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11/21 『冷たい校舎の時は止まる(下)』 著者:辻村深月/講談社文庫
11/19 『冷たい校舎の時は止まる(上)』 著者:辻村深月/講談社文庫
11/16 『塩の街』 著者:有川浩/メディアワークス
□2007/11/21(水)冷たい校舎の時は止まる(下)
(刊行年月 2007.08)★★
[著者:辻村深月/講談社 講談社文庫]→【bk1】
自分達の中に真犯人(この場合、皆を引き摺り込んだ世界の創造主)が存在するとして、
しかし誰もが他者に疑惑の目を向けたがらない。友情、信頼、そう言った固い絆で結ばれ
ている所もあるのだろうけれど……多分、それよりもっと大きなものは、この創造主が他
者に疑惑の視線が向き合い疑心暗鬼に陥る事を望まなかったから、なのだと思う。だから
こそ、「もしかして自殺者は自分なのではないか?」と誰もが自身の内に篭るように疑惑
の目を向けたがったではないかなと(そうなるように創造主が望んだんだろうなと)。
上下巻通して、それぞれが持つ過去の傷跡、痛み、後悔という遣り切れない気持ちの数
々、そういうものが深く心に刻み込まれた。誰が自殺者で創造主か? という事。実は途
中からあんまり気にしなくなっていて、ただただ八人の心の内に秘めた事情というものに
気持ちが揺り動かされるばかりで。最後は降り続く雪が止み、雲が切れ、青空が顔を覗か
せるが如く、実に晴れやかな幕切れで心地良い読後感に浸れた。ラストシーンで微笑を向
けた“彼女”によって、全てが報われたんだなと。そう思い、涙が零れそうになった。
既刊感想:(上)
□2007/11/19(月)冷たい校舎の時は止まる(上)
(刊行年月 2007.08)★★
[著者:辻村深月/講談社 講談社文庫]→【bk1】
真冬の校舎に閉じ込められた八人のクラスメイト達。その内の一人が二ヶ月前の学園祭
で飛び降り自殺した人物であり、この校舎はその人物が幽霊となって構築した世界であり、
他の七人はその世界に取り込まれ閉じ込められたのだと言う。――目の当たりにした非現
実的世界。信じ難いがを受け入れるか? それとも信じられないまま拒絶するか?
物語の登場人物達は前者を選んだが、読み手の私は後者を選んだ。だってほら、こちら
側は多分客観的に眺めてるだけで当事者じゃないから、何が起こっても逃げに走ってしま
うんだと思う。でも自殺事件と深い関わり持つ当事者達はそうは行かない。決して見て見
ぬ振りして逃げる事は出来ない。果たして、皆の記憶から抹消された自殺者は八人の内の
誰なのか? 非現実な世界は本当に“自殺者が構築した世界”として非現実的なまま描か
れて行くのか? それとも何らかのトリックが仕掛けられているのか? ハテナマークは
まだまだずらっと並ぶ。様々な謎への興味は尽きる事無く。下巻がすげー楽しみだ!
□2007/11/16(金)塩の街
(刊行年月 2007.06)★★
[著者:有川浩/メディアワークス]→【bk1】
自衛隊三部作の『陸』に当たる物語。デビュー作大幅改稿+番外短編四編追加。最後に
あとがきを眺めた感じだと、著者の有川さんが本来『塩の街』という物語でやりたかった
事をほぼ全て注ぎ込めた模様。確かに“完全版”に相応しい内容で非常に満足でした(電
撃文庫版では大人の事情やらで、思い通りに行かない制約が色々あったんだねぇ……)。
ただ一人の好きな女を救いたいから行動を起こしただけ。世界はただその“ついで”に
救われただけ……って! これ、すげー格好良くないか!? 以前読んだ時、この感情に触
れてこんな痺れるような衝撃を受けたっけな〜? 塩害で人類滅亡の危機とか、そんな背
景がなければ「このどうしょうもねぇバカップルが!」と冷やかしの一つでも入れたいと
こだけど、結局ニヤニヤしつつ二人の幸せな結末に魅入ってしまうばかりだったな。
秋庭と真奈。年齢差、立場の違い、そんな辺りからうまく相手の懐に踏み込めない不器
用な二人。もどかしい姿が切なくも愛おしい。こういう気分にも以前は浸れなかった気が
する。浸れたのはその後の話が読めたから、かも。物足りなさが満たされて凄く嬉しい。
関連感想:塩の街 wish on my precious(電撃文庫版)
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