NOVEL REVIEW
<2007年09月[前半]>
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09/15 『裏山の宇宙船』 著者:笹本祐一/ソノラマノベルス
09/09 『少女七竃と七人の可愛そう大人』 著者:桜庭一樹/角川書店
09/08 『流れ星が消えないうちに』 著者:橋本紡/新潮社
09/07 『ボトルネック』 著者:米澤穂信/新潮社
09/05 『カクレカラクリ An Automaton in Long Sleep』 著者:森博嗣/メディアファクトリー
09/05 『飛鳥井全死は間違えない』 著者:元長柾木/角川書店
09/05 『風と暁の娘 パンツァードラグーン オルタ』 著者:五代ゆう/メディアファクトリー


2007/09/15(土)裏山の宇宙船

(刊行年月 2005.06)★★ [著者:笹本祐一/イラスト:放電映像/朝日ソノラマ ソノラマノベルス]→【bk1】  素晴らしきこのチームワーク! 文、昇助、晶、先輩、ひとみのそれぞれに秀でた長所 特技があり、逆に苦手分野もあったりするんだけど、誰かの弱点を誰かの長所でカバーし ながら、宇宙船掘りや宇宙人とのコンタクトをどーにかこーにか継続させてる辺りが非常 に楽しく面白い。ま、一番の功労者は専門知識に長けている昇助だろうけど(いくら文の 当初の意気込みが凄くても、昇助抜きでは何処かで行き詰っていただろうからねぇ)。  夏休みに田舎で不思議体験に奇跡体験。いいね〜いいね〜。こういうシチュエーション とキーワードだけで心躍らされるよ〜。……もっとも、もしも自分がこんな状況に直面し たら見なかった事にして逃げちゃう臆病モノだけどな。でも多分この物語の登場人物中の 誰か一人の力ではまず継続は無理。多人数でも皆の気力が上がらないと、ね。だからこそ、 最初に書いたように「ナイスチームワーク!」と賞賛の拍手を送りたくなったのです。 2007/09/09(日)少女七竃と七人の可愛そうな大人
(刊行年月 H18.06)★ [著者:桜庭一樹/カバーイラスト:さやか/角川書店]→【bk1】  貴方たち男どもに、我々が内包している“女”を理解させてなるものか! 決して分か らせてなんてあげやしない! ……という思念を通り越した怨念のようなものが、びんび ん飛んで来てびりびり全身を伝うような感触。その癖“女”は“女”を理解させて貰えな い男どもを嘲笑うかのように、いとも容易く「ぺろり」と一気に丸呑みしてしまう。  これは主に劇中での“いんらんな女”こと川村優奈を指して述べてる事なのだけど、彼 女に限らず登場人物の女性達の本質ってのは、男にとってはなかなか理解し難いものだな ぁ……としみじみ。だから本質の部分が分かってない内は、近付いて触れる行為が“恐い” と感じてしまったり。どうしようもなく意気地無し。まあ男なんて皆そんなもの……か? 2007/09/08(土)流れ星が消えないうちに
(刊行年月 2006.02)★★ [著者:橋本紡/新潮社]→【bk1】  絶妙なバランスの上で成立している心地良い時。穏やかなる瞬間。部分部分を拾い上げ てゆくと、むしろ心に波風起こしていなければ到底真っ直ぐには立っていられない、なか なか穏やかではいられない、そんな状況の方が多い程。僅かにズレが生じただけで、ギス ギスした雰囲気になったりドロドロの泥沼に陥りそうになったりしそうなんだけど、決し てそうはならない、そうはさせない安心感に包まれる。そういう所が絶妙なバランス。  この物語……もし奈緒子や加地や巧と同年代の時に読んでいたら、多分こんなに冷静に 感想書いてなんかいられなかったかも知れない。心にずがーんと大ダメージ受けて、暫く 立ち直れなかったりとか、きっと感じ入る部分が多かっただろうなと。幾分離れて身を引 いた視点で眺める事が出来た今でさえ、油断すると飲み込まれてしまいそうだったから。 2007/09/07(金)ボトルネック
