NOVEL REVIEW
<2002年09月[中盤]>
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09/20 『マリア様がみてる ウァレンティーヌスの贈り物(前編)』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
09/19 『マリア様がみてる ロサ・カニーナ』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
09/18 『マリア様がみてる いばらの森』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
09/17 『マリア様がみてる 黄薔薇革命』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
09/16 『マリア様がみてる』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
09/15 『フォルクローロの記憶 あの空に届いた約束』 著者:伊藤馨太郎/富士見ミステリー文庫
09/14 『今夜だけ退魔少女 あたしの中の王子さま』 著者:真坂たま/富士見ミステリー文庫
09/12 『ショットガン刑事 刑事暗殺。』 著者:秋口ぎぐる/富士見ミステリー文庫
09/11 『ショットガン刑事 強奪!エプロン刑事。』 著者:秋口ぎぐる/富士見ミステリー文庫


2002/09/20(金)マリア様がみてる ウァレンティーヌスの贈り物(前編)

(刊行年月 H12.03)★★★★ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]  シリーズ第5巻。薔薇さま方の卒業が迫るごとに増してゆく寂しさや物悲しい雰囲気を 払拭させる為に挿入されたかのようなバレンタインイベント(と言っても今回はそれ程卒 業間近な雰囲気は感じられなかったけれど)。表題作はなくて、前後編通じてバレンタイ ン期間中のオムニバス形式だそうな。今回はメインで『びっくりチョコレート』と番外短 編『黄薔薇交錯』の2本立て。 ・びっくりチョコレート  ……意気込み勇んで突っ走る人ほど負けを見るものなのだよ由乃ちゃん(笑)。  バレンタインにチョコレートのイベントは、受け渡す相手が異姓か同姓かの違いなだけ でリリアン女学園でも例に漏れず。ただ新聞部立案・企画『薔薇のつぼみのカード探し』 は、序盤で志摩子が祐巳に言ってたウァレンティーヌスの祭日に掛けたお祭りイベントの ようなものでしたが。学園内でのエピソードは巻が進む度に色んな人の意外な一面が見れ たり、新たな発見で思わずにんまりしてしまう所もあったりで面白いです。  読んでてとにかくもどかしい祐巳のどうにもならない癖――彼女視点で何時でも完璧に 見えてしまうお姉さま・祥子に対して至る所で負い目を感じてしまう部分が、間の悪さも 手伝ってここぞとばかりに出てしまったという感じ。それでも物事をストレートに運べな い性格が祐巳を好きになれる良さなんだよなーと思うと、もう全てが祥子の為に「どうし ようどうすれば」と一生懸命になってる姿がたとえ空回ってても凄く可愛く見える。  まあ白薔薇さまの「もっと本音で祥子にぶつかってみたら」というのも確かにその通り でよく分かるんだけれど。だからかつて紅薔薇さまに対して今の祐巳と同じ立場だった祥 子に、本音で心の内を聞かせるシーンも見たかったのですが、カード探しイベントの騒動 で何となくギクシャクな部分がうやむやに修復されたような気がしてちと残念。  もっとも祥子が自分の過去の姿を祐巳に映して見てるんだったら、妹の気持ちも手に取 るように分かる訳だろうし、結局充分通じ合ってるじゃないかよ〜と言いたいですが(笑)。  意外な一面ってのが志摩子の焦る姿。ああこういう事だったのかーと分かってしまうと 初々しさが滲み出てるのもよく分かる。普段見れない志摩子の恥らう様子も破壊力抜群、 こちらも可愛らしくて良いですね。 ・黄薔薇交錯  バレンタイン当日の始末記的な番外編。正直私はこれよりカード探しに参加した黄薔薇 さまの動向の行方を余程見せて欲しかったよ(笑)。相変わらず謎多きお方です。  さてこの短い中で何を伝えたかったのか? どう考えても回答はひとつしか出ませんで した。ズバリ“令の本質”……さすがは姉妹、由乃も黄薔薇さまもよく見抜いてらっしゃ る。ちょっとその翌日の黄薔薇組の様子を見てみたくなってしまいました。  既刊感想:
