NOVEL REVIEW
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07/31 『ご愁傷さま二ノ宮くん5』 著者:鈴木大輔/富士見ファンタジア文庫
07/29 『七人の武器屋 天下一武器屋祭からの挑戦状!』 著者:大楽絢太/富士見ファンタジア文庫
07/29 『ムーンスペル!! あの日と同じ月の下で』 著者:尼野ゆたか/富士見ファンタジア文庫
07/29 『マテリアルゴースト2』 著者:葵せきな/富士見ファンタジア文庫
07/21 『おあいにくさま二ノ宮くん1』 著者:鈴木大輔/富士見ファンタジア文庫
07/21 『とりあえず伝説の勇者の伝説7 努力のタイムリミット』 著者:風見周/富士見ファンタジア文庫
07/21 『殺×愛3 ―きるらぶ THREE―』 著者:風見周/富士見ファンタジア文庫
07/19 『EME RED7 COLOSSEUM』 著者:瀧川武司/富士見ファンタジア文庫
07/19 『伝説の勇者の伝説10 孤軍奮闘の王様』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
07/19 『煉獄のエスクード3 RHYTHM RED BEAT BLACK』 著者:貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫
07/17 『BLACK BLOOD BROTHERS5 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 風雲急告―』 著者:あざの耕平/富士見ファンタジア文庫
07/17 『とりあえず伝説の勇者の伝説6 死力のダンスパーティ』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
07/17 『烙印よ、想いを蝕め。SCAR/EDGE3』 著者:三田誠/富士見ファンタジア文庫


2006/07/31(月)ご愁傷さま二ノ宮くん5

(刊行年月 H18.05)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鈴木大輔/イラスト:高苗京鈴/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  二ノ宮家でサバイバルゲーム勃発。但し、最初から仕組まれているのも誰が仕組んだ かも分かり切っているシロモノ。今まで二つの要素――ラブコメ=軽いノリの騒動劇と、 シリアス=真由と麗華の敵対関係から内に秘められたサキュバスの性質に至るまでがゆ らゆらと均衡を保ちつつ揺れていたのだけれど、一気にシリアスへ傾いて今後の方向性 が何となく定まった? という印象。身のある内容かどうかがちと微妙な具合だったの は、次への伏線張りを重視していたからか。新事実はぽろぽろと出てたようだけど。  これはもうラブコメではない! ラブコメの皮を被ったシリアスでちょっとダークな 恋愛ゲームだ! とか、そろそろ強調しておかなきゃね……と思わされたのが良いのか どうなのか掴みかねている所。正直ラブコメで明るく楽しくやってた方が好みだけど、 そういう成分は連載短編で補ってくれてるから、長編はシリアス路線でいいのかなぁ。  まあ何はともあれ真由と麗華の関係が多少改善された事については、素直に良かった 良かったと胸を撫で下ろすばかりで。しかし麗華様も相変わらず不器用で面倒臭い性格 曝け出してるよな〜。と微笑ましい目で眺められてるのも、敵対関係でも真由を認める に足る存在と見れるようになったからこそ。不快感剥き出しで理不尽な物言いを真由に ぶつけてる時なんか、ギスギスした重い空気満載で息苦しいったらありゃしない。  さて次はどうなる? ラストの彼女の変貌からサキュバス絡みがメインだろうか。  既刊感想:ご愁傷さま        おあいにくさま  2006/07/29(土)七人の武器屋 天下一武器屋祭からの挑戦状!
