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04/07 『吉永さん家のガーゴイル』 著者:田口仙年堂/ファミ通文庫
2004/04/07(水)吉永さん家のガーゴイル
(刊行年月 2004.02)★★★★
[著者:田口仙年堂/イラスト:日向悠二/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
第5回エンターブレインえんため大賞『大賞』受賞作。
“選考委員激賞&編集部絶賛”なんて帯にお約束な売り出し文句みたいなのがあったせ
いか、入り始めはつい「ホントかな〜?」とおっかなびっくり身構えてたけれども、これ
が意外に贔屓でも誉め過ぎでも大袈裟でもなく言葉通りの面白さで、今度は想像の上を行
ってた物語の良さの方に驚かされました。激しく目を引くキャラクターが一匹(でいいの
かな?)そのまんまなタイトルと物語の中心に居座ってはいるけれど、そんなに新鮮味を
帯びた奇抜なアイディアを出して勝負を掛けているわけではないし、割とどこででも見ら
れそうなキャラ主体のコメディで、ストーリーの組み立ても分かり易く単純明快。
でもこの物語全体に溢れる和やかで穏やかな空気、それに加えてキャラクター達の感情
表現やそれぞれのコミュニケーションの描き方は本当にお見事。それだけガーゴイルと吉
永さん一家と御色町内全体を巻き込んだ騒動の数々は、楽しく心躍らされるものでした。
とりわけ印象に残った点は“心を持たない”ガーゴイルの心理描写――主に『家族』と
『恩返し』に向き合った時の微妙な心の変化と揺れ動きなどは凄く良かった。石像だから
身体の一部分における細かやかな動きは全くなくて、心が無いから機械的で無機質な言葉
しか発していない筈なのに、どうしてこんなにも人間臭く映ってしまうのだろうか……な
んて風に気が付くと思わされてしまうような所にもやっぱり上手さが出ているなと。
最初は確かに石像っぽく無機質で堅物で融通が利かない奴なんだけど、双葉や和己やマ
マやパパやご近所さん達を守護するという名目で触れ合ってゆく内に、段々と人間寄りの
仕種や考え方を試行錯誤して、そこから心無き者の心の成長へと繋げている。連作短編の
1話毎に人間臭さが強くなってゆくこの悩み考え成長を遂げる過程がまた良いですね。
おそらく高原イヨが知っているけどあまり語られなかったガーゴイルの詳細、それから
「現実有り得ない喋る石像に対して御色町の連中は誰も疑問を抱かんのか?」とか、小さ
な引っ掛かりもあるにはありましたが全体の楽しさ面白さの前には些細なもの。ガーゴイ
ルについては今後色々明かされてゆくに違いない、と思う事にして次巻にも期待。
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