NOVEL REVIEW
<2006年08月[後半]>
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08/31 『らぶとラブる!? 恋愛ジャンクション』 著者:早見裕司/富士見ミステリー文庫
08/30 『天高く、雲は流れ7』 著者:冴木忍/富士見ファンタジア文庫
08/29 『ひと夏の経験値』 著者:秋口ぎぐる/富士見ドラゴンブック
08/29 『七人の武器屋 激突!武器屋VS武器屋!!』 著者:大楽絢太/富士見ファンタジア文庫
08/27 『とりあえず伝説の勇者の伝説8 権力のワンダーランド』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
08/22 『SLASH/DOG1 ―スラッシュ・ドッグ 胎動―』 著者:石踏一榮/富士見ファンタジア文庫
08/21 『あめーじんぐ・はいすくーる 可愛い魔獣、飼いませんか?』 著者:長野聖樹/富士見ファンタジア文庫
08/19 『ソード・ワールド・ノベル ダークエルフの口づけ』 著者:川人忠明/富士見ファンタジア文庫
08/19 『楓の剣!』 著者:かたやま和華/富士見ミステリー文庫
08/18 『エクスプローラー 覚醒少年』 著者:北山大詩/富士見ミステリー文庫
08/16 『BLACK JOKER ―少女たちの方程式―』 著者:あくたゆい/富士見ミステリー文庫


2006/08/31(木)らぶとラブる!? 恋愛ジャンクション

(刊行年月 H18.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:早見裕司/イラスト:桐野霞/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  シリーズ第2巻にして見事なまでにバッサリと打ち切られてしまった……。続くんだ かそうでないんだかあやふやなまま切れてるんじゃなくて、物凄い強引な手段で形だけ は何とか無理矢理終わらせました、といった具合。『あれ』なるモノに百八個の愛を注 ぎ込むのが理事長の目的で、男子生徒も百八人ときっちり合わせてる所から、きっと圭 介が『愛の事件』を解決する度に注ぎ込むべき愛が集まってゆくとか、そういうシリー ズ展開が想定されていた筈。もしシリーズ続行だったなら、今回は“赤いハイヒールを 履いた男子生徒”に関する事件を解決した所までで終わってたんじゃないかな?  そこから先は、多分ずっと続いたシリーズの一番最後に描きたかったエピソードだっ たのではないだろうかと。そうでも解釈して自分に言い聞かせないと、あのポカーンな 終盤の展開は到底受け入れられそうになくて。それでも納得出来ないのは、本来こんな 中途で挟むべきシーンではなかったからだろうなぁと。『愛の事件』やら『公認カップ ル』やら突っ込み所満載なイッちゃってる要素を大部分の人間が受け入れてる世界って どうなの? と、それこそ登場人物の誰かに「そこんとこ突っ込んでやれよ」と言いた くなる事多々あれど、独自性という観点から見れば突出していたかなと。本当はもっと 続けたかったという著者の方の無念さがあとがきで滲み出ているのが切ない……。  既刊感想:学園サンクチュアリ 2006/08/30(水)天高く、雲は流れ7
(刊行年月 H11.04)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:冴木忍/イラスト:森山大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  第四藩王地で残された細かな後片付けと、第二藩王を目指すフェイロン達の道中の様 子が前半。復讐に駆られて闇に堕ちそうになる少年を親身になって救うアンクや、術者 を廃し独力で進もうとするジェドの政策などをシズマの視点から見せて「第四藩王は安 泰だ」ってのを示すのが目的か。まあおそらく第四藩王地に触れるのはここまでだろう けど、アンクの再登場はあるんじゃないかな? あと気になってるのは、結構前からフ ェイロン達の後をちょろちょろ付いて回ってるヤト=カジカ。