NOVEL REVIEW
<2003年05月[後半]>
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05/31 『キーリII 砂の上の白い航跡』 著者:壁井ユカコ/電撃文庫
05/30 『陰陽ノ京 巻の四』 著者:渡瀬草一郎/電撃文庫
05/29 『Missing8 生贄の物語』 著者:甲田学人/電撃文庫
05/28 『いぬかみっ!2』 著者:有沢まみず/電撃文庫
05/27 『天国に涙はいらない8 姉振り会うも他生の縁』 著者:佐藤ケイ/電撃文庫
05/25 『いつもどこでも忍ニンジャ2 暗殺デートは素敵にどっきゅん』 著者:阿智太郎/電撃文庫
05/24 『銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!4』 著者:あらいりゅうじ/電撃文庫
05/23 『スクライド・アフター2』 著者:兵頭一歩/電撃文庫
05/22 『今日からマのつく自由業!』 著者:喬林知/角川ビーンズ文庫


2003/05/31(土)キーリII 砂の上の白い航跡

(刊行年月 H15.05)★★★★ [著者:壁井ユカコ/イラスト:田上俊介/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  やっぱり良い意味で地味。言い換えれば淡々と物静かにゆったりと流れるような描写で、 物語の雰囲気と非常によく合っている。それはこの砂海の旅でもうまく表れています。  今回はキーリ、ハーヴェイ、兵長が連れ立って旅を続けるその目的というのはあまり明 確に描かれておらず、これから何の為に何処へ向かって行くべきかを模索しながら道行く 途中のような印象。ハーヴェイは進むに任せて流れているようで、キーリはそのハーヴェ イに引き摺られてる所があって、二人がそれぞれ意思を抱いて歩むまでにはまだ至ってい ない。物語が進むに連れてこの辺が変化すると、また新しい面白さが出てくるのかも。  そんな具合で、漠然と目的を探すのを目的にしてるかどうかはハーヴェイに聞いても面 倒臭がって答えてくれそうにないので定かではないですが、鉄道の次は砂上船と相変わら ず幽霊を引き連れての旅。しかしキーリが幽霊の姿を見て首を突っ込んで、ここまでトラ ブルに巻き込まれてしまうと、ハーヴェイが呆れた様に深い溜息を吐きたくなるのも確か に分かるような気もする。逆にもう少し構ってくれてもいいのに……とキーリがハーヴェ イと接して呟きたくなるのも分かる。騒ぎを起こす意図は無くても「ちょっとは妬いてみ せてくれたらなぁ」と期待しつつ行動するキーリが妙に可愛らしい。だからキーリを気遣 って素直になれやと兵長がハーヴェイにぶちぶち文句たれたくなるのも良く分かる。  今回は行程そのものが単に偶然と片付けられない事ばかりで、特にキーリが過去の記憶 と出会うシーンは奇跡としか言い様がないのですが、それでも彼女が自ら引き寄せたかそ れとも母の想いが導いたかの触れ合いは終盤にじわりと効いて良い感じでした。  寄り掛かり方が遠回り気味なキーリとぶっきらぼうで素直じゃ無さ過ぎなハーヴェイで は、一見して絆がギクシャクしてるようでいて、実はいざと言う時互いに心がしっかり繋 がってるんですよね。そういう所はどのエピソードでも凄くいいなーと思えます。  既刊感想: 2003/05/30(金)陰陽ノ京 巻の四
(刊行年月 H15.05)★★★★☆ [著者:渡瀬草一郎/イラスト:洒乃渉/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  今回は「色恋沙汰とはかくも難儀なものよ」と痛い目を見た光榮の苦々しい声か、ある いは悟ったような文時や晴明の声なんかが聞こえて来そうな内容で、男女の恋の形や想い の複雑さを描いた物語。何組かの中でメインとなっているのは、死してなお住吉清良に深 い思慕を寄せる蓮の儚い恋心。最初からもうこんな状況だから悲恋で終わるのは分かり切 った事だけれども、蓮がどうなるか……未練を残さず成仏するのかそれとも祓い封じられ るのかの結末が気になってしょうがなくて、最後の最後まで目が離せなかったです。  おそらくこれが最善たったのかも知れないけれど、何だか軽々しく良かったなどと言っ てはいけないのではないかという気持ちになってしまったりも。