NOVEL REVIEW
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03/10 『タクティカル・ジャッジメント4 ろくでなしのリアクション!』 著者:師走トオル/富士見ミステリー文庫
03/09 『てのひらのエネミー 魔王城起動』 著者:杉原智則/角川スニーカー文庫
03/08 『ネオクーロンB』 著者:鷹見一幸/角川スニーカー文庫
03/06 『流血女神伝 女神の花嫁(後編)』 著者:須賀しのぶ/コバルト文庫
03/05 『ハーモナイザー・エリオン 大志を抱いた魔法使い』 著者:吉村夜/富士見ファンタジア文庫
03/04 『ソード・ワールド短編集 踊れ!へっぽこ大祭典』 著者:清松みゆき・秋田みやび 他/富士見ファンタジア文庫
03/03 『天華無敵!2』 著者:ひびき遊/富士見ファンタジア文庫
03/02 『ウロボロス・サイクロン1 うろうろするな冒険者!』 著者:友野詳/富士見ファンタジア文庫


2004/03/10(水)タクティカル・ジャッジメント4 ろくでなしのリアクション!

(刊行年月 H16.03)★★★★ [著者:師走トオル/イラスト:緋呂河とも/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  毎度御馴染み法廷バトルもさすがに4巻目となると新鮮味は薄く、ある程度予想はして ましたが下手をするとストーリーにさえマンネリ感を抱いてしまいかねないこの踏ん張り 所で、果たしてどんな工夫を盛り込んで読ませてくれるか? 基本的には各巻とも同じ法 廷舌戦の流れであっても、必ず作中のどこかに前巻とは違った楽しさ面白さが得られるよ うな意欲の跡がくっきり見えていたので今度もその辺りに期待を寄せていました。  今回は当然ながら、善行には悪いけど69連勝の実績を誇る東ヶ崎検事の活躍に最も興 味を引かれていたのですが、印象としては正直それ程でもなかったかなぁ。これは善行の 一人称視点が影響しているせいなのか、善行の弁護士にあるまじき素行や心理などは相変 わらず非常によく映えている反面、それ以外で少々薄味になってしまう欠点がそのまま東 ヶ崎検事の描写の弱さに繋がってしまっていたような気も。むしろ善行におちょくられ失 態を曝け出しまくっていた堀内検事の方が印象深さの点で言うなら上でしょうか。  とは言ってもこの見事なまでの善行のへこまされっぷりは、主人公であってもこんな性 格なもんで、これまで滅多に見られなかっただけに実に新鮮かつ痛快。崖っぷちまで追い 詰めたという意味では「東ヶ崎検事よくやってくれた!」と。まあ結局いつもの様に最後 はひっくり返されちゃうわけですが。あんまり起伏の激しさを感じられなかった展開も、 逆転に次ぐ逆転の終盤戦は加速度的な盛り上がりを見せてくれて充分に堪能しました。  何にしてもこのシリーズは常に『テンポの良さ』と『読み易さ』が丁寧に敷かれていて、 個人的にはそれを意識しているのが窺えるだけでも評価に値すると思っています。あとは 何時も気にしてる事で、法廷対決で飽きさせない為の“何か”が含まれているかどうか。  今回の内容で悪徳商法を題材にして事件へ発展させている辺り、現実で他人事じゃなく 色々考えさせられる問題なので結構心引かれました。東ヶ崎検事の登場も大きかったけれ ど、この題材に関しても“何か”としての感触が掴めたので良かったですね。  これまでと同様に1巻完結のストーリーで締めかと思いきや、最後はちょっとだけ予想 外の幕引き。これは少なくとも確実に次巻もあると言われたようなもので、次は法廷離れ て温泉旅行? ラストの善行の台詞が誰を指しているのかも気になる所。  既刊感想: 2004/03/09(火)てのひらのエネミー 魔王城起動
(刊行年月 H16.03)★★★☆ [著者:杉原智則/イラスト:桐原いづみ/角川書店 角川スニーカー文庫]→【
