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06/10 『AHEADシリーズ 終わりのクロニクル2<下>』 著者:川上稔/電撃文庫
06/09 『GOSICKII ―ゴシック・その罪は名もなき―』 著者:桜庭一樹/富士見ミステリー文庫
06/06 『イレギュラーズ・パラダイス2 青い王女のエスケープホリデー』 著者:上田志岐/富士見ミステリー文庫
06/05 『がらくたのフロンティア2』 著者:師走トオル/富士見ミステリー文庫
06/04 『さよならトロイメライ2 かんむり座の約束』 著者:壱乗寺かるた/富士見ミステリー文庫
06/03 『平井骸惚此中ニ有リ 其貳』 著者:田代裕彦/富士見ミステリー文庫
06/02 『黒と白のデュエット Op.2』 著者:岡村流生/富士見ミステリー文庫
06/01 『リリカルレストラン あした天使の翼をかりて……』 著者:大倉らいた/富士見ミステリー文庫
2004/06/10(木)AHEADシリーズ 終わりのクロニクル2<下>
(刊行年月 2003.11)★★★★
[著者:川上稔/イラスト:さとやす/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
概念空間での戦闘描写。1st−Gの時は読んでいてあれだけ頭が痛かったのに、この
2nd−Gは驚く程あっさりすんなり受け入れる事が出来た。それが素直に面白さに加点
されるかと言えばまたちょっと違うのだけれど、理解し易いのは良い事ですねと切実に。
難易度の差は1st『言葉が力に』と2nd『名が力に』との性質の違いでしょうけど、
2ndの場合は“その名を知るだけで力を理解出来る”というストレートな単純明快さが
あるから、あまり回りくどくもややこしくもない。それでいて佐山みたいに概念について
変則的な考え方をする奴もいるから、手に取り易い感覚がありながら奥深さも充分。
今回は理解し難くて引っ掛かる箇所が少なかったからか、極厚な頁数の割にはそれをあ
まり感じさせないスムーズな手応えで楽しめたというわけで。事前交渉から始まるこの後
半戦は、徐々に物語を盛り上げてゆく上手さも感じられて抜群の手応えでした。
全竜交渉部隊サイドと2nd−Gサイド――互いに相手を凌駕する方策を模索し、思考
を練り重ね、己の名に賭けて全力の主張を携えてぶつかり合う。本来は気に留めなきゃな
らない細かな疑問点はこの際脇にどけておいて、大雑把でもこの流れに乗り切って楽しめ
たもの勝ちですよこれは。月読と風見、熱田と佐山、鹿島と佐山の語らいを経て、八叉の
名に挑み決着をつけるに至るまでの終盤は、非常に熱い見せ場の連続で面白かった。
2nd−Gの名が力となる概念空間にて、結果的に最もその効力を発揮していたのは新
庄・運&切だったんじゃないかな? 佐山に対する嘘を告白した事によって、新庄は完全
ではないにしろ重い足枷からは大分解放されたと見ていいのかも。もっとも、性質が解放
されただけで根本的な新庄の本質ってのは、未だ謎に包まれている部分もあるけれど。
佐山の変態染みたエロさは今回も健在(というかいい加減にしとけよな〜)。新庄は嘘
を明かしたせいで、今後更に佐山の奇特な行為に悩まされる事になりそうな予感が……。
あとは2nd−Gの纏め。この物語はやはり最初から最後まで、鹿島と奈津さんの為の
ものだったと解釈するのが理想でしょうか。悩みとか葛藤とかが他の奴等の数段上を行く
際立ち具合だったのが何よりの証明。ラストシーンの描写は心に深く染み入りました。
既刊感想:1<上><下>、2<上>
2004/06/09(水)GOSICKII ―ゴシック・その罪は名もなき―
(刊行年月 H16.05)★★★☆
[著者:桜庭一樹/イラスト:武田日向/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
