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10/31 『総理大臣のえる! 花嫁がいっぱい』 著者:あすか正太/角川スニーカー文庫
10/30 『総理大臣のえる! サジはなげられた!』 著者:あすか正太/角川スニーカー文庫
10/29 『キディ・グレイド2』 著者:志茂文彦/角川スニーカー文庫
10/28 『改造人間でいこう!』 著者:伊豆平成/角川スニーカー文庫
10/27 『秘密結社でいこう!』 著者:伊豆平成/角川スニーカー文庫
10/26 『EME RED2 DIG DUG SEVEN』 著者:瀧川武司/富士見ファンタジア文庫
10/25 『伝説の勇者の伝説4 大掃除の宴』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
10/24 『風の聖痕4 ―瑠璃色の残影―』 著者:山門敬弘/富士見ファンタジア文庫
10/23 『竜皇の凱歌 アーヴィン英雄伝3』 著者:北沢慶/富士見ファンタジア文庫
10/22 『バッカーノ! 1932 Drug & The Dominos』 著者:成田良悟/電撃文庫
2003/10/31(金)総理大臣のえる! 花嫁がいっぱい
(刊行年月 H15.05)★★★☆
[著者:あすか正太/イラスト:剣康之/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
シリーズ第6巻。前巻短編の一つにあったのえるとシャイニィの健太争奪戦が尾を引い
た形で、シャイニィの祖国アルカンタラでの最終決戦。のえるが総理大臣の座に着いてる
位置から世間に向けて、政治的な内容で大騒動へと発展していたこれまでのパターンとは
ちょっと方向性が異なる今回。とにかく一度は面倒事にきちっと答えを出してしまおう、
という気概がひしひしと伝わってくるような感じで、面倒事とは当然ながら健太の処遇。
しかしながら誰とどれだけ奪い合いみたいなのをやったとしても、途中でどんな意外性
の高いイベントが起こったとしても、最終的にはのえるが勝つ。これはもうこの物語の中
では決定事項であったりお約束事であったり、結末が大体予想出来てしまえるから、ポイ
ントは如何にしてそこへ辿り着くまでの過程を面白く描いてみせてくれるか。
花嫁選びの候補は一応全部で6人、でも実質のえるとシャイニィの一騎打ち。のえる狙
いのイブキや友情の為に仕方なく付き合ってる忍は枠外としても、やっぱり脇役は脇役の
ままで目立てず活躍出来ず。適当に参加してるさくら先生はともかく最も報われないのは
今回だけに限らずほのかだろうなぁ。こういうキャラは何となく健気さから応援したくな
るのですが、あまりにまともな出番が少なくてどうにもならない。初期の頃は弱々しいな
がらも対抗馬だったのに、その役割がすっかりシャイニィに奪われてしまったから、今後
も心の中であたふたするだけで健太とどうにかなるって事はなり難いのかも。万が一突飛
なネタでほのかに焦点が当たれば、それはそれでやって欲しい気もするけれど。
健太の心情には毎度の事ながら「ハッキリしろ!」で、今回は特にコノヤロウと食って
掛かりたい程イライラしてばかり。ただ、最後には迷いのない本音を吐き出してくれたし、
手紙というアイテムの後押しで収まるべき所に収まったし。シャイニィにしても、紆余曲
折を経て健太の事を吹っ切った時点での心の成長が丁寧に描かれていて良かったです。
結局、最初から健太を想う気持ちを抱き続けていたのはのえる。その行為は自分勝手で
過剰に映るかも知れないけれど、根本的な所で“健太の事が好き”という自信は常に変わ
らず揺るがない。当り前の強さを改めて見せ付けられたような気分でした。
既刊感想:彼女がもってる核ボタン
恋する国家権力
乙女の怒りは最終兵器
撃破! 日本消滅計画
サジはなげられた!
2003/10/28(火)総理大臣のえる! サジはなげられた!