bk1】  身分違いでクラス中から蔑まれる立場に甘んじている主人公が、科学技術が発達した現 代に“時代遅れの魔王”として、偶然の事故によって五百年前に滅びた魔王の後継者とな ってしまってさあどうしよう――な物語。これは面白さが徐々に加速して盛り上がってゆ くんじゃないかな? という手応えを結構な量で得られたのですが、あくまで面白くなる の前に『今後』の一言付きで。最初から目に見えてシリーズ展開を見越した物語ってのは 1巻目が序章的役割が多いので、その辺りは仕方ないかと軽く流して続きを待つのみ。  この物語、惹き込まれるか否かは主人公であるアウルを好意的に汲み取れるか、それと も嫌悪感を抱いてしまうかで大幅に違ってくるような気がします。ハッキリ言ってしまう とこの少年、端から一挙手一投足を眺めている分にはかなりイライラさせられる。本質は 話好きで輪の中に混ざりたいと思っているのに消極的、反論せずに蔑まれっ放し、ある程 度までで留まって結局後退りしてしまう交友関係。これらに対して、もっとシャキっとし ろよ! 言いたい事あるならぶちまけちまえ! たまには積極的に踏み込む姿勢くらい見 せてみろ! とまあ主にダイアンとかルークとの絡みで何度叫びたくなった事か。  でも、アウルのキャラクターが好きか嫌いかと問われたら、私はこんなへなちょこな奴 が大好きです。叫びたくなるのも叱咤激励の意味合いが強いのです。「僕が助けたんだ!」 とどれだけ声を大にして言いたくても言えず、誰にも事実を告げられないままの秘密を抱 えて魔王を演じ続けなければならない重荷を望まずに背負ってしまったアウル。今後更な るやるせなさやどうしようもない憤りなどが心に突き刺さるのかも知れないけれど、そん な状況にあるからこそ、もがきながらでも彼の中で何かが変わってゆく姿を見てみたい。  情勢は魔王対魔王対パリス駐屯軍で裏で糸引いてそうなのが教会連合っぽく。まだスト ーリーも絡むべきキャラクター達も立ち上がったばかりなので、今後この複雑な相関図が 盛り上がりに貢献出来るようアウル達を活かしながら描いて行って欲しいです。 2004/03/08(月)ネオクーロンB
(刊行年月 H16.03)★★★☆ [著者:鷹見一幸/イラスト:PEACH-PIT/角川書店 角川スニーカー文庫]→【
bk1】  前巻から十年後の夏木と恵美を描いたエピソード。作中の時間的には過去からA→Bと なっているけれど、執筆の順序に関しては雑誌で約1年間(隔月だから6回くらい)連載 やってたBの方が先に来るのかな? と思いながらAとBの繋がりに整合性がしっかり取 れているかどうか気になってたのですが、大幅加筆修正が効いていたのか致命的な破綻や 違和感は特になく、随所に過去と現在とで変わった所あるいは全く変わらない所を比較し ながらの夏木と恵美の関係はなかなか良い感じで描かれているなと思いました。  最初の印象では5人の子猫がBのメインキャラクターかと思ってたら、この『ネオクー ロン』って物語はやっぱり何処まで行っても夏木と恵美が主役。夏木は意欲旺盛だったの が事なかれ主義の昼行灯と化してたし恵美なんか子猫が女豹に成長しちゃってるしで、こ ういう描写から過去の姿を懐かしみつつ思い返した時に前巻での2人っきりの出来事が効 果的に映る。まあ結局どっちも根底の部分は全然変わってないという感じでしたけど。  話の流れは恵美が作中で言っていた通り、置かれている状況はまるで違うけれどもシチ ュエーションは全く一緒。『敵多数』対『味方極少数』の構図、生き残る為に武器を取り、 攻めるのではなく守り耐える為の戦い、ハンデを補う術として用意された作戦の数々、生 存勝利するまでのタイムリミット、など。面白くなくはないんだけれど、どうも似たり寄 ったりなパターンに躓いてしまいイマイチストーリー展開に乗り切れなかったです。  今回は更に乗れなかった理由があって、これは個人的にキャラクターの感情の奥の底ま でじっくり描いて欲しい気持ちが強いせいかも知れませんが、何となくガンアクション一 辺倒な感触で(それもそれで悪くないんだけど)、夏木と恵美の触れ合いを描く部分が前 巻より数段落ちてると感じられた点。