清良の胸に抱かれ思い出 をとつとつと呟きながら最期を遂げた蓮に、どうしようもないやるせなさや切なさを感じ つつ、同時にどこかホッとするような安堵感もありました(直後の清良の号泣嗚咽は結構 堪えましたが)。保胤を始め蓮に関わる誰もが自力での成仏を願いながら、祓うか封じる かしなければならない状況を考慮して憂える様子もよく描けてたと思います。  それにしても外伝的な物語とは言え、いつにも増して保胤見せ場なし。いや、時継に言 い寄られてあたふたしてるのが保胤らしい見せ場なのか。時継には「代わりに生んでも良 かった」と言ってる辺りから女性としての強さをまざまざと見せ付けられたような感じ (どう見ても将来保胤の方が尻に敷かれるだろうなぁ)。伯家の実態が貴年の口から全て ではないけど明らかにされ、どうにも不穏な空気が感じられてしまうのですが、それが今 後の時継に影響してしまうのか気になる所。  吉平と貴年は相変わらずないつも通りの微笑ましい関係でよいです。時継から見て貴年 が年相応に女の子らしさを感じさせる事が多くなっているのは良い傾向?なのかな。吉平 が多大な影響を与えてるのは間違いないでしょうけど。個人的にはまた保胤が地味な扱い でも構わないから(酷)この二人をメインに置いた物語を読んでみたいかも。  今回好感触が上乗せされたのは『絵草子 訃柚』の、ちょっとしんみりさせられる保胤 と訃柚の触れ合いに添えられた洒乃さんのイラストに魅せられっ放しだったから。他に感 想書かれてる方の中でもよく見掛けてましたが、これだけ中身の雰囲気とイラストが噛み 合っている作品も稀だと思う。どこを開いても溜息が漏れるばかりでした。  既刊感想: 2003/05/29(木)Missing8 生贄の物語
(刊行年月 H15.05)★★★★ [著者:甲田学人/イラスト:翠川しん/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  ようやく空目が弟を追って『異界』を求め続ける理由の一端が垣間見れて、ようやく魔 女こと十叶詠子が学院の中で『物語』から『怪異』に感染させるよう仕向け続けて来た意 図が解かれ、そしてようやく空目が詠子を敵と見なし対立しなければならない意味が明確 になったので、随分と引っ掛かってた部分が取れてスッキリしました。  もう最近では空目達は常に魔女の後手後手に回って、何とか怪異の影響を食い止めるの に精一杯な状況が続いてたので、そもそも何故空目が弟を追う事で異界に触れようとして るのかなんて理由を求める事すらすっかり忘れてました。どうも物言いからして空目自身 にさえ異界を求める行為が理解出来てないようですが、己の欠落を知る為に異界を探して るのか? それとも不明な欠落が何故異界を求めるかが知りたいのか? この辺は欠落が 何なのか知り得ない今の所まだ読んでいても掴み切れない。  詠子のこれまでの不可解な言動の数々は、少なからず今回のこの為のものだったんだな と激しく納得させられました。これまでの話を振り返ってみて成る程こういう事だったの かという感じで、結構どういう意味なんだろと頭を悩まされた分だけ解かれた時は実に見 事な積み重ねという思いが強かったです。もっとも、これまでの理由が分かったとしてじ ゃあその先で何を意図しているのかは結局まだよく分かってないのですが。  巻を重ねる毎に状況も精神的にもヤバさが顕著になってきてる文芸部のメンバー。ここ へ来て最も不安定なのは明らかに俊也。特に前巻から引き摺って脆さが露呈してるので、 どこかで砕け散りはしないかと不安要素が大きい。空目は相変わらず感情無いので動じな いし、亜紀は自身をわきまえてるので少なくとも脆弱に崩れたりはしないだろうなと。  逆に内に秘めたモノを抱えてる武巳と稜子は、何か吹っ切れたかのように為すべき事を しっかり見据えてるようで、危うさはあれど頼もしさみたいなのも感じてしまう。武巳が 必死で稜子へ向けた決意によって少しは事態が良い方向へ転がって欲しい。    既刊感想: 2003/05/28(水)いぬかみっ!2
