[前] [戻る] [次]
07/10 『魔法鍵師カルナの冒険』 著者:月見草平/MF文庫J
07/09 『彼女はミサイル』 著者:須堂項/MF文庫J
07/08 『蟲と眼球とテディベア』 著者:日日日/MF文庫J
07/05 『狂乱家族日記 壱さつめ』 著者:日日日/ファミ通文庫
07/03 『アンダカの怪造学I ネームレス・フェニックス』 著者:日日日/角川スニーカー文庫
07/03 『私の優しくない先輩』 著者:日日日/碧天舎
2005/07/10(日)魔法鍵師カルナの冒険
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:月見草平/イラスト:銀八/メディアファクトリー MF文庫J]→【bk1】
『魔法鍵師』としての腕は世界随一ながら、師事する側から見れば性格に(多少?)
難あり癖ありの師匠ミラに弟子入り三年。名魔法鍵師になる為に日夜修行に励む魔法鍵
師見習いの少女・カルナの成長物語。鍵開け能力を有している職業と言うと、真っ先に
盗賊だとかの固定観念があって真っ当なイメージが浮かび難いのですが、それなら真っ
当な職業として据えてしまえば成る程解錠技術がキラリと光って映る。
当然ながら解錠技術が盗みなどの悪事ばかりに働くのではなくて、鍵を開けて欲しい
と願う人達の助けとなるのが魔法鍵師であり、そうなりたいとカルナが目指しているも
のであり、メインとして描かれているものであります。主に解錠シーンが見所なので簡
単に開いたら面白みが薄く、かと言って見習いのカルナが難解な鍵を理由も無しに容易
く開けてしまっては説得力に欠ける。その辺の問題は“ミラの助力”という形で、うま
くバランスを保ちつつクリアしているのが好印象。「これじゃ師匠に頼りっ放しじゃな
いか〜」と突っ込みたい気持ちもありましたが、まだ見習いという立場だしな〜と。
ただ、中盤以降いきなり難易度アップでスケールがでかくなり過ぎた? 後々に温存
しておいても良さそうな感じでしたが、一冊で全てを出し切らなきゃならない応募作だ
った事を考えると仕方ないかな。もし次に繋いだ場合開錠シーンで工夫を凝らさなけれ
ばスケールダウンしてしまうかも……という心配とか抱いたので。まあ心配事はなるべ
く気にしない方向で、次も課題を着実にこなして行くカルナの成長を見守りたい。
2005/07/09(土)彼女はミサイル
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:須堂項/イラスト:濱元隆輔/メディアファクトリー MF文庫J]→【bk1】
第1回MF文庫Jライトノベル新人賞『審査員特別賞』受賞作。
ウェブサイトの構成とかPC性能とか、説明抜きで用語を並べて大丈夫かな? ちゃ
んと理解してもらえるのかな? なんて「余計なお世話だコノヤロウ」と突っぱねられ
そうな心配ばかりしていた序盤戦。なんか無性に自分のサイト構成弄りたくもなった。
私なら在り来たりにネットアイドル同士を戦わせるだろうな〜とか思ってましたが、
そこをレンタルサーバ同士の戦いにしてしまう辺りが独特のセンス。しかも作中のリア
ルワールドで。でもネット主体なら戦いだってバーチャルリアリティでやりゃいいんじ
ゃないのか? あえて現実で戦わせる理由って何か……ちょっと思い出せない。
そして終盤のあのひっくり返し方は、さすがに「えええーーーーー!?」と唸らされ
てしまいましたよ。いやだって直前までの展開から考えたら、正攻法であきらと“彼女”
が戦いまことを巡って三角関係が強化されると思うじゃないですか。それがなにこれ、
おかし過ぎるよ! ……と喚き散らしてはいますが、かなり唐突な割に破綻は少ないと
思うのです。新人ネットアイドルなのに最初から異様にアクセス数が伸びていた事、サ
ブが上位者のサーバ相手に立て続けに勝てた事、まことがやけに女装を強要されていた
事、終盤のとんでもない崩し方とラストの仕掛けで全て納得出来てしまえるから凄い。
もし次があれば、今度は今回足りなかった三角関係の要素を補って欲しいです。
2005/07/08(金)蟲と眼球とテディベア
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:日日日/イラスト:三月まうす/メディアファクトリー MF文庫J]→【bk1】
眼球抉子→抉子=えぐりこ→グリコ……って名前も容姿も性格もその他色々含めて凄
いな。相変わらず真っ直ぐじゃないネーミングに惚れ惚れした。「眼球えぐっちゃうぞ」
とか冗句でも誇張でもなく至って本気の物騒な物言いしてたり、『蟲』なんて存在があ
ったり。こう何処かスプラッターなイメージを先入観で抱いていたのですが、その手の
表現が苦手で嫌いな人が敬遠する程のぐちゃぐちゃどろどろさではなかったかな。
この作品、元々はコメディ狙って書いていたそうですが、仮にコメディならばどんな
だったか? と勝手に想像巡らせてみると、これがまたシリアスダークだと妙なズレを
感じていた部分で自然にハマる不思議。あ、いや、そもそも最初から笑えて楽しい騒動
劇を想定していたのなら不思議でも何でもないのか。最初に隕石が落ちて巨大なテディ