表層では繋がってるのがよく分かるのだけれど「も っともっと踏み込んでよ!」という心の叫び増量で少々しょんぼり気分でした。  5人の子猫はキャラの描き分けもしっかり成されていた名脇役、でもそれ以上にはなれ なくてインパクトもごく普通でちょっと残念。これは彼女達に焦点を当てた番外編みたい なものをやってくれると、一層個性が際立つんじゃないかなと。前巻のあとがきによると あとCとかEとかあるんだったかな? AとBの間の夏木と恵美のエピソードとか興味あ りで読んでみたいので、5人の子猫の話も含めて今後短編などでやってくれたらなと。  既刊感想: 2004/03/06(土)流血女神伝 女神の花嫁(後編)
(刊行年月 H16.03)★★★★☆ [著者:須賀しのぶ/イラスト:船戸明里/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  それは流血女神が指し示す運命に翻弄されていたのかどうか……途中までの互いに強く 惹かれ合う姿からは、既に未来で決定付けられている事実があったとしてもラクリゼとサ ルベーンが引き裂かれてしまうなどとは信じ難い程でした。が、やはり前巻のどうしよう もない大きな悲劇による引鉄はうまく噛み合っていた歯車を致命的に狂わせ、結局最後ま でもがき苦しみながらも元に戻ろうとする機会さえ奪ってしまった。  どんなに望もうと自らの子供を取るという選択肢に向かう事は叶わず、女神と契約せざ るを得ない状況を受け入れるしかなかったラクリゼと、彼女を通して感じられる女神への 不安・焦燥・嫉妬・羨望・に染まってゆくサルベーンと。こういう言い方するのは変かも 知れないけれど、一旦固く結ばれた2人の心は凄く自然な流れで綺麗に解けて行くように も見えました。そうなるべくしてなったと言うのか。最後に残ったものがサルベーンはよ り一層強い女神への焦がれと闇に染まり尽くした心、ラクリゼはただただ裏切られた事に 対する憎悪の炎ばかり、という紛れもない現実はあまりにやるせなくて痛い……。  後半部分のヨギナでの激しい死闘。ギウタ滅亡とホルセーゼ傭兵団の最期という背景か ら、これまで本編で視界を遮り見えなくしていた要素が一気に取り払われ、様々なものが 見渡せるようになりました。ラクリゼとサルベーンの決裂が決定的になった詳細は勿論、 ラクリゼがカリエを助ける意味も理由も、今まで何となくだったのが鮮明になるほどなぁ という感じで。あとがきでも触れられていましたが、おそらく今本編を再読したら初読の 時とかなり印象が違ってくるだろうなと(主にカリエとラクリゼとサルベーンの関係は)。  別に本編を再読させる為に外伝を仕向けたわけじゃないでしょうけど、もしかしたら意 図として含まれていたかも。しかしたとえそうでなくても、本編再読したいと猛烈に気持 ちが揺れ動くように誘導させるという意味では、この外伝の挿入は本当に絶妙なタイミン グだったと思います。それも中身の充実した面白さがあってこそなのは言うまでもなく。  印象に残ったと言えば、結果的にラクリゼを死から救う形となったアデルカ。なんかも う辛過ぎですよ本当に。最期まで純粋に心の底から誰よりもラクリゼの事を想った彼こそ、 終始暗鬱とした雰囲気の中で最も明るく輝きながら生き続けた存在と感じました。  そういや外伝5巻分が挟まれたので、幼少の姿ながら久々にカリエとエドを見たら何か 懐かしくて。特にエドは砂の覇王編後半で悲しいくらい出番無かったから余計に。今度外 伝でエドとアリシアのその後を追って欲しいなぁという希望もあったりしますが、当面は 再び本編に戻っての『ザカール編』に大いに期待。本編復習しながら待っております。  既刊感想:流血女神伝 帝国の娘 前編後編             砂の覇王              女神の花嫁 前編中編       天気晴朗なれど波高し。 2004/03/05(金)ハーモナイザー・エリオン 大志を抱いた魔法使い