もしミステリー部分を軽く流してるかそれとも最初から取っ払ってるか……ともかくそ
れ以外の箇所をメインに置いて描いているならば、ミステリー文庫というレーベルの枠で
出すには激しく方向性が間違っていても、ミステリーに期待しないで他の要素に期待を寄
せればいいだけの事。でも、この物語はメインと成り得そうなヴィクトリカと一弥の絡み
と同等以上になかなか濃いミステリーの色で勝負を掛けているので、そこに甘さが見えた
りすると、どうしても期待を寄せていた分だけ落胆も大きくなってしまう。
と、結構頁数が多かった割に肝心なシーンで描写の物足りなさを感じてしまい、トリッ
クに納得出来ない所が幾つかあったりでちょっと惜しい。皿消失と殺人事件はおまけか付
録で済ませてもいいんだけど、ずっとヴィクトリカが追っていた最も重要な過去の事件だ
けはさすがに素通り出来なくて。せめてシオドアの室内の色々をもっと細部まで描いてく
れていたら、位置関係や物のサイズよっては納得のゆくトリックに仕上がっていたかも知
れない。そこら辺がどうにも曖昧だから仕掛けも霞んで納得がいかなかったのかなと。
ただ、ミステリーとしての不満点を補って余りある良さっていうのが、ヴィクトリカと
一弥の掛け合い触れ合いに充分含まれているのも確か。今回も終始ヴィクトリカ上位で、
その突飛な言動の数々に振り回されっ放しな一弥。でも端から眺めてるとじゃれ合ってい
る風にしか見えない。特に重要なシーンでしっかり2人の心が繋がっているのを見せ付け
られると余計に。アブリルには気の毒だけど、今の所この2人の間に介入する余地はない
ですよ。今後彼女に目立った活躍があるなら巻き返しに期待してみたいとこですが。
今回良い意味で唸らされた大きな一点は、ヴィクトリカが占いで聞いた事。途中を読ん
でたその時の気持ちはまんま一弥と一緒だったので(あとぎゅっと手を握って涙ぐむヴィ
クトリカの挿絵が凄く可愛かったのが印象に残っているのと)、まさかそういう仕掛けが
施されているとは考えもせず。してやられた気分一杯の心地良さでおみそれしました。
既刊感想:I
2004/06/06(日)イレギュラーズ・パラダイス2 青い王女のエスケープホリデー
(刊行年月 H16.05)★★★☆
[著者:上田志岐/イラスト:榎宮祐/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
潔く中途半端なミステリー要素を外した効果でどこか吹っ切れたような印象か。決して
悪くない手応えなんだけど、「面白い!」と口から出るにはもう一押し決め手に欠ける無
難な出来。何でかと言うならば、本来レクト館長やヒャッカ達が最優先でやらなければな
らない会員を1000人集めるという場所に、しっかり意志が向かっていないから。
レクトの秘密、赤い童話『DDD』の制御解除方法、リーフの十八の破片の行方、ベト
ノワール図書館との確執、テレウスとの因縁、そして人間への渇望を抱きつつあるヒャッ
カの事。他にもざっとこれだけの的が用意されていて、しかし狙って射るべき的は未だ定
まっていない。決め手がないのはつまりそういう事で、どれもある程度の描写をキチンと
押さえてはいるんだけれど、突出したものがないから結局は大人しく纏まってしまう。
他を切り捨ててでもどれかを重点的に捉えて欲しい、となるとやっぱり期待して望むの
は“ケリポット図書館存続を賭けた会員集め”に因んだエピソードなんですよね。それな
のに今回は結果的に会員増量に繋がっただけで、最初は別にレクトもヒャッカも会員増や
すのを意図した行動ではなかった所に不満や物足りなさを感じてしまったという事。
今回のゲストキャラ・ハミルの性格は、なかなか好感触でよく描けていたと思う。それ
だけに彼女と過去に深く絡む、九年前に起こったグーデリア大火のインパクトが弱いのは
惜しい。イマイチ規模の大きさと大火によて残された傷痕がピンと来なくて。どれ程の損