ベアが街を蹂躙しまくる、なんて当初のコメディ路線を読んでみたい気もしますが。
グリコの過去と歩んできた歳月、鈴音と賢木が付き合って来た過程、まだまだ見せて
欲しかったのが正直な所。あとは意外とすんなり丸く収まったので、結末までもう一山
二山波乱があっても良かったかな? でも一冊で決着付けるなら締め方はこれで充分。
2005/07/05(火)狂乱家族日記 壱さつめ
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:日日日/イラスト:x6suke/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
凰火曰く“どうしようもなく手が付けられなくてとんでもない謎々ネコミミ少女”の
凶華であり、実際あんまり関わりたくない性格言動してやがります。これほどまでに名
前通りの凶行の数々を見せつけられてしまっては、凰火でなくても擬似家族なんぞで身
体を寄せて付き合って行くのは真っ平御免だ勘弁してよ! と叫びたくもなるさ。
でも、こんな凶華だからこその不意打ちが非常に効いてしまうのですよ。それはとて
も母親らしくないネコミミ娘が、ごくごく稀に気紛れのように母親らしい振る舞いを見
せる時。まあ絶対にそんな気では動いてないので無意識の内なんでしょうけど、狙った
ように絶妙なシーンで優しげな微笑を表現してくれる。妙な思惑も陰謀も策略も悪戯心
もない、素直な笑顔。巻末のイラストがまさにそれでドキドキさせられました。
個人的には擬似家族として馴染むまで、もうちょっとギクシャクした雰囲気があれば
良かったかなぁ、そうすれば結束の深まり方が際立っていたかなぁとか。茶番劇以降の
終盤は強引さも感じられたけれど(これだと超常現象対策局の後ろ盾があれば何でもゴ
リ押しで解決出来そうじゃないかと思わされたので)、そこが醍醐味とも言えるし充分
楽しめたので些細な事。あとは伏線が色々張られている様なので続きの展開を待つ。
2005/07/03(日)アンダカの怪造学I ネームレス・フェニックス
(刊行年月 H17.06)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:日日日/イラスト:エナミカツミ/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
いやー、ネーミングセンスは欠けているどころか実に素晴らしいものをお持ちだと思
うのですが。まあそれはさておき、前の二作とは当たり前だけど明らかに路線が違う、
言われてみれば確かに“正統派”な物語。同著作は結構主人公の一人称語りに惹かれて
いた部分が大きかったのですが、決してそれに頼り切りなだけではないんだなと。
ライトノベルという括りでなら、本作が一番普段から読み慣れ親しんでいるそれに近
い内容だったかな(前二作が少々離れていたと言った方が正確か)。《怪造》とは《召
喚》という設定とよく似たものだし、特殊能力を伸ばす専門学校風景ってのも特別目新
しいわけではないけれど、やっぱりすんなり浸れる面白さとテンポの良さ、この揺るが
ない安心感と安定感はどうにも『新人作家』とは繋がり難いのです。勿論良い意味で。
夢や理想は甘く都合良く、現実は厳しく思うようにはならない。結果オーライと済ま
せばそれまでだけど、伊依って娘は見ていて結構迂闊で危なっかしい。これからもっと
痛い目を見たり、高くて強固な現実の壁にぶち当たったりするんだろうなぁと想像しつ
つ、是非そうなって欲しいとも望んでいる。夢と理想が遠く果てないものならば、平凡
じゃない方がきっと面白い。裏で暗躍している存在も気になる所で興味は尽きない。
2005/07/03(日)私の優しくない先輩
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★★☆(9/10)
[著者:日日日/イラスト:榎本ナリコ/碧天舎]→【bk1】
余命幾許もない少女の、全然それっぽく見せない心の独り言、呟き、そして大半を占
める愚痴みたいなもの。身体は病弱だが心は図太くふんぞり返っている。「まだ死にた
くないよ」「もっともっと生きていたいよ」、という未練や足掻きは読んでいて気持ち
いいくらい見当たらなくて、だから「もしかしたら全然大丈夫なんじゃないか?」なん
て期待を抱いてしまう。もう分かっていても意図通り抵抗なく誘導させられるのがとっ
ても悔しいんだけど、悔しい以上に巧さに脱帽。中盤までずっと心のテンションが軽快
なものだから、終盤の畳み掛けるような耶麻子の感情の吐露が物凄く堪える。
本当に愛冶君が好きだったのか? そもそも何故愛治君を好きになったのか? と心
が擦り切れそうになるまで自問した時。“彼の事が好き”なのではなくて“彼の事が好
きだと思い恋愛をしている自分の事が好き”だったと耶麻子自身が気付いた(認めたく
なくて目を逸らしていただけかも知れない)時。それが彼女の一人称文章だったからこ
そ、格別の感情の波がこちら側に押し寄せて来て見事に飲み込まれてしまいました。
[
戻る]