(刊行年月 H16.02)★★★★ [著者:吉村夜/イラスト:ことぶきつかさ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  シリーズ最終巻。長期的な展開を見据えての印象はなかったけれど、前巻読了した時に 次で終わりとはこれっぽっちも予想してなかったので、もう少しだけ(5、6巻くらい) 続くものと思ってました。繋げようと思えば繋げられるし、まだエリオンの野望は終わっ てないと言えば次があっても全然違和感なく持って行けそうだし、何よりこの物語が“凄 く面白い”と感じられているまさに絶頂期だったので、読み手の気持ちとしてこれで見納 めなのはちょっと残念だなぁというのが強く居座ってしまったんですよね。  ただ、このエリオンの結末を結末としないで続けた場合、今後何処まで巻数を重ねて行 ったら終わりに辿り着くのかと考えて、あまりに先が遠い為に目眩を起こしそうになった りもしたので短期決着のこの分量で丁度良かったのかも知れないです。何気に”凄く面白 い”と思えている時点で終わりを告げられた事に対しても幸いと喜ぶべきなのかな。  まだ続くかと思ってたらこれが最後で、国家レベルに膨れ上がりそうな物語の奥行きを 感じられつつあったのが他国の描写は状況説明までに留まっていて、揺るぎない敵対関係 まで一時休戦および共闘関係へと覆ってしまう。事前に「こんな風に進むんじゃないだろ うか?」と想像してたものが次から次へとことごとく外されてゆく手応え、してやられた 気分一杯なこの後味の心地良さはどうか。予想を裏切る展開はほぼ全てが好転へと繋がり、 貧弱な想像を軽々と越えて描き切ってくれた物語は最後の最後まで面白かったです。  エリオンとゼロニアは単純に敵同士と割り切れる関係にはない、と前々からほのめかす 描写も思い返せば確かにあったような。こういう決着のつけ方は相当に予想外で、しかし 一方では最も調和術師エリオンらしい収め方だと激しく納得させられてしまいました。  主人公が「本当に同一人物か?」と疑いたくなるくらいに、最初と最後でこれだけ印象 が違って見えるのも素直に見事だなと。面白い奴ではあるけれど、露骨に金に意地汚い面 から決して同調も同情も出来なかった初期の頃とは見違えるくらい、言動ひとつひとつ取 っても見惚れる程格好良い男に成長しちゃってます。でも、根底の部分でエリオンの金銭 への執着心や意識ってのは、最初から最後まで何一つ変わってはいなかったんじゃないの かな? 最後に大それた野望を掲げたエリオンを見てそんな気がしました。  エリオンの人生を賭けた大博打、そんな事出来るわけがないと普通なら思ってしまいそ うなのに、ごく近い将来あっさりと成し遂げてしまうんじゃないかという期待をついつい 抱いてしまう。残念ながらその第一歩を踏み出した所でこの物語は終わっている為、本当 の結末は分からない。なので、せめて想像しながら読後の余韻に浸る事とします。  既刊感想:借金だらけの魔法使い       ツキをつかんだ?魔法使い       やるときゃやるぜ!魔法使い 2004/03/04(木)ソード・ワールド短編集 踊れ!へっぽこ大祭典
(刊行年月 H16.02)★★★★ [編者:安田均/著者:清松みゆき・柘植めぐみ・北沢慶・篠谷志乃・秋田みやび          /イラスト:浜田よしかづ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1・10%の偽情報――バスの遍歴/清松みゆき  盗賊の経歴を持つ吟遊詩人が如何にして芸術家に目覚めたか? の辺りをつついたバス の過去にまつわる物語。盗賊時代の所業を思い起こさせ、芸術家へと転身して悲劇ばかり を歌っていた頃から現在のパーティでハッピーエンドを歌いたいという想いの移り変わり。 バスの人柄同様に目立ちたがりではない渋さが光り際立っている一品。