害だったかを丁寧に突き詰めていれば、終盤の盛り上がりも違ってたかも知れない。
ハミルについてはレクトとの曖昧な過去にまつわる関係も、ヒャッカをやきもきさせつ
つ友情を育んでゆくのも良かった。それでも明かされていない謎が多いせいか、今回もま
だ次への繋ぎかもしくは助走段階の通過点に過ぎない微妙な感触。なのでそろっと決め手
を絞って大きく動いてくれたらなと。ただ、レクトが大好きなのがバレバレなのに、いち
いち誤魔化したり否定したりな仕種のヒャッカは変わらず可愛いので今後もその方向で。
既刊感想:1
2004/06/05(土)がらくたのフロンティア2
(刊行年月 H16.05)★★★☆
[著者:師走トオル/イラスト:藤原々々/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
謎があればミステリーと言うなら、この物語は歴としたミステリーなのか? なんて強
引に持って行こうとしても雰囲気は紛れもなくファンタジーなので、ミステリー文庫で刊
行してるのに対してやっぱり納得出来ない所があるというか……あーもういい! 前巻か
らこの事をぐだぐだと引き摺りっ放しだし、そういう型にはめた見方で一々拘らなければ
多分それなりの感触で楽しめる部分もあるだろう、と前向きにスッパリ思考を切り替え。
単純に『異形の敵』を狩る賞金稼ぎ達の活躍を描いたストーリーとして眺めた場合、今
回はアヴィン&エリザと臨時パーティ組んだディックとノイマンとの共闘態勢の部分に、
結構面白く読める要素が詰まっていた。ただ、アヴィンに色々語ってたノイマンはともか
く、ディックはクセの強さに魅力を感じたのでもっと詳細な部分まで描いて欲しかった。
ディックは出番が今回限りっぽいくて残念ですが、ノイマンの方はどうやらレギュラー
追加が確定したようで。彼についても打たれ強さの事とか家族関係とかまだ掘り下げる点
は残されているから、アヴィン達との絡みも含めてどう関わってゆくのか気になる所。
で、この物語が抱えてる大問題。前巻から引き続き謎を盛り込んだ内容からミステリー
として受け入れるのも構わない、けれども2巻目終わって何一つ謎を解き明かす気が感じ
られない展開はさすがに拙いでしょ? かと思ったら敵さんがやたらとべらべら説明的に
喋ってる癖に肝心な事は結局全然語ってくれなかったり、アヴィンが読んでる本から抜粋
した世界背景も、無味乾燥な設定資料の説明調で済まされているのに躓きを覚えたり。
せめてクーナの秘密か『深遠なる忘却』の正体の断片だけでも、ある程度読んでいるこ
ちら側に提示してくれないと楽しみたくても楽しめない……となるわけで。もう次辺りで
いい加減紐解かれ始めてくれないと、キャラの掛け合いだけで読み続けるには厳しい。
既刊感想:1
2004/06/04(金)さよならトロイメライ2 かんむり座の約束
(刊行年月 H16.05)★★★☆
[著者:壱乗寺かるた/イラスト:日吉丸晃/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
事件発生から捜査&推理過程を経て謎解きに至るまで、全体的に期待値よりも少々低く
て前巻みたいなキレの良さが感じられなくて残念。盛り立てるべきキャラクター描写の弱
さは否めず、それなのに事件解決までの道程を焦り気味に急ぎ描いているような印象だっ
た為、そちらで楽しめそうな感触を補う事も出来ず。更には今回の要である過去と現在の
交錯も、主要キャラの書き込みが不足しているせいで噛み合いがあまり良くない。
不満たらたらなのは期待の裏返しという事にしておいて、それでも今回は相変わらずな
冬麻の馬鹿ノリ一人称テキスト以外で充分な手応えを得られなかったのも確か。原因を考
えてみると、行き着く先はどうしてもキャラクター描写の散漫さ。何だろ? 前はそんな
じゃなかったんだけど、今作は浅い所だけで騒ぎ立てているように見えてしまい深い部分
まで描き切れてないというのか……。都にしても泉にしても、一応それなりのポイントは
