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04/20 『Bad! Daddy1 パパに内緒で正義の味方』 著者:野村美月/ファミ通文庫
04/20 『テイルズ オブ シンフォニア 久遠の輝き[2]』 著者:矢島さら/ファミ通文庫
04/18 『テイルズ オブ シンフォニア 久遠の輝き[1]』 著者:矢島さら/ファミ通文庫
04/18 『エンリル・エッジ 刃をまとう女神たち』 著者:鈴羽らふみ/ファミ通文庫
04/16 『ワイルド・アームズ アルターコード:F[上]』 著者:細江ひろみ/ファミ通文庫
04/16 『ペイル・スフィア ―悲しみの青想圏―』 著者:富永浩史/ファミ通文庫
04/15 『幽霊には微笑を、生者には花束を』 著者:飛田甲/ファミ通文庫
04/14 『永久駆動パペットショウ』 著者:豊倉真幸/ファミ通文庫
04/12 『ぺとぺとさん』 著者:木村航/ファミ通文庫
04/11 『吉永さん家のガーゴイル2』 著者:田口仙年堂/ファミ通文庫
2004/04/20(火)Bad! Daddy1 パパに内緒で正義の味方
(刊行年月 2003.09)★★★☆
[著者:野村美月/イラスト:煉瓦/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
パパの職業は悪の秘密結社『流流舞』星凪町支部の司令官。そんな他人には恥かしくて
決して明かせない秘密を持つ美夢は、父を更生させる為に正義の味方『スイート・パティ
シエール』の一員となって『流流舞』と戦う決意を固める。恥かしい秘密が更に上乗せさ
れてしまった美夢に果たして明るい未来はあるのか?(ここ一応笑っておきたい所)
どこぞで見た事あるような『美少女戦士』と『悪の秘密結社』が対決する構図。メイン
は人の話を全く聞こうとせずに我が道を突き進み娘を溺愛するパパと、そんなパパが本当
は大好きなんだけど時折起こす迷惑極まりない行為が鬱陶しくてついつい突っ撥ねてしま
う娘とのホームコメディ。それにプラスして学園コメディだったり緊張感のカケラも見当
たらない正義と悪の特撮アクションだったり、笑える楽しさは色々と盛り込まれている。
いつも書いている気がするのですが、やっぱりシリーズ毎に感じる事はキャラクター描
写――書き分けや他者と絡ませての際立たせ方などがうまい。これは今回のシリーズも同
様で、特に女の子キャラは本当に可愛く描けているなと感心してしまう。何となくの感覚
で女性作家視点の女の子描写って言うのかなぁ? 些細な仕種や容姿の強調などで、目の
付け所が微妙に違うなと思わされる部分が結構あちこちにあったんですよね。
誰もそんなに目立った個性が突出してるわけでもないのに1人1人が強く印象に残るの
は、描き方の特色が存分に発揮されているからではないかなと。美夢と他の女の子達との
触れ合いなんかも印象的なシーンが多い(個人的には美夢とうららのコンビが良い)。
最終的には『悪側の優介』対『正体を隠した正義の美夢』の構図になるかと想像してた
らそうでもなく、これって「同士討ちしてどーする!」と厄介モノをブチ倒した時に突っ
込みたくなった優介の1人勝ちっぽくないですか? 結果的に美夢の愛情も取り戻したわ
けだし。美少女戦士と悪の秘密結社を使ってるわりに今一つ盛り上がらない。もっと美夢
が葛藤しながらパパに立ち向かってくれた方が、もしかして面白くなっていたかなぁ。
物語の内容は分かり易いように見えて実は伏線がかなり敷かれている為、曖昧で不明な
要素が多い。なので盛り上がってゆくかどうかは今後の展開次第と言った所。
2004/04/20(火)テイルズ オブ シンフォニア 久遠の輝き[2]