何も知らないヤトはとも かく、裏人格で一癖あるカジカは行動目的が不明なのでちょっと不気味な存在。  後半は都が舞台。怪異騒動を追ったり太陽神殿での術者と予備百家とのいざこざを仲 裁したりで、精神的に一杯一杯になりつつある上に立つ者達。特にオルジェイとテンシ ャは余裕と精力が明らかに激減している癖に、互いに「誰よりも頑張らねばならない」 「決して弱音は吐けない」と気を張っているもんだからもう見てらんない。もしこれだ け張り詰めた糸がどこかで突然プツッと切れてしまったら……想像するのが恐いな。  と、思ってたら糸が切れるのはもう秒読み段階なのかも知れない。遂にライフォンが 表舞台に登場して、とんでもない事をやってのけてしまったから。いや、盛り上がりと しては急転直下で手応えありの面白さだったのだけど……これはしかし続きどうなっち ゃうんだ? この事実を“彼女”が知った時、果たしてどんな行動を取るだろうか。  既刊感想: 2006/08/29(火)ひと夏の経験値
(刊行年月 H18.08)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:秋口ぎぐる/イラスト:濱元隆輔/富士見書房 富士見ドラゴンブック]→【bk1】  俺はTRPGをプレイするのが好きでここに来てんだ! 美少女に気に入られようと しているクソッタレな取り巻きどもとは違うんだよ! てめぇら女目当てにTRPGや ってんじゃねぇよ! ……なんて口に出しては言えず心の中で罵詈雑言叫んでる青少年 が、実は参加者の中の誰よりも気になるあの娘を喜ばせようとTRPGという遊びを利 用している。そんな彼の台詞の何と痛々しい事か。どれだけTRPGに熱心だろうとも、 決して格好良くはならないイタさを意図的に含ませている。そういうとこ計算して描か れた巧さみたいなのが感じられた。まあ心の中で貶している奴ら以上に女の子に参って しまってるんだから処置なしだ。でも、彼女を喜ばせたい一心でがむしゃらに走ってる 友永の中に「格好悪いけど何かいいな」と思わせてくれるモノがあったのも確か。  TRPG未経験者はゲームの大まかな雰囲気が味わえ、経験者は作中のプレイヤーと 実際にプレイした事のある自分とを重ねて楽しめる所があるので、多分どちらでもいけ ると思う。ただ、やっぱり経験者(とりわけGM経験者)の方が馴染み深く楽しめるん じゃないかな? 私の場合はほぼ未経験者寄りで、どちらかと言えば友永達より菜々子 寄りに感情移入。数少ない経験の中で、確かにこういう楽しさだったのを思い出した。 2006/08/29(火)七人の武器屋 激突!武器屋VS武器屋!!
(刊行年月 H18.08)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:大楽絢太/イラスト:今野隼史/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ第4巻。天下一武器屋祭の後編。とりあえず大遅刻かましたロト・セブンは 七人全員から手加減なしのキツい一発を貰ってあげるべきなんじゃない? イッコの全 力は危険だけど死にはしないでしょ? 勇者なんだし。推薦してくれたのは渡りに船で 大助かりではあったけど、適当に間に合わせちゃいました的な不備の数々はちょっと酷 いと思うよ。まあそういうアクシデントがあったからこそマーガス達の必死の遣り繰り が腹抱えて笑える程に面白かった、とか平気で思ってるこっちも結構酷いんだろう。  しかし今回はまた……これまで以上にえらい強引でゴリ押しで勢い任せなノリで駆け 抜けちまったよ。おまけに運任せだったり終始綱渡りだったり。いや、これが毎度お馴 染みハイテンションな七人の持ち味が存分に発揮されていて楽しい事は楽しかった。  ただ、武器屋祭のイベント進行がやけに急ぎ足で過ぎ去ってしまった、と感じられた のが少々残念だな〜とか勿体無いな〜とか惜しいな〜とか。イベント自体の展開もそう なんだけど、メンバー個々の事情(とりわけミニィ、イッコ、ノン)にも、もうちょい 深く踏み込んで欲しかったかも(もう1冊引っ張って3巻分の濃い密度でやってくれて たら良かったかなと)。とは言え、個性的なキャラが個性的過ぎる路線で突っ走る笑い 所は多々用意されてたので、その辺は充分満足。次はエクス再建がメインか。物語はそ ろそろ佳境だそうで、今後どういう展開で結末まで持って行くのかも気になる所。  既刊感想:レジェンド・オブ・ビギナーズ!       結婚式をプロデュース!       天下一武器屋祭からの挑戦状! 2006/08/27(日)とりあえず伝説の勇者の伝説8 権力のワンダーランド
