NOVEL REVIEW
<2005年12月[中盤]>
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12/20 『狂乱家族日記 弐さつめ』 著者:日日日/ファミ通文庫
12/19 『シナオシ』 著者:田代裕彦/富士見ミステリー文庫
12/18 『ニライカナイをさがして』 著者:葉山透/富士見ミステリー文庫
12/16 『さよならトロイメライ5 ノエル・アンサンブル』 著者:壱乗寺かるた/富士見ミステリー文庫
12/16 『バクト!VI The Hustler』 著者:海冬レイジ/富士見ミステリー文庫
12/14 『食卓にビールを5』 著者:小林めぐみ/富士見ミステリー文庫
12/13 『GOSICKV ―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋―』 著者:桜庭一樹/富士見ミステリー文庫
12/12 『ROOM NO.1301 #7 シーナはサーカスティック?』 著者:新井輝/富士見ミステリー文庫
12/11 『AHEADシリーズ 終わりのクロニクル7』 著者:川上稔/電撃文庫


2005/12/20(火)狂乱家族日記 弐さつめ

(刊行年月 2005.07)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:日日日/イラスト:x6suke/エンターブレイン ファミ通文庫]→【
bk1】  我慢強いと言うのか寛容と言うのか見て見ぬふりと言うのか面倒事は華麗にスルーと 言うのか。あまり感情的に物言わない凰火がブチギレてしまう程の凶華の傍若無人な唯 我独尊ぶりが凄まじい事この上なし。おかげで擬似家族生活を始めた本来の目的なんぞ すっぽりと抜け落ちてしまう事も。説明されて「そういやそんな設定だったな」と改め て気付かされるのはどうなんだろう? なんて首捻りつつ面白いからいいや、と。  ただ、読んでいて確かに楽しいは楽しいのだけれど、あと少しだけ乗り切れない物足 りなさもある。不満と言い換えた方がいいのかも。多分擬似家族が一家揃って何か事を 起こすのではなく、凶華一人が過剰に大暴走しているから、存在感の落差が大きくなっ てしまっている点が不満の原因。まあその辺は今回の雹霞みたく、これから個々に見せ 場を作ってゆけば解決出来る問題点だと思うのだけど。この雹霞の件にしても、まだま だもっと深く掘り下げて欲しい気持ちはあったし。凶華が自粛してくれれば他の家族の 目立つ場が余計に確保出来そうな気もするけど……それはさすがに無理な注文か。  最終的には世界を滅ぼす『閻禍の子供』候補の中の“本当の子供”を探し当て、「こ んないい家族を殺すのは嫌だなぁ」と思わせるのが本来の目的で、要はそこまで辿り着 けるかどうか。既に途中で目的見失わないか(主に凶華のせいで)不安が先走ってばか りな展開だけど、ちらほら伏線らしきものも敷かれているようで色々気になる所。  既刊感想:壱さつめ 2005/12/19(月)シナオシ
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:田代裕彦/イラスト:若月さな/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  ストーリー展開は『キリサキ』からの続編ではないけれど、同一の設定を幾つも用い ているので関連性は深い(頭に『〜シリーズ』とはくっ付け難いけれど、シリーズとし て括ってもいいんじゃないかな?) 今回もキリサキを読んだ時と同様に抜群の牽引力 で、真相に向かってぐいぐい先へと進みたがる興味が最後まで衰えませんでした。  ただ、どうもキリサキよりも更に謎が複雑に入り組んでいたような感じで、またもや 頭からプスプスと煙が出てしまう。最初に真相が語られた時は「え、えっと……《僕》 がそうなって《私》こうだからこれがああなってこうなって……」と、理解するまで結 構苦戦を強いられました。もっとも、これは決して謎解き部分の描写が拙いのではなく て、《僕》と《私》の元々の関係が相当にこじれているから。むしろこの複雑に絡まっ た面倒な糸をしっかり読み手に理解させてくれる丁寧な描写ではないかなと思う。  とにかく読み進める際は真相が語られ始める最初が肝心。ここでペースを落としてで もよく噛み砕き頭に叩き込んでおけば、その後細部まで解き明かされる辺りをかなりス ムーズに読み進める事が出来る筈。《私》が《僕》だった頃に殺したのは誰か? その 《私》が殺人を悔いて“為直し”で止めようとしている《僕》は誰なのか? 章立てが 《私》と《僕》で分かれている意味が解かれた時、全てが綺麗に収まりました。凄く気 持ちいい手応えで満足(ちなみに今回は濃くはないけれどLOVE要素もあります)。  関連感想:キリサキ 2005/12/18(日)ニライカナイをさがして