(刊行年月 2004.02)★★★
[著者:矢島さら/イラスト:中嶋敦子/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
同名ゲームの小説版2巻目。……うう、なんか相変わらず描写が薄くてがっくし。今回
の範囲はシルヴァラントサイドの『世界再生の旅』終盤からコレットの天使化を経て、テ
セアラ世界への突入から前半戦まで。僅かに手応えが上昇しているのは、実はまだゲーム
を途中までしかプレイしてなくて、この巻から初めて触れる未プレイ部分のシナリオに入
ったから……あはは。まあその分だけ新鮮な気持ちで臨めただけなんですけど。
多分このままゲームを進めなければ、小説版で全4巻予定の内残り2巻は初めて触れる
ストーリーという事になるので、どんな展開になるのか現時点では分からない先への楽し
みは最後まで保てそう。ただ、半ば強引にでもそこが期待出来る部分だと思わなければ、
殆ど面白さを見出せない内容なのはちょっと辛いかも。今回で言えばシルヴァラント編ラ
スト――前半戦最大の山場であるコレットの天使化、レミエルの本性、クラトスとの因縁、
などの描写も全く満足するに至らない。これまでと比べたら使っている頁数は申し分ない
んだけれど、やっぱりさらっと軽く流されているせいで、ロイドがコレットの為に奮起す
る想いとかサッパリ伝わって来なくて。もう未知のシナリオに期待するしかないのか。
既刊感想:1
2004/04/18(日)テイルズ オブ シンフォニア 久遠の輝き[1]
(刊行年月 2003.12)★★☆
[著者:矢島さら/イラスト:中嶋敦子/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
同名ゲームの小説版。1巻目の内容を覗いた限りでは、大きなストーリーの変化や小説
版オリジナル要素とかは無くて、ゲームシナリオをそのまま文章変換しているもの。なん
だけど……ゲームノベルってこんなにも楽しめないものだったっけ? 確かにゲームをプ
レイしていたら同じ展開を2度追う事になるから新鮮味は薄いし、逆にプレイしてなけれ
ば新鮮な感覚は得られるのしても、大概プレイ済みの人をターゲットにしているので詳し
く説明でもしてもらわないと理解し難い部分も出てくる。それは特にゲームオリジナルの
シナリオに忠実であればあるほど、顕著に表れているのかなという気がします。
でもどちらの立場で小説版を読んだとしても微妙に利点と欠点の両方が出てしまうのは
仕方のない事で、大当たりは滅多に無いかも知れないけれど、元々面白さの安定したゲー
ムシナリオなのだから、これまで大きく外す事もそんなには無かったのになぁ……。
本編に触れてみると端折り過ぎ、急ぎ過ぎ、書き込み足らずで描写が薄過ぎ。ゲームで
特に印象深かった、コレットの試練とも言える天使へ変化してゆくシーンまで軽く流され
てしまったのには泣きそうでした。限られた頁と巻数で収めなければならないのはよく分
かっていますが、せめて重要な局面や大切なシーンだけでもあっさり走り去らずに立ち止
まり、ロイド達が置かれた状況とそれぞれの心の動きを丁寧に見せて欲しいもの。内面の
感情などは、RPGでの表現より文章表現の方が余程深く詳細な部分まで描く事に適して
る筈なのだから。次はイラストだけは良かったなんて言わせない出来を望む。
2004/04/18(日)エンリル・エッジ 刃をまとう女神たち
(刊行年月 2004.01)★★★☆
[著者:鈴羽らふみ/イラスト:片瀬優/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
1つの身体に2つの心を宿す少女。基本的に肉体の所有権を持つ主人格の麻紀と、意識