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:大楽絢太/イラスト:今野隼史/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ第3巻。ホントこのシリーズって大好きだ。ここ最近読んだ中ではマイベス トシリーズかも知れないな〜。2巻目まではまだ手探り感覚が抜け切れなかったのだけ ど、この巻読んで確かな実感を得た。この自分の惹き込まれ方は半端じゃないなと。  この抗えない感覚って何だろか? と考えてみて、やっぱりキャラクターの魅力に惹 かれる部分が大きいんだろうなぁ。精一杯の情愛込めて「愛すべきバカ達」って言って みたくなったりとか。実際にマーガスを中心におバカなやり取りが多く、何か大事を起 こす度にトラブルに見舞われたり巻き込まれたり、それでもどうにかこうにか協力しあ って乗り越えてゆくってとこが凄く好きだなと。今回もまたいきなり“大雪に店が押し 潰されちゃって全壊”とか、とんでもない災難に見舞われたのだけど、果たしてこの絶 望的状況を7人はどう打開してみせてくれるのか? と期待感一杯で胸が膨らむ。  とは言え「次回に続く」で終わっちゃって天下一武器屋祭ってどんな事するのか殆ど 分かってないから、それは次に回すとして今回の話。一番の見所は金稼ぐ為に命を張る 『三匹の戦場の武器屋』……いやここは笑い所か。商魂逞しいと言うか何と言うか、命 懸けの綱渡りでよーやるよアンタら。こいつらなら荒野に捨てられても何とかなるだろ と楽観視出来る雰囲気はあるのだけど、無事ケンジと合流した時にはホッと一息。  既刊感想:レジェンド・オブ・ビギナーズ!       結婚式をプロデュース! 2006/07/29(土)ムーンスペル!! あの日と同じ月の下で
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:尼野ゆたか/イラスト:ひじりるか/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ最終巻。あーもーそういうのはもっと前の段階で語っといてよ! と、声を 荒げずにはいられなかった。そもそもジョージは“何故”エルリーを利用して“何か” を成し遂げようと謀略を巡らせたのか……この“何故”と“何か”を物語に組み込むの があまりに遅過ぎたから。もうケリがつきそうな最終巻の終盤でそんな重要な話を聞か されても……エルリーの過去とジョージとの因縁を軸にするならば、こうなる事を望ん でいたジョージ自身の内面を前巻か前々巻辺りから少しずつ掘り下げて欲しかった。  とは言え実際“エルリーの過去とジョージとの因縁”に関しては主軸になり得てなか ったから、余計微妙に感じてしまったのだけど。途中から差し込まれた“女王に謀反を 企てた反乱分子の討伐”なんて要素はお荷物でしかなかったのでは……というのが正直 な所で。これが王国詠唱士を目指すクラウスメインで行ってくれてたら、また効果も違 ったものになってただろうけど、最後はやっぱりエルリーがメインだったからなぁ。  まあぶっちゃけてしまうと「三角関係でラブコメやって欲しかった!」が初期の段階 から最も望んでいた事。願い叶わずで仕方なし。ラストでそういう雰囲気がちょっとだ けあったのと、完結まで漕ぎ着けたのとで最後にちょっとだけ満足度点も上昇。  既刊感想:ムーンスペル!!       霧の向こうに……       真夏の迷宮       背中合わせの風景 2006/07/29(土)マテリアルゴースト2
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:葵せきな/イラスト:てぃんくる/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  なんつーか……ダメだこの主人公。これだけ相容れられない程ムカつくのは何故だろ う? 蛍が「死にてぇ」と零す度に「そんなに死にたきゃ死なせてやろうかゴルァ!」 とかその覇気の無いツラ殴り飛ばしたくなっちまうんだよ! しかも大部分が蛍の一人 称なもんだから、彼の心の内にどうしても近付かなければならなくて、だから余計にム カつきが募る。