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:葉山透/イラスト:山都エンヂ/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  内容は何処にでもいる冴えない少年が、偶然出逢った傲慢我侭美少女アイドルに強引 に拉致される形で沖縄旅行に付き合わされるというお話。奇抜で複雑で面倒臭い仕掛け はない、ストレートな良質のボーイミーツガールストーリー。日本のトップアイドルと してちやほやされた結果がこれか……そう思われていた我侭放題のリカが本当の素顔を 見せた時、あ〜これならタクローじゃなくても惹かれずにはいられないだろうなと。  それだけこの物語はリカのキャラクターが絶大な魅力。抱えた秘密を明かしてタクロ ーと心から触れ合う姿と、実際の現地を良く調べているなぁと感心させられた沖縄風景 との相乗効果で、非常に純粋で綺麗で透明感溢れる物語に仕上がっていて満足でした。  ちなみに、ミステリ的な流れはなくても“謎”と呼ばれるものはあります。軽くスパ イスを効かせる程度のものだけど、主に冒頭から時々ちらつかせているタクローに関す る事。この設定は無くても物語はきちんと収まったかも知れないけれど、あったからこ そ終盤の盛り上がりから結末の二人へうまく繋げられたんじゃないかなと思う。  あえて欲を言うなら、タイトルにもなっている『ニライカナイ』という言葉をもっと 深く物語に染み込ませて欲しかったかな。あるポイントでリカにとって重要なキーワー ドとなるんだけど、全体的にはその言葉があまり目立ってない気がしたので。まあそれ も作中でリカが振り撒く魅力やタクローとの触れ合いの前では些細な事です。  あと最後に著者紹介……未読分読むから! だから続き出せるよう願ってます! 2005/12/16(金)さよならトロイメライ5 ノエル・アンサンブル
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:壱乗寺かるた/イラスト:日吉丸晃/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  う……う〜む、キャラクターの相関関係がえらいややこしくなってる気が。元々過去 の《トップ3》に関しては、明確になってない部分が多いせいで把握し難い複雑な面は あったけれど、今回は妙に複雑加減に拍車が掛かっていたような印象で。単純に曖昧な 点があるからと言う事だけではなく、それぞれの個人的な関係も縺れた糸が絡まり合っ てるような根深さが見え隠れしているし。きっと自分はこの物語を楽しめているだろう ……と頭の中で確信が得られていても、どうしてもあと一歩だけ身を委ねる事が出来な い原因がこれだと思う。もっとも、話が進めば解かれてゆくのは当然の流れだから、今 は「分からない」で乗り切れなくても、いずれは完全に惹き込まれるだろうなと。  ただ、シリーズとしての話の方向性に関しては、個人的には「こうなって欲しい」と 期待してた好みの方へかなり傾いて来て嬉しい限り。冬麻が都とあれして八千代とこれ して泉とそれして……な展開も勿論望む所で今回も各所でニヤニヤさせてもらってまし たが(特に八千代が可愛過ぎる!)、それ以上に楽しみにしていたのは冬麻と過去のト ップ3との関わりで綴られて行くような展開。まさに今回はこれが軸として起き上がっ たと言う手応え。首謀者として仕掛けた九樹宮蒼本人の直接介入はなかったので、何を 目論んでいるのかイマイチ定まりませんでしたが、この辺りも進展があれば徐々に見え て来るのでしょう。多分冬麻の実姉である真霜雪姫の色々気になる所も同様に。  既刊感想:       Novellette 2005/12/16(金)バクト!VI The Hustler
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:海冬レイジ/イラスト:vanilla/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  今年1月のデビューからあれよあれよで年6冊、隔月ペースの最速刊行で突っ走って 来たこのシリーズも完結目前。あとがきの様子だと既に最終巻の進行も余裕綽々な感じ で、何か来春までには刊行されそうな勢いがある。シリーズ初期は賭博勝負メインのギ ャンブル小説として、そこから徐々に素子先生の成長しないヘタレたへっぽこぶりを生 暖かい目で見守るのが楽しみになり、気が付けばギャンブル要素はギャンブル“風味” に落ち着いて、何と今回は連続自殺事件なんて真っ当なミステリっぽい流れに。  今回は賭博要素もあるけれど、同時に自殺事件の連鎖が絡むミステリ要素も含み、伏 せられていた沙都里の過去を軸に幾つもの事実が絡み合ってゆく展開。一時ワンパター ンに陥り気味だった構成も、前巻からか複雑に組み立てているのが窺えまずまずの感触 で上昇傾向。