のみが麻紀の身体に同居のような形で存在している真衣と。この辺りは極めて特殊ながら
それ程珍しいとか目新しいとか感じたりはしなかったけど、特別な能力の発現によって2
人の心は2つの身体に分かれて独立した行動を取る――この設定に興味を惹かれました。
ポイントは1人が2人に分かれる際、主人格である麻紀の方が本来の肉体から飛び出し
て異能力を操る“人間ではない存在”となり、意識のみの真衣が一時的に麻紀の身体の所
有者となる点。この状態で別々に単独で動く時、麻紀は存分に自らの能力を発揮できるが、
その間元に戻るべき肉体は全て真衣に委ねなければならない。1つの身体とはまた違う感
覚、それから近いような遠いような微妙で曖昧な距離感などがうまく描かれている。
これは物語の盛り上がりに大いに貢献している設定だなと。真紀と真衣の様々な角度か
ら映し出されている関係なんかは凄くいいなと思う。ここの部分、正直もっと色々な面を
眺めたかった。他を取っ払ってでも真紀と真衣の関係を余分に描いてくれてたらなと。
真紀と真衣以外の設定も結構詳細まで練られていて、うまくいけば惹き込ませる牽引力
に成り得そうな印象もあったけれど、立てた設定を持て余していると言うのかな? どう
も書きたい事を充分に書き切れていなかったような感じで。クリーチャーズ・シフト、キ
ャリアー、スイーパー、どの要素も面白い。ただ、真紀と真衣にしてもまどかや京動にし
ても、どうしてそうなってしまったのか? あるいはその瞬間どんな感情を抱いていたの
か? 多少触れられてはいたけれども物足りなくて惜しい。せめて過去に遡って、真紀と
真衣の心が同居する事となった時の状況やその瞬間だけでも見せて欲しかった。
2004/04/16(金)ワイルド・アームズ アルターコード:F[上]
(刊行年月 2004.03)★★☆
[著者:細江ひろみ/カバーイラスト:大峡和歌子
/口絵・本文イラスト:笛吹りな/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
タイトル通り、先頃PS2で発売されたシリーズ第1作目のリメイク版をベースにした
ノベライズ。と言っても基本的にシナリオは元と殆ど一緒だったかな。それにしてもただ
でさえ限られた巻数を駆け足気味でいかなきゃならないゲームノベライズなのに、上下巻
で大丈夫かいな? と心配してた予感が序盤から見事に的中。いや、小説版としての描き
方は実に正統派な印象だったけれど、それだと大抵忠実過ぎて面白味に欠けると。
もっとも「これじゃ楽しめないよ!」と思わされたのが主人公・ロディの扱い。なんか
プレイヤー=ロディな為に台詞の無いゲームでの設定をなぞっているようで、小説版にも
ロディの台詞やロディ絡みの会話が殆ど無い。公式なのかどうか『普段から口数が少なく
他者との会話も消極的』なんて設定で回避してますが、わざわざそんなとこまでゲームを
真似なくてもいいのにー! 当然ロディに感情移入も出来なければ、ザックやセシリアと
の会話も極少なわけですよ。だから自然と地の文による味気ない説明調な描写ばかりが多
く目立つ。文章ならではの利点や旨味を全く活かそうとしないこの描き方には激しく疑問
を感じてしまう。違う媒体だからこそ違った事を色々とやってくれた方が断然楽しめそう
なのに……。ゲームノベルというジャンルはいつも自分の中の許容範囲を広くして読んで
るのですが、これはちょっとダメだった。でも下巻も付き合うんだろうなぁきっと。
2004/04/16(金)ペイル・スフィア ―悲しみの青想圏―
(刊行年月 2003.11)★★★☆
[著者:富永浩史/イラスト:水上カオリ/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