押さえてあっても肝心の冬麻と触れ合う描写がどうも弱くて足りなかった気がする。
もう一つ足枷となっていたのは、歴代《トップ3》の名前と関連性にまだ作中で整理が
付いていなくて混乱を来してしまった点。正直これだけ過去の《トップ3》と《パートナ
ー》を複雑に盛り込んで大仕掛けを打つには、やや時期尚早ではないだろうかとも思った
り。冬麻達の第十三期、それに前代の第十二期メンバー関係だけでも明かされてない点は
まだ幾つもあるだろうから、彼等の特徴を掘り下げ印象を深める意味でも、ここを充分に
描き切った後で過去に絡んだ出来事を挿入しても遅くはなかったんじゃないかな?(断片
的な描写で曰くありげに匂わせている春太の過去だとか八千代と真霜雪姫の関係だとか)
結局は頁が少なくて中身の密度が物足らなかったのと、冬麻・泉・都の三角関係で展開
してくれなかったのが主な不満点か。ただ、冬麻の真価を試す目的で事件性を活用してい
る辺りは捻りが効いていて面白いと思うので、次もその方向で期待してみたい。
既刊感想:1
2004/06/03(木)平井骸惚此中ニ有リ 其貳
(刊行年月 H16.04)★★★★☆
[著者:田代裕彦/イラスト:睦月ムンク/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
館モノ→名家の相続争い→天候不良で足止め食って巻き込まれ完了、という展開は型通
りながら、今回はミステリー要素大幅強化で前作甘かった部分がしっかりと補強されてい
る。弱点克服によりLOVEとミステリーの融合もバッチリ効いていて見事な仕上がり。
主に太一が足で捜査し情報を稼ぐ位置付けなのは変わらず、対してちょっと違って見え
たのは骸惚先生の扱い。前は肝心な局面以外は奥に引っ込んでいたのが、彼自身前に立っ
て捜査や推理をしたり、こういう行動的な面はこれまであまり見られなかったもの。
一家総出で太一や涼と近い所に居たからか、大抵は興味本位な子供のお守りにしか映ら
なくても、捜査段階で骸惚先生の姿を多く拝めた所でキャラクターとしての印象度も増し
て良かったんじゃないかな。更に表舞台で目立っていたお陰で、メッセージ性が高い骸惚
先生の『現実と物語における“探偵”という役割の違い』などが深く心に染みてくる。
殺人犯罪は許さない! 真実はこの手で掴んでやる! 強固な決意と意気込みを抱え、
華麗にして大胆な推理と謎解きで爽快感を与えてくれる……とはいかないのが骸惚先生の
場合(太一なんかは結構このノリか)。むしろ深く関わる事に消極的で否定的な発言が多
いのだけれど、この消極的・否定的である理由にこそ彼の真意が存在している。ちょっと
嫌な言い方すると自信満々の自己満足で推理を披露するのとは一味違う、探偵小説作家で
あるが故の彼の『探偵役』に対する考え方ってのが私は凄く好きなんですよね。
太一を使って聞き役に徹するも良し、自ら行動して道標を示すのも良し。どちらの方向
でも面白く読めたので今後は柔軟で幅広い展開も期待で出来そうな予感。「ミステリーと
して楽しめるかどうか?」の不安感も今回の手応えで奇麗さっぱり払拭されたし。
恋愛要素に関しては、「涼ってこんなに太一にベタ惚れだったっけ?」なんて少々の違
和感がありながらも、この2人の掛け合いはどのシーンでも楽しいからそれで良し。太一
に懐いてる撥子は、殺人事件などの殺伐とした中で一服の清涼剤のような安らぎを与え続
ける役割でいて欲しい(骸惚先生や太一にじゃなく主に読み手に対してね)。
既刊感想:其壹
2004/06/02(水)黒と白のデュエット Op.2
(刊行年月 H16.04)★★★☆
[著者:岡村流生/イラスト:和泉なぎさ/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
前巻は鬼道や現実的には有り得ないトンデモトリックに色んな意味で唸らされつつ、そ