(刊行年月 H15.01)★★★
[著者:あすか正太/イラスト:剣康之/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
シリーズ第5巻。3、4巻と2冊にまたがって繰り広げられたのえるの『総理の椅子奪
還戦』後の一休み。短編集のようで変なのが色々と混じってます。10本のエピソードと
は言っても、どうにかこうにか間に合わせてみましたの10本。その内短編としてストー
リーが成立してるのは4本くらいかな? あとはキャラ紹介、ショートショート、著者プ
ロデュースゲーム披露、赤裸々な本書のメイキングなど。正直一番読んでて楽しかったの
が『総理大臣のえる! ができるまで』という時点でかなりどうかと思いましたが。フィ
クションと表記があっても何となく誇張表現多用の実話っぽいとこがありそうで……。ま
あ良くも悪くも楽しく好き勝手やってるのが顕著に表れている内容でしょうかね。
基本的なパターンは、のえるが好き勝手やりたい放題で健太がオモチャにされて振り回
されまくる。これはもうこの物語の基準点なので位置関係はずーっと変化無いような気も
しますが、今の所はそれ自体に面白可笑しさが備わっているので良い感じ。ただ、繰り返
しやられると今度は飽きてしまう可能性も無きにしも非ずなので、馬鹿の一つ覚えになら
ないように飽きさせない何らかの工夫も欲しいし必要かなとも思う。
短編作に関してはどれもそれなりの面白さ。高速道路のは一旦大いに乗っておいて鮮や
かに掌返す所や、木佐先生のサジをなげたい気持ちが切実に伝わって来るどうしようもな
い勉強嫌いな辺りにのえるらしさが存分に発揮されていたし。同性愛受難話では相変わら
ず流れに逆らえない奴だな〜と健太を眺めながら、珍しく弱味を見せていたのえるが意外
と新鮮な感じでした。最後ののえる対シャイニィの過激な健太争奪戦は次巻まで尾を引く
ようで、結局はこうなるだろうと予想はありますが、いずれハッキリさせなければならな
い問題は完全決着で解決するのかどうか。最もダメなのは明らかに何時まで経ってもどっ
ちつかずでのえるに踏み込めないヘタレな健太。手紙の事があるから余計もどかしい。
既刊感想:彼女がもってる核ボタン
恋する国家権力
乙女の怒りは最終兵器
撃破! 日本消滅計画
2003/10/29(水)キディ・グレイド2
(刊行年月 H15.03)★★★☆
[著者:志茂文彦/原作:gimik・GONZO/カバー原画:門之園恵美
/本文イラスト:きむらひでふみ/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
同名アニメの小説版2巻目。実はちゃんとアニメ視聴してたのは今回の第二章までで、
それ以降はどんな展開なのかなという興味もあってか前巻よりも比較的楽しめました。
多分今回もアニメシナリオを忠実になぞってるような展開なので、そう言った意味では
アニメに触れてない人の方が純粋に物語に浸れるのかも知れない。アニメ視聴済みの人は
一度見たものを再度文章で読むような感じになるわけで、文章で物語を思い返せる事以外
ではどうしても未経験者より新鮮味も楽しみも数段落ちてしまうんですよね。
ただ、じゃあこの小説版は未経験者向けなのかと言えばそれもまた微妙な所。エクレー
ルやリュミエールを始めとするESメンバーが所有する特殊能力、それを最大限に駆使し
た戦闘、巡航艦やガードロボットが起動しているイメージ、各組織の状況・繋がり・思惑、
キャラクターの相関関係、などなどその他様々ひっくるめての設定はアニメに触れていた
方が絶対把握し易くて有利。これは今回視聴済みと未視聴のエピソードが両方あったので
ハッキリ掴めましたが、触れていないと想像し難い部分が結構あったりします。結局どち
らで臨んでも一長一短が出てしまうので。忠実移植に分かり易さを肉付けして未経験向け、
あるいは外伝的ストーリーで視聴済み向け、とターゲットを明確にして欲しかったかも。
中身に関しては、エクレールとリュミエールの行動がGOTTのお使い任務じゃなくな
った時点から、面白さが上向き調子で良かったです。特に二人が戦友同然のラミューズ、
ヴィルヴェルヴィント、ドラシュナーク達と相対しなければならなかったシーンが印象に
残ってズシリときました。上記のように中盤以降は知らない展開だったお陰で結構先が気
になってしまう。ラストには「何でこうなったの?」と驚いたので余計に。
既刊感想:1
2003/10/28(火)改造人間でいこう!
