 著者:甲田学人/電撃文庫
03/29 『Missing 神隠しの物語』 著者:甲田学人/電撃文庫
03/28 『月と貴女に花束を6 聖夜終焉』 著者:志村一矢/電撃文庫
03/27 『月と貴女に花束を5 聖夜狂瀾』 著者:志村一矢/電撃文庫
03/27 『月と貴女に花束を4 聖夜騒乱』 著者:志村一矢/電撃文庫
03/24 『月と貴女に花束を3 鬼神猛襲』 著者:志村一矢/電撃文庫
03/22 『月と貴女に花束を2 妖龍の少女』 著者:志村一矢/電撃文庫
03/21 『月と貴女に花束を』 著者:志村一矢/電撃文庫


2002/03/30(土)Missing2 呪いの物語

(刊行年月 H13.10)★★★☆ [著者:甲田学人/イラスト:翠川しん/メディアワークス 電撃文庫]  今回は不幸の手紙ならぬ「のろいのFAX」が木戸野亜紀の部屋に送られてきたのが事 の始まり。恐怖感と鳥肌感は前巻に比べて遥かにこちらが上。目に見えないけど存在する モノの敵意やそれがひたひたと迫り来る感覚、それからぞっとするような蟲どものグロテ スクな描写とかが拍車をかけてます。とりあえず読書好きな人によくある行為で「食事し ながら読書」ってのはこの物語ではあまりお薦めできません(^^;)。    異質で圧倒的な存在感ながら前回ほとんど出番なしだった空目恭一でしたが、鬱憤晴ら すかのように出まくって語りまくってます。序盤で武巳や稜子に説いた空目の恋愛論なん かは「そうくるか?」って感じでもの凄く彼らしさが発揮されていて、その魅力にくらく らきてしまいました(笑)。恋愛が『欲望』と『狂信』と『麻薬中毒』とは一見突飛だけ ど言い得て妙だなぁと感じたり。ただあやめはやはり存在感なくて、重要所は担ってても 出番も少な目で少々残念だったかな。これは元々彼女が作中でも希薄な存在だから、わざ と極力描写を控え目にしてそういう雰囲気を出そうとしてるのかもしれませんが。  亜紀に送られてきた「のろいのFAX」は、実はそれを隠れ蓑にした『魔術儀式』を行 う事が送信者の真の目的。序盤で空目がFAXの内容から魔術儀式と酷似してるのを看破 し、その可能性から魔術について語り始めた辺りから今回もぐいぐい引き込まれてしまい ました。亜紀が精神的に徐々に徐々にじわじわと追い詰められてゆく様も、読んでいて苦 痛を感じるような陰鬱で陰惨な部分が非常にうまく描けていたと思います。  しかし亜紀でなければならなかったという理由付けがどうにも稀薄に感じでしまって、 もうひとつだったかなという印象も受けたのですが……。結局はFAXの送信者を使って 事態を眺めていた人物の思惑というか興味本位って事なんでしょうかね。  電波系なヒト達――神野と詠子の語りは抽象的な部分が多くて、読解力不足なのかじっ くり噛み砕いて読んでも理解出来なかった所とかもありました。どちらかと言えば人間よ りも“異存在”に近い感じのする神野と詠子の素性は未だ霞んでいて見えないので、同じ くまだ謎の多い“機関”共々どう空目達と関わりを持ってゆくのか楽しみでもあります。  既刊感想:
2002/03/29(金)Missing 神隠しの物語
(刊行年月 H13.07)★★★★ [著者:甲田学人/イラスト:翠川しん/メディアワークス 電撃文庫]  オカルトに関して圧倒的な知識量を有する事から「魔王陛下」と呼ばれている空目恭一 が『神隠し』の少女あやめと関わる事により失踪を遂げてしまう。恭一と同じ文芸部所属 であり仲間の4人の少年少女達が、彼を捜索すべく東奔西走しながら手掛かり探している 内に神隠しに纏わる奇妙な出来事に遭遇し巻き込まれてゆく……というお話。  序盤を読んでて早々に、こう引き込まれる『匂い』みたいなもんを感じたんですが…… いやなかなかに良かったです。ただどこに惹かれたかと言えばキャラクターでもなければ ストーリーでもなくて、“異存在”の事や人体がそれの影響を受ける原因となる潜在型と 顕在型に分けられる霊感だとかの設定でしょうかね。特に病院で基城がその辺を亜紀と稜 子に語ってる四章は、何度もページ行ったり来たりしながら先に進めず読み返してしまう 程のハマり具合でした。