NOVEL REVIEW
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10/31 『Alice』 著者:川崎康宏/電撃文庫
10/28 『ハード・デイズ・ナイツ8 アンプラグドは幻の――』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/27 『ハード・デイズ・ナイツ7 ラプソディーは絆の――』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/26 『ハード・デイズ・ナイツ6 アンコールは誓いの――』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/25 『ハード・デイズ・ナイツSINGLES2 SOMEDAY』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/24 『ハード・デイズ・ナイツ5 エトワールは彼方の――』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/23 『ハード・デイズ・ナイツSINGLES GOOD NIGHT DARKNESS』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/22 『ハード・デイズ・ナイツ4 ラブソングは雪の――』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/21 『ハード・デイズ・ナイツ3 ララバイは永遠の――』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
10/21 『ハード・デイズ・ナイツ2 バラードは闇の――』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫


2004/10/31(日)Alice

(刊行年月 2004.10)★★★☆ [著者:川崎康宏/イラスト:エナミカツミ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  熊超最高。  ……これだけで感想は事足りると思うのですが、さすがにこれだけじゃあんまりなので もうちょっと引き伸ばしてみます。帯の『強可愛』とは“強くて可愛い”の意で主人公ア リスを指している言葉だそうですが、中身とのギャップが非常に微妙な事が多い帯の台詞 にしては的を射てるなと思いました。強いのは作中でこれでもかと発揮されている駆け出 したら止まる事を知らない弾丸娘の性質で、可愛いのは憧れの鰯田君の前でもじもじ尻込 みしてしまう性質。この落差がアリスの持ち味として実に魅力的に描いてるなという印象 でしたが、個人的には後者の恋心抱く少女としての想像力豊かなアリスの方が好きです。  メインとしての見所はコテコテのアクションなので、どちらかと言えば鰯田君にもじも じなアリスより、身体に生傷負ってまで肉弾戦仕掛けたり銃撃戦で銃弾ぶっ放したりの強 くて格好良いアリスの方が断然目立っている。でも、そういう一介の女子高生から遠く掛 け離れた姿ばかりみせているからこそか、稀に見せるフツーの女子高生らしい仕種っての がまた際立って可愛く映るものなのですよ。その飛躍しまくりな妄想癖も含めてね。  他にいいなと感じたのは、下目黒不動尊前探偵事務所の三人――熊と弾丸娘とゲーム中 毒者のすっとぼけた掛け合いが非常に楽しい所。ボーボーとアリスのジェロニモを交えて の会話(P48〜P49の辺りなど)や、シシドーの現実とゲームの世界をごっちゃにし たイカレた言動なんかで、気付いたら吹き出していた時点で何か負けたなと思わされた。  惜しいのは暁音の印象が弱かったのと、アクション盛り込み過ぎて「今何でドンパチや ってんだっけ?」と読んでいて大元の原因を見失いがちだった点。あとは熊のインパクト が異常なせいか、作中でのアリスの存在感がややタイトル負けしていた点など。  まあキャラとアクションの勢いに任せて押すだけで充分面白さは得られていたので、惜 しい点も些細な引っ掛かりでしかなかったんですけど。しかし一発仕掛けっぽいので続か なさそうな予感もあるのですが、このキャラクター達の魅力(特に熊)を埋もれさせてし まうのは勿体無いような気がするので、出来ればまた別な事件での続編を読んでみたい。 2004/10/28(木)ハード・デイズ・ナイツ8 アンプラグドは幻の――