なんかこう癖の強 いパーティの中で一歩身を引いた状態で皆を見守っているような雰囲気が良い感じ。 ・恋人はさんざん苦労す――エキューの事情/柘植めぐみ  冒頭でスられてた奴、誰かと思ったらヒースかよ! それでも受け答えに抜け目ない辺 りは彼らしい。で、メインは長耳(エルフ)大好きエキューの人助け依頼遂行記。少年趣 味の富豪って……確かにエキューの容姿が最も適任か。オズとドビィがエキューとそうい う関係だったのは全く予想外で驚いた。ドビィがイリーナ(の大剣を愛でる心)にすかさ ず詰め寄る→オズの怒り炸裂で一方的な夫婦喧嘩の流れは分かり易い結末。 ・ファリス様がみてる!?――ヒースの思い出/北沢慶  ファリス信者という意外な事実発覚から遡り、がきんちょ時代のヒースの初恋のような そうでないようなものとか魔術師の師匠の冤罪に絡んだ事件とか。でっかい態度はあんま り変わってないけど、割といい加減な今と比べると昔の方がやる気と正義感に溢れていた ような気も。淡い思い出は今でも綺麗に心に映っていただろうに、最後のオチは実にお約 束ながら哀れな奴。一緒に頑張ってた重装備のちびっこイリーナも可愛くて◎。 ・シャーマン・イン・ザ・ダーク――マウナの真実/篠谷志乃  エキューの押せ押せモードに躊躇いつつも意識したり偶然出会ったクラウスに心揺れた りしてるので、この慢性貧乏性ハーフエルフ娘に珍しく色気のある展開が? と期待して たらやっぱりこんな色気のない展開だった。でもマウナがバーティーに対して強く『家族』 を感じられているシーンは非常にいいなと思いました。まあ結局気持ちはクラウス寄りみ たいなので、家族と断定されてしまったエキューは不憫と言うしかないですが。 ・友という名のもとに――イリーナの涙/秋田みやび  普段のように大剣で一直線に突っ込む自己主張はあまりせず、かけがえのない友の本心 に向けて自らも本心で叫び、過去と現在が交錯するイリーナのエピソード。馬鹿騒ぎが基 本みたいないつものノリとは一線を画すシリアス重視で、アネットの心の弱さ脆さと、そ れを纏めて抱えようとするイリーナの心の強さとが相まった、2人の固い絆がストレート に響いて来ました。特にイリーナ好きなので確実に贔屓入ってるでしょうが、個人的には 甲乙つけ難い今回の中でこの短編が一番印象に残りました。  全般的に依頼を受けての冒険ではなく、その合い間合い間に起こっている些細な――で も当人達にとっては大きくて印象に残りそうな出来事を描いたもので、だからこそか「ヘ ッポコーズ」のキャラクター達が一層味わい深く楽しく面白く感じられて満足でした。た だ、所々で未読のリプレイ話が絡んでいたから早くそっちも読まなきゃいかんなと。  関連感想:集え!へっぽこ冒険者たち 2004/03/03(水)天華無敵!2
(刊行年月 H16.02)★★★☆ [著者:ひびき遊/イラスト:桐原いづみ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  科学文明が廃れた後に精霊達の恩恵を受けるようになった世界で、廃れ果てた筈の技術 『電子メール』を如何に使いこなして見せてくれるのか? ここが前巻“画期的”だと推 されているような気がしたので期待してはみたものの、ウリとしている割にはそんなにで もなくて、それは今回も多分ほぼ一緒。電子メールの上手な使い方と言っても「手紙のや り取り以外に何かあるのかよ」と返されてしまいそうですが、その辺をぐうの音も出ない ようなアイディア捻って盛り込み突き付けてくれたら諸手を上げて降参だったのに。  今回の場合は突然の割り込みとかあったので一時「おおっ!?」とか思わされましたが、 基本的には天華と白華のコミュニケーションツール。実際それ以外の何物でもなくて、で も離れた2人の絆に触れるのにメール以上の効力を発揮するものもなくて、別段ストーリ ーに大きな変化をもたらす程面白くなるような使い方はしてないけれど、だからと言って 不要と切り捨ててしまいたいのとはちょっと違う。