(刊行年月 H15.05)★★★★ [著者:有沢まみず/イラスト:若月神無/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  なでしこは最初に思い描いていたライバル像とはちょっと違ってたかな? 啓太をよう こから奪いたいが為におしとやかさを装い狙って行動するのかと想像してたのですが、そ れはあくまで天然であり良心的で献身的な部分から自然に表れているものだったので。  だからようこにとっては悪意がない分だけ余計になでしこが扱い難い存在で、結局でれ でれしてる啓太が嫉妬の矛先を向けられ痛い目見てしまう。相変わらず自業自得というか いつも通りな二人だなこれはとなりつつ、次第に打ち解けてゆくようことなでしこって案 外いい関係を築いてるんじゃないかと思える描写があったのは良かったです。  啓太のもとになでしこが送り込まれて来たのは、表向きとりわけ彼に対して暴力的自己 中心的なようこの素行を改善させるのが目的と見せ掛けておいて、本当の意図は薫とはけ とでそれぞれ違う所にある。そういう単に啓太がようこの嫉妬の炎にあぶられるパターン 化した展開から、ちょっと捻りを加えて見せてる部分はうまいなと感じました。  ただ、ようこに関するもので前巻も同じように思った事だけど、まだ何か彼女に隠され てる部分があるような含みを入れた描写が引っ掛かって仕方ないです。薫もなでしこも同 様で、確かに何か含んでるんだけど描写不足な為にスッキリしない。意図的に狙ってるよ うな気もするのですが、過去に関係する事ならばいずれ明確に見せて欲しい。  ともはねの話は途中何度も噴き出して笑ってしまいました。これはまるっきり啓太がと ばっちりを受けてしまった形で、もうただただ可哀相な彼にご愁傷様と言うしかないです。  付き合わされたともはね(ほとんど自業自得だけど)と仮名さん(正真正銘とばっちり) もえらい目に合ってますが、コメディ色だからお下品なノリでも笑って済ませられるのか も。でも今回お食事中は絶対控えた方がいい……と思う。無邪気にちまちまっとした動き を見せるともはねは可愛さがよく出てます。今後もちまちまっと顔見せてくれたらなと。  過去のなり染めが語られてるはけと宗家の婆様との短編は、人にも物の怪にもこれだけ 慕い敬われてる婆様の影響力を感じさせられたのと同時に、彼女を見詰め続けるはけの想 いにどこか物悲しくしんみりさせられたお話。それほど過去の回想シーンが詳細に描かれ てる訳でもないけれど、現在まで続いてる絆の深さと主人の老い先を憂えるはけの心情が 染み入るように伝わってきました。  既刊感想: 2003/05/27(火)天国に涙はいらない8 姉振り会うも他生の縁
(刊行年月 H15.05)★★★★ [著者:佐藤ケイ/イラスト:さがのあおい/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  このシリーズはゲストキャラはどんなタイプの娘でどのような萌えを表現してくれるの か、それによってアブデルがどれだけ妄想をぶちまけた暴走理論&薀蓄を語りまくるのか ……この辺の良し悪しで面白くなるかどうか左右されるのが大体基本的な所。  それで話の中身自体は結構二の次だったりする場合も多いのですが、今回はゲストキャ ラの紗智(の前世の記憶)が賀茂の過去に深く関わるちょっといい話で、ストーリーその ものに充分見所があってなかなかに楽しめて良かったです。  イマイチだった前巻でこの要素が欠けているとちっとも盛り上がらない、なんて書いて た部分が今回は挽回するかのように実に見事に盛り込まれていたので、少々驚き混じりの 嬉しい気持ちでした。賀茂が目立って活躍してるのが物凄く新鮮に感じてしまったのは、 それだけ普段地味な役回りなのを証明してるわけで、苦笑しつつなんだかな〜と思ったり もしたのですが。まあ一応は主人公なんだから、時々は彼にもこんな風に活躍出来るよう な美味しい状況があっていいんじゃないかなと。やっぱり賀茂が少しでも存在感をアピー ルしてくれるのとくれないのとでは、話の盛り上がりも違って見えるような気がします。  お姉さん属性を持つ年下の美少女・紗智も、個性がしっかり立っていて強く印象に残る キャラで良いです。前世での賀茂の義姉・幸子の記憶が今の紗智の中で認識されてるか否 か……ここが最も気になる所でしたが、別れ際のたまとの会話で「ああ成る程そういう事 だったのか」と理解しました。こういうさり気ない表現はじわじわ染みてしまいます。  