(刊行年月 H16.10)★★★☆ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  次が最終巻って事で物語もいよいよ佳境。やはり最終的には玲とアレクセイの対峙とな るようで、しかしまだハッキリと敵対関係とは言えない微妙なバランス。ニコルとミハウ &ビアータの友好関係もあるので、そう簡単に命を賭けた衝突にはならないだろうけど。  そしてアレクセイの狙いが見えて来た所で、今回ようやく彼が所属するユーロ・マフィ アの女王レギナが登場。これまで名前しか出てなくて随分と正体を隠し続けてたわけです が、こんな完結する間際にさっぱり片付いてないアレクセイにとっての因縁が出て来ちゃ って、次できっちり纏め上げられるのかな? なんて心配も少々。玲の病状の事も気にな るんだけど、この核心を描く部分で一心の関わり方が弱いのもちょっと気になる。  下手すると主人公なのに最後まで玲のサポート役に徹しそうで(実は常に一心が中心に 描かれていても立場的には玲を支える役割なんですよね)。一心の周辺で大きな動きでも あればいいんだけど、亨の脱退騒動も二美花の失踪騒動も響の復讐劇も粗方解決しちゃっ たので。あとはやっぱり茜と一心が一緒になって盛り上がってもらうしかないか?  二美花が失われた過去を取り戻すべく起こした失踪騒ぎと、並行して玲に復讐の刃を向 ける響の過去と、この二つの過去が密接に絡み合い現在の少女誘拐殺人事件の真犯人へと 繋がってゆくのが今回。S&Sの面々は相変わらず巻き込まれ型で。ええと、二美花側の 事情を描いた部分はは凄く面白かったのですが、響側の方がちと物足りず。  と言うより、響はかなり過去に自分が失ったものに対して執着してた筈なのに、こんな にあっさり心変わりするのはどうだろうかと。復讐の炎が消えた事に喜ぶべきなんだろう けど、玲に対する暗い復讐心をもうちょっと引っ張ってくれた方が良かったと思う。まあ S&Sとも和解出来たのでスッキリしたのは確かなんだけど(芸能界側の事件もこれで打 ち止めかも知れない)。最終巻に望むのは、少なくとも玲とアレクセイの決着だけは中途 半端にしないで欲しいという事。そこに一心がどんな形で首を突っ込むのか見物です。  既刊感想:       SINGLES 2004/10/27(水)ハード・デイズ・ナイツ7 ラプソディーは絆の――
(刊行年月 H16.03)★★★☆ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  そろそろ終わりに近付いているらしい。現状の雰囲気からはまだ終わりそうな気配が感 じられないんだけど。ただ、玲が病魔に蝕まれた身体を酷使すればする程死期も早まって しまうような状況で、もしそこが終着点の結末だとしたらちょっと嫌だなとも思う。それ でも遠からず死期が迫っているのは事実な訳だし、完結に向けて駆け出すとすれば病状悪 化が目に見えているので、このまま無理して平静では居られないような気がする。  死期が迫っているのを玲の周囲では茜しか知らないというのもポイント。もし今後隠し 通せないくらい容体が悪化してしまった場合、果たしてそれでも茜は一心やニコルに告げ ないか、それとも全てを明らかにするか。彼女の性格から考えれば間違いなく後者を選択 するだろうけど、玲が隠し続けて欲しいと懇願したら黙ったままでいるかもしれない。  まあこういう急展開になるかどうかも不明なので、個人的にはこうなってくれたらとい う希望が先に立ってるのですが、玲の病状の事に関しては奇跡的に死期を免れるにしろそ うでないにしろ、なるべくどんな形でもハッキリさせてから終わらせて欲しいのです。  この巻のメインはS&Sとプラティウム(+ゲストキャラの車椅子少女)の推理対決。 賭けの対象は亨がS&Sを脱退してプラティウムに新加入するかどうか。人気ナンバーワ ンの亨の方が一心を目標に掲げてるのはちょっと意外でしたが、仲間だけど同じメンバー 内では本気で競えない亨のもやもやとした気持ちはよく分かる。亨の心情はプラティウム でもソロでもとにかくS&Sから離れて活動したい所にあったので、どういう決着にしろ 離れてしまうのかな? と想像してたのですが。最後にどうなったかは書かないでおく。  毎度一心や茜達が巻き込まれる何らかの事件的要素。今回は連続爆破事件で終盤かなり 窮地に追い込まれてます。途中ミスリードを誘っているのはバレバレなんだけど、真相に 到るまでの展開は単純ではなく、結構手も込んでたし捻りも効いていたので良かった。  既刊感想:       SINGLES 2004/10/26(火)ハード・デイズ・ナイツ6 アンコールは誓いの――