(刊行年月 H15.09)★★★☆
[著者:伊豆平成/イラスト:松本規之/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
シリーズ第2巻。我等が悪の秘密結社<UNCLET>は、間竜太郎首領のヨーロッパ修
学旅行に便乗する形で世界進出へ。どうやら前巻で日本征服果たしたらしい……ってのを
序盤で「え、そうだったっけ?」と洩らしてから改めて理解した程で、やけにあっさりと
地味〜に征服してたんだなぁという印象から始まった今回。ただ征服と言うにはちょいと
語弊があるかも知れなくて、正確には“いつでも容易に日本征服可能なアイテムを所持し
ている”だけで、日本人の大部分は征服されてる事を自覚してはいない。
まあ大それた事をやっちまった自覚があるのは竜太郎だけで、<UNCLET>の幹部少
女たちにとっては日本の未来の命運を我が手に握ってるも同然な為、日本国民がどう思っ
ていようと別段気にしてない様子。そして今回も強引かつドタバタ騒動な運び。
敵対する悪の秘密結社も前巻とはまた別なのが登場。一見世界的に力のある組織のよう
で、実は衰退気味な<CORSET>。ライバーとクララの関わりもあってか、前の<CH
OKER>よりは大分マシな頭の使い方で竜太郎を引っ掻き回してくれているけれど、や
っぱりどこか詰めが甘く頭のネジが緩んでる。危機的状況でもサッパリ緊張感出ないのは
多分その辺が原因かとも思うけど、元々シリアス調に持ってゆく気もあまりなさそうな感
じだし、コメディ主体で面白可笑しく描いてくれるのもまたこの物語の良い味。
首領でありながら成り行き任せの引継ぎで、本音は悪の秘密結社も世界征服もやりたく
ないけど幹部少女達の押しに屈してしまう竜太郎は、またもや悪の秘密結社同士の抗争に
楽しく巻き込まれてしまう。けれども『自分が首領だから皆を守らなきゃいけない』一心
で、頭フル回転させて作戦練って少女達を救おうと行動起こした終盤の姿は、ちょっと首
領らしく描かれていて良かったかも。へなちょこ減少、頼もしさ僅かに上昇と言った所。
惜しいなと思ったのはライバーとクララの過去について。どちらも<CORSET>と結
構深い繋がりがあったのに、さらりと簡潔に流されてしまったのは勿体無い気がする。こ
の辺をもっと掘り下げて丁寧に描いて欲しかったかな。でも、正義の味方になっている間
のライバーは普段が普段なだけにもの凄く可愛く見えたのは満足。それで不満は相殺。
既刊感想:秘密結社でいこう!
2003/10/27(月)秘密結社でいこう!
(刊行年月 H14.12)★★★☆
[著者:伊豆平成/イラスト:松本規之/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
資金面で援助し続けてくれたあしながおじさん的存在の後見人ジョン・スミスの死によ
って主人公・間竜太郎に託されたものは、悪の秘密結社<UNCLET>首領の座と忠実に
従う4人の美少女幹部達。この辺りの設定だけで、外れると致命的になりそうなネジがど
こか1、2本捻じ切れてるかぶっ飛んでるかしてるような気がしてならなかったけれど、
実際には想像を遥かに越えておかし過ぎな内容。もの凄く微妙ながら、どちらかと言えば
誉め言葉とまではいかないながらも変なノリが良い方向に出てるかなという感じで。
とりあえず「オマエもっと自己主張して抵抗しろよ」と竜太郎に突っ込み入れたくなっ
た箇所は数知れず。しかし彼の「流され易い」「押しに弱い」「お人好し」な性格を見て
ると、突っ込む以前にダメだこりゃと仕方なさと諦めの方が勝ってしまう。本来なら歯止
めの役割を担わなければいけないのに、ことごとく空回ってるが滑稽で楽しいです。
まあこのイッちゃってる幹部少女達を抑止するのは竜太郎では無理だな、と思わせてく
れる要素も多分にあるわけで。彼女達の荒唐無稽で傍若無人な日本征服計画実行に対して
は、至る所で「ええー?」と言いたくなる程の無茶苦茶加減ながら、図らずしも行動理念
とは全く逆の正義の味方じみた事をやってしまってる姿が見所と言えるのかも。
何の疑問も抱かずあっさりとバイト感覚で<UNCLET>に加担してしまう竜太郎の心
優しきクラスメイト達しても、脅威的な洗脳能力を持っているのにそのあまりの間抜けっ
ぷりに何ら脅威の感じられない<CHOKER>のマイクロマウスにしても、明らかに変で
無理があり過ぎ。ただ、この登場キャラクター達に対して何の説明も理屈も全く通用しな