「僕は世界中で最も不幸で救われない人間なんだ」とかいう主人公のお子様思考が全編
に渡ってかなり鼻に付きまくりなんだけど、そういや思いっきりお子様だったねこの子は。
これは文章表現に別段問題があるわけではなくて、単純に最初から主人公ユーリのキャ
ラクター性に嫌悪感を抱いてしまっただけの事。ユーリをそういう風に意識的に描いてい
るような所があるので文句の付けようも無くて、それで好きになれないのは仕方ないか。
もう最初からずっとこんな印象で固定されていたものだから、ちゃんとユーリの心が荒
んでしまった過去の背景が描かれている部分で納得させられても、彼の言動の一つ一つが
いちいちムカつくのはどーすればいいんだと愚痴ばっかり零してました……ううむ。
ユーリにとって容易く受け入れられない状況で、益々荒む原因となっているのも分かっ
ているけれど、やっぱりいつまで経っても自動人形達とのコミュニケーションが平行線な
のがいかんのかなぁ。嫌な面ばかり見えてしまうからこそ、徐々に変化してゆく彼の人形
達に対する態度や感情が際立って映る要素もあるんですけど。ただ、この物語はユーリ自
身が変われそうな切っ掛けを“掴み始めたばかり”で終わってしまうので、その辺の突っ
込みにもうひとつ物足らなさを感じてしまったのが少々微妙な所でした。
主に描かれているのは、差出人不明の手紙、自動人形達とのコミュニケーション、そし
て地球と外敵生命体との戦闘の3点。これらの中心に存在しているのがユーリの感情。気
持ちとしてはどれか一つを重点的に描いて欲しかった。と言うのも、3点のどれを振り返
ってみても、まだ知りたい事が結構残っていたせいか中途半端な手応えが抜け切れないん
ですよね。個人的には自動人形との触れ合いがメインの展開を望んでましたが、もっと彼
女達の生い立ちやここに至るまでの過去を見せてくれたら良かったのになぁと。
結末は多分最初から続きなどは想定しなくて、最後は読み手に委ねて余韻を残すような
狙いがあったような気もします。それはそれで悪くないけれど、これじゃどうにもスッキ
リしないので結末の先を読みたい欲求に駆られてしまう。でも続きは無さそうな予感。
2004/04/15(木)幽霊には微笑を、生者には花束を
(刊行年月 2004.01)★★★★
[著者:飛田甲/イラスト:ゆうろ/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
徹底的科学信奉者で心霊現象絶対否定の主人公・真田真也の前に、ある日突然実体を持
たない幽霊らしき少女が現れる。何故かその少女は、真也と彼の妹である真弓と含む限ら
れたごく一部の人間にしか見る事が出来ないらしい。さて、これまで何かと理論を構築し
捻じ伏せて来た存在、認めてしまえばそのまま己の理論を全て覆されてしまう心霊否定論
者の真也は果たしてどうする? この辺りの続きを面白く見せるような頑張りがうまく効
いていて、しっかり先へ先へと興味を引っ張って行く原動力となっていた。
楽しく読めたのが、幽霊らしき少女・ユウを持て余し気味でぶっきらぼうなんだけど、
徐々に状況を理解つつ軟化して行く真也の態度とか。あとは日頃から理論攻めで凹まされ
ている心霊好きな真弓にここぞとばかりに反撃を喰らった真也が、反論出来ずにユウの存
在を認めさせられてしまった時なんかも。この多少ギクシャクしながらも、まるで家族団
欒みたいな真田兄妹とユウの3人の和やかで賑やな空間が、実に心地良い雰囲気で描かれ
ている。何処の誰とも知れない正体不明でしかも実体を持たないユウに対して、避けよう
とかせずにむしろ積極的に首を突っ込んで謎を解こうと接する姿もいいですよね。