その辺りは今回も適度に複雑さが効いていて良かったんじゃないかなと。  毎回変わるメインギャンブルの内容。今回は花札。二人一組で対戦する四人の『対番 打ち』と呼ばれる勝負。これもまた今まで同様、ゲームを知っているかそうでないかで 文章描写の理解度に差が出てしまうような気がする(私は各札の役割と出来役は知って いたのでそれなりにでした)。勝負風景はコンビ打ちの麻雀みたいなもんで、相手にバ レないように練られた通しのサインとか、結構面白い要素だなーと眺めてました。  しかし肝心の最後の勝負がイマイチ盛り上がらず……いつもの事だけど。ウエムラと の勝負は沙都里にもヒロトにも関係の浅くない重要事項なんだから、もっとじっくり描 いて欲しかったなぁ。まあともあれ物語はいよいよ次巻で完結。ヒロトが最終的に誰と 向き合うかは定まっているので、あとは面白くなってくれるのを期待して待つのみ。  既刊感想:IIIIIIV 2005/12/14(水)食卓にビールを5
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:小林めぐみ/イラスト:剣康之/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  ふと気が付けば何時の間にやらもう5巻。読めばビールが美味しくなる……かどうか は実践した事ないので分からないけれど、おつまみ程度の異星人遭遇小話色々。家で旦 那と学校では親友先輩後輩と、やってる事はほぼ毎度変わらず。多分これからも。なの に不思議と飽きが来ないのは結構凄い事なんだろうか? ……いや、改めて凄いかと意 識してみると正直絶賛とまでは行かないんだけど、マンネリには陥らせない妙な魅力に 惹き付けられる。じわじわ染みているのはこの物語じゃないと味わえない個性か。  今回は『イカ編』『スポ魂編』『魔王編』辺りが好み。とりわけ面白いなと感じたの は、作中で人妻女子高生小説家が書いたらしい小説(旦那の勝手な弄くり込み)の内容 が描かれていた魔王編。著者の小林さんて前はこういうファンタジー系な路線を走る方 だったな〜、と何となく懐かしさを覚えたりとか。あとこの人妻女子高生、普段からサ ッパリ“小説家”としての顔が見えないもんだから、ちゃんと小説家としての仕事もこ なしてるのかと。大抵小説のネタという名の異星人関連騒動に巻き込まれてばかりだか らね〜(本当にネタを活用してるのかどうかは、それこそ全然見えやしませんが)。  既刊感想: 2005/12/13(火)GOSICKV ―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋―
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:桜庭一樹/イラスト:武田日向/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  表紙、口絵、本編……くっ、微笑ましく見せつけやがって! と、殺人事件が起こっ たりヴィクトリカを利用する父親や守ろうとする母親が登場したり過去の科学とオカル トの対立が根深く絡んだり、結構大変な状況に陥ってるのに、この一弥とヴィクトリカ のいちゃつきっぷりはどうだろう。特にヴィクトリカの方が、連れ去られて監禁された 孤独から一弥に救われたからか、デレ具合がこれまで以上に素晴らしかったと思う。  二人がお互いを強く必要として求め合う感情は、もう心の奥底にさり気なく仕舞われ ているものではなくて、ハッキリ目に見えて表に出ている。まあヴィクトリカは相変わ らず手加減なしで叩いたり蹴っ飛ばしたりしてますが、それが嫌いな奴を寄せ付けたく ない威嚇なんかじゃなくて、どうしようもなく抑え切れない好意の裏返しだと分かっち ゃってるもんだから余計に可愛く微笑ましくて仕方がない。一弥の方も頼りなくて及ば ない事を言われるまでもなく自覚しつつ、なりふり構わず大事な一人の女の子を救う為 に走り続け支えになる姿は、何よりもの強さの証明でなかなか格好良く映りました。  殺人事件のトリックに関してはいつもの如くと言うのか、あまり推理感覚で惹き込ま れる事はなく、皆の前での真相語りもなく、予想の範疇も超えてなかったのでラストの ヴィクトリカの解説で「ふぅん」と納得させてもらう形で終わり。と言うよりブライア ン・ロスコーとヴィクトリカの両親絡みの事や、科学アカデミーとオカルト省の根深い 確執による背景の方に興味を惹かれて、殺人事件に構ってる余裕が無かった。その辺の ストーリーラインがしっかりしていれば充分面白く読めると思うので、殺人事件起こし てトリックを盛り込まなくてもいいかな……とか……言っちゃ拙いだろうか?  既刊感想:IIIIIIV        2005/12/12(月)ROOM NO.1301 #7 シーナはサーカスティック?