い、破天荒で強引な展開が面白さに繋がっているのもあるかと思う。大抵どんな理不尽な
事でも結局は“悪の秘密結社ですから”の一言で納得させられてしまったりする。
2003/10/26(日)EME RED2 DIG DUG SEVEN
(刊行年月 H15.10)★★★☆
[著者:瀧川武司/イラスト:尾崎弘宜/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】
連載分に書下ろしを加えた現在編の短編集。『BULE』の合い間か前後か(時間的な
位置付けの記述はないですが)、ともあれ描かれているのは規模の小さい事件だとかEM
E隊員の日常風景だとか。一時休載期間があったにしても、短編の連載分ストックはまだ
去年から結構溜まっている筈だけど収録されてたのは案外少なくて、その分書下ろし短編
が幅を利かせているので、連載既読者にとっても割とお得な内容だったでしょうか。
相変わらずごくごく真面目に任務をこなしているように見えて、大概誰もが自然な流れ
で馬鹿をやらかしているような印象。性格的に難のあり過ぎなアクの強いキャラクター性
を発揮している乱と良子のせいで(お陰で?)、おかしいかまともかで区別すると今回の
紅は後者寄りだったような気もする。これは彼が前線に立つより他部署の応援で誰かのバ
ックアップに回る方が多いからかも知れませんが、主人公のハジけ具合としてはやや大人
しかったかなと。茜は連載の場でも書き下ろしでもコンスタントに見せ場があるので良い
んだけど、蒼の方が出番少なくてちょっと不満〜。何となく彼女を他キャラと絡ませたら
面白くなりそうな予感があるだけに、出演自体を減らしてしまうのは勿体無いかも。
そんな気持ちで真っ先に良かった面白かったと挙げたいのは、やっぱり今回唯一蒼が直
接絡んでいる茜とのミステリホラーもどき。大体「こんな事やらかすんじゃないのかなー」
とオチがあっさり予想出来て実際その通りな展開なのに、何故か印象に残ってしまったエ
ピソード。しかし茜は蒼の呼び方が変わった事で距離が縮まったと嬉しそうにしてたけど、
何か蒼の性格を考えてみるとそんな茜の想いを分かっててわざと苗字で呼びつつ、親近イ
ベントが発生したのを見計らって呼び方を変えたような気がしてならないです。他に書き
下ろしの短編で茜の図書館通いも、不気味さを印象付ける見せ方が凝っていて面白い。
一品料理が次々と出されるような運びは満腹になるまでに至らない微妙さを抱えている
けれど、それ程ワンパターンにならず色々な『味』を摘み食いするように楽しめる作りは
いいなと思う。人材不足でこれだけ頻繁にあれこれ起こると大変だよなぁと眺めながら。
既刊感想:EME BLACK 1
EME BLUE 1、2
EME RED 1
2003/10/25(土)伝説の勇者の伝説4 大掃除の宴
(刊行年月 H15.10)★★★☆
[著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】
長編版のシリアス展開はやっぱりいいなと思う。呪われた『複写眼』のせいでライナの
脳裏に幾度となくフラッシュバックする幼少時代の痛々しい惨劇や、反国王派の貴族達の
反発でいつまで経っても纏まらないローランドの国政に頭を悩ませるシオンの事など。
基本的には呑気な明るさと馬鹿馬鹿しい笑いが多くてあんまりどんより重く沈み込まな
い物語。けれどもライナの場合は過去の惨劇から心底に闇を飼っていたり、シオンはフロ
ワードの計略に乗る事を快く思わなくともローランドを本当の意味で開放する為には闇に
身を染める選択に傾いたり。時折陰鬱な影を抱えた表情をこの二人が見せているシーンな
どは、やっぱり他の部分より数段盛り上がりも増しているような感じで面白いです。
だからと言うべきか、特にそれとは全く逆の方向へ突っ走ってるライナとフェリスの夫
婦漫才が今回はやたらと鼻につきました。まあ楽しい事は楽しいんだけど、話の流れをあ
えて停滞させてまでウンザリするようなボケツッコミを延々とやる事に果たして意義があ
るのか? と考えると「そんなのは短編集の中だけでやっててくれよ」と言いたくなって
しまうわけで。この辺何処かで長編と短編の線引きをしてくれたらという気もする。
今回はライナサイドとシオンサイドを目まぐるしく行ったり来たりな構成。まだお互い
の行動が相手に直接影響を与えるまでには至ってないですが、違う道を歩む二人が一体ど