「異存在は外から取り憑くのではなく心の内からやってくる」と いう発想から、それが顕在意識に上がっしまう条件に『怪談』を持ってくる所とか、ちと 説明的ながらもそういう設定の語り描写が凄く面白かったです。  ジャンルはオカルト含みなホラー……ではないですね。全然怖く感じなかったし。純然 たるホラー小説とは程遠く現代物のホラー風ファンタジーというか。設定から考えるとお 伽噺のようにも感じられましたが。キャラクターは、活動する主な4人・武巳、俊也、亜 紀、稜子に関しては性格も過去の設定も効いていてそれなりに立ってはいたけれど、序盤 と終盤しか出て来ない恭一の存在感には4人束になってかかっても歯が立たないといった 印象でした。それだけ恭一の存在感が群を抜いてたわけですが、あやめと共に連れて行か れてしまった恭一の描写が最初と最後以外皆無だったのが不満だったり物足りなかったり。  それでも途中途中の武巳達の話の中に話題が出てくるだけで存在感を示せてるという所 はうまいなと思うし、神隠しで『異界』に引きずり込まれてる事を表す為に意図的に描写 を見せなかったという風にも取れるんではないかなと。  難を挙げるとすると、紐解けばわりと分かり易い展開ながら設定に説明的な表現が多過 ぎて全体が雑然としてしまってる構成と、最後のあやめに関してだけ説明不足に感じた部 分でしょうか。あやめの事はなんか唐突だったんで、(ネタバレ反転)基城に撃たれて1 度消えてしまってから最後に復活するまでの間の明確な説明が欲しかったのですが……。  文章表現は個人的にはかなり好みで惹かれました。次巻以降で更に伸びそうな予感がす るしそうなって欲しい作家さん。様子見ながら続きも期待してみたいです。
2002/03/28(木)月と貴女に花束を6 聖夜終焉
(刊行年月 H14.03)★★★★ [著者:志村一矢/イラスト:椎名優/メディアワークス 電撃文庫]  『聖夜編』終盤戦&完結の最終巻。先にエピローグの感想から言ってしまうと、私が望 んだ結末ではなかったので満足はしてないですが納得のゆく終わり方ではありました。  (以下ネタバレ反転)  言い方悪いかも知れないけど、冬馬も深雪も著者の思うがままにボロボロに酷使し尽く されてしまったって感じでした。な〜んかどこかのあとがきであった「愛情を込めて」っ て台詞が滑稽に見えてしょうがないのは気のせいでしょうか?(笑) 5巻ラストで死し てもなお「古き月の力」で冬馬を戦わせ徹底的に無残に痛めつけて、最後はお定まりのよ うに意識の途切れた中で深雪と結ばれ、月光に包まれ2人は転生を果たすという結末。嫌 いじゃないです。むしろ好みの展開なんですが、果たしてここまで冬馬と深雪を傷付けな ければ描けない物語だったのか? と思うと、あからさまにお涙頂戴な終盤の見せ方がど うしても気に入らなかったです。2巻で冬馬が『久遠の月』を指にはめてしまった時から、 こういう結末になるというのは決定されてたのかなって気もしますが……冬馬と深雪が無 事に待ってる皆のもとに帰れないのは分かり切ってる事だったから、綺麗に締めるには転 生って形の他には持って行きようがなかっただろうなぁと。  エピローグの転生した幼い冬馬が深雪に花束を渡すシーンも、転生前の記憶の『約束』 が無意識に甦るシーンも凄く良かったんですが(最後のイラストが1巻ラストのイラスト と同じ構図なのも心憎い演出)、それでもやっぱり戦い済んで普通の平穏な暮らしに戻っ た冬馬と深雪のハッピーエンドを願っていたので、納得は出来たし展開も描き方も結末も 良かったんだけど、満足する事だけが出来ませんでした。  (ネタバレ見た人向けで)……とか何とかごちゃごちゃ言ってるわりに★の数が多いの は、結局第三章以降の展開にぐいぐい引き込まれてしまった私の負けって事(笑)。  本当に満足出来たのは第四章での縁と燐。桜の手にかかった直接的な一番の犠牲者は多 分この2人だろうから、救われる形で結末が描かれていたので嬉しかったです。    あとがきでこの物語の外伝短編を書くかどうかの話があるとか。個人的にはもう未来の 事は無闇に弄らない方がいいんじゃないかぁという気もしますが、エピローグの続きがあ るなら今度は戦いなしの話を読んでみたいという気持ちもある。まあどのみち刊行されり ゃ買ってしまうだろうってのだけは簡単に予想出来る展開……でしょうかね(笑)。  既刊感想:
2002/03/27(水)月と貴女に花束を5 聖夜狂瀾
(刊行年月 H13.12)★★★☆ [著者:志村一矢/イラスト:椎名優/メディアワークス 電撃文庫]  『聖夜編』中盤戦。前巻の駆け足気味な展開とは打って変わって今回は少ないエピソー ドをじっくりと見せる描き方でした。前半は引っ張りまくった前巻ラストからの続きで冬 馬が桂と共闘で桜に挑み、中盤からはどちらかといえば今回はこっちがメインだった響と 静馬の因縁の戦い。  桜というキャラクターは無敵状態で余裕かまして悠然と構えてるかと思えば、神となろ うとする己の理想を嘲笑われるとすぐに激昂したり冬馬や桂が思い掛けない力を発揮して 立ち向かってくると途端にうろたえたり焦りを見せたりで、どうも性格行動に矛盾が生じ てる気がしてならなかったのですが……絶対的な強さを備えてるんだから少々の事では動 じないって方がしっくりくるんじゃなかろうかと。もっともそれは本来の老いた肉体から 焦燥を掻き立てられてるのかなという風にも思えたのですが。  冬馬と桂の一時共闘ってのは似た者同士の雰囲気で敵が共通って事から、これまたある 程度予想はついてましたがそれでも桜には敵わない。そろそろ4巻序盤で離脱した深雪と 冬馬との愛の奇跡を見せて欲しいとこですが(笑)、結局この巻でも深雪の出番は僅かだ ったので最終巻に期待かな? やっぱりシリアスな戦闘ばっかり見せられてもヒロイン不 在だと物足りないというか口寂しいような感じがあったし。  中盤以降の静馬と響の死闘は前巻とは逆の意味で、こんなに多く描写を割いていたのが 意外でした。話の展開からすれば冬馬と桜の関わりが本筋であって、こちらは言わば繋ぎ のような展開と考えてたので。いや、6巻まで延ばしたのはおそらくこの中継ぎが入る為 であってそれも充分見せてくれて良かったのですが、前の伏線明かしもこれくらいの割合 で書いてくれたらなと少々残念に思ってしまいました。  今回ラストもまたぐさりと突き刺さるような痛さが堪える展開でしたが、こうなってく ると最終巻のエピローグがどうなるのか読めません。この巻を読了するまではどんな展開 だろうと最後は「ほんわかハッピーエンド」を信じて疑ってなかったんですが、もしかし たら……という展開もあって欲しくないけどあり得るかも知れないし。どうだろうか?  既刊感想:
2002/03/27(水)月と貴女に花束を4 聖夜騒乱
(刊行年月 H12.12)★★★ [著者:志村一矢/イラスト:椎名優/メディアワークス 電撃文庫]  最終幕『聖夜編』3部作の前半戦。これでもかってくらいの怒涛の伏線解きは唐突であ り駆け足でもあり、詰め込みすぎでお腹一杯という感じでした。イマイチとまではいかな いけど、まだこの時点では明らかに何とか5巻までで全部終わらせようとしてる書き方だ ったので妙に急ぎ過ぎてる展開だなと。  話の展開から多分エピローグまでは見れなさそうな序盤の平穏な冬馬と深雪の様子、桂 と燐の過去の事、それから蘭が冬馬に語る桜の過去と縁の過去に関係する桜の事など、個 々のエピソードにもっと余計にページを割いて描写を見せて欲しかったです。冬馬と深雪 のシーン以外は全て過去が絡んだ上に物語の核心に触れる事ばかりだったから尚更に。こ の辺から余りに展開を急いでるような印象だったんですが、ただそれが効を奏していたか なと思ったのは話のテンポが今までで一番良かったって事。あれが明かされたら次はこれ が明かされて終わったら今度はそれ……といった風に次々と新事実が明らかにされてるの で先が知りたいのがあって戦闘メインでも途中でダレる事はなかったです。  個人的に嬉しかったのはやはり好きなキャラでもある鷹秋&麻矢コンビの復帰。しかも 望んだ通りにパワーアップしてたので満足だったよ〜。まあ冬馬の足止め役として敵の脇 キャラ(獣類)と戦うって扱いは変わらないですが。鷹秋の「ザコキャラで終わるなんざ、 まっぴらだ!」て台詞(P171)はウケた。よく分かってるじゃないかよと(笑)。  