(刊行年月 H18.08)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  イエット共和国を海の藻屑と化した張本人ライナ&フェリス。恐怖の夫婦漫才コンビ が勇者遺産探索任務を放り投げて遂にローランドへ戻って来てしまった! 二人の悪魔 を迎え入れる事になった我らがローランド国王シオン。どうするシオン。頑張れシオン。 それゆけシオン。負けるな! 僕らのシオン・アスタァァァァーーーーーール!!  ……なんて。無理して熱く燃え上がってみてもやってる事は脱力系。まあシオンが二 人の対抗キャラとしてがメインに加わったお陰か、何処まで行ってもライナとフェリス の夫婦漫才中心だったイエット編から、ちょっと変化が見られたのは良かったかな?  てなわけで今回からローランド編。現状はとりあえずシオン最強伝説。さすが国王の 肩書きは伊達じゃない。シオン自らライナとフェリスをこき使おうと招いて、結果二人 の所業に手を焼いてる辺りは自業自得なんだけど、シオンを困らせようとして二人が起 こす無茶苦茶な騒動を逆手に取ってうまい事利用してハメ返してるもんなぁ。  フェリスでさえだんごを人質(じゃなくてだんご質?)にされて劣勢気味だし。戦闘 能力とは全く別の所で、しばらくの間はシオン>フェリス>>(×10000)ライナ、 という力関係は続いて行きそう。ライナはローランドに入って更に不遇な扱いだ。もっ とも、そんな状況も慣れてしまったので同情心すら湧かなくなってしまったけど。  既刊感想:伝勇伝 10       とり伝  2006/08/22(火)SLASH/DOG1 ―スラッシュ・ドッグ 胎動―
(刊行年月 H18.08)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:石踏一榮/イラスト:横溝大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  “使い魔を進化させて強くしてゆく”の所で真っ先に頭に浮かんだのがポ○モン。使 役者はポケ○ントレーナーって感じ? まあ当然ながら設定は違うし使い魔同士を闘わ せるわけでもないのだけど。ただ、進化する“切っ掛け”がどんなものかよく分からず、 その“切っ掛け”を鳶雄達に与えた『先生』なる存在が謎多過ぎなのだったりする辺り はちょっと気になる所(シリーズ展開なので続きを待つしかないんだろうけど)。  『ウツセミ』と呼ばれる敵や使い魔の性質は作中で説明あったから大体把握出来たけ ど、説明してるのが謎だらけな『先生』だから、こっち側(鳶雄達)はたとえその説明 の真偽が定かでないとしても、今は一つの手掛かりとして縋るしかないんだよなぁ。  その辺りで、裏で糸引く存在を掴みあぐねている鳶雄、夏梅、鋼生の一杯一杯な焦燥 感とか危機感とか、追い詰められている様子がしっかり描けていたのは良かったと思う。 いくら主人の身を守って戦う事の出来る使い魔を得たとしても、使役する主人は最近ま で自分が危険を冒して戦う事になるなんて想像もしなかったごく普通の高校生してたん だから、あっさり危機に陥るのは無理もない。今後は敵と対等以上の力で戦う為、使い 魔を進化させて強く成長させてゆく部分を強調して描いてくれたら嬉しいかなと。  ……しかしこれって初っ端の巻から既に殆ど救い無いんだよねぇ。ダメと言われたの を覆そうとして頑張るのかと思ってたんだけど……これから何を目的として進むのか。 2006/08/21(月)あめーじんぐ・はいすくーる 可愛い魔獣、飼いませんか?