マリア様がみてる    黄薔薇革命       いばらの森       ロサ・カニーナ 2002/09/19(木)マリア様がみてる ロサ・カニーナ
(刊行年月 H11.12)★★★★ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]  シリーズ第4巻。まだ実感は遠いけど確実に別れの時は足音を立てて近付いてるんだな としみじみ。次期生徒会役員=薔薇の後継者選出時の出来事を描く表題作『ロサ・カニー ナ』と祐巳の正月の過ごし方が垣間見れる『長き夜の』の2編。 ・ロサ・カニーナ  薔薇さま方の後継者選びからの出来事は見所が色々あり過ぎて、どこが一番おいしいシ ーンだろうか判断に迷う所もあったけれど、私は“姉妹の存在意義”を改めてしっかりと 感じられた事だったかなぁ。今回波紋を生んだロサ・カニーナ=蟹名静は、山百合会の妹 達(例えば祐巳にしても祥子にしても)がそれぞれ姉に対して自分がどうすれば支えにな れるのか? と改めて迷走模索する大元の切っ掛けを与える存在だったんではないかとい う気がしました。もっとも静にそういう意図は微塵も無くて、彼女にとって薔薇候補に名 乗りを上げた理由は別のたったひとつの場所にあったわけですが……結局ここでも白薔薇 さまはおいしい役回りです(笑)。  特に印象に残ったのは、この頃白薔薇さまの影に隠れがちだった紅薔薇さまが祐巳に対 して告げた非常に説得力のあるお言葉。比喩でお祖母ちゃんと孫のような位置付けなどと あるけれど、言葉の深さ・影響力は本当にそれくらいの隔たりがある。紅薔薇さまにかか りゃ祥子も子供扱いだもんなぁ。蓋を開ければ祐巳も祥子も同じような悩みを抱えてたと いう辺り、根本的に似てるのかなと思うと祐巳じゃないけどささやかな嬉しさを感じてし まいました。普段の祥子の態度がああだから稀に柔和に接せられて祐巳が「ちゃんとお姉 さまと通じ合えてるんだ」と思ったりすると余計にね。  千差万別な姉妹のカタチで白薔薇さまと志摩子の関係は未だによく分かってないですが、 これまで深い所があまり見えなかった志摩子の中が、立候補で悩む辺りで僅かに窺えたか もしれず。選挙が終わって白薔薇さまに抱きとめられる彼女の姿も凄く良かったです。 ・長き夜の  三学期に入った『ロサ・カニーナ』のエピソードから少し遡った正月休みの出来事を、 祐巳の視点で描いたお話。このシリーズには絶対に合うと常々思っていたキャラ同士の日 常コメディが、スマッシュヒットで私の脳天を直撃しました(笑)。素直に笑えて楽しめ たという点ではシリーズ中随一だっだんじゃないかなー。  簡潔に「祐巳ちゃん拉致って祥子んちへGO!」ってな白薔薇さまのノリで、もう序盤 から祐巳と白薔薇さまがコンビ組んでる時点で期待大だったのですが、1巻で出てきたあ の男の再登場により更に笑かしてもらいました。似た者同士で白薔薇さまと罵り合ってる けど、端から見たら見事なまでの名コンビだよなと(言ったら絶対反論されそうだけど)。  招いた祥子は随所でかなーり引き気味だったようだけど、何だかんだで最後は祐巳とか なり良い雰囲気で締めというのはお約束。ちなみに『なかきよ』は全く知りませんでした ……という意見が多そうなのでマイナーなのかも。次の正月にやってみる?  既刊感想:
マリア様がみてる    黄薔薇革命       いばらの森 2002/09/18(水)マリア様がみてる いばらの森