おそらく近しい人(ユウや鈴音)の気持ちに全く気付けない鈍感に鈍感 を重ねた鈍感さ加減が原因なんだろうなと。蛍の場合、気付いていても表に出すと照れ 臭いから隠してるんじゃなくて、本当に好意に気付いてないらしいから性質が悪い。  ……あああまた蛍に対する愚痴ばかりに。ただ、鈴音が傷付けられた事で感情剥き出 しにして敵に立ち向かった終盤の蛍の姿からは、普段と違う雰囲気が感じられて良かっ たかな。まあ怒ってもブチキレても能力アップするわけじゃないので、お世辞にも強い とは言い難いけど、大事な人を守ろうとする必死の姿は頼もしく格好良く男らしいもの だった。……もっとも、蛍は黙って女装してる姿が一番お似合いだと思うんだけど。  そういやユウの無くした記憶の事は結局どうなったんだ?(元々最初はここに焦点が 当たってた筈……だよね確か)。今回蛍のハマり過ぎな女装姿に気を取られてた隙に見 事にスルーされてしまったけど、次はきちっとメインに据えて触れて欲しいな。  既刊感想: 2006/07/21(金)おあいにくさま二ノ宮くん1
(刊行年月 H18.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鈴木大輔/イラスト:高苗京鈴/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  これも富士見ファンタジアの基本形式に沿ったもので、ドラゴンマガジン連載分に書 き下ろしを加えた短編集。ただ長編も短編も雰囲気があまり変わらない辺り、割とキッ チリ線引きが為されている他のシリーズとはちょっと異なる手応えだったかも。まあ長 編の場合は一冊の流れが大抵ラブコメ→シリアスって感じなんだけど、短編の場合はラ ブコメ→ラブコメ→ラブコメ→ずっとラブコメだから多少の違いはあるのかな?  各短編の中身はと言うと、真由の男性恐怖症克服の為に峻護が一生懸命力を入れてい る辺りが印象的。長編の方も今は麗華との峻護争奪が主だけど、最初はそんな感じだっ たんだよね。力を入れ過ぎて斜めに突っ走ってる部分が笑い所。幾度もビッグマグナム 暴発寸前になりながら、辛うじて理性を保ち続けたあんたはエライ! もっとも、ヤっ ちまったら精気吸われて即ミイラ化じゃさすがに本能のままには動けないよなぁ。  あとは真由が大人しくて人見知りで物静か、な印象から徐々に逸脱し始めているのも 面白い。“可愛いけどちょっと変な子”になりつつある(エピソードを挙げると『真由、 アクロばるのこと』とか凄かった)。そういうのは大歓迎なのでどんどん変な方向へ走 って欲しいと思う。そして最後にやっぱり麗華の存在感が強烈だなと思い知らされた。  既刊感想: 2006/07/21(金)とりあえず伝説の勇者の伝説7 努力のタイムリミット
(刊行年月 H18.03)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  「なんか色々やってたらイエット共和国壊滅しちゃいました……てへっ(はぁと)」 ってな雰囲気でしたまじで……おいおい。もしくは「なんか色々やらかしてイエット共 和国壊滅させちゃいました……ライナが……てへっ(はぁと)(フェリス談)」ってな ノリでしたまじでまじで……うおーい。或いは「もう随分イエットに滞在しまくってい い加減飽きちゃったからイエット編の幕引くために壊滅させちゃおっか? ええいさせ ちゃえ〜……てへっ(はぁと)」……いやいやさすがにこれは何かの間違いだと思いた いぞ。と、そんな具合で気が付けばイエット大壊滅で綺麗サッパリ終わってた。  短編集だけど続き物で、普段大馬鹿一直線なライナやフェリスが結構マジ顔で、少々 雰囲気の異なる内容。とは言え長編みたくどシリアス展開ではなく、あくまで短編集ら しい軽さを含むもので、ホントに勢い任せでイエット滅ぼしちゃったという感じ。  まあ滅んじゃったのはしょうがないので、次なるローランド編を楽しみに待つ事にし て、それとは別に今回は書き下ろし分が面白かった。かつてライナと共にジェルメの下 で魔法を学んだピアとペリアが成長して再登場(当時のエピソードはとり伝3、4巻に 収録)。ゾーラに暗殺の標的として定められたライナはどうなる? ピア、ペリアとの 再会はあるのか? 何だかんだで話は終わらず。色々楽しみが膨らむ続きに期待。   既刊感想:伝勇伝 10       とり伝  2006/07/21(金)殺×愛3 ―きるらぶ THREE―