(刊行年月 H15.06)★★★☆ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  ソーズ&ソーサリーにライバル登場。ダンス・デュオ《プラティウム》。一人は一心と 茜の学校に転校して来てクラスメイトになった村雨響、もう一人は響を心底慕い崇拝して いる霧生純。ユニット結成の切っ掛けだとか、この二人が知り合った関係などについては 全くと言っていい程語られておらず。S&Sに対して挑戦的な態度も今後の布石と取れる ような印象なので、とりあえずは顔見せ程度と言った具合。響と純の繋がりが明確になら ない事には盛り上がりようもないので、早い内に深い部分まで潜っていって欲しい。  ただ、表と裏では全く違う表情を使い分けて見せている、響と純の性格の描写はちょっ と興味深い。表向きだと響は人当たりの良い好感度抜群な性格、対して純は一心&ニコル と同等以上の口の悪さを誇る嫌な奴。これが実は作り物で、裏の顔の響は巧妙に隠しては いるけど冷酷で冷徹、純の方は響を慕い一心達に罵詈雑言を浴びせる事に抵抗すら感じて しまう心根の優しい少年。さてこの二面性がこれからの展開でどう描かれてゆくか? 響 は玲がかつて解決した事件と因縁が深いようなので、その辺も楽しみにしてみたい。  他は大体いつもと一緒。玲が追っている事件に一心達が巻き込まれ、そのせいで番組収 録がままならずマネージャーはヒステリックで、付き人月給95円平均値女の茜がとばっ ちりを食らう。一心と茜の距離はちょっとずつ確実に縮まってるんだけど、一心が素直な 性格じゃないので進展具合が亀のようなのろさ。これはもう黙って見守るしかないか。  今回の事件の組み立ては凄く面白くて良かったと思うんだけど、かなり書き込みの足り なさが出ていて惜しいです。過去にあったとある計画と、それが原因で犯行に手を染めた 真犯人との関係をもっときっちり掘り下げてくれてたらなぁ……と少々残念に思う。  既刊感想:       SINGLES 2004/10/25(月)ハード・デイズ・ナイツSINGLES2 SOMEDAY
(刊行年月 H14.12)★★★★ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  ドラゴンマガジン連載分収録版の2巻目。ハッキリ言ってしまうと、本筋である長編書 き下ろし版より『SINGLES』の面白さの方が数段上を行っている。まず一心と茜の 絡み合いが、長編版より凄く自然体で活き活きと描かれている点がとにかく印象的。あと は事件性の要素も短編エピソードに丁度いいくらいの歯応えで、読んでいる時に感じるら れるテンポが軽やかで心地良い部分とか。短編集1巻目にあったニコルの回想のように、 今回も澤プロデューサーの愚痴に乗せて、一心をメインに起用した番組制作が失敗に終わ ってしまった背景をメインに過去を振り返る……という構成なんかも捻りが効いている。  内容は短編集って感じではなくて、基本的に1話完結のエピソードを順番に繋げて一つ の大きな物語を形成しているという感じ。表向きは一心が主役のバラエティ番組の収録風 景を流しつつ、裏ではいつもの如く玲を探偵役に据えて麻薬密売に絡んだ事件の謎を暴い てゆく。まあどんな危機的状況でも都合良く切り抜けたり、割合呆気なく解決してしまっ たりな時も結構あるんだけど、表と裏の関連性を密にしながらなかなか見事に融合して描 けていたなと思う。初登場キャラの星哉もいい持ち味が充分に発揮出来ていたしね(この 巻だけで本編に出て来ないのはちょっと勿体無いかも知れない)。書き下ろしの玲とニコ ルの初めての出逢いも読みたかったエピソードの一つだったので、最後まで満足でした。  既刊感想:       SINGLES 2004/10/24(日)ハード・デイズ・ナイツ5 エトワールは彼方の――
(刊行年月 H14.11)★★★☆ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  視野を海外まで向けなければ……と四巻目の感想に書いてたら本当にイギリス、フラン ス、スペインの三国を行ったり来たりで描かれていた今回。最初の頃と比べると、一心と 茜の関係が徐々に盛り上がってるだけでも格段に面白くなってるのだけど、それでも手放 しで『面白かった〜』と言うにはまだ何かが足りないと毎度毎度に思う事。で、その理由 が何となく分かった。多分この物語の進む方向がまだ曖昧で定まってないからだなと。  要は主人公である一心の行動には今の所明確な目的意識が無い為、それに同調して追っ てゆく楽しみがあまり持続しないんですよね。一冊分だけなら、事件に巻き込まれて解決 に到るまでの過程で一心の行動も楽しみながら追えるのだけど、次巻以降に“俺がやるべ き事”みたいな信念が飛ばないから、一巻限りで途切れちゃってまたリセットが掛かって しまう。