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11/30 『私立! 三十三間堂学院2』 著者:佐藤ケイ/電撃文庫
11/29 『私立! 三十三間堂学院』 著者:佐藤ケイ/電撃文庫
11/28 『アガルタ・フィエスタ!2 石のナイフと褐色の巫女』 著者:三田誠/電撃文庫
11/27 『アガルタ・フィエスタ! てのひらに女王を!』 著者:三田誠/電撃文庫
11/26 『トリックスターズL』 著者:久住四季/電撃文庫
11/24 『トリックスターズ』 著者:久住四季/電撃文庫
11/23 『WW 記憶師たちの黄昏』 著者:吉田親司/電撃文庫
11/22 『MM 記憶師たちの夜明け』 著者:吉田親司/電撃文庫
11/22 『タクティカル・ジャッジメント8 自業自得のクリスマス!』 著者:師走トオル/富士見ミステリー文庫
2005/11/30(水)私立! 三十三間堂学院2
(刊行年月 2005.11)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:佐藤ケイ/イラスト:かみやまねき/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
山路あや曰く「法行君はホモかナルシストなんじゃないの?」に大いに納得させられ
てしまう。前回程ほったらかしにはされておらず、必要な所で結構積極的に前へ出てい
て主人公の面目躍如な今回の法行。……なんだけど、目立った分だけ彼の本質も晒され
て、実は普通の感覚ではなかった変人度が大幅にアップしてます。「ダメだ、こいつが
主役じゃラブコメは一生出来ねぇ……」ってくらい恋愛感情の欠片も見えやしない。
いや、まあでもこの物語において法行視点による主人公の恋愛云々なんて割とどーで
もいい要素なので、別にホモだろうとナルシストだろうと恋愛感情ゼロだろうとラブコ
メには一切向かない奴だろうと全然構わない(逆にラブコメ要素を期待していると肩透
かし喰らったりする)。中心となっているのは前巻同様女の子同士の戯れなのだから。
やっぱり個々のキャラクター描写が際立ってうまいな〜と唸らされる程に魅力的。単
純に何気ない掛け合いだけでも読んでいて楽しいんだけど、柱となる事柄に対し(今回
の場合だと法行と須美の賭け)主要キャラ達が様々な考えや思惑を巡らせて挑んでいる
辺りが凄く面白い。それぞれの性格がきちんと行動に反映されている点もいい。
個人的には表と裏の顔を使い分け知略を働かせている真奈が一番好き。計算高くても
恋愛は意外とウブな踏み込みしか出来なかったり、頬を染める仕草とか普段あまり表に
出さないから妙に可愛く見えたり。今後もあの手この手で法行に迫って欲しい。
既刊感想:1
2005/11/29(火)私立! 三十三間堂学院
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:佐藤ケイ/イラスト:かみやまねき/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
唯一点。女の子達の描き分けのあまりの見事さに感嘆しました。きちっと主要キャラ
それぞれに強烈な個性を持たせて被らないよう考慮しているのだけど、これだけ多数の
娘が入り乱れても、誰が喋っているのか全く見失わせない辺りは本当に上手いなと。
中身は女学院に男一人が放り込まれ、あれやそれのお約束満載なハーレムコメディの
ように見えて実は全く違う。メインは女学院の中での女子生徒達による女子生徒達の為
の戯れ。唯一男子生徒の主人公? もう潔く清々しいまでに放置されまくってます。
ハーレムだのラブコメだのにもろに流れそうな要素がこれだけ揃っていて、殆どそっ
ちに流れないのは、この作中唯一の男であり主人公でもある法行の扱いが原因。多数の
女の子達の層に飲み込まれて完全に沈殿しちゃってるもんだから、目立って誰かと恋愛
感情を発展させられようもない訳ですよ(多少は性格的な面もあるだろうけどね)。
もっとも、どう見ても法行の恋愛絡みを主軸に置いた描き方ではなく、あくまで法行
争奪を名目とした女子生徒同士の騒動劇が中心となっているので、法行が何時の間にや
ら居るんだか居ないんだか分からない程霞んでしまうのも、当然と言えば当然の成り行
きなのか。まあその女の子達の戯れで充分楽しめたからそれでいいや〜という感じ。
ただ最後にどうしても突っ込まなければ気が済まない事が……この学院にはこんな馬