しかしこの物語、ちょっと捻りが効いたボーイミーツガールから人間と幽霊の恋愛エピ
ソードに発展するのかと思ってたら、メインはユウの謎を真也が解き明かすミステリーの
部分でした。期待してた展開から「あれあれ〜?」と逸れてしまったので、多少の不満は
出たけれど、実はそのミステリー要素で充分楽しめたのであんまり文句も無かったり。
ユウに関しては幽霊“らしき”って所が相当のクセモノで、ネタバレに激しく抵触する
ので詳細には触れませんが、こういう独自のアイディアをうまく盛り込んだ扱い方が見事
に決まってるなぁと唸らされました。全ての真相を知って成る程と納得する事頻り。
不満点があるとすれば、真也とユウの関係の描き方が少々弱かった点。これはミステリ
ー要素に比重を置いていた為、ある程度犠牲になってしまったのは惜しいけれど仕方なし
と自分に言い聞かせてますが、欲を言えばもう少しだけ余計に2人の時間に描写を割いて
くれてたらなと。1冊で全てを出し切ったこの物語の結末は素晴らしく良いものでした。
2004/04/14(水)永久駆動パペットショウ
(刊行年月 2004.01)★★★☆
[著者:豊倉真幸/イラスト:ともぞ/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
第4回エンターブレインえんため大賞『東放学園特別賞』受賞作。
現実世界と瓜二つの隣り合う別世界から漏れ出す悪心『影』を狩る宿命を背負う、木偶
と呼ばれる人形達とそれらを作り上げる天才的な技能を持つ『型師』の少年の物語。一番
最初に目を引いたのは帯、同様に口絵と第一幕冒頭の『再生破壊衰退覚醒停滞進化腐敗』
と『あなたの世界はあなたが決める』という意味深な一言。一体この言葉は誰が誰に向け
て放っているか、妙に頭に残る印象深さであれこれ考えさせられてしまいました。状況に
応じて色々捉え方がありそうで、例えば一幕に付随してる事から七祠が茜音に、あるいは
霧賀谷が枯雪にとか。どちらかと言えば枯雪に向けられるべき台詞のように聞こえる。
まあ霧賀谷はこんな丁寧じゃなくもっと乱暴な言葉使いだろうけど、イメージとしては
三夜都が枯雪にってのが最も合っていそう。けれども本来使役する立場の枯雪と絶対的服
従で使役される(枯雪はこんな使い捨ての物のような扱いで接してはいないけれど)立場
の三夜都だから、ちょっと違和感ありそうで。本編の枯雪は自分で決めるどころか、どう
にも煮え切らないうじうじな部分が強調されていていいように流されっ放しなので、多分
描かれているのはそのどうしようもない状態を打破して決めるに至るまで。本編の内容か
ら脱線している上に憶測で書き連ねてるので、見当違いで的外れかも知れないけれど。
最初は世界観や『型師』と木偶の設定の深さが突出した物語、という手応えもあった筈
なのに、終わってみると惹き込まれる程でもなかった。逆にキャラクターの描き方にいい
なと思える部分が多く見られました(個人的にはあんまり好きになれない2人――枯雪と
敵方の夜戯が特に魅力的に映っていたのは微妙な所でしたが)。もっと見たかったのは人
形に命を吹き込むという『型師』本来の能力、そして三夜都以外は離れて行動していたが
故に回想以外であまり描かれなかった普段の枯雪と木偶達の触れ合いなど。
ただ、好き嫌いがハッキリ出そうな気はするけれど、この物語から醸し出されている陰
湿な雰囲気盛り込みな描写は、舞台背景や枯雪の性格と実によく噛み合っていてなかなか
うまいなと思いました。他に枯雪が三夜都を引き止めた結果なんかも、ハッとさせられる
容赦の無さに目を奪われてしまったり。心惹かれる部分は結構あるのだけれど、スッキリ
しないのはまだ終わっていないせいか。これなら続きは欲しいけど……出るのかな?