あくまで地味に有用性をアピールして るってとこでしょうか。それでも今回は謎メールが発端で物語の広がりが描かれていたし (それにあっさりほいほい乗ってしまう天華の思考もどうかと思うが)、白華の助言もメ ールに乗せてしっかり天華に伝っていた事だし、ごく普通に天華と白華の気持ちを確かめ 合う為の小道具的な要素として盛り込まれていればそれでいいんじゃないかなと。  遺跡探求者の天華を中心に置きながら、やってる事は前巻とあんまり変わり映えのしな い手応えだったので印象はちょいと下降気味。それにしても天華と白華のオヤジさんは何 者だ? というのも同様で驚かされなかったオチも予想通りだったし。まあタイトル通り 天華が主人公の物語なのは分かっていても、やっぱり片割れの白華にもお飾りだけじゃな い見せ場を用意してあげてよ! と懇願したくなりそうな辺りも一緒だったので。  しかし鋼隊のズッコケ3人組(特に見せ場増量だったシエン)は、予想以上に印象深く 立ち回ってくれて良かったなと思いました。押しが足りないせいで不運不幸ばかりが付き 纏うアルバルト君も、エレベーター内では天華と結構いいムードだったので幼馴染みの役 得はあったのでは? 今の所天華にその気は全くなさそうだけれど、お互い安心して身体 を預けられる関係のようなので、希望は捨てるな応援してるぞアルバルト(この2人のシ ーン、口絵見開きカラーイラストの天華の微笑が凄く素敵で印象に残りました)。  次はG君中心に加えて白華も頑張るそうなので、まだまだ成長を期待しつつ楽しみに。  既刊感想: 2004/03/02(火)ウロボロス・サイクロン1 うろうろするな冒険者!
(刊行年月 H16.02)★★☆ [著者:友野詳/イラスト:石田ヒロユキ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  何となく、かつて角川スニーカーでやってた昔懐かしの『ファイブリア・シリーズ』を 彷彿とさせるような、キャラクター達によるキャラクター達の為のドタバタコメディ。  出て来るのはダークエルフにエルフに草原遊民(かな?)グラスウォーカーにドワーフ にドラゴンに、とキャラクターからストーリーから世界観から設定の何から何まで王道一 直線なファンタジー。しかし実績のある作家さんだからこそ、古臭くなりそうな要素だっ て懐かしくも面白く料理してくれるかなと期待を寄せてたのですが、これはちょっと古臭 いだとか懐かしいだとか感じる以前の問題じゃないだろうかと思ってしまった……。  物語がキャラクター描写主体のコメディ重視だと比較的楽に乗せられ易い筈なんだけれ ど、読んでいてちっとも同調も感情移入するだけの隙も与えられず、勝手に馬鹿騒ぎして るキャラクター達に置いてけぼり喰らっているような気分でした。一言で断ずるなら面白 くなかったです。で、読了してから思ったのは「ああこれって自身の考えたキャラクター を好きなように気ままに描く時の作業は確かにノリノリになれて楽しいだろうなぁ、でも 読んでる側はそれに付き合わされても全然楽しくないんだよなぁ」という事。  誰も彼もが全編に渡って理解不能で意味不明な言動ばかり、ストーリー展開もどこに主 軸が置かれてるのかサッパリ掴めず終いで、その癖伏線ばかりはやたらめったらベタベタ 張りまくってるのでそれに引っ掛かり続きで惹き込まれないし。どれだけ甘く眺めても良 かったと言える部分が殆ど探し出せないのではどうしようもない。こういうのも珍しいで すけど、せめてこのごちゃっと書き散らしたみたいなキャラクター描写の制御くらいはし っかりして欲しいもんです。随分先までシリーズ展開を見越しているらしい散りばめられ た伏線が今後活きて来れば或いは……と一縷の期待はあれども現状ではかなり微妙。


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