鹿騒ぎを積極的に鎮めようとする教員は誰一人として居ないのかよ! 傍観を決め込ん
でるのか全権を生徒会に委ねてるのか、先生が全く絡まないのが物凄く気になった。
2005/11/28(月)アガルタ・フィエスタ!2 石のナイフと褐色の巫女
(刊行年月 2005.11)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:三田誠/イラスト:双龍/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
前巻から十一ヶ月開きの刊行ですが、私は溜まってた分を続けて読んだので大して問
題にならないのは当然として、前巻を新刊時期に読んでいたとしても多分長いブランク
はさほど気にならない仕上がり。まあ登場する主要キャラは殆ど一緒だし、ストーリー
もあまり進展はなさそうだったので。話の動きが乏しく感じるのは、“秘宝を集めてイ
セリアを何とかする”って目的がまだ目立って動き始めてないからなのかも。
確か前巻のどこかで、イセリアは過去に犯した罪を償う為に失った秘宝を集めている
と語っていた筈だけど、その秘宝の扱いが作中ではちょっと曖昧な気がするのです。全
部でどれだけあって、現在どれだけ所有していて、残りはどれだけあるのか? まどか
の気持ちはイセリアと一緒に秘宝を探す方向へ確実に歩き出しているのだから、大雑把
でもいいので秘宝の事にもっと触れて欲しい(その分アクションを多少削ってでも)。
前巻同様話のテンポは軽快で読み心地は凄くいい。ただ、次から次へと立ち止まる事
なく進んでいているせいか全体的に薄味な感触だったのもあったりで。まどかとイセリ
アを始めキャラクター同士の感情の絡みがやや弱く感じてしまうので、少し立ち止まっ
て触れ合いを密に描いてくれたらなぁ……。その辺りの増強があれば、ヒートアップし
て行きそうなまどかを中心としたラサを含めての多角関係も更に盛り上がると思う。
既刊感想:1
2005/11/27(日)アガルタ・フィエスタ! てのひらに女王を!
(刊行年月 2004.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:三田誠/イラスト:双龍/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
古代王国アガルタの女王イセリアさまが人形に魂を宿して現在に顕現。彼女と契約を
結び王となるものをハジュラと呼び、イセリアのお眼鏡に適ったのが大したとりえもな
い平凡少年八王子まどか。掌サイズの人形女王と、自分の意思に関係なく契約させられ
翻弄され振り回されてしまう少年と、寄って離れてまた寄っての距離を描いた物語。
コメディ、アクション、シリアス、どれもあって均等に盛り込まれているバランスの
良いデキ、という印象。山場で戦い繰り広げる事が多く、その分だけアクションシーン
がやや増し。ただ、均等にって事は裏を返すと突出したものがない訳で、話もしっかり
手堅く纏まっているけれど何処となく無難で、何かこの物語は「これがいい!」と押せ
るような、こう力強くアピールするものがあったらな〜と読んでいて感じました。
どちらかと言えばストーリー展開の巧さで惹き込むよりも、キャラクターの個性で魅
せるタイプの物語かな? ツンデレ系女王に幼馴染みに若過ぎるお母さん……狙ったよ
うに型にはめたキャラばかりだけど、分かり易いので覚えも良い。まあ腰を落ち着けよ
うとすればイセリアを狙う敵の襲撃に合ってばかりだったから、もうちょっと多めにま
どかとイセリアの触れ合いが描かれれば、とは思いましたが。それでも誌奈を入れた微
妙な三角関係展開はまずまず。そして雛乃母さんに驚かされた。不足分は次に期待。
2005/11/26(土)トリックスターズL
(刊行年月 2005.11)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:久住四季/イラスト:甘塩コメコ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
何かまた周くんが読者を惑わす紛らわしい行為を連発してますよ。とりあえず凛々子
といちゃついてる大浴場の入浴シーンは挿絵を挟む絶好の機会なのに! と地団太踏み
踏みしつつ、これだけ精一杯取り繕っているのはまだ素顔を晒す気はないって事なのか
と考えたり。さすがに今回から読んだ場合、凛々子があまりに無防備過ぎる所で分かる
かも知れないけれど、でも前巻みたいなネタばらしは無いので気付けないかなぁ?