途中で律子さえも屈服させてしまう紗智の姿を見て、この娘はシリーズ中最強の存在な のではなかろうか? と思ったけれど、賀茂を気遣うように記憶の事は胸の内に仕舞って 最後までお姉さんであり続けた彼女は本当に強いなと感じさせられました。  お局様幽霊の暴言にあんたそれ妹&ロリ属性を完全にへこましたか敵に回したかしたぞ、 と呟きたくなったのも束の間、その上を行くアブデルの恐ろしいまでに説得力のある理論 攻めに拍手を送りたくなってしまいました(このアブデルの言葉を振りかざせば妹&ロリ 属性もあっさり正当化してしまうよなぁ)。最後が綺麗に終わらないのはお約束事。  既刊感想: 2003/05/25(日)いつもどこでも忍ニンジャ2 暗殺デートは素敵にどっきゅん
(刊行年月 H15.05)★★★ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  どんどんキャラが増えてゆく過程。あとどれだけタイムスリップキャラが増殖してくの か分からないですが、次巻辺りもまだ続きそうかなという気もします。絶対新キャラ出る だろうとか絶対かなではマコト側に付く(マコトに好意を寄せる)だろうとか、ことごと く予想通りでお約束的展開。ただちょっと意表を突かれた新キャラではありましたが、結 局マコトがその娘に慕われてもてまくりなのは一緒だしなぁ。  あっさり先が読めるのも気軽で手軽で軽快に読めるのも持ち味なので良いです。でもこ のまま同じパターンで行くとあともう1、2巻でダレて飽きるだろうと断言してもいいく らい変わり映え無さ過ぎなノリは正直そろそろ何とかして欲しい(と思っていてもこの人 の場合大概ならないんだけど)。花滝センパイの思わせ振りな発言から、もしかしたらマ コトが涼葉達と過去に飛ばされる展開も有り得るのか? と期待もしてしまうのですが、 むしろそれくらいの変化を見せてくれた方が、だら〜っとマコトのもてまくりライフを追 ってるよりずっと面白くなると思うのだけれど。何にしてもとりあえず次巻待ち。  既刊感想: 2003/05/24(土)銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!4
(刊行年月 H15.05)★★★☆ [著者:あらいりゅうじ/イラスト:みさくらなんこつ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  連作短編形式が続いて飽きそうな所へこの長編の挿入は絶妙で効果的。内容の良し悪し は別として、たまにこんな感じでやってくれるとあまりダレなくて良いかも。  前巻の感想に書いた「3巻は中継ぎ的なもの」という所がそれなりに的外れではなかっ たようで。脇役としての個性が光るヒデやオキョウが引き続き活躍しているし、前巻にあ った短編の内の一つがこの長編で深く関わってるなんて思いも寄らなかったです。他に過 去の事件が回想として織り交ぜられているのも通して読んでる身としては嬉しい所。  宇宙に出た事でスペオペ風味が強まって、終始ドタバタ騒ぎなコメディも相変わらずで 楽しい。けれども常にルカと三助がお互い近くでくっ付いてるわりには、やっぱりラブコ メの恋愛要素が弱い感じもするんですよね。何故かと考えると、今回に限っては三助がル カと宇宙船での旅を堪能するどころじゃないトラブルが続出でそれどころじゃなかった、 という身も蓋もない結論に達したりしてしまうのですが。  それとも三助に惚れまくってる夕子が地球にお留守番状態でほとんど出番無しだったせ いで、そっち方面がちっとも盛り上がらなかったのか。正直サエコ先生の密航より、夕子 が三助への想いを胸に意地でもどんな手を使ってでも追い掛けて来て欲しかった。と言う よりそうなる展開を予想&大いに期待してたのだけど。  地球人の三助と宇宙人のルカの間に恋愛感情のズレがあったり、どっちもオクテでちっ とも進展しないのは分かるけど、お互い好き合ってるんだからそろそろズレは修正されて もいいんじゃないのかともどかしく感じたりも。この物語を面白く盛り上げてく最も大き な要素ではと思うので、目一杯いちゃついてくれるか逆に夕子やサエコ先生が三助に迫っ てルカの嫉妬心を煽るような展開……ってのはお約束だけどその方が面白くなりそう。  既刊感想: 2003/05/23(金)スクライド・アフター2
