10/08 『世界征服物語 〜ユマの大冒険〜』 著者:神代明/スーパーダッシュ文庫 10/05 『宇宙生命図鑑 book of cosmos』 著者:小林めぐみ/徳間デュアル文庫 10/03 『十二国記 風の海 迷宮の岸(下)』 著者:小野不由美/X文庫ホワイトハート 10/02 『十二国記 風の海 迷宮の岸(上)』 著者:小野不由美/X文庫ホワイトハート 2002/10/08(火)世界征服物語 〜ユマの大冒険〜
(刊行年月 2002.09)★★★☆ [著者:神代明/イラスト:如月水/集英社 スーパーダッシュ文庫] 第1回スーパーダッシュ小説新人賞『大賞』受賞作。 現実世界からの異世界転移に王道ファンタジーRPGを地でゆく内容と、元気系女子高 生・ユマの一人称文体。勇者や救世主ではなくて魔神の代理人というのは捻りを入れたポ イントですが、ここまで使いまくられた要素をかき集めて物語を構築されてしまうと、い っそ清々しく思えてくるから不思議不思議。 大賞という冠を乗せた部分を強調して眺めるなら、どうかなぁと首を捻ってしまうのも 確かにありました。言葉に出るのはネタが使い古され過ぎとかありきたりとかありふれた とか……だったんだけれど、読んでいて「それがどーした、結局は楽しめりゃ些細な事な んだよそんなのは」と言わされてしまったわけですよ。なにが良かったかというのは、こ れは著者が楽しんで執筆したんだろうな〜ってのを読み手が(少なくとも私は)確かな手 応えで感じ取れた事。この作品は本当にそれに尽きます。 これやって次あれやって今度はそれやって……と、定められたレールの上を行くが如く お使い的な展開は正直イマイチ感があって、魔神デルトリア復活の為の秘宝探しなんかは 特に退屈気味だったり、最後のティレクと魔神デルトリアに関しては重要なシーンなのに いくらなんでもそりゃあっさり流し過ぎだろー!? と思ったりで不満も結構ありました。 ただ、この物語はキャラクターの魅力――主にユマの圧倒的な存在感とキャラクター性 で引っ張ってる所が大きいので、中身の粗はそれでかなり相殺されているかなと。 やっぱり一番はユマの起こす騒動の数々が面白いから読んでいて楽しいという印象。貧 弱魔王軍復興奮戦記みたいな部分や、異世界では同姓に愛されやすいユマの性質と(笑)、 それに絡みつくタリア姫にリンダにグルガなどのキャラ達も良かったです。 2002/10/05(土)宇宙生命図鑑 book of cosmos
(刊行年月 2002.09)★★★☆ [著者:小林めぐみ/イラスト:新間大悟&佐伯経多/徳間書店 徳間デュアル文庫] もうあと100頁くらいあっても良かったかな、と読了して思った事。それで書いて欲 しかったのはアレクとセイジロの事。過去やら彼らの出会いやらユートニーとの関わりや ら……深いとこまで設定あると思うんだけど、チラつかせる描写があってハッキリ見せて くれないのでちょっと不満〜という感じだったのですよね(笑)。会話や台詞の端々でも 分からない事がぽこぽこ出てるので「これはどういう事だろ?」ってのも結構あったり。 あとはアレク&セイジロ、トキ乃側からヒーラーの雄・ヒスラの存在を追う形で描かれ ていたので、もうちょいヒーラー側の生活環境や日常風景を見れたらなぁという感じ。 ざっと挙げて、特にもっと見たかったってのはこれくらい。他にはブログラー博士の両 親と、デュバック星でノーディオン博士が起こした惨劇の詳細とか、宇宙生命図鑑がどう いった存在で何故アレクの手にあるのかとか、“神の獣”というキーワードなんかも。 まあごちゃごちゃと並び立てたけれど、特にヒーラーという種族の生態系に惹かれて、 それを紐解こうとするトキ乃や常に訳知り顔のアレクにセイジロの行動を追うのが読んで いて面白かったです。ディリとウルマは結果的にこうなったのはどうか……ただ、種族の 鎖に繋がれてるよりは好き合ってる二人だけで自由を得られた方が良かったのかなと。 え〜とにかく伏せられてる事柄が多い気がしたから、★の数は続編への期待値込みとな ってます。出るかどうかは正直微妙かなーと思ってるけれど(^^;)、これじゃあまりに スッキリしないよー、と実際続き読んでみたいとがあったので。 2002/10/03(木)十二国記 風の海 迷宮の岸(下)