(刊行年月 H18.08)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:長野聖樹/イラスト:芦俊/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  「ヨーコちゃんじゃ萌えねーよ!」だったのでとりあえず叫んでおく(ちなみにヨー コちゃんとは子ギツネの事で、何を言ってるかはあとがき参照の事)。いや、萌える萌 えない以前に意思表示が何処まで行っても「コーン」の一点張りなもんで、あんまし可 愛いとも思えなかったなー。ヨーコを愛でる和泉を間に置いてようやく「可愛い……の かな?」となるくらい。少なくとも異様にテンション振り切れてるあとがきで、しきり に可愛い可愛いと連呼してる程ではなくて。この小動物を愛でる情熱が文章描写に乗っ ていればもう少し面白くなってたのに……とは必ずしも言えない辺りが微妙な所。  物語の雰囲気はコメディのような軽快なテンポの騒動劇に近いのだけれど、実際には あまり纏まりがなく無軌道でバタバタやってた、という感じだったかなぁ。要所要所で もっと掘り下げて欲しいと思って「おーい、ちょっと待ってよー」と呼び掛けてみても、 聞く耳持たずに落ち着きなく先へ先へと突っ走るばかりで全然立ち止まってくれないん だもん。まあそんな感じで。勢いで押し切ろうとする流れにうまく乗れなかった。  和泉を獲得する為に、様々な人達が様々な手段を用いて追い掛けっこを繰り広げる辺 りのノリは結構好きなんだけどねぇ。どうも掘り下げ不足と描写力不足な面に躓く事が 多くて……。まだ仕込まれた伏線が幾つか隠れたままなので続きを待ってみよう。 2006/08/19(土)ソード・ワールド・ノベル ダークエルフの口づけ
(刊行年月 H18.08)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:川人忠明/イラスト:椎名優/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ソードワールドの世界……興味はあれど知識は極めて浅い私。TRPGはそもそもプ レイ出来る機会が少ないので、TRPGをプレイする為の知識はあまり渇望している訳 でもないのだけれど、小説に関しては長編短編合わせて最近急速に色々読んでみたい気 持ちがむくむくと膨らんで来たりとか。んで、今の所読んで雰囲気把握してるのが“へ っぽこーず”と“ぺらぺらーず”で、比較的ノリが軽く明るいエピソードを多目に読ん でたから、今度はシリアスでダークで重そうなの読んでみたい! と過去の作品漁ろう と考えてたとこでおあつらえ向きの新刊が……てな訳で興味を走らせ食らいついた。  本作の主人公、ダークエルフのベラ。神秘的でミステリアスな魅力を醸し出している 彼女の心の内は、結局欠片も覗かせて貰えなかった。一切感情的な面は表に見せないよ うにしているので全く隙が無い。でもそういう所も魅力の一つに変わり、彼女なら見せ て貰えないのも結局仕方ないと納得させられてしまう(もっとも、ラミアやフェルゴは ベラが無意識の内に感情を沈めようとしても容易く見抜いてしまいそうだけど)。  復讐心に別の復讐心が重なり、嫉妬怨恨憎悪などの黒い感情が混ざり合って繰り広げ られた暗殺劇も一旦収束。ただ、この物語はシリーズ展開で続いてゆくそうなので、今 後は現時点で上官と部下の関係でしかないベラとアマデオの距離に注目してみたい。 2006/08/19(土)楓の剣!