今回もまた魔学知識と魔術師に色濃く染められたストーリー展開。私のミステリの辿
り方だと読みながら自分で推理とかはあんまりしないので(しても見当付かない場合が
多いから)、精々途中の推理すっぽかしてただ単純に「この中で犯人は誰か?」を考え
て楽しむ程度。それだと勿体無い読み方だろうかと振り返りたくなるし、実際トリック
の謎を考えて読んでもいるのですが、まあ大体の場合はうまく行かないですよね。
この物語も例に漏れずそういう読み方。ちなみにこの人だと思ってた犯人は当たって
ましたが(最も意外性のある人が犯人だったら面白いなと思っただけ)、トリックの謎
解きはちんぷんかんぷん。で、周の謎解きシーンでトンデモトリックキター! とか驚
愕に打ち震えてましたが、冷静になって「きっと冴奈先生の補習授業が最後に残ってい
るだろうからこれはないだろう」と思ってたら案の定。彼女は全てお見通し。ラストの
真相語りは、謎の欠片全てが収まるべき所に収まる描き方で非常に良いものでした。
既刊感想:トリックスターズ
2005/11/24(木)トリックスターズ
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:久住四季/イラスト:甘塩コメコ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
ええと、まずあれです。最後の最後で明かされた七番目のトリック。最初の電車で痴
漢がどうのこうのからずーっと疑って掛かってたので、なんかもう読み終わって色んな
意味でニコニコニコニコしてしまいました。やっぱり冴奈先生の指摘通り、凛々子の気
持ちの介入で否定しかけたのだけど、どうしてもその可能性を捨て切れなくて、まあそ
うであって欲しいという願望を多量に込めて読み進めてました。それが思ってた通りだ
ったのと、あとは“ぼく”ですかね。何か無性にもう一度読み返したくなってきた。
あ、ちなみに他のトリックはサッパリでした。アナグラムなんか分かんね〜。魔学知
識を極めた上での魔術で何が出来て何が出来ないのか? おそらくトリックは全て“出
来る事”を用いて固められていたと思うのだけど、あと幾度も現実的で論理的とは言わ
れていたけれど、それでも超常現象的な印象でなかなか冷静に現実的とは受け入れられ
ない部分もあったりで(特に屋上の殺人未遂事件に使われたトリックの真相とか)。
しかしながらミステリに新しいアイディアを盛り込んで掛け合わせている独自性、頁
数多いながら最後までダレさせない組み立ての巧さ、魔学知識と魔術関連の設定も案外
読み易くテンポも良くて満足度の高い面白さでした。既に刊行されてる続編も楽しみ。
2005/11/23(水)WW 記憶師たちの黄昏
(刊行年月 2005.11)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:吉田親司/イラスト:3/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
マザコン・マコちゃん略してMM……いいなこれ。今回は敵が手にしたいと狙い探し
ているWW(ツインダブリュー)とは何か? を巡っての攻防。読みながらよくこれだ
け頭にWW付く要素を放り込めたもんだな〜と感心させられて、誠人は次から次へと湧
いて出て来るWWに翻弄され気味で、けれどもやっぱりママは何でも知っていた。
そう言えば前巻感想ですっかり忘れてて一言も触れなかった萌恵サマ。今回は彼女が
メインで一人称を担当する主役の扱い。『記憶師』としての能力を用いて大活躍したか
どうかはさておき……セーラー服の下にブルマやスクール水着穿いたり或いは穿かなか
ったり、メガネっ娘に三つ編みの委員長スタイルになってみたり、一部の人間を狙い撃
ちするようなこのサービスショットの数々で違う方向に大活躍です。その気はなくとも
(形だけの)婚約者マコちゃんへアピールしているように見えなくもない(萌恵サマ本
人は全力で否定して暴れるだろうけど、何だかんだでいいコンビになりつつあるし)。
これまで摩周母子と<ノイエ・オデッサ>との因縁の根深い部分についてはあまり多く
語られなかったけれど、今回ラストの内容で「話が大きく動くか?」という手応えが得
られたかなと。まだ伏線張ったままの所は結構ありそうだけど、ここへ来てママが抱え
