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01/20 『玉響 ―たまゆら―』 著者:時海結以/富士見ミステリー文庫
01/16 『GOSICKIV ―ゴシック・愚者を代弁せよ―』 著者:桜庭一樹/富士見ミステリー文庫
01/13 『されど罪人は竜と踊るVI 追憶の欠片』 著者:浅井ラボ/角川スニーカー文庫
01/12 『されど罪人は竜と踊るV そして、楽園はあまりに永く』 著者:浅井ラボ/角川スニーカー文庫
2005/01/20(木)玉響 ―たまゆら―
(刊行年月 H17.01)★★★☆
[著者:時海結以/イラスト:増田恵/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
前シリーズ『業多姫』と設定で類似点が結構あるような手応えだったのですが、潔くミ
ステリ要素を廃してLOVE度120%に仕上げてくれたという点では、同じ1巻目を比
較してみた場合でこちらの方が面白かった(まあこのレーベルで相変わらずの“ミステリ
ー文庫としてそれはどうよ?”な疑問符浮かべるのも飽きたので気にしない)。
マユラとイメタテの身分や境遇、そしてお互いの状況に邂逅のシーンなど、読んでいて
とかく業多姫の鳴と颯音を引き合いに出してしまいがちでしたが、こちらは三人称で描か
れている為、視野が二人だけの内側より二人の周囲で何が起こっているかの外側に広がっ
ていたような印象でした。なので準主役以下の脇役達の描写が鮮明に見えたし、キャラク
ターの立て方もそれぞれ良かったなと思う。ただ、まだシリーズ始まったばかりというの
もあるのだけれど、逆にマユラとイメタテの二人だけの世界に浸れるようないちゃつきぶ
りはなりを潜めていた模様。この辺を業多姫の時のように期待していると、ちょっと物足
りなさを味わうかも知れないけれど、話が進めばテンションも上がって来るでしょう。
僅かなすれ違いのズレが幾度も生じて悲劇へと繋がる展開――特に「どうしてこうも思
うようにいかないんだろう……」というマユラの苦渋が、読み手にもどうしようもないも
どかしさとしてよく伝わって来ました。それでも課題は残しつつ今回の結末は割と良い方
向へ。個人的にはクマリやユツツの敵対する存在としての歪んだ心や憎悪の心を、もっと
引き延ばして見せて欲しかったのだけれど(でもまあそれだと後味悪くなってたかな)。
最初から直接出逢い触れ合う事に対し足枷をはめられたマユラとイメタテが、今後どう
やってその逆境を乗り越えてゆくか? それから新たに皆が住める土地を目指すのに合わ
せて、色々裏があるヒナクモ台詞や動向の意味は? 気になるのはこの辺りの展開。
2005/01/16(日)GOSICKIV ―ゴシック・愚者を代弁せよ―
(刊行年月 H17.01)★★★★
[著者:桜庭一樹/イラスト:武田日向/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
まず何はともあれ今回初めて全編通して登場していたアブリルが見所のひとつ。特に楽
しみにしていた部分でもある、ヴィクトリカとの直接対面がやっぱり印象的でした。最初
アブリルは得体の知れない存在と捉えておっかなびっくりな接し方だったんだけど、ヴィ
クトリカの突き放した物言いの数々に、次第に黙っちゃいられない性格が前面に出て終い
には周りの眼を気にせず言い合いするまでの関係に発展する。とは言っても親友関係とい
うものでは間違ってもなくて、多分アブリルにとっては一弥を巡るライバル関係か(ヴィ
クトリカの方が全く歯牙にも掛けてない辺りはちょっと不憫だったりするのだけれど)。
著者の桜庭さんは“女の子同士で絡み合う時”を描くのが上手い方、というイメージが
私の中では定着していて、今回のこのヴィクトリカとアブリルが二人っきりで会話するシ
ーンも期待に違わず良いものでした。積極的に歩み寄ろうとするアブリルと、素っ気ない
態度で無視を決め込んでいるように見えて、実は人付き合いの経験が乏しく緊張してただ
けというヴィクトリカと。両方共に性格的な持ち味が存分に発揮されていて、その相乗効
果で可愛らしいと思える要素が互いに際立っている。とりわけ可愛く見えたのは、ヴィク
トリカの方はアブリルの勢いに気圧されている辺り、そしてアブリルの方は“一弥が特別
仲良くしている”ヴィクトリカを意識して「久城くんを取らないで」と思わず口を滑らせ
た辺り。『フリル野郎』に『屁こきいもり』と罵りあう二人は案外いい相性なのかも。
そして、今回の事件に仕込まれていたヴィクトリカの今後を示唆するような予感が非常
に気になる所。それは一弥との繋がりが何処かで断ち切られてしまうような嫌な予感……
ラストシーンで繋いだ手と手が離れる事の無いように願いたいものですが、事件が解決し
ても一向にもやもやが抜け切らないので凄く続きが待ち遠しい。次は短編集かもという事
ですが、二人の最初の出逢いのエピソードも収録されるようなのでそちらも楽しみです。
既刊感想:I、II、III
2005/01/13(木)されど罪人は竜と踊るVI 追憶の欠片