(刊行年月 2006.08)★ [著者:米澤穂信/新潮社]→【bk1】  「ボトルネック」と「グリーンアイド・モンスター」。結末の意味を何となく捉えあぐ ねて物語を手放そうにも手放せないでいた時に、“ふっ”と隙間風のように入り込んでき た言葉二つに助けられた……ような気がしてる。心地良い風通しを妨げていたのは、果た して嵯峨野リョウ=僕の存在か? それとも文字通り“過去の亡霊”の存在だったか?  辿り着いたのはそんな解釈。他者の視点から見て、これが概ね合ってるのか見当違いな のかは分からないけれど。妨げになっているモノの意味――もしもリョウが前者(自分自 身の存在)と捉えたのならば死者の手に絡め取られ、後者(死者の存在)と捉えたのなら ば……嵯峨野リョウという存在が、今後僅かでも彼自身が生きる世界の風通しを良くして くれるのかも知れない。あんまり救われる部分がないんで、せめてそんな希望だけでも。 2007/09/05(水)カクレカラクリ An Automaton in Long Sleep
(刊行年月 2006.08)★★ [著者:森博嗣/メディアファクトリー]→【bk1】  コカ・コーラ120周年×森博嗣のコラボレーション企画、だった作品。丁度一昨年頃 のお話なので過去形。『コカ・コーラ』とか『120年』とか、そういうキーワードが大 技小技でこの小説作品の随所に盛り込まれている為、当然コラボ企画というのを踏まえて 読むのが真っ当な楽しみ方。でも、本当は当時読んでいれば感情移入度(ストーリーに対 してもキャラクター達に対しても)はもっと高まっていただろうなぁ。その辺ちと後悔。  廃墟施設のある村で知った“隠れ絡繰り”の謎追い、探索、そして謎解き。まあ何はと もあれ、『夏休み』『田舎』『宝探し』なシチュエーションだけでドキドキワクワクが止 まらねぇ。最初は部外者として入って、徐々に村の中に慣れ染まってゆく過程で妙に嬉し さを覚え、謎が解かれて長い歳月を経て絡繰りが作動した時に言い様のない興奮と高揚感 に包まれた。これの実写ドラマはどんなんだったのかなぁ? 観てみたかったなぁ。 2007/09/05(水)飛鳥井全死は間違えない
(刊行年月 H17.07) [著者:元長柾木/イラスト:目黒三吉/角川書店]→【bk1】  「メタテキストを理解出来たかい?」「いや全然」……とか、つい自問自答してみたく なった。所謂思考の逃避。いや〜“記憶の改変”って解釈ではダメなの? ……全死に言 わせるとダメなんだろうな。と言うよりそんな言葉を返した日にゃ、こちらの存在全否定 された上で抹消されちまいそうだぞ。それとも理解出来ない能無しは抹消する価値もない とかね。とりあえず、理解困難な部分は何となく分かったつもりで受け流してみた。  そういや帯に『美少女攻略ミステリ!』とあったけ、ど……そんなんだったっけ? メ タテキスト改変=美少女攻略と言われれば、成る程納得で頷ける所かも知れない。まあ攻 略は目的ではなく、あくまで“どうにかして間違えたい”という全死の目的を達成する為 の手段に過ぎない訳だけど。続きそうな気配は残されていた。でも、見込みは薄そう。 2007/09/05(水)風と暁の娘 パンツァードラグーン オルタ
(刊行年月 2004.12)★★ [著者:五代ゆう//イラスト:かねこしんや/メディアファクトリー]→【bk1】  ゲームの設定を引き継いだ後日談的な位置付けなんだそうな。確か大分前にプレイした 記憶があるんだけど……セガサターン版だったっけなぁ? 元々のジャンルはシューティ ングなので、自機を操り敵を撃墜しステージクリアして行くのが主目的であって、物語に どっぷり浸れるような性質のものではないんですな。だから、こう重厚なストーリーに触 れてみて、シューティングゲームとして楽しんでた頃とはかなり違ったものが見えたので はないかなと(今からじゃゲームプレイする環境を整えるのは大変そうだけど……)。  主人公オルタの自分探しの旅。真実に辿り着いて一応の決着を見た所までは完璧に魅入 ってしまった。ただ、その後の対帝国戦はやや蛇足感もあったり。帝国との決着はまた別 に長い尺度を取ってじっくり描いて欲しかった気もする。でも、満足度は極めて高し。


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