(刊行年月 H15.05)★★★☆ [著者:兵頭一歩/イラスト:平井久司/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  もしロストグラウンドに生きるアルター使いの一人一人が、他の誰とも違う自分のみの オリジナルな能力を有してるという設定だとしたら、まずアルター能力のネタに関してだ けはこの先もそう簡単に尽きはしないだろうな……なんてふと思った事。  なにしろ見てる限りじゃ何でもありだから、想像力を広げれば幾らだって面白いアルタ ー能力のアイディアが浮かび溢れてくるような気もするし。自分でこの物語を読んでいて、 「こんなアルター能力があったらどうだろう」と考えるのが、実は何気に楽しい作業なん じゃないだろかと感じたりも。この設定だと、アルター能力ひとつでわりと都合良くどう にでもなってしまえるのはどうだろうかと思う部分もあるのですが、それでも物語を形作 る上ではうまい具合に強力な要素だなと今更ながらに思ってしまいました。  で、今回は前回の続きでカズマの対となる劉鳳が主役の物語……というわりには本土か ら来たサイロウ率いる査察団の方が結構出張っていて、全編に渡って劉鳳が出てるわけじ ゃないので、カズマの時より印象は幾分弱かったかも。  ただ、常に冷静沈着で知略を巡らせながらどこかで自分自身は正しいのかと自問し立ち 止まり振り返りをしてしまう……こういう直情単純まっしぐらなカズマとは正反対な劉鳳 の行動や心情が、深くじっくり描かれているなと感じられたのは良かったです。  劉鳳がシェリスの翼を背負い続ける辺りや、かなみ・水守・あすか・キャミィなどTV シリーズのレギュラーメンバーが登場してる辺りは、カズマの時よりファンサービスが効 いてる感じで嬉しい演出でした。特に水守が役に立ちたいと悩み葛藤して力を欲しようと する想いは実によく描かれていたかなと。次で完結という事で、果たしてカズマと劉鳳が ラストに再会を果たした後でどう話に決着をつけるのか期待したいです。  既刊感想:スクライド 新しき盟約       スクライド・アフター 2003/05/22(木)今日からマのつく自由業!
(刊行年月 H13.10)★★★★ [著者:喬林知/イラスト:松本テマリ/角川書店 角川ビーンズ文庫]→【
bk1】  主人公が現世から魔族と人間が対立する別世界へ飛ばされる異世界転移もの。これがど こにでも転がってるような設定なのは言うまでもなく、著者の喬林さん自身もあとがきで 認識されてますが、多分公衆トイレ(しかも女子トイレ)の便器の中に一般人の男子高校 生が首突っ込んで気が付いたらはいそこはファンタジーな世界でした……てな具合の珍妙 でぶっ飛んだ始まりは他にないんじゃないだろかと思わされました。  言葉にするなら唖然としたり呆然となったり。それはいきなり異世界に召喚されてしま ったらごく当り前な反応なのですが、それらが全てユーリの一人称に乗ってるから気持ち 良いくらい彼の感情が伝わってくる。その辺の描写が読んでいて実に楽しいです。  ユーリの場合、呆然自失というよりは焦りっ放しで次から次へと余計でいらん事まで考 えてしまって頭が一杯一杯という感じでしょうか。ただ最初の頃はずっとそんな風でも、 ほとんど勝手に決められた魔王の座から逃げようと考えたりする事は全然なくて、終いに は揺るぎない正義感(と言葉の捲くし立て)でいつの間にか気に入らない相手まで自分の ペースに巻き込んでしまう。実際にはあんまり強くないし、結構へなちょこな所も見せて るけれど、結局「なるようになれ」の開き直りにも似た心情がユーリの強さなのかも。  キャラは個人的にはヴォルフラムが大好きですね。このヒネクレ具合が堪らなく良い感 じで、頬を叩かれて求婚なんてのに思わずのけぞってしまったのですが、その時のユーリ に向ける感情に可愛いとさえ思ってしまいました。まあヴォルフラムがユーリを意識して 惹かれまくってるのは一目瞭然で、ヒネクレてるから余計に素直じゃない部分が目立って しまいます。ヴォルフラムだけでなく他のキャラ達もそうですが、今後ユーリが彼等との 関係をどう変化させ影響を及ぼしてゆくのか楽しみです。


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