相馬も久々に都合良すぎるくらいに登場しましたが、『最後の月』の主要成分を考える と簡単に役割が予想出来て先が見えてしまうのではなぁ(そして予想通りだった)。この 物語全体で言えるのは、ストレートで分かり易いのは良い所だけどそれ故に先読み出来過 ぎてしまうので、もうちょっと捻って見せて欲しいかなって事だろうか。  しかしさすがにこうはならないだろうと思っててこうなって欲しくないとも思ってたの がラストであって、それが衝撃的で内容は予想以上にぐさりと突き刺さるものでしたが、 展開としては良い意味で意外な感じでした(こんな終わり方では次巻が気になってしょう がないってのに、実際には5巻刊行が1年後ってのは色んな意味で拙いよなぁ……)。  既刊感想:
2002/03/24(日)月と貴女に花束を3 鬼神猛襲
(刊行年月 H12.06)★★☆ [著者:志村一矢/イラスト:椎名優/メディアワークス 電撃文庫]  メインは無限の強さを求める鬼族・陣内甲牙と『久遠の月』の力を得てラグナウルフに 変身する度に命を削られてゆく冬馬との戦い。相変わらず終盤死にかけになると深雪との 愛の力で大逆転な展開はワンパターン以外の何物でもないんだけど、そういうの嫌いじゃ ないのであまり非難も出来ずと言ったとこですかね。前巻の予想通りシリアス&ドンパチ で正直イマイチな戦闘描写を多く割いていて、この物語はラブコメ路線で行くべきだと願 っていたのに激減してるのがやや不満でしたが(笑)。それでも病室でわざと嫌われるよ うに深雪に辛くあたって悲壮な決意で甲牙との戦いに挑もうとする冬馬の事と、冬馬がそ の気持ちもばれてるだろうと思ってた通りちゃんと深雪は気付いていて彼の為に修行を続 ける所、ここら辺の描写はベタでもお約束でもうまいなと。  陣内甲牙は結局は捨て駒だったわけだけれど、純粋に力を求めてラグナウルフの冬馬に 挑む姿も結構気に入ってたんですが、逆に過去の事と由花に記憶の姿を重ねる所からまた ベタネタとお約束の介入(こればっかだなこの物語は(笑))で展開が読めてしまって萎 え気味でした。が、やっぱり嫌いではないのですな私は。甲牙の最期とそれを由花が見取 るシーンは素直に良かったです。  『あの男』の事は作中で正体伏せてたつもりかどうか、読み手にバレバレな所から別に 隠してたわけじゃなさそうですが(これで本当に隠してたつもりならあまりにお粗末だし) だから冬馬がその事を甲牙の口から語られて初めて知って酷く驚いてたのには「気付いて なかったんかい」と思ってしまいました。静馬や静華、それに敵側が皆その存在を知って たから冬馬にもこれまでの事からから『あの男』が誰かピンとくるものがあったんじゃな かろうかと。まあ冬馬は削られてゆく自分の命の事だけで一杯一杯だったからそこまで考 えが回らなかったのかも。危機に陥ってようやく何が自分と深雪にとって一番大切な事か に気付いてるくらいのダメっぷりだったからなぁ今回(笑)。  ともあれこれで院の長・桜と桂の異母妹・燐、それから静馬と因縁のある獣聖十士のひ とり響忍と主要キャラは大体出揃い↓のコンビも4巻で復帰だそうな。姿を消した相馬の 事や桜の狙いが何処にあるのかもまだ分からないし、冬馬の隠された力と『久遠の月』の 亀裂の意味、桂にも秘められた力の事や縁にも響にも内に秘めるものがあったり……など など、やはり持ち越された伏線をどう解いて行くかが感想対象になりそう。  既刊感想:
2002/03/22(金)月と貴女に花束を2 妖龍の少女
(刊行年月 H11.12)★★★ [著者:志村一矢/イラスト:椎名優/メディアワークス 電撃文庫]  ぐわーん、鷹秋と麻矢って完全にヤラれキャラに成り下がってやんの……。これからど んどん強いキャラが出て来て存在感を失い出番さえ奪われてしまうに違いない(^^;)。 1度挫折を味わった奴ほど成長を遂げた時の描写ってどうなるか楽しみな所があるし、特 に鷹秋は登場時から好きなキャラなもんでこのまま埋もれさせて欲しくないなって気持ち もあるんですが……敵方の新キャラが印象・能力共に強烈だったから厳しいかなぁ。  前巻からの続きとは言っても1巻はそれ1冊のみで完結、今回から第2部という位置付 けだそうな。