(刊行年月 H18.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:かたやま和華/イラスト:梶山ミカ/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  第5回富士見ヤングミステリー大賞『佳作』受賞作。  別段チョンマゲや日本史アレルギーではないけれど、“本格”でも“なんちゃって” でも時代小説ってのはすぐに敬遠したり食わず嫌いしたがる私。そういう人も食わず嫌 いせずに是非是非とあとがきで意気込み後押ししてくれたので、分かんない所は何とか 頑張って想像力でカバーするとして、この時代劇風味の怪奇事件に飛び込んでみた。  …………このバカップルが! と、嬉しそうにニヤニヤと横槍入れたくなる程に心が 通じ合ってる筈なのに、両者の背中を蹴っ飛ばして無理矢理くっ付けてみたいと思わせ てくれる程どうしようもなく素直じゃない楓と弥比古。ツンとツンのお約束的じゃれ合 い満載ながらも、こういう雰囲気はやっぱり素直に好きだな。ミステリとの融合なんだ けどLOVEの方が大盛りって所で、富士ミス路線らしい安心感が得られたりとかね。  現世に未練を残した死者の魂を操る……なんてのが大っぴらに描かれているので、純 然たるミステリではなくオカルトの方が色濃いのかな。まあ正直言って火事の犯人探し とかあまり意欲的にはなれない展開だったし。こんな風にこの物語は事件性のあるもの に超常現象的な要素が介入するんだよ、と明確に提示してくれたなら、今後はそういう のを活かす方向(例えば謎解き要素を絡めるのではなく、悪意を抱いて能力を振るう相 手を討つ役割を楓に与えて物語を展開させるとか)で楽しませて貰えたらなと。 2006/08/18(金)エクスプローラー 覚醒少年
(刊行年月 H18.01)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:北山大詩/イラスト:石田あきら/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  第5回富士見ヤングミステリー大賞『奨励賞』受賞作。  むう。キャラクター同士の会話がこうも味気なく感じてしまうのは何故だろう? 読 み進めている内に気にならなくはなったけれど、味気ないのに慣れただけの事? スト ーリーの中で各キャラクターの特徴を掴もうとする時、頼ろうとするのは大抵どの作品 でも外見的容姿の説明描写とキャラクター同士の会話なのだけど、この作品はどうもあ まり会話の中で特徴を掴む事が出来なくて。主に前半の透と響の会話で、特に響はちょ っと酷いかなと思う所も時々あったり……でも徐々に気にならなくなったって事は、自 分の中で味気なさが薄れて行ったって事なのかなぁ……よく分かんね。個人的な感覚で 物言ってみたけど、確かに最初の内響がどんな性質か把握するのに結構難儀してた。  それから物語の中身。超能力を有した少年少女と難事件との関わりについて。視力、 聴力、嗅覚に超能力が備わった人間が3人集まればそりゃ何でも出来るだろ? と思っ てたら案外そう上手くは行ってなかった。能力制限を設けるバランスの上手さもあるの だけれど、S級エクサーながら若さ故の体力的なハンデを負っているとか、そういう透 達の未熟な面をあえて露呈させて簡単に任務遂行させない点が面白い所。謎になってた 部分も最後でほぼ一本の線で繋がったから、その辺りの締め方は良かったかなと。 2006/08/16(水)BLACK JOKER ―少女たちの方程式―
(刊行年月 H18.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:あくたゆい/イラスト:風都ノリ/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  第5回富士見ヤングミステリー大賞『奨励賞』受賞作。  殺人事件と暗号解読。珍しくLOVEよりミステリ要素で押してく内容。もっとも、 殺人事件の真犯人を示す暗号ではなく、誰が何故被害者を殺害したかの手掛かりが隠さ れた暗号。だから犯人推理しながら読み解く面白味は案外薄かった。思い返してみれば、 途中から「真犯人は一体誰か?」なんて重要視されなくなっちゃってたからなぁ。  そもそも本気で暗号解こうって気力が湧かなかったよ私は……ごめん、面倒臭いとか そういう理由で。話が進むに任せて、ミシェルと真純によって暗号解かれた時は「ああ、 成る程ね」と頷いたり。重要な謎が隠されているのかと興味津々だった割に「内容はこ の程度のものだったのか〜」と、ちょっと拍子抜けだったり。結局「こんなの分かんね ーよ!」とお手上げ状態だったのだけど。ただ、頁の表裏に暗号の挿絵を載せるという アイディアは良いものだったと思う(透かして眺めて見たりとか出来たから)。  本来は中心から脇に寄せられた暗号解読よりも、ミシェルの謎に包まれた素性を考え ながら進めてゆくのが一番楽しめる読み方なのかも。女の子同士の深い友情を目の当た りにして、直ぐに百合百合と喰い付く自分をどうにかしたいとこだけど、まあ真純がミ シェルの冷めた心の徐々に溶かしてゆく辺りが最も印象に残る見所なのも確かで。ミシ ェルの方がちと過剰に見えてしまうのは、多分どうしてもどこか邪な気持ちで彼女等を 眺めてしまうからだろうな……続きあれば是非もっと二人をいちゃつかせて下さい。


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