例えばもし主人公が玲だった場合、彼にはアレクセイとの対決で盛り上がれるし、 己が果たすべき目的みたいなものも見え隠れしているので先への楽しみにも繋がる。主人 公の一心にこそこういうのがあれば、ストーリーも更に面白くなるんじゃないかなぁ。  上記の通り、今回は海外に飛んでのヨーロッパ編。玲がマフィアに狙われた人物と深い 関係にあった為、当然望まずともそのマフィア絡みの事件に巻き込まれてしまう一心と茜 とS&Sの関係者達。事件に関わる度合で言えば、今回は玲の方が主役的な位置付けだっ たかも。海外に居た頃の彼の過去が全部ではないけど幾つか明らかにされています。  まずこれから気にしなければならないのは、アレクセイとの関係、それから病気に蝕ま れた玲の身体の事など。やっぱり一心って、本当に核心に触れるような重要な場面ではち ょっと脇に逸れてるので、もうちょい中心に立って玲が抱えるものに一緒に関わって欲し いです。茜との触れ合いは本当に良い感じで描かれるようになって来たのでね。  既刊感想:       SINGLES 2004/10/23(土)ハード・デイズ・ナイツSINGLES GOOD NIGHT DARKNESS
(刊行年月 H14.06)★★★★ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  夜寝付けないニコルが、過去に解決した事件ファイルを整理しながら思い返して次々に 回想を巡らせてゆくという設定の短編集。事件の規模の大小は様々でしたが、どれも概ね 楽しめました。主役と言うべきニコルと玲の絆の深さが明確に描かれてるのが印象深い。 ・IN YOUR HEART  文庫版書き下ろしの短編で、番組改編シーズンによく放映されている、局の新番組別対 抗クイズバラエティ特番のエピソード。芸能界の浮き沈みの激しさを象徴するような事件 で、本編でもう一つ焦点の当たらない二美花を救済するように立てているのが良かった点。 しかし茜に関してはもうちょいと救済してやってくれよ! と言いたくなってしまった。 ・SOLDIER OF FORTUNE1&2  長距離狙撃犯による連続殺人事件を食い止める為、超高層ビル群に紛れてのおとり捜査 劇。最初はニコルのみのおとりだったけど、やっぱり一緒に駆り出される茜、と今回は宏 太も道連れ。見所は茜より女らしい宏太の女装シーン……もそうだけど、何だかんだ言い 合い罵り合いしてても要所要所で絆の深さを見せつけてくれる一心と茜の姿かな。 ・HELP! HELP! HELP!  ソーズ&ソーサリー主演の超常現象と猟奇犯罪をテーマとした特番の収録風景。視聴率 の変動を入れた構成は面白い試み。茜が恐怖に慌てふためく度に視聴率が上がってゆく辺 りに思わず笑ってしまったり。但し、猟奇犯罪らしく殺人シーンは予想以上にかなりエグ いので油断は禁物。意外性を含んだ真相は捻りが効いていてなかなか良い手応えでした。 ・GODDESS ASTRAEA  士郎が所有する離島でソーズ&ソーサリーの強化合宿。一心以外のメンバーって、これ まであんまり詳細まで描かれる機会が無かったんだけど、このエピソードでは士郎につい て割合深い部分まで触れられていたので読み応えは充分。もしかしたらこういうのは短編 集の方が仕掛けやすいのかも。また短編集があれば亨や宏太でこういうのやって欲しい。 ・茜の付き人日誌  茜の切実な苦労が滲み出ていて哀愁が漂いまくり。何で月給百円でいつまでも扱き使わ れてるんだろうねぇ……なんて常々思うことですが、まあ答えは『一心の事が好きだから』 と分かり切っている。それにこれだけ周囲の人達から大事にされてるんだから辞められな いですよ。普段の雰囲気じゃ分かり難いけど、そういうのがよく分かるエピソード。  既刊感想: 2004/10/22(金)ハード・デイズ・ナイツ4 ラブソングは雪の――
(刊行年月 H14.01)★★★☆ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  色々と新展開。なのに茜は相変わらず月給百円で、主に一心とソーズ&ソーサリーのマ ネージャーに扱き使われてます。新しい動きの一つは、茜の親友で一心の幼馴染みでもあ る夏紀が、S&Sと同じ芸能プロから芸能界デビューを果たすというもの。これによって、 ちょっとだけ一心を巡っての関係が面白い形になりつつある模様。とは言っても結局茜の 心理描写しか拾えてないので、恋愛要素が極めて薄味なのはこれまで通りなのだけど。  前巻でインクウィジターとの決着をつけた玲の前に現れたのは、新たな敵役として描か れて行きそうなアレクセイと彼の養子で双子の兄妹・ミハウとビアータ。