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:風見周/イラスト:G・むにょ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  何時誰が何処で天使の犠牲になるか分からない危機感と緊張感を常に孕んだこの世界 の日常の中、全くそぐわなくてもちぐはぐであろうとも形成されつ続けて来た『学校生 活』という風景。表向き愛想良く付き合う素振りを見せながら、心の中では数歩身を引 き冷めた視線で見据えている密でさえも、時折ぬるま湯の温もりに身を委ねてしまう事 がある。多くは無意識の内に。そういう偽らざる心を如実に表していたのが今回。  学園ラブコメ風味はこれまでよりも薄味。アダムが仕向けた天使との戦いの最中、密 とサクヤの関係の推移をより明確に描いているのが今回の大きな特徴。サクヤの気持ち は恋を知らない少女だった初期の頃から着実にステップアップしていて、巻を重ねる度 に成長の跡が窺えるのはこれまでと一緒。違っていたのは密の方。“あの人”と再会を 果たす為なら何処まででも冷酷になれる奴……という印象が強かったのだけど、一方で 冷酷に徹する為に誰とも深く関わらないようにしている部分もちらっと見えたり。  つまりそれは“近しい人達をオメガという存在に選ばれた自分から遠ざける為”では ないだろか? と。おそらくそうだろうって見方はあっても、密の態度か本心か偽りか 曖昧だったので確信は持てずにいたのだけど、今回でハッキリしたかな? 利用するだ けの存在=サクヤに惹かれ始めている事実は、密の心をどう変えてゆくだろうか。  既刊感想: 2006/07/19(水)EME RED7 COLOSSEUM
(刊行年月 H18.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:瀧川武司/イラスト:尾崎弘宜/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  蒼や茜が紅と一緒に組んで任務に就くの「半年ぶり」とか「一年半ぶり」とか言って るのは、ドラマガ連載時の事なのか? そうだよな多分。雑誌掲載は追ってないのせい で、その辺ピンと来なかったからちょっと触れてみた。しかし蒼はともかく茜がそんな 長い期間紅と組まされなかったのは許せんな。まあネタには事欠かない変人ばっかりな ので、登場頻度に差が出てしまうのはしょうがない所だろうけど。特に茜は特殊能力有 しているとは言え、この中では大人しい性格だから埋もれ易いんだろうなぁ。  そんなしょんぼりな裏事情が垣間見えたような見えなかったような微妙な手触りの中、 茜には毎回登場&二回に一回は紅とコンビを組ませて欲しい! と声を大にして希望を 叫びたくなった今回。とは言え紅とのコンビを含め出番は結構あったのでまずまず。  印象に残ったのはCASE35『我輩は猫又である』。当然意図的にやってるんだろう けど、頁を文章でびっしり埋め尽くす描き方だったので。そういうのこの物語では普段 滅多にやらないもんなぁ(REDでは特に)。あと猫又視点でEME内を観察って内容 も面白かったから。紅と茜のツーショットシーンも堪能出来たし(結局それか)。  あと蒼が出した究極の選択。紅は焦りまくりだったけど、そりゃ蒼か茜かを選ぶなら 迷わず茜……って蒼の前で言える勇気があれば、紅だって多分迷わないだろう?  既刊感想:EME BLACK        EME BLUE        EME RED  2006/07/19(水)伝説の勇者の伝説10 孤軍奮闘の王様