(刊行年月 1993.04)★★★★ [著者:小野不由美/イラスト:山田章博/講談社 X文庫ホワイトハート] 麒麟が王を選ぶとはどのような事なのか? 天啓が下らず、そもそもそれはどのような 形で自分の中に感じ取れるものなのか? 思い悩み分からぬままの泰麒を通して泰王誕生 までを描いた下巻。驍宗が王だというのは泰麒が決めたわけだから間違いはないだろうっ て思ってたけれど、泰麒の方にまるで大罪を犯したかのような心の揺らぎが続いてたので、 ハッキリするまでずーっとやきもきしてました。 景麒からの天啓についての話で、なんて曖昧なんだろうそれじゃ泰麒が分からないでい るのも無理ないよ景麒がもっと蓬山に居てくれたら……と、思わずぐちぐち出てしまった けれど(笑)。“麒麟が選んだ事が天啓”とはまさに泰麒が驍宗にした事そのもの、実に 単純明快で有無を言わせず納得させられたという感じです。そりゃ天啓が下る麒麟自身し か知り得ないわけだから、当然他の麒麟にどうこう説明なんぞ出来ないだろうなと。 天啓の事が分かった上でふと陽子の時を思い返すと、景麒は「私が選んだからあなたが 景王です」と言ってた様なものですが、今まではそれじゃあ陽子も戸惑うよとだけ思って いたけれど、それは理屈ではないものだから陽子の「どうして私が……」に対して説明の しようが無かったんだと改めて分かりました。 一計を案じた延王は何の考えもなしでああいう事を強要する人じゃないと分かってたの で、これは泰麒の為なんだなと連想出来ました。ただ「泰麒の髪を引っ張っちゃいやー」 と延麒、景麒のように苦情を言いたかっただけで(笑)。 本作は新泰王の即位まで。齢十歳の身に抱えた大きなものに向き合っての焦燥、葛藤、 苦悩を描く部分が非常にしっかりと伝わってきて良かったです。本当はその後の泰麒の成 長なんかも読んでみたいなと思ったのですが、これは後のシリーズで描かれてるのかな? 、 既刊感想:月の影 影の海 上、下 風の海 迷宮の岸 上 2002/10/02(水)十二国記 風の海 迷宮の岸(上)
(刊行年月 1993.03)★★★☆ [著者:小野不由美/イラスト:山田章博/講談社 X文庫ホワイトハート] 『月の影 影の海』と同様にアニメと連動して比較しながらを楽しみつつ読んでみまし た。アニメはオリジナルな要素とか、まだ読んでない別タイトルから話を引っ張ってきて る部分があるのか「ん、これは何だろ?」というのを度々見たりします。そういうのは小 説と比べてどこが良いか悪いかじゃなくて、比べて違いを探してみるのが楽しいというも の。ただアニメは小説版全部読み切ってからの方が理解し易いかという気もしましたが。 『月の影 影の海』は胎果の景王・陽子の話で、今回は胎果の麒麟・泰麒の話。 どちらも蓬莱(こちら側、つまり日本って解釈でいいのかな)で自らの居場所や存在に ・不安あるいは違和感などを無意識の内にでも抱いていたけれど、泰麒の場合は自分から 手を取ったにしても半ば強引に連れて来られたわりに状況をすんなり受け入れてる。普通 だったらそれこそ幼子がいきなり異界に身を投げられたら、不安や恐怖に駆られるだろう しなぁ。と思うとそれは幼い身からの素直さなのか、それともその疑う事をしない素直さ から自分の本当の居場所はここなんだと最初から感じ取れていたんだろうなと。 まあ陽子の時はロクに説明なしで投げ出され独りな上に帰りたい帰りたい一点張りだっ たので、苦行の道で途中感情が歪み気味だったのも仕方ないんだけど。その点泰麒は最初 から適応してるのと置かれた環境に恵まれていて良かったという感じです。それから相変 わらず表情や感情の変化に乏しい景麒が泰麒に近寄ろうとして扱いに戸惑ったり、そこか ら徐々に心を通わせるシーンも微笑ましかったです。 それでも十年間行方不明で突然麒麟と言われて麒麟の事を理解出来る筈もなし、幼い身 体で背負うには重い運命。それに向き合う泰麒がどうすればいいのかと手探りで葛藤する 様子がよく描かれてると思います。だからかな、これもアニメの映像観ての影響があるか もしれないけど、ちっちゃな泰麒の健気に頑張る姿が可愛い〜となるわけで、女仙達が競 って世話や贔屓したがる気持ちがよーく分かりました(笑)。 核心に触れるのがこれからなので、盛り上がりに関してはどうしても少々足りず及ばず という印象でしたが、これは下巻で一気に盛り上がるだろうと思いつつ期待。 既刊感想:月の影 影の海 上、下