NOVEL REVIEW
<2006年02月[後半]>
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02/28 『シリアスレイジ3 虎落笛』 著者:白川敏行/電撃文庫
02/19 『小さな国の救世主 なりゆき軍師の巻』 著者:鷹見一幸/電撃文庫


2006/02/28(火)シリアスレイジ3 虎落笛

(刊行年月 2006.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:白川敏行/イラスト:やすゆき/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  虎落笛(もがりぶえ)=“冬の激しい風が柵や竹垣、電線などに吹きつけて発する笛 のような音”だそうで。そういう言葉の意味が似合う、変異種採集者を目指す篤志の冬 季サバイバル試験。好敵手として認め合った篤志好き好きな蓮堂貞教も再登場。  ん、何となく巻を重ねる度に読み易くなっている気がするのは、一巻目の徹底的な設 定描写が余程印象に残っているからだろうか? 押さえておくべき必要な設定は最初で 殆ど盛り込まれていたのかなぁとか、徐々に変異種採集者となるべくの篤志の成長がメ インとなりつつあるのかなぁとか。とりわけ篤志自身は何でもこなせる完璧人間でやや 面白味に欠けていた初期の頃と比べると、今回は特殊能力を駆使しても本職の変異種採 集者には到底及ばない未熟さがもろに出ていて、そういった所にこそ成長物語としての 面白味が感じられて良かったと思う(実際篤志の力が及ばずなシーンも多かった)。  ただ、主要キャラを余す事無く描こうとした結果なのかどうか、それぞれの状況が分 散し過ぎて広く浅くな手応えだったのが惜しい所。イリーガルイージスの方は直接篤志 達とは絡まなかったにしても重要な役所だから必要だとしても、美雪や菱尾&館森の夫 婦漫才とかは……まあ嫌いじゃないんだけど、出来れば試験に臨んだ篤志達や『神』と 変異種狩りの辺りを重点的に描いてくれてたらなと。美雪は結局あまり絡まないし、菱 尾&館森にはそんなじゃれ合いどっか別の時にやってくれとツッコミ入れたくなった。  既刊感想: 2006/02/19(日)小さな国の救世主 なりゆき軍師の巻
(刊行年月 2006.01)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:鷹見一幸/イラスト:Himeaki/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  いまどきの日本人旅行者が騙され身包み剥がされ大草原のど真ん中にほっぽり出され て途方に暮れて「一体どうすりゃいいんだ!」な叫びの駆け出し。で、その国の内戦に 巻き込まれて流されるままに中心人物達と関わってゆく展開。これで龍也の事を“軍師” と呼ぶには激しく抵抗があるのだけれど、望む望まないにかかわらず彼にとっての様々 な非日常と言える体験を描いている辺りはタイトル通りのなりゆき任せな物語。  主な二つの勢力の争いで主人公側が劣勢な辺りは前の同著作のシリーズとかでも見て るので、「何か似通ってる」以上の印象は得られなかったけれど、“主人公側が理想の 正義を掲げ、対する敵側が絶対悪の存在”という毎度型通りな組み立てとはちょっと違 っていたかも。主に敵さんの方。一枚岩ではなくて相反する関係があったりと結構人間 関係複雑に絡んでるなと。でもまあ今回指揮してたリューコフ将軍は良くない意味で予 想を裏切らないヘッポコぶりでした。次はもうちょっとマシな人であって欲しい。  それから龍也の奇策ってのは、自力ではこの戦力差と戦局をどうにも出来ないからこ その考え方で、自分の力量をよく分かっている行為。ただ、そう思う反面「それでいい のか?」と受け入れ難い部分もあったり。また同じ手を使われたらちょっと嫌だなぁ。


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