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11/30 『マテリアル・クライシス MISSION しっぽとコンピュータウイルス』 著者:仁木健/角川スニーカー文庫
11/25 『マテリアル・クライシス MISSION しっぽとテロリスト』 著者:仁木健/角川スニーカー文庫
11/23 『おーぷん ハート ロケットライダーがいた日』 著者:鯨晴久/角川スニーカー文庫
2003/11/30(日)マテリアル・クライシス MISSION しっぽとコンピュータウイルス
(刊行年月 H15.11)★★★
[著者:仁木健/イラスト:瑚澄遊智/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
シリーズ第2巻。一見こころとしっぽをウリのひとつにしているようで、実はあんまり
積極的に作中で押し出している手応えを感じられないのは前巻同様。こころの登場人物紹
介とか眺めてると狙ってる気満々のようなので、それだから余計に弾け切れてない控え目
さを感じたりもするのかなと。たとえ鬱陶しくなろうがどうなろうが、こころにはもう全
編に渡って感情の変化で様々なしっぽふりふりを披露しつつ存分に自己の特性をアピール
してくれた方が、読んでる側としてはずっと楽しさを感じられそうなんだけれど。和宏と
の絡みも狙ったサービスカットもあるにはあれど何となく物足らない。
物足らないと言えば。この物語、決定的にダメなポイントってのは見当たらないのです
が、読んでいながら何故か乗り切れなくて惹き込まれる要素も掴めなくて。ずっと何故か
何故かと考えてながらふと思い当たったのは、やっぱりこころのキャラクター的な押しが
弱い。結局それかーと思いましたが、この美味しい素材を活かさずして一体何を活かすの
かという感じです、いや本当に。もっと和宏との触れ合いでどうにかこうにか感情的な掘
り下げがあったらいいのにと思う。ただ、この和宏をどう想ってるかを突っ込まれてた時
のこころのしっぽリアクションは激しくお約束ながら良い感じ。
前巻と比べると魔術アクション増加でキャラクター同士の絡み具合が減少。決して登場
キャラが少ないという印象は無いのに、この頭に浮かぶ相関図の狭苦しさはどういうわけ
だろう。印象的な新キャラとしては高原教授と早苗さんが登場してますが、それ程見せ場
があるような扱いでもないし。極端に言えば和宏とこころとの間に太い線があるだけで、
他のキャラとの関係の線が相当に薄い。この場合だと人間関係で織り成すエピソードって
のがあんまり見られなくて残念……となるわけで。名前とちょっとした言動だけは出てい
る村元さんや葛西さんにも、ストーリーを盛り立てる様な見せ場を希望したいかな?
今回は前みたく和宏が大切な人の為に感情剥き出しになるような、数少なく惹き込まれ
ていた要素もなくて。それなら美由に関しては声だけで訴えるよりも初期の段階から和宏
かこころかもしくは両方を深く関わらせてゆくように描いてくれてたらなと。
既刊感想:MISSION しっぽとテロリスト
2003/11/25(火)マテリアル・クライシス MISSION しっぽとテロリスト
(刊行年月 H15.06)★★★
[著者:仁木健/イラスト:瑚澄遊智/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
第7回スニーカー大賞『奨励賞』受賞作。
あらすじとかイラスト眺めてみた読書前段階の先入観で、思いっきりキャラクター描写
に偏った物語のような匂いを嗅いだ気がしたのだけれど、実際には魔術社会が確立された
日本の舞台設定や、反魔術勢力のテロリストに対抗する魔術捜査官の役割などの方に比重
が置かれ描かれていたなという印象。
キャラクターってのは正確に言えば主にこころの事を指してるのですが、ちびっこで感
情に合わせてしっぽ(ポニーテール)が無意識にふさふさ揺れ動くイメージを想像してし
まうと、やっぱりこれって「しっぽ娘にごろごろするのを楽しむ物語だ!」とついつい勝
手に決め付けて入り込んでしまいたくなる行為も決して間違いではない……かなぁ。
もっとも、先入観から想像していたり期待していたのよりは、あんまりこころのキャラ
クター性を前面に押し出してる作りではないですよねこれは。しっぽのリアクションとか
は確かに面白いんだけど、当り前の事ながら主人公である和宏の言動や感情面などからテ
ロリストとの対決を盛り立てる部分をメインとして描いているので、全体的にこころの持
ち味がやや稀薄となってしまっていたかなと。まあストーリー展開が魔術捜査官としての
任務一辺倒なもんで、それとは全然関連の無い事だとしても和宏と過ごす平穏な日常風景
を差し込んでくれてたら、もうちょいこころの面白いキャラクター描写が余計に見られた
かも知れない。無理矢理入れてくれとまでは言わないけれど、こころに魅力を感じられる
要素が充分に出し切れていないような気がしたのは少々勿体無く思う。
興味を惹かれた箇所は魔術社会形態の日本の設定とか。和宏とテロリスト関連の絡みは
それ程印象には残らず。どこかイマイチさがあったわけではないけれど、反面どこにも目
立って突出したものが見られなかったのが弱さの原因? テロリストの目論みも、どこへ
向かっているのか途中ちょっと混乱して見失いかけてしまったりも。練った捻りを入れて
いる辺りは、却って単純明快に分かり易く見せてくれた方が良かったかも。
あとは文章的な事での注文だけど……もう少し漢字使って下さいなと。何か漢字変換し
ても問題なく読めそうなのに平仮名使いなのが結構多くてやけに気になってしまいました。
2003/11/23(日)おーぷん ハート ロケットライダーがいた日
(刊行年月 H15.06)★★☆
[著者:鯨晴久/イラスト:ヤスダスズヒト/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
蓋を開けてみたら、本作はザ・スニーカーでの大塚英志氏の誌上連載『キャラクター小
説の作り方』を起点として行われた、小説コンテストみたいな中での入賞作だそうで。そ
れはザ・スニーカーを読んでないから当然の如く知らなかったのですが。知らなかった側
から言ってしまえば、実に全体の3分の1を割いて企画の経過を綴った解説を取っ払い、
そこで出来た余裕を全て本編ストーリーの肉付けに使って欲しかったのが正直な所。
雑誌でやってた企画の結果&経過なら、別に雑誌で掲載するとかでわざわざ小説に付随
なんかさせなくても良かったんじゃないだろうか? この企画に参加してるしてないにか
かわらず不特定多数の目に触れるような意図はあるような気もしますが、とりあえず選考
経過の説明はあんまり要らなくて、企画解説が2、3頁でもあれば充分だったかも。
もしかしたら面白くなっていたかも知れない要素は、結構作中で散りばめられていたよ
うにも感じられました。けれどもストーリーやキャラクターに思い入れを探す間もなくさ
っさと話が進んでしまうので、やけにあっさりした仕上がりな印象でした。ココロミエー
ルの使い方にしても、ロケットライダーと礼二郎の関係と香織との触れ合いにしても、敵
対組織との関わりにしても、各方面で肉付けして欲しいと思ったのはそういう事で。
あと100頁分の可能性が発揮されていたら何か変わっていたかどうか。心残りなまま
で過ぎてしまったのはその辺りが勿体無いとか惜しいとか。せめてもう少し礼二郎と香織
の関係やロケットライダーのアクションシーンとかに力入れてくれてたら、学園ラブコメ
かヒーローアクションとしてはこれより数段楽しめていたような気もする。
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