(刊行年月 H11.05)★★★★☆ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]  シリーズ第3巻。紅、黄ときて今回は白で、姉妹の話ではなくて白薔薇さまのみに焦点 をあてた内容。表題作『いばらの森』と『白き花びら』の中編作2本です。 ・いばらの森  発端は1冊の新刊少女小説。その内容が白薔薇さまの過去と酷似している事から、彼女 が著者ではないかという噂が学園内で蔓延してしまう……という事柄の真相究明に乗り出 した由乃の暴走っぷりが見所だったんではないかな。さすが好きな言葉が『先手必勝』だ けあって思い立ったが即行動で迅速かつ大胆、正直由乃がここまで出張るキャラだとは思 ってなかったので唖然となりつつも、これが飾ってない本来の姿なんだよなーと納得しな がら楽しむ事が出来ました。姉妹として令と、それから同じ『つぼみの妹』として祐巳と のコンビもなかなか良い味が出ていたので断然気に入ってしまったです。    それからようやく判明した白薔薇さまの氏名は佐藤聖さま。もはや作中で彼女が登場し てからの言動に目が離せなくなってます。祐巳を捕まえて祥子との姉妹の事を“一粒で二 度おいしい姉妹”(P96)って……ホントにうまい事言うなぁ。これは白薔薇さまにと ってちょっかい出し甲斐のある姉妹だと言ってるようなものか(笑)。  著者の秘密には由乃の強引な行動が結果的に効を奏して辿り着けたわけですが、多分読 み手が祐巳レベルでなければ真相語られる前にピンとくるはず(何気に酷い言い草)。そ こからラストにかけては綺麗にまとまってるという印象。ちょっと綺麗過ぎて大人しいか なとも思ったので、もし著者が白薔薇さまだったとしたらと勝手に考えて……そっちの方 も面白いかも(笑)。でも彼女は自分が著者ならハッキリそうよと言うだろうなと。 ・白き花びら  『いばらの森』で、じゃあ白薔薇さまの過去ってどんなものだったの? と首捻らせて おいてこういうのを持ってくるなんて心憎くてうまくてずるいです(笑)。なんかすぐに 見破れそうな罠が敷いてあるのにまんまと引っ掛かってしまったというか。  一年前に遡った時点から聖さま視点で語られていて、純粋で深くて淡く、そして非常に 酷な恋愛が描かれてます。聖さまと栞の恋愛模様はとにかく読んで堪能してくれ! と言 いたいですが、先に『いばらの森』のエピソードがあってこそ一層際立つエピソードであ って、逆にこのエピソードを見せられて『いばらの森』での聖さまの心情に激しく納得出 来たかなと。2話1セットで凄まじい効果を上げている点でやられましたという感じ。  あとここで現紅薔薇さまの氏名(水野蓉子さま)と黄薔薇さまの名前(江利子さま)も 判明。聖さまがこれほど今とは別人だったのには驚きましたが、当時の白薔薇さまやまだ つぼみの頃の容子さまとの関わりなど、ちょっと想像し難い過去のエピソードは興味深く て面白かったです。また白薔薇さま以外の視点でも是非見せて欲しい所。  既刊感想:
マリア様がみてる    黄薔薇革命 2002/09/17(火)マリア様がみてる 黄薔薇革命
(刊行年月 H11.02)★★★★ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]  シリーズ第2巻。前巻は紅で今回は黄――黄薔薇のつぼみ・令とその妹・由乃がメイン。 元々従姉妹同士で近い存在って事で、先に結果が出来上がっていてなるべくして姉妹(スー ル)となったという二人が、一度絆を解き放って自分と相手にとってどういう存在かを見詰 め直す。……というのは主に寄り掛かってる令に対して由乃が仕掛けた事で、事実を知ると どっちが姉でどっちが妹か分からんな〜と思わせてくれる所もあったりしたのですが。ロザ リオを返されて放心状態の令を描いてる辺りなんかは特に。  容姿と趣味・性格の意外性と、令と由乃の逆転してる部分はまあそういう事だろうなぁと 想像しつつも、やっぱり祐巳と同じように「えっ? そうなの?」とか言いたくもなったり。  由乃が令の為と行動を起こして自分も強くなると決意し、令がそれに応える為に行動で示 そうとする。結末も展開もわりと先読みし易い内容だったけれども、心理描写が非常にうま く効いているので、離れて逆にお互いを想う絆の深さを更に感じられたかなと。  で、令と由乃の関係を盛り上げるのに周囲の面々も重要な役割で欠かせない存在。薔薇さ ま方は一見本人達の意思を尊重して見守るだけの姿勢なんだけど、さり気なく思い遣りや気 遣いを覗かせる描写がなんかいいなーと感じさせられました。  私は今回の山百合会の中で、姉妹となった祐巳と祥子のいちゃつくシーンさえ見れりゃそ れで満足だったのですが(笑)、それに輪を掛けて白薔薇さまの言動の数々が最高に素晴ら しかったです。なんか2巻目にして彼女が支持されるの分かる気がしてきたなぁ。  