(刊行年月 H18.04)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ローランド編の中編。珍しく多目の分量ながら中身がすかっとしてたせいか、まだ爆 発力が足らずで大きな推進力は生まれず。逆に伏線を敷き過ぎで、謎を溜めに溜めて溜 めまくった結果に比例して欲求不満も溜まること溜まること。今回の場合は特にライナ が踏み込んだ夢に似た場所での出来事。曖昧な表現があまりに多くて「何言ってんだか 全っ然分かんねーよ!」状態。作中でのライナの気持ちがこれと殆ど一緒だった。  ただ、これだけ謎やら伏線やらを抱え込んだからには、きっと次巻(ローランド編の 最終局面)辺りで怒涛の展開が待ち構えているに違いない! なんて期待感を寄せずに はいられない側面もある訳で。根本的な謎仕掛けとして挙げられるのは、ライナ・リュ ートとはそもそもこの世界にとって、或いは誰にとっての何なのか? というもの。あ まりに漠然とした問題なのだけど、少しでも解かれれば随分スッキリすると思う。  ライナの謎多き夢もどきが終わった後は、どうもまた「とり伝」っぽいコメディにな っちゃって、そんなのはあっちでやっててよ……とか溜息漏れてしまったり。だがしか しそれでも! “あの時”のフェリスは凄く良かった。とある人にとある図星を突かれ て全く反論出来なかった“あの時”……もうめちゃくちゃ可愛かった。眼福眼福。  既刊感想:伝勇伝        とり伝  2006/07/19(水)煉獄のエスクード3 RHYTHM RED BEAT BLACK
(刊行年月 H18.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:貴子潤一郎/イラスト:ともぞ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  世界にたった三人だけ存在する魔族の盟主。彼らが過去に一度だけ同じ席に集い、同 時に『赤い死』ことレイニーが魔族への殺戮を繰り広げた重要な歴史の一端が紐解かれ るエピソード。何らかの力が働いて薫は“過去に飛ばされたのか?” と、単純には飲 み込めない得体の知れない違和感があり、その正体を直ぐに掴ませてくれそうでいてな かなか掴ませてくれない焦らし方がなかなか絶妙ではないかなと。私なんかはどういう 原理か不明であっても違和感抱いても、「結局薫とルーシアはタイムスリップしちゃっ たんでしょ?」とか思って疑わなかったからなぁ。そういう違和感匂わせつつあっさり とは悟らせない描き方が実に巧い(私が極めて浅慮なだけかも知れないけどね)。  そういやあとがきに「残り二冊」なんて事が書かれていたけれど、正直未だに物語の 方向性を掴みかねているせいか、「これからどういう展開になるんだ?」なんて首捻っ てしまったりとか。今回一冊分使って過去のワンシーンを見せたからにはアルフェルム、 トゥロワヌも黙って構えてばかりではいないだろうし、そうなると彼らが何の目的で動 くのか? という部分が重要になって来る。実はそこが不明瞭なんだよねぇ。  もし新たなレディ・キィが発見されたならば、それこそ盟主達が自ら動かなければな らない大きな要素となるのだろうけど……。やっぱり次はそこに何か進展が見られそう な予感がある。ただ今現在まだ続刊予定が上がってないので、どれだけ待たされるかと いう不安が多大にあるのだけれど、期待を膨らませながら気長に待ってみようか。  既刊感想: 2006/07/17(月)BLACK BLOOD BROTHERS5 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 風雲急告―
(刊行年月 H18.02)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:あざの耕平/イラスト:草河遊也/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  6巻カモォーン。読了したばかりなのにもう待ちくたびれちまったぜ(しょうがない からこの喉の渇きは未読の短編集2巻目で癒すとして)。3巻から1年経って第2部ス タートという位置付けの今回も息をつかせぬ怒涛の展開。しかもこの密度でさえまだ後 々に起こるであろうと予想される事態の切っ掛けに過ぎないんだもんなぁ。  実際に息をつかせぬ状況の始まりは、特区の根底に抱える矛盾が露呈し、人間と吸血 鬼の信頼関係が破綻し始めたとある事件から。それまでは短編集の延長線上の極めて御 気楽な、でもミミコにとっては綱渡りな、しかしやっぱり苦笑の入る余地のある楽しい 雰囲気だった(ジローとコタロウが大ボケかましたせいでミミコがほったらかしにされ てしまいピーンチ、な辺りとか特に)。思い返せば後に控えていたミミコが直面する事 になる過酷な『試練』。これを強調する為に置かれた『幸福』だったのかも知れない。  