のタイミングで再び顔を合わせる事になるのか? もしくは交わらないままで進んでゆく
のか? この辺の今後の行方は気になる要素の一つ。
やや不安が過ぎるのはシオンの政策で、他国を相手に大風呂敷広げる前に、もう少し我
慢してローランドの内政を丁寧に描いてくれても良かったんじゃないかなと。作中のシオ
ンの心情だとそんな悠長な事言ってる場合じゃない! となりそうですけど。
ただ、どうやら相対すべきはガスターク帝国と確定したのと、そして満を持して1巻以
来姿が見れなかった“彼女”の滑り込み再登場で、俄然続きが楽しみになって来ました。
既刊感想:伝説の勇者の伝説 1、2、3
とりあえず伝説の勇者の伝説 1、2
2003/10/24(金)風の聖痕4 ―瑠璃色の残影―
(刊行年月 H15.10)★★★☆
[著者:山門敬弘/イラスト:納都花丸/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】
和麻がフヌケていてあんまり動いてくれず、少々アクションシーンが控え目だったよう
な印象。更に綾乃も押されっ放しで炎術師としてのど派手なパフォーマンスも形を潜めて
いたせいか、毎回ベタ過ぎの内容ながら逆にベタを見所とするようなストーリー立てでそ
れなりに高揚感を与えてくれるものの、今回は全体的に見ても盛り上がりで好感触を得ら
れた箇所があんまりなかったかなぁ……とかぼやいてたら続きものでした。今まで1巻完
結だったから今回も単発だと予測してた所で意表を突かれたと言うのか、この展開が次巻
できっちり纏まるのかどうか微妙な所ではありますが(もっと延びそうな気もするので)、
あっさり片付けられてしまうよりはじっくり丁寧に進めてくれたらなと。
と言うのも、これまで引きに引きまくってばかりでなかなか語られずにいた和麻の過去
エピソードが、4巻目にしてようやく物語に絡み始めて来た為。今までの和麻の立ち振る
舞いからは想像出来ない程に、精神を揺さぶられ乱されてしまう翠鈴という少女の存在。
これは1巻から物語の伏線として重要なポイントとして敷かれていたものなので、やっ
ぱりおざなりにはしないで欲しい。ただ現段階で翠鈴について明らかなのはまだまだ少な
く、精々かつて和麻と深い恋仲にあったらしい事と既に他界している事くらい。実際に和
麻と翠鈴が共に過ごした過去の詳細はまるで分かっておらず、その為いくら和麻が翠鈴の
残影に激しく心を乱され動揺させられたとしてもあまり強く響いては来ないのです。
もっとも、和麻の過去との対面にしてもヴェルンハルトとの相対にしても、事の始まり
から顔見せ程度の前哨戦のような趣が強かったので、明確にならない内は手応え弱目なの
も仕方なし。本戦は先へ持ち越しなので大きな波の訪れは次巻に期待。
ちょっとイタタ過ぎなザコキャラ――盗撮ヲタとか必殺技を叫ぶキチガイ野郎とか、典
型的なヤラレ役の言動があまりに痛過ぎで読んでいて何か切なくなりました。まあこれが
味だからとも思うんだけどさすがに参った。それとは対照的に心が潤ったのはベタでベタ
ベタな綾乃の反応。いつも以上に過剰に嫉妬の炎メラメラ燃えていたような気がする。い
やそこが可愛いから存分に燃え上がってくれていいんだけど。でも相手が霧香ならまだし
も故人が相手じゃちと綾乃に分が悪いかな? この辺りもどうもつれるのか楽しみ。
既刊感想:1、2、3
2003/10/23(木)竜皇の凱歌 アーヴィン英雄伝3
(刊行年月 H15.10)★★★★
[著者:北沢慶(原案:安田均)/イラスト:堤利一郎/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】
シリーズとしては3巻目で、ストーリーの流れは前巻からの続き。祖父であり伝説の英
雄アーヴィン・クロイゼルに憧れ、ハッタリと悪運の強さと冴え渡る逃げ足を武器に英雄
を目指す、アーヴィン・クロイゼル・ジュニアことグレイの成り上がり冒険活劇。
1巻でのアーヴィンの物語がまだ全部書き切っていない状態のまま、2巻から主人公が
孫のグレイへバトンタッチしたので、最初この切り替えはどうかなと少々微妙さもありま
した。が、英雄アーヴィンの物語はあくまで序章に過ぎず、グレイの物語こそが本編と解
釈するならこの構成には大いに納得。意図して切り替えたのか、それとも偶然の結果とし
てそうなったのかどうかは分かりませんが、グレイから見て過去となる1巻目のアーヴィ
ンの活躍が、彼の物語の至る所で効果的に影響が表れていて面白いなと思います。