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:新井輝/イラスト:さっち/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  毎巻のスタイルでプロローグに未来確定図を描いている点。これがシリーズ初期の頃 は「ホントにこうなるの?」と随分遠い未来に感じていたものだけど、前巻辺りからか その未来が徐々に近付いているような気がする。毎巻のプロローグの積み重ねがもうそ う遠くない未来だと強く感じたのが、今回の健一とホタルの決着とも言える一件。  何巻だったか、結婚したホタルのエピソードの中の“生まれた子供が健一に似ている” って辺りにどきっとさせられた事。「まさかな……」と思いつつずーっと引っ掛かり続 けてたその辺りの真相が明かされた事で、先に描かれた未来が直ぐそこまで迫っている のだろうかと感じたのですね。実際には数年後だから全然直ぐではないんだけど、未来 に近付いていると言う事は、そろそろ現在進行展開の結末も見え始める頃なのかなと。  その現在進行展開では事実上の決着――別離による終止符と見ていいホタルとの関係 と、佳奈と和解したはいいけど更に日奈とシーナとの関係が複雑にこじれてしまう日奈 佳奈姉妹の佳境編(前回総まとめと書いてしまってけれどまだまだ続いてました)。  しかし今回の日奈はこれまで抱いていたイメージとちょっと違って見えた。意外と大 人しくないじゃないかと。友達として親しさが増した健一の前で見せたものだから、こ っちが本来の地なんでしょう。シーナとの使い分けを利用して佳奈と親密になろうとし ている報いは、多分近い内に『正体がバレる』形で受けるんじゃないかなぁ……。  個人的には彼女らしくない千夜子が幸せそうで嬉しかった。健一と千夜子自身の性格 による所で彼女らしくなく映るのかも知れないけど、今回のデートではお互い理解し合 えているのが分かってにんまりさせられました(多少変なやり取りはあるけどね)。  既刊感想:#1#2#3#4#5#6       しょーとすとーりーず・わん 2005/12/11(日)AHEADシリーズ 終わりのクロニクル7
(刊行年月 2005.12)★★★★★★★★★★(10/10) [著者:川上稔/イラスト:さとやす/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  ……終わった。燃え尽きました。進撃せよ、進撃せよ、進撃せよ! ゴーアヘッドの 高らかな響きに乗って、苛烈な攻撃も些細な事だどーって事ないぜあはははは! なノ リで、とにかく押して押して押して押して押して押しまくる。文字通り最大最凶の難敵 を前にした勝利の為の戦略は十二分に練られていたけれど、もう終盤なんかそういう緻 密さ綿密さと関係なく、佐山を中心に勢い任せで一気に押し切っちゃう感じでした。  二転三転の戦いに次ぐ戦いで戦いに明け暮れるばかりではなく、丁度いい具合の休息 時間もあったりで物語に適度な緩急も加えられていたし、あまりの頁数だから一気にい かず手を休める事はあったけど途中でダレる事は無かったです。まあ文庫領域を超える 形態で読み難いのがちと問題ではありますが、この最終巻の物語の勢いを考慮すると、 分冊で進撃を区切るよりも、無茶をしてでも一冊に収めた効果はしっかり出ていて良か ったんじゃないかなと(実際何処をとっても区切りようがなかった気もするし)。  あとは新庄のまロさここに極まる! ってな具合で佐山と新庄は最初から最後までバ カップルよろしくいちゃいちゃいちゃいちゃやってます(真剣勝負中の“まロ念”発言 には完全虚を突かれて思わず吹いてしまった)。エピローグのラストシーンを見て思っ たのは、この物語は沢山のキャラクターによって紡がれて来たけれど、結局一番最初か ら一番最後まで佐山・御言と新庄・運切の二人による二人の為の物語だったんだなぁと。 そう実感させられました。……とは言いつつも、初期の頃の細かい所は色々記憶が薄れ ているだろうから、足跡を確認する意味でもう一度最初から読んでみたい。結末まで辿 り着いたのだから、当時掴み切れなかった事実の数々も今度はきっと掴める筈。  既刊感想:1<上><下>、2<上><下>、3<上><中><下>、4<上><下>       5<上><下>、6<上><下>


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