る重大な秘密が語られ、味方の戦力も一応整い、<ノイエ・オデッサ>の目的も明らかに
なりつつあり、このまま一気に完結へ向かう勢いを感じたけれど……果たしてどうか。
既刊感想:MM
2005/11/22(火)MM 記憶師たちの夜明け
(刊行年月 2004.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:吉田親司/イラスト:3/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
ザ・メモリー・メイカーを略してMM。人間の脳に直接介入して記憶を操作する能力
を持つ『記憶師』と呼ばれる母子の物語。興味を抱いていた要素で記憶操作を駆使した
アクションはまずまず。危機にも動じず冷静沈着そうに見える『記憶師』としての主人
公の能力が、完全無欠ではなく発展途上で欠点もある所が好印象だったかな。
最初は記憶操作の必須アイテム“カスタネット”が万能の武器に思えてたので、もっ
とこう何でもかんでも思うように事が運ぶ便利さを想像してたのだけど、使い手である
誠人の技能の方がまだ随分未熟というのはあまり考えてなかった。それに“カスタネッ
ト”を失うと、多少俊敏性はあるそこら辺の普通の少年とさほど変わらない身体能力な
のもちょっと意外だった。言わば依頼任務も“カスタネット”頼りにしている所が多く、
それがないと途端に能力低下に繋がる事実を露呈しているわけですが、完全無欠の天才
児なんかよりはずっといい。誠人は母である美冴より『記憶師』の能力が未熟なせいで、
武器を手放し危機を招き思うように事が運ばず、それでも必死にもがき守るべき大切な
者の為に戦っている。この辺りがきちっと物語の盛り上がりに繋がっていると思う。
まあそれより何よりこの物語で最も印象に残るのは、間違いなく誠人の徹底的なマザ
コン体質ではないかと。あとがきで著者の方自ら痛々しいキャラと認めているその通り
のママ崇拝キャラ。ただ、誠人にとってはそれが至極真っ当だという態度だから、一人
称でママママママママ連呼されてもあんまり後退りで引く事はなかったです。
2005/11/22(火)タクティカル・ジャッジメント8 自業自得のクリスマス!
(刊行年月 H17.11)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:師走トオル/イラスト:緋呂河とも/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
前巻あとがきの予告通り善行絶体絶命……とは言っても全てにおいてタイトル通り自
業自得なもんで同情の余地は皆無。過去に散々「大概にしとけよ」的な行為を積み重ね
て来たわけですが、それでもまだ山鹿善行という男の性質を甘く見ていたらしい。
今回は私欲(クリスマスで雪奈とあんな事やこんな事をぐふふふふふな妄想)の為だ
けに、殺人現場の偽造工作、証拠の隠蔽と捏造、挙句に被告人に偽りの証言(善行がけ
しかけた旋条痕と撃針痕の偽造工作を隠す証言)をさせたり、いつにも増して犯罪スレ
スレどころかどっぷり犯罪に塗れた行為の連発には開いた口が塞がらなかった。
ただ、善行について犯罪行為以上に凄いと思うのは、判決の結果だけを見ればこれま
で全て“冤罪の被告人”を無罪にしている点。まあ扱っている案件以外で罪に問われる
ような事をやらかしている極めて問題ありな被告人も結構居たし、ハッタリと偶然の閃
きと勢いだけで引っくり返す崖っぷちな裁判も多いですが、それでも本当に罪を犯した
人間を無罪にした事は無い……多分無かったと思う。問題だらけでも結果的には冤罪だ
った被告人を引き寄せる辺りは大した強運じゃないかと。もしくは悪運と言うべきか。
しかし善行以上に皐月伊予という女の性質を甘く見ていたようで。今回で一番の極悪
人は善行ではなくてむしろこいつの方。善行の悪事を暴く為ではなくて、このまま収束
したら自分がつまんない→もっと事を面白く転がしたい、とこれも私欲の行為だから恐
ろしくタチが悪い。善行の自業自得の報いには全く同情出来ないけれど、雪奈とのクリ
スマスデートを見事に潰されてしまった事だけはちょっとだけ同情したくなった。
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