それにしても……特区で“人間と吸血鬼が共存している”実態は、無関係な一般の人 間達には知らされていない、と言うより隠蔽され続けてきた事。正直目の前に突き付け られるまで失念してた。一般人は吸血鬼の存在を暗黙の了解で黙認してると思い込んで たんだよねぇ。でも違ってた。元々無理があって相当に軋んでいた特区の堤防がとうと う決壊してしまった現実。人間側の視点で見た人間側に都合の良い人間側の理想、これ を吸血鬼側に押し付けていただけだ、と。共存の道は遠く険しく、ミミコは独立の道へ 押し出され、『九龍の血統』も本格的に動き出す。もう続きが楽しみで仕方がない。  既刊感想:       (s) 2006/07/17(月)とりあえず伝説の勇者の伝説6 死力のダンスパーティ
(刊行年月 H17.08)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  基本的に奇人変人変態大集合な短編集なのだけど、今回そういう要素がいつにも増し て色濃く表れていて、奇人変人変態指数も大幅パワーアップな内容。「……って今まで だって充分酷い奇人変人変態指数なのに露骨にパワーアップしてんじゃねぇ!」とか毎 話ライナの叫びが聞ける程。何かこうしてお馬鹿なやり取りを眺めてると、普通の一般 人と比べて充分変人なライナが意外と常識人に見えてしまう辺りが恐ろしい空間。  喋るブタのぬいぐるみにナイフとフォークを突き刺した物体を「これは槍だ!」と言 い張る槍使いの変人に付き纏われ、幼い頃結婚の約束したらしい少女に追い回され、イ エット最大勢力のマフィアのボスには女装で迫られたり下着ドロの濡れ衣を着せられ女 性達にシメられ、挙句は日常茶飯事で剣を突きつけ脅迫しまくるフェリスにコキ使われ て……あれ、なんか涙で前が見えないよ。それくらいライナに同調してしまった。  まあどいつもこいつも自分の都合の悪い言葉は耳に入らないらしいので(これは多分 ライナも含まれる)、まともに相手するだけ馬鹿を見るってもんだけど、相手しなけり ゃしないで際限なく増長するからタチが悪い。だからライナは無条件で馬鹿を見る運命 なんだな。あ〜そういやお二人さん、一体何時までイエットに滞在するつもりだ?  既刊感想:伝勇伝        とり伝  2006/07/17(月)烙印よ、想いを蝕め。SCAR/EDGE3
(刊行年月 H18.03)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:三田誠/イラスト:植田亮/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  名前しか出てなかった『名もなき七人』続々登場。漠然と抱いていた想像を(大抵は 良い方向に)色々裏切ってくれる。主にちひろ関連の事とか。伏せられていた新事実も 続々と明かされ始めて、加速度アップで一気に盛り上がってきたかなという感触。  今回大きな動きを見せたのが前述の通りで表紙も飾っているちひろについて。彼女は キズナのような“傷”持ち(スカード)として戦う義務も使命もなく、『名もなき七人』 の一部が半ばゲーム感覚のような関わりを示している烙印システムとの関係性もなく、 特殊な能力も特別な事項に関与する能力もない一般人代表の視点から関わる存在と思っ てた。でも違ってた。よもや最も烙印システムに深く関わる存在だったとはねぇ……。  キズナにとってはそのちひろの身に起こった事実が重く圧し掛かる。何せ過去にキズ ナ自身がちひろの心を救った事が切っ掛けで、現在のこういう状況に至ってしまったの だから。でも、救わなければちひろは確実に“傷”持ちとなっていた、と告げられては 過去の選択が正しかったのか間違いだったのかキズナが苦悩するのも仕方のない事。  問題は幾つか。キズナがちひろを受け留め前に進めるか? これは多分ちひろを救う 意志が消えてないので大丈夫。『名もなき七人』の内の『灰色脳』は最終的に何をどう したいのか? こっちは正直よく分からない。どうにも直接的ではない面倒臭くて回り くどい語りが多くてなぁ。もうちょっと動いてくれたらそれなりに掴めそうな感じ。  既刊感想:


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