どうやらアレク セイが従う組織の活動本拠はパリにあるようで、何かこう目を向けなければならない範囲 が一気に広がってしまったなという感触。それに関係して今回は来日する欧州要人の警護 が玲への主な依頼なのですが、現時点ではアレクセイの狙いとか組織がどんな風に玲と関 わって来るのかとか見当付かないので、今後の動向を追ってみないと何とも言えない。  並行して起こるもう一つの事件は、S&Sの亨が主演する連続ドラマの中の殺人シーン に見立てた現実での殺人事件。犯人は直ぐ割れるので謎解く楽しみは薄いですが、一旦解 決してからのラストの真相はちょっと予想してなくて意表を突かれた感じで良かった。  惜しいのは折角後で玲の依頼の方と交わりを見せても、この二つが“独立した別々の事 件”として描かれているので結び付きや関連性がやや弱い点。中途半端という程ではない んだけど、個人的には亨のドラマの方を重点的に描いて欲しかったかな。もしどっちかに 傾けてたら描き込みの深さで更に面白味が増していたかもしれない……ような気もする。  既刊感想: 2004/10/21(木)ハード・デイズ・ナイツ3 ララバイは永遠の――
(刊行年月 H13.10)★★★☆ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  ゲームと称して玲との対決に執着するインクウィジターとの最後の戦い。ここまでが物 語全体の第一章『インクウィジター編』という括りらしい。ソーズ&ソーサリーのドーム 球場ライブ当日に、大規模爆破殺人を目論むインクウィジターを果たして阻止出来るか否 かが今回のメイン。面白い仕掛けだなと思ったのは、ちょい役をバラバラに配置しつつど んどん登場させながら、一心や茜などの主要メンバーと絡ませてインクウィジターが仕組 んだ爆破事件の核心へと収束させてゆく描き方。まあどうやってもパニックに陥って収拾 つかなくなりそうなシーンは、結構都合良く切り抜けてたりするんだけど。それでも多量 のキャラをしっかりコントロールして、混乱を来さず描けている点はなかなか良い感触。  まだこの頃は富士見ミステリー文庫も謎解き重視なのかな? と感じさせるような意外 とミステリー寄りの内容はこれまでと一緒。今回は真犯人と言うより、ハッキリ『敵』と して描かれているキャラが明らかなので事件としての謎解き要素は薄い。ただ、その代わ りにインクウィジターが犯罪に手を染めた理由とか、彼と組んでいる背後に潜む陰とか、 これまで張られていた伏線らしきものは次の段階を踏む為か色々紐解かれ始めています。  あとは一心と茜と玲とニコルと、その他ソーズ&ソーサリーを取巻くメインキャスト達 が、もっと深く複雑に関係を築いて行ってくれると更に面白くなりそうなんだけど。恋愛 感情でも三角関係でも友情関係でも好敵手関係でも、そういう繋がりを色々と作中で見せ て欲しい。まだ何となくその辺の押しが弱いせいか、手応えもちと弱い気がするので。  既刊感想: 2004/10/21(木)ハード・デイズ・ナイツ2 バラードは闇の――
(刊行年月 H13.04)★★★☆ [著者:南房秀久/イラスト:壱河きづく/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  本当は初期ヴァージョンのタイトルに巻数表示は無いんだけど、新装版になってから何 故か巻数表示するようになったので、一応分かり易いようにくっ付けておく事にします。  一巻目ラストで尾を引くように残された台詞の通り、死んだと思われていて実は生きて いた真犯人・インクウィジターとの再戦。怨恨の線ではなくて、天才的な頭脳を誇る玲と のゲームを楽しみたいが為に犯罪に手を染める、単純明快な動機ながら極めて危険で厄介 な嗜好を持つ敵。だから今回はインクウィジターの計略の沿った、幾つかの小さな事件を 組み合わせて一つの大きな事件へと収束させるゲーム的な趣向が凝らされている。  こういう謎的要因は少なくとも前巻より大分練り込まれていて、進歩の跡も窺えて手応 えも割合良かったかなと思う。更に幾つかの小さな事件で一心・士郎・亨・宏太のソーズ &ソーサリーのメンバー四人が、それぞれ事件の主役を張るような展開で描いているので、 彼らのキャラクターの掘り下げも結構しっかり効いている。ただ、今の所は事件描写優先 で、一心達の心理描写の方がやや薄めに感じられたのが気になったかな? かなり惨い殺 人事件とか茜の危機などを目の当たりにしている割には、何かあまり感情的に掻き立てら れるような盛り上がりが得られなくて。今後はその辺りの上昇に期待したい所。  既刊感想:


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