2004/04/12(月)ぺとぺとさん
(刊行年月 2004.02)★★★☆
[著者:木村航/イラスト:YUG/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
主に学園生活における生徒同士の関わりの中で、妖怪と人間が共存しながら繰り広げら
れる数々の些細な騒動を描いた物語。何だかあんまりストーリーに強く惹かれる様な印象
深い部分が見当たらなかったけれども、キャラクターのインパクトと存在感をどんどん前
面に押し出して勝負を掛けているから、それはそれでいいのかな〜と頷けてしまう。
けれども読了しての印象は凄く微妙だった。とにかくこの作品の文章に最後まで全く乗
り切れなくて困った。何故か読んでいてつっかえてしまったり引っ掛かってしまったり、
読み心地がスムーズにいかないのは相性が良くなかったで済ませばいいかどうか。まあき
っとこんなの些細な事ですよね。或いはそんなだったのは私だけかも知れないし。
ただ、微妙というのは何もそこばかりが原因ではなくて。かなり多数のキャラクターを
抱えているのが結果的にはネックになったのか、この物語で最も力を入れるべき肝心のキ
ャラクター描写が広く浅くで全体的に甘くて弱い。実は非常に印象的で衝撃的で忘れ難い
キャラクター像なのですが、私の場合それは文章表現の中から得られたものではなくて殆
どがイラストのイメージから得られたものだったから。文章の描写から想像出来るだけの
限界を補う意味ではこの作品、表紙もカラーも人物紹介も挿絵も、全てのイラストの効果
が最大限に発揮されている。気が付けばキャラの好印象は大抵ここで掴んでいた。
求めていたのは、それをもっともっと文章中の描写でやって欲しかったという事。無理
にあれだけ大勢ではなくても的を絞った狭さで、文章からキャラクターの深みがもう少し
余計に感じられていたならば、イラストとの相乗効果は凄まじく上がっていたと思う。
ストーリーに関しても、色々なものを拾い過ぎていて、結局溢れて零れた分のフォロー
が出来ないままだったような感じで。短編のひとつひとつが無軌道にあっちこっち飛んで
いるのも悪くないんだけど、せめて主軸だけでもピンポイントで攻めてくれた方が良かっ
たかも。それはシンゴとぺと子のどきどきぺとぺな関係でもいいし、ミにょコンのエピソ
ードでもいいし、くぐるとちょちょ丸の姉妹喧嘩でもいいし、妖怪と人間の共存問題を掲
げてくれたっていい。これらが整頓されてなくて乱雑なままだったのが惜しい所。
しかし何だかんだ言ってどのキャラも万遍なく好きだし(お気に入りはこぬりちゃん)、
基本的にのほほ〜んでほのぼの〜な雰囲気も好きだし。次もあったら読んでみたいです。
2004/04/11(日)吉永さん家のガーゴイル2
(刊行年月 2004.03)★★★★
[著者:田口仙年堂/イラスト:日向悠二/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
怪盗百色と梨々ちゃん登場の巻。百色は変幻自在のマジックで、ガーゴイルとじゃれ合
ったり梨々に温もりを与えたり御色町商店街の人達の心をキャッチする辺り、どちらかと
言うと怪盗ってよりは手品師とか奇術師みたいな印象の方が強い? 帯にあるような『エ
ロ怪盗』に関しては、イヨの乳ぱんつ掏り取った時くらいしか浮かばないので、そっち方
面の変態度数はそれ程でもなかったかも。しかしまあどんな状況にあっても、紛れもない
奇人変人っぷりを発揮している百色にはなかなか楽しませてもらいました。
前回同様、全体的にハートフル&アットホームな空気の密度が高い。吉永家とガーゴイ
ルの何気ない日常生活の中に暖かいものを感じさせてくれたり、孤独な寂しさと悲しみと
で涙を流す梨々をそっと抱き寄せる百色の優しさにホロリとさせられたり。単純で分かり
易い事ばかりなんだけど、心にじんわりと染み入るような描写は本当にうまいですね。
主役はどう見ても百色と梨々。インパクトの強さで言っても、ガーゴイルと吉永さん一
家は完全に百色一人の背中を追いかけている格好。ただ、今回はガーゴイルや双葉や和己
が引き立て役に回っていたにしてもそれでいいじゃないかと。確かに1巻と比較すると明
らかにガーゴイルを中心とした活躍の度合は下がっているから、そっちの物足りなさで全
く不満がないわけじゃない。それでも百色と梨々の存在感をを際立たせる役割として、ガ
ーゴイルや吉永家の活躍が随所で絶妙に効いていたので仕上がりには充分満足でした。
本当はもうちょっと百色がハミルトンの言葉に踊らされて、望まぬガーゴイルとの死闘
の中での葛藤を余計に見せてくれたら嬉しかったかなぁ(割とあっさりガーゴイルに使わ
れている賢者の石の真相が語られてしまっていたから)。でもその部分の引っ掛かりはご
く些細なもの。今回の百式と梨々は凄く好きになれたキャラなので、今後も是非主要メン
バーとしてガーゴイルや吉永さん家にちょっかい出しつつ活躍する姿を描いて欲しい。
既刊感想:1
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