れでも極貧少女・黒御門水冬の魅力に惹かれたり、その彼女に一目惚れして尻尾振って懐
いてしまった白雲秋葉たんが激萌えだったり……思い返すと意外に楽しめてたようで。
水冬が操る鬼道を始め念力発火能力者に魔術儀式に悪魔召喚にと、今回も現実離れした
超常現象による胡散臭さが相変わらず幅を利かせているので油断出来ません。そっち方面
で著者の方の知識が豊富なのか、あるいは物語の為に用意した作り事なのかは分からない
けれど、水冬が披露するオカルト系の造詣の深さにそれなりの面白さがあるのも確か。
そして前巻と比較して明確に違っている点は、このオカルティックな要素が物語の雰囲
気作りにだけ用いられている――つまり真犯人による殺人事件トリックに超常現象的なも
のは使われていないという事。ミステリーの描き方としては至極真っ当に出来ているので、
そういう意味では進歩具合が垣間見えるんですけど、前巻と同様のモノに期待を寄せてい
ると普通過ぎて肩透かしを食らう……かな? 割と無難に大人しく纏まっている感触なの
で、部分的に超常現象やオカルトな要素が物足りなく感じてしまうかも知れない。
何かの切っ掛けから徐々に騒動に巻き込まれ、殺人事件発生から捜査推理、最後は真相
語りによる謎解きで事件解決。この一連の流れに沿ったストーリーの組み立ては、前巻の
感想と同様でなかなかしっかり描けていると思う。今回はミステリーの部分を見ても安心
感が存在するので、興味を先へ先へと向けさせる牽引力も含めて結構楽しめました。
しかしこの物語の最たる見所と言えば、ミステリーでもオカルトでも超常現象でもなく、
やっぱり水冬に惚れてる秋葉の彼女への懐きっぷりですよ。何度撥ね返されても下僕扱い
されても、めげずにアタックを繰り返す秋葉たんを見てると、ついつい応援したくなって
しまう。現状は絶望的だけど僅か少しずつでも水冬との関係が進展して行って欲しい。
既刊感想:1
2004/06/01(火)リリカルレストラン あした天使の翼をかりて……
(刊行年月 H16.04)★★★
[著者:大倉らいた/イラスト:四谷嘉一/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
初っ端のりりかの「料理と推理って似てる気がする」「だから同じ『理』がついてるん
だ」発言には、ええーとかなんだそりゃとか言いたくなってしまった。いきなり危険な匂
いを察知しつつも、読んでいて途中の瑛人の説明で成る程そういう事かと一応は納得。
しかし“料理+推理”のちょっと目を引きそうな軽いスパイスが効いていたのは、途中
のレシピ2まで。この物語はレシピ1&2とレシピ3の二部構成になっているのだけれど、
この分割の仕方がイマイチで、極端に言うならレシピ3だけ別モノ。どうにも1&2との
繋がりが薄くて、これだけ掛け離れたエピソードという違和感を抱いてしまいました。
1&2では解け切らなかった謎――下巻の本は学園の蔵書だったのかどうか? かつて
幼いりりかの頭を優しく撫でてくれた「天使さま」は誰だったのか? これらが3に持ち
越されて解かれるものと思っていたのに、結局曖昧なままに終わってしまっているので不
満が残る。次巻に持越しなのも有りと言いたい所だけれど、これらがりりかの大切な問題
ってのは冒頭から提示されているわけだから、投げっ放しにはして欲しくなかったなぁ。
どう見ても3だけ一つのエピソードとして独立しているような手応えなので、これなら
レシピ1と2の事件だけを引き伸ばして長編に仕立てた方が楽しめたかの知れない。ちゃ
んと推理に料理が絡んでいたし、前半はまだ学園ミステリーっぽい雰囲気が結構出ていて
悪くない読み応えだったし。進めば進む程、本来りりかにとって語らなければならない重
要な部分が薄れてしまうような内容は、やはり微妙だったと云わざるを得ない。
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