意外なくらい思わず吹き出してしまうシーンが多いのはホントに読んでて楽しいです。主 な原因を作ってるのは祐巳と白薔薇さまなんだけど、今回は黄薔薇さまもその中に入れちゃ っていいだろう。というよりこんなオチでいいのか? いいんですかー黄薔薇さまぁ〜。  もう絶対令と由乃絡みかもしくは姉妹や山百合会、万が一にも男? などと関係してるの かと思いきや、予想だにしない真相で見事にこけてしまった……。まだ薔薇さま方の本質は 計り知れない所が多いけど、とりあえず現時点で黄薔薇さまがその最たる存在という感じ。  そういや祐巳の気持ちとリンクして、薔薇さま方の本名って未だに出てないので知らない わけだよなと今更ながらに気付く。でも本名は普段も先生くらいにしか呼ばれないだろうか ら、祐巳が咄嗟に思い出して言えないのもよく分かる(笑)。  既刊感想:
マリア様がみてる 2002/09/16(月)マリア様がみてる
(刊行年月 H10.05)★★★★☆ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]  全ての始まりは『ごきげんよう』の挨拶から……。  華麗にて上品、優雅にて清楚。なんて言葉を並べ立てると雰囲気が見えてきそうな『私立 リリアン女学園』高等部での物語。でも実は、そういう上辺を取っ払ったキャラクター同士 のコミカルとも言えそうなやり取りの数々が本質であり、思わず頬が緩んでしまった所。  ここまで作中に『男』という言葉の介入する隙が殆ど見当たらないというものを読むのも 初めてだったからか、世界観・キャラクターの関係・ストーリーのどれもが鮮烈で新鮮に感 じられて面白かったです。個人的に読んでた時の視点といえば、彼女達の中には入らず(入 れずが正しいか)、遠くの木陰から山百合会の微笑ましい様子をそっと窺い眺めるような、 もろに第三者視点だったような気がします。  もし百合な雰囲気がもっと強調されて突っ込んだ部分まで描かれていたら、おそらく確実 に引いてただろうけど、何処かで見かけた“ソフト百合”という表現が読んでみて「ああ成 る程な〜」と思わせてくれた絶妙なさじ加減だったので、すーっと入っていけたのかなと。  姉妹(スール)システムは最初想像してた先輩後輩・女生徒同士の恋愛という風ではなく、 妹は姉に憧れてたり逆に姉は妹を可愛がってみたりという、文字通りじゃれ合う姉妹のよう な感覚(とりあえず今回のみで今後どうなるか分からないですが)。もっと規律や上下関係 が厳しくて厳かな感じなのかなというのは全くの偏見だったようで。祥子のような雰囲気が それに近かったですが、慣れた間柄じゃ祐巳共々薔薇さま方のおもちゃにされてるし(笑)。  薔薇さま方も本来のくだけた物言いで気さくな所が凄く親しみやすくて、こういう印象の 変化を感じられる部分は祐巳と同調出来ていて、彼女の心情がよく伝わってきました。  軸は祐巳が祥子の妹として彼女からその証であるロザリオを受け取るか否か? でしたが、 最初からの演出の積み重ねは全てこの為に……って感じなラストシーンが堪らなく良かった。 きっとこうなるだろうとは思ってたけれど、結局そんな身構えは祥子が自分の気持ちを祐巳 に吐露した辺りで無力化されてしまいましたとさ。  あとはネーミングセンスの素晴らしさに感嘆してしまった事だろか。とりあえず「白薔薇 さま」という文字を見て「ロサ・ギガンティア」、「紅薔薇のつぼみの妹」という文字を見 て「ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン プティ・スール」……などなど即座に頭に浮かべ て言えるまでが当面の課題か(笑)。次巻以降も楽しみです。
2002/09/15(日)フォルクローロの記憶 あの空に届いた約束