あとがきで全5巻と書かれてて実際には全6巻だったわけですが『第2部が 全5巻』と解釈すればあながち間違いでもないのかなと後になってから言える事(笑)。  続編なのでやはり冬馬のラグナウルフ能力はこういう扱いになったか〜と。元々1巻完 結というのがあるから、そこでどうしても取って付けた感が拭えなかったのですが、今度 は最初からシリーズ作品として書かれてるので先を気にさせる展開はそれなりに。桂の事 とか彼が言う『あの男』の事とか院の事とかラスト登場した気になる少年・御堂縁の事と か、伏線張りと掴みはこれだけあれば充分て感じで良かったです。あとは次巻以降の展開 でどう紐解いて行くかが評価の良し悪しの分かれ道でしょうかね。  全体的には良くも悪くも素直な展開でした。ありきたりと言えばそうかもしれないし、 ストレートで分かり易いといえばそれも間違いじゃないかなと。ただ終盤の由花と桂が1 巻の冬馬と巽とダブって見えてしまって、夢のシーンだとか本当は愛されてるのに憎まれ てると吹き込まれて絶望してしまう所とか、ワンパターン過ぎるかなって印象も受けまし たが……。割合はラブコメ風味と戦闘シーンが半々くらい。個人的嗜好でモノを言えば、 戦闘描写はどーでもいいからもっと冬馬と深雪をいちゃつかせて次巻では由花も含めてそ っちメインで突っ走ってくれと言いたいとこなんですけど(笑)、桂と人狼族の深い根が 絡んでそうな因縁やら冬馬の能力発揮を代償に命を削る指輪『久遠の月』の存在やらがあ ってそうはいかなさそう。シリアスモード&戦闘メインになるのかなぁ?  冬馬を支えようとする健気なシーンもそうだけど、今回は桂との対峙で戦闘シーンにお いても深雪の強さを見せ付けられた気分でした。こういう彼女の描写はこの物語で結構好 きな部分なので、お約束でも構わないからその辺次巻以降も見せて欲しいです。  既刊感想:
2002/03/21(木)月と貴女に花束を
(刊行年月 H11.06)★★★☆ [著者:志村一矢/イラスト:椎名優/メディアワークス 電撃文庫]  あまりにまったりな刊行ペースだったもんで2巻まで読んで止まってたんですが、今月 の最終巻で完結したので最初から再読してます。いや懐かしや。この話は何度読んでも冬 馬と深雪がいちゃついてるシーンこそが最大の魅力であってそこが一番うまく書けてるな という印象は変わり様がないです(笑)。  この1冊だけで限定すれば、文章力がもうひとつでもベタベタなネタで固められていて も、やっぱり1作入魂な大賞応募の選考委員特別賞受賞作だけあって(当時の)新人さん らしい勢いに引き付けられるモノも確かに感じられるんですよね。  しかしキャラによっては描写が足らなくて充分に魅力を引き出せてない部分もありまし たが、特に鷹秋と麻矢は単なるやられ役にしかなってなくて勿体無いような気もしました。 2人の見せ場がもっと欲しかったって事なのですが、これが最初からシリーズ作品として 書かれてるなら、鷹秋が妹を盾にもっともっと巽に追い込まれて葛藤しながら冬馬と相対 したり麻矢の姉・深雪への異常な情愛の念際立たせてそれをメインに持ってくる事も出来 たと思うんですけど(それで巽との戦いは2巻へ持ち越すとか)、これは私の無いものね だりって事になるんだろうなぁ(^^;)。  元々1巻完結として書かれてるような作品だから、今回限りと思わせるような終盤の盛 り上げ方――特に深雪が自分の命と引き換えに冬馬を甦らせ、全てが終わった後に冬馬が ラグナウルフの力と引き換えに深雪の命を救って変身能力を完全に消失してしまうという 展開は非常に良かったです。死闘の中で、冬馬が母を想う心と巽が恋人を失って悲しみを 打ち消す程の憎しみに身を委ねた心を描いたシーンも読み応えあったし。これ1冊の展開 で前後編くらいの分量だったら、人物描写も掘り下げられて上記のような足りないシーン も補えて満足出来たんではないかなという感想でした。エピローグの冬馬と深雪は読んで てもうくすぐったくて堪らないですね。  ただ、一旦終わりを見た物語が続く事によって展開がどうなるか? という所が書評サ イトで評価が真っ二つに分かれてるようなのですが……はてさて。


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