(刊行年月 H17.01)★★★★
[著者:浅井ラボ/イラスト:宮城/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
雑誌掲載分+書き下ろし分である『ラルゴンキン咒式事務所の愉快な咒式士たち』を加
えて纏めた短編集。時間的には掲載分が全部III巻とIV巻の間、書き下ろし分のみV巻後の
出来事だそうな。基本はガユス&ギギナの事務所への咒式士絡みの依頼=どれもこれもロ
クなもんじゃないサイテーな仕事、とはガユスの弁。そもそも咒式士としてのガユスやギ
ギナの能力を必要とする依頼自体、既に端から真っ当なもんじゃないんだろうけど。
しかしながら、上手く立ち回れば少なくとも自分自身が苦い思いをする事ぐらいは回避
出来そうなものを、あえて自分の心に痛みが残る選択肢をことごとく選んでしまう辺りは
面倒臭いガユスの性格故かどうか。ギギナだったら本能のまま力に物言わせて自分が一番
楽に済ませられる選択を取るんだろうけど、ある意味ガユスの回りくどいやり方はギギナ
暴走の抑止力になっているのかも知れない。ガユスの場合、結局最後は自分より相手の立
場を優先して事を起こしてしまうから、カウンターパンチを貰い易いのかなと。あとはこ
うして見てると、ガユスが如何にジヴに依存していたかってのも良く分かりますな。
V巻であれだけの事をやられてしまうと、さすがにこの短編の陰鬱程度では充分持ち堪
えられます。が、それでもエピソードによって差はあれど、全部が全部後味悪くて苦味が
口に残る内容。まあ読んでいて気持ちが底無しに沈んでしまうのも、物語に充分満足して
浸れてる証なんだろうけど。ガユスとギギナの全く登場してないラルゴンキン事務所のエ
ピソードが、最も気落ちせずに読めたのも妙に納得出来てしまえるというのかな? もっ
とも、ラルゴンキン事務所サイドの描写は賑やか……というより奇人変人の馬鹿騒ぎが目
立つので、ジャベイラの性格変化を眺めているだけでも楽しかった部分もあるんだけど。
個人的には、竜と交わり遣る瀬無さだけがじわりと心を苛む『覇者に捧ぐ禍唄』が一番
印象的でした。他にガユスと擬人との言葉の駆け引きが紡がれた『清算されし想い』は特
に好きなシーンで、背筋が寒くなったのは『打ち捨てられし御手』で真相が語られている
最後のシーン。ガユスの行為があまりに救われなさ過ぎで泣きたくなってしまった……。
既刊感想:I、II、III、IV、V
2005/01/12(水)されど罪人は竜と踊るV そして、楽園はあまりに永く
(刊行年月 H16.08)★★★★☆
[著者:浅井ラボ/イラスト:宮城/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
読む時期が遅いので既に鬱展開ってのは分かっていたのですが、それで充分身構えて挑
んだにもかかわらず完膚なきまでに奈落の底に叩き落されました。前半は一癖ある連中の
ちょっと遠出のピクニックやらキャンプやら、敵の襲撃を踏まえなければ意外と緊張の糸
は張り詰めてなかったような気がして。それよりもガユスのヘタレな傷心描写の方が大き
かったり、あと(そのときはまだ)天真爛漫なアヤピナが緩衝材の役割を果たしていたお
陰が、まだ緩い空気でガユスとギギナの冗談混じりの軽い言い合いも見れていた。
以下ネタバレ反転で、でもそれが罠だと気付く頃には、全てが修復不能で手遅れな状況
に陥ってしまう。まあこの前半での割と幸せなアナピヤの表情が、中盤以降の鬱展開を余
計に際立たせている凶悪過ぎる仕掛けなわけですよ。私が本当の意味で致命的なダメージ
を受けたのは、最初からアナピヤの行為が何から何まで仕組まれた行為だったという真実
を知った時。それでも、絶望的だと明らかであっても最後に幸せな結末を願わずにはいら
れなかった。最後の最後にムブロフスカに一縷の可能性が示された時はなおさら。
しかしながら結局それは打ち砕かれる定めで、届かぬ願いの夢でしかなかった。ご都合
主義の夢を本当に作中でガユスの夢として描いて、その後現実に帰って無残に打ち砕かれ
る辺りは相当にえげつないですが、こういう結末に納得させられるだけの説得力で物語が
描かれているからこそ、どれだけエログロ描写で気分が荒み救いの何も無い結末に絶望に
心が抉られ空虚になろうとも、最後に『面白かった』と声を大にして言えるのだと思う。
逆に何か救いがあったんだろうか? と首を捻ってみた所、結局ガユスがアナピヤ編で
ずっと引き摺っていたジヴとの関係にケリをつける事が出来た――この一点のみだったん
じゃないかなと。根本的に愛だの恋だのが絡んでヘタレな精神で迷うガユスの姿は今後も
あまり変わらないだろうけど、そういう泥臭いのがそもそもの持ち味なので、適度に格好
悪くあがいてもがいて苦しみ抜いて、適度に悪ふざけを交えてギギナと絡みつつ楽しませ
て欲しい(今回の事があって多分もう簡単に呑気にお気楽にはいかないだろうけどね)。
既刊感想:I、II、III、IV
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