(刊行年月 H14.08)★★★ [著者:伊藤馨太郎/イラスト:小野寺明/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  岩手県遠野を舞台に、座敷わらしと宮沢賢治の童話と時効間際の過去の事件を再び辿るよ うに起こる連続殺人とが混在した旅情ミステリーというべきなのかな。遠野物語からの妖怪 に関する事柄とか宮沢賢治の童話を事件と密接させて使ってる辺りは、よく調べて丁寧に描 かれてるなぁと全然詳しくない私でも幻想的ともいえる背景描写が魅力的に思える程でした。  が、どうにもキャラクターの描写がうまくないかなと思ったのが始まりで結局イマイチ感 漂いまくりな印象になってしまう……。何が気に入らなかったかって言えば最後まで主人公 ・圭真を好きになれなかった事で、彼の扱いと周囲の人達の彼に対する反応に「おいおいち ょっと待て」と至る所でツッコミ入れたくなったのが原因。  う〜ん……作中で圭真に出会った女の子は誰もが一目見て頬を染めいきなり好印象を抱き、 事件を通じて1度閃きで推理を見せただけで出会った警察関係者の誰もが彼に羨望の眼差し を向け、そして当の本人は曽祖父の代理で来てるのに興味本位で首を突っ込んでるようにし か見えず、何かに付けて美少年だ容姿端麗だ頭が切れて有能だと連発する……あ〜一つ気に 入らないと連鎖的に愚痴がこぼれてしまう(笑)。でもこういうのが主役張ってても魅力を 感じられないのは、言動から全然感情が伝わってこなかったから。キャラクターの喋ってる 台詞が棒読みしてるように思えてしまったのは私だけだろか?  まあ特に納得いかなかったのは刑事達の圭真に対する接し方だったのですが、誰も彼もが たった1日2日会っただけの高校生に期待を寄せ過ぎなんじゃないのかあんたら警察官のプ ライドは無いのか幾らなんでも情報漏らし過ぎだろその他色々……。某ミステリー漫画じゃ ないけど、1人くらい圭真のやや出張り過ぎな行動が気にいらず反発する刑事がいたってい いじゃないのさ〜とかね。  前半は整理がついてなくてごちゃごちゃしてたけど、怒涛の如く謎解きを展開させる終盤 とか最後まで佳織の生死をはっきりさせない見せ方だとか、そういった部分は結構面白かっ たのになぁ。出没する座敷わらしにちゃんと納得の行く理由と回答があったのには感心しま した(これが非現実的な妖怪の仕業とかでうやむやだったらどうなってた事か)。 どうも 続編の予定があるらしいですが、ミステリーとしてはなかなかうまく仕上がってたと思うの で、今度はキャラクターの言葉や行動にもっと感じ入る要素が欲しい所。
2002/09/14(土)今夜だけ退魔少女 あたしの中の王子さま
(刊行年月 H14.08)★★★☆ [著者:真坂たま/イラスト:森永あい/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  妖怪もののけ怨霊悪霊その他もろもろ、あっちの世界の存在を相手にする一族に生まれ た少女が恋に戦いに奮戦する様を描く退魔もの。イラストがもろに少女漫画風味だし主人 公・亜子の一人称でタイトルもコレだから、恋する乙女の王子さま探し奮戦記みたいなの 読まされるのかと勝手に想像巡らせびくびくどきどきしてましたが(笑)。  亜子の感情に乗せてそういう部分も多少はあったけど、大部分は退魔絡みの内容が展開 していたので私の的外れな想像もいいところ。むしろ食わず嫌い起こしそうな先入観に反 して、思ってたよりずっと良くて面白かった。分かり易く言えば、タイトルと序盤の亜子 の一人称文章で3歩程引いてしまったけど読了して5歩進んだって感じです。  まあパターンといえばそうだよなーというのも結構あったけれども。憧れの人が危機に 陥った所で秘められてた能力が開放されたりとか、その亜子の力が彼女の中で育った別人 格のもので一つの身体で意識を共有して必要に応じて人格が入れ替わったりとか(ここが タイトル“あたしの中の王子さま”に関係してる部分)。  実際亜子の中に居るのは、憧れの存在ではなくて双子の弟(もしくは兄)として生まれ るはずで死産してしまった強大な退魔能力を持つ小次郎の意識なのだけれど。最初は嫌々 意識を共有していても、お互いの事が分かって来るに連れて素直になれないながらも認め 合ってゆく様子がいい感じで描かれてます。生まれずして別れてしまっても、ああやっぱ り妹弟(兄)なんだなぁと思わず漏らしてしまいそうでした。容姿や会話から察するに亜 子がお姉さんで小次郎は弟とした方がしっくりくるかも。  4話構成な所はちと微妙。小次郎の話や風恩の話、それから史郎が関わる話なんかも入 ってるので、シリーズ展開を見越してのキャラクター紹介を兼ねたプロローグ的な位置付 けなのかなと。それぞれの内容に関しては面白くて特に風恩の第3話はありがちながら凄 く良かったんだけど、逆に退魔士として亜子と小次郎を中心に据えての活躍が少なかった のが残念。そういう部分を楽しみにしつつ続きを期待してみたいです。