前巻からかなり鮮明になってきたのはリューナについての真相と、幾度も襲撃を掛けて
るジュリアやガリアーノの素性。どちらも大きなキーワードとなっているのが“ハイラン
ダー”という存在なのは明確ながら、リューナの潜在能力が本格的に覚醒したときどうな
るのかはハッキリせず、ガリアーノ率いる集団<ドラゴン・サークル>が何を目論んでリュ
ーナを狙い続けるのかもまだ分からない。ただ、突出してなくても毎回安定した面白さは
提供してくれるし、今後の展開を想定しての明かし方と隠し方のバランスも絶妙。しっか
り興味を引っ張りつつ持ち越した部分をどんな風に解いてくれるのか楽しみ。
この物語で忘れてならない重要な要素はグレイの成長過程。前巻で相当な逃げ腰とへな
ちょこぶりを存分に披露してくれた彼も、己の命を賭して守るべき相手――リューナへの
想いから、めきめきと活躍を見せて比べものにならないくらい頼もしい存在へと成長を遂
げてます。実は剣の腕や召喚の能力などはあんまり変化してないんだけど、持ち前の努力
と根性(と逃げ足)が彼の最大の武器で、こういった彼の成長を見応えあるものに仕上げ
ている辺りがこの物語の持ち味であって特に面白いと言える部分でしょうね。
他種族の混乱に巻き込まれている兄貴を余所に、生き別れ状態の弟ハサエルは自分の望
まぬままにグレイの目指している位置へと駆け上がってしまう。一向に故郷へ帰還出来な
いグレイの動向も気になるけれど、今後ハサエルの立場がどうなるのかも気になる所。
既刊感想:1、2
2003/10/22(水)バッカーノ! 1932 Drug & The Dominos
(刊行年月 H15.10)★★★★☆
[著者:成田良悟/イラスト:エナミカツミ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
シリーズ第4巻。今回の不器用な生き方を楽しむ格好いい奴らの馬鹿騒ぎは、時間的に
前巻直後から始まっていて、1巻目と鈍行編&特急編と両方に密接な繋がりのあるストー
リー展開。ドラッグによる騒動が引き金となりマフィア同士の抗争へ発展し、その中であ
る人が誰かを探しその誰かがまた違う誰かを探すといった目まぐるしい擦れ違いの連鎖を
経て、全てが計算されたように一所に収束してゆく。毎度の事ながら、読んでいてパズル
を組み立てているような感覚を抱かせてくれる構成力はさすがとしか言い様がないです。
あまりシリーズ途中から手を出す事はないかも知れないけれど、これに関しては念を押
して1巻目からじっくり堪能すべき。それは最初の『不死の酒』の影響と鈍行編&特急編
に乗り合わせた乗客達の影響が今回の中身に色濃く表れていて、これまでの美味しい所を
総取りでぎっしりと詰まっているから。掴めていなくてはきっと充分に楽しめない。
シリーズ通して特定の主人公はおらず、多少の差はあれどほぼ登場キャラクターの誰も
がスポットライトを浴びている組み立てなのはこれまでと同様。ただ必ず物語を引っ張る
柱となるキャラの存在もあって、今回のそれは名脇役を演じながら結構目立っていたガン
ドール3兄弟。とりわけ末弟ラックの行動や心理の取り上げ方が大きかったでしょうか。
個人的には渋い活躍を見せる無口なキースさんが格好良過ぎで大好きです。
もうひとつ別の柱は、ガンドール3兄弟の対極に位置するルノラータ・ファミリーのグ
スターヴォ。掃き溜めのような悪役然とした奴が追い詰められた末に見事滑稽に踊ってく
れるからこそ、ガンドール3兄弟や情報屋達の立ち回りも際立つというもの。当然好感な
んか持てないですが、盛り上がりと面白さを提供してくれる無くてはならない存在。
毎回の構成のイメージあとがきに書かれていましたが、1巻が螺旋で1931が並列する線
路、そして今回はドミノの輪。一人目が傾いて二人目影響を与え、それが延々と続いて一
番最後の人が再び一人目と繋がる。情報屋を中心として構築された“連環”が本当に綺麗
に描かれていて見事。そのドミノ倒しを実際に率先して行っているのは例のバカップル。
出番控え目でも相変わらず印象に残る事を仕出かしてくれる奴らだなぁと。
既刊感想:The Rolling Bootlegs
1931 鈍行編 The Grand Punk Railroad
1931 特急編 The Grand Punk Railroad
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