2002/09/12(木)ショットガン刑事 刑事暗殺。
(刊行年月 H14.08)★★★★ [著者:秋口ぎぐる/イラスト:たけひと/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  シリーズ第3巻。また暴走キャラ達がモデルガンぶっ放しつつめちゃくちゃやるんだろ うなと思いきや、虎雄=<ショットガン刑事>が暗殺事件の容疑者の濡れ衣を着せられて自 ら真犯人をお縄にしようと動いたり、刑事部内で学内マフィアと裏の繋がりがあったり、 予想外に事件性が高くまともな刑事らしい事件の追い求め方を描いてたので、これって著 者の秋口さんのバッチリ充電完了って意気込みの表れなんだろうかと思ったり(笑)。  1巻のキャラ再登場と2巻から持ち越された虎雄の手にある1千万と今回の暗殺事件の 真相とを合わせると、この物語のひとつの区切りとしてこれまでの総まとめとして描かれ ていたかな〜という印象。それはおそらく暗殺事件と虎雄を容疑者として陥れた真犯人、 それから今回の結末を読めば分かってもらえるんではないかと思いますが。  そんな感じでこう言っちゃ悪い気もしますが、わりと普通に刑事もののストーリーとし て読めるなんて全くカケラも思ってませんでした。それくらい個人的には良かったって事 なのですが、とにかくネーミングで笑っちゃいそうで行動で吹き出してしまう刑事部の面 子が一杯登場して大活躍だったのが嬉しかった。<ショットガン刑事><まるだし刑事><エプ ロン刑事><あぶなげない刑事><ニコラス刑事(ケイジ)><出歯亀刑事><はぐれ刑事ポル・ ポト派><首まで地面に埋まってる刑事><刑事B(ケイジービー)>など、こいつらの変人的 容姿・行動を追ってるだけで楽しいです。この刑事達の思惑が表と裏で複雑に絡み合って 展開して真相へと導く辺りがうまくて一番面白かったです。  まあ結局は虎雄が引き起こして最後にはある意味敗北してしまったしょーもない話と言 えなくもないけど。相変わらず<まるだし刑事>は刺激的でカッコ良くて惚れそうでした。  ……最後にひとつ言いたいのは『おまいらホントは高校生じゃないだろ?』って事か(笑)。  既刊感想:
炸裂!リボルバー娘。       強奪!エプロン刑事。 2002/09/11(水)ショットガン刑事 強奪!エプロン刑事。
(刊行年月 H13.10)★★★☆ [著者:秋口ぎぐる/イラスト:たけひと/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  久々に新刊出たのでまず未読だったシリーズ第2巻から。なんか読み進める内に呆然と なっていってしまったというのが率直な感想。それが是非のどちらに傾いてるのかと言え ば、<ショットガン刑事>や<まるだし刑事>始め奇人変人オンパレードな奴らのめちゃくち ゃ加減に思わずハマってしまったから『良かった』と言わざるを得ないのかな……まるで 変態キャラどもに屈したような気がして悔しいけど。  ミステリーと名の付くレーベルでしょっちゅうこういう事書くのもどうかと思うんだけ ど、絶対ミステリーじゃないよこれ〜とぶんぶん首を横に振りたくなった。まあ狂言誘拐 とか身代金とか事件絡みなキーワードは出てくるけど、基本は一見派手なガンアクション。 でも使ってるのがレプリカだから正確にはモデルガンアクションとなってます。  何が凄いかって常識人皆無な変態刑事部キャラども&勘違い馬鹿だらけの学内マフィア どももそうなんだけど、巻き起こってる甚大な破壊及び被害全てが高校生絡みのイベント で高校生の手によるものだという事。こいつらが高校生だってのすっかり忘れてた……。  そんな中で巡り行く身代金の行方と、それに全く噛み合わず勘違いな行動を連発する刑 事部の連中と総持寺達は素直に面白かったです。<あぶなげない刑事>とかネーミングだけ で吹き出してしまったキャラの出番も今後欲しいとこですが、今回<まるだし刑事>の全て を曝け出して行動する凛々しい姿にはシビれました。  既刊感想:
炸裂!リボルバー娘。


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