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11/14 『ヴァンピーア オルデンベルク探偵事務所録』 著者:九条菜月/C★NOVELSファンタジア
11/13 『ヴェアヴォルフ オルデンベルク探偵事務所録』 著者:九条菜月/C★NOVELSファンタジア
11/11 『私の男』 著者:桜庭一樹/文藝春秋
11/10 『西の善き魔女2 秘密の花園』 著者:荻原規子/C★NOVELSファンタジア
11/09 『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』 著者:荻原規子/C★NOVELSファンタジア
11/08 『有頂天家族』 著者:森見登美彦/幻冬舎
11/06 『一瞬の風になれ 第三部 ――ドン――』 著者:佐藤多佳子/講談社
11/05 『月光スイッチ』 著者:橋本紡/角川書店
11/02 『インシテミル』 著者:米澤穂信/文藝春秋
□2007/11/14(水)ヴァンピーア オルデンベルク探偵事務所録
(刊行年月 2007.10)★★
[著者:九条菜月/イラスト:伊藤明十/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
シリーズ第2巻。どうやら前巻主役のジークがこのシリーズの主役固定という訳ではな
く、オルデンベルク探偵事務所員内の“人で在らざる者達”が持ち回りで主役を務めてゆ
く模様。んで、前巻のジークは銀狼だったけど、今回の主役・フェルの種族は吸血鬼。
人族の誇張、噂に背びれ尾びれが付きまくった先入観によって、本質が根底から捻じ曲
げられてしまった現在の人族にとっての“吸血鬼”像。人で在らざる者達を「化け物!」
と平気で罵り厭う者が多数を占める人族と、それでも何故彼等は共存の道を願い求めよう
とするのか……? 真相が解明された終盤で、特にその辺りの想い(今回の場合はフェル
=吸血鬼という種族に乗せて)凄く切なく物悲しく描かれていて心に染み入る。
また、探偵小説としても真っ当で手堅いデキ。死体消失事件と殺人事件の二つが絡み合
う物語をじっくりと読ませてくれる。……しっかし最後の最後の真相語りには吃驚仰天だ
ったなぁ。「え、ええっ? うそーん!?」みたいな具合で。こういう及びもつかない事
をやってのけてくれると、何か妙に嬉しさが込み上げて来る。続きがあるといいな〜。
既刊感想:ヴェアヴォルフ
□2007/11/13(火)ヴェアヴォルフ オルデンベルク探偵事務所録
(刊行年月 2006.07)★
[著者:九条菜月/イラスト:伊藤明十/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
第2回C★NOVELS大賞『特別賞』受賞作。
二十世紀初頭。独逸。伯林。人間(人族)紛れて世を生きる、人で在らざる者。彼等の
存在を理解し、手を差し延べ、受け入れようと日夜動き続けている、とある探偵事務所員
達の物語。列車爆破、連続殺人、曲芸団員惨殺、この三つの事件を軸に、人で在らざる者
達の姿を絡めて展開してゆく。一見無関係な事件を一本の線に繋げてゆく過程や、登場人
物たちの行動、発言に幾つもの伏線を仕込んだ組み立てとか、あちこちに物語を盛り上げ
る巧さが見受けられて良かった。人間でない者達の特性を存分に活かした“探偵モノ”と
しても充分に楽しめたかなと(裏切り者に関しては見事に裏を掻かれてしまったよ)。
あとは常にジーク視点なので、印象には残っていても活躍少なく目立てない者が居たり
(主にエル、クリス、他班の人達など)、ジークとエルの擬似親子な触れ合いをもっと堪
能したかったとか。抱いた不満はその程度。続きがあるようなのでそちらも楽しみ。
□2007/11/11(日)私の男
(刊行年月 2007.10)★★
[著者:桜庭一樹/文藝春秋]→【bk1】
劇中で貪欲に『男』を追い描いている、と印象に残った辺り。ここ何作が触れた事のあ
る桜庭さんの作品の中では多分あまり得られなかった感触で、何となく新鮮な匂いを嗅ぎ
ながら読み続けていられたのかな? とか、そんな気分。『女』の描写に関しては、もう
いわずもがなの巧さで、改めて引き出しの広さと奥深さを見せ付けられたのでした。
最初の章は養父と娘のただならぬ関係程度の雰囲気でしかなかったのだけど、そう思う
時点ではまだ楽観的で、見通しが大甘だった。過去を遡り事実が暴露されるに連れていや
らしい関係から一線を超えた関係へ、でも不思議とお互いに欠けた破片を埋め合わせるよ
うにピタリと一つに繋がった関係にもなってしまう。このじゅくじゅくと膿むように、じ
わりじわりと広がり堕ち続ける濃密な男と女の“におい”が、抗い難い魅力となって読み
手側を侵食してゆく。これが堪らない。過去へ過去へと堕ちて堕ちて堕ち続ける、じゃあ
逆に現在に近付くような辿り方をしてみたら浮上するんだろうか? と想像してみた所、
全てを知った後では手遅れっぽくて、結局更に深く深く堕ちて沈み込むばかりだった。
□2007/11/10(土)西の善き魔女2 秘密の花園
(刊行年月 1997.11)★★
[著者:荻原規子/イラスト:桃川春日子/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
まずルーンの事。今回はフィリエルに対する愛ってやつがひしひし感じられて堪らなか
った! ルーンの性格からして、余程フィリエルの事を大切に想ってなければ、ここまで
大胆な行動(女装して女学校潜入)には出れないよ。そうだよなー、ルーンも男の子なん
だから、精神的負担が掛かってる時に好きな人が無防備な姿を見せてたら、そりゃどうに
かしたいと思っちゃうよな(と勝手に納得)。てな具合で割と頬が緩みっ放しでした。
ルアルゴー伯爵の提案により、フィリエルが半強制的に女学校へ入れられる事となった
辺りからが今回の始まり。重要イベントは、アデイルの姉で王位継承候補の対立者である
レアンドラと、フィリエルとの邂逅シーン。今後の対立激化を予感させるものでなかなか
見応えあり。……しかし想像通り陰湿なイジメに次ぐイジメで、ちょっと胸がざわついた
りもしたけど、フィリエルも簡単には屈しない性格だからね。最初こそ諦めムードで心配
だったものの、徐々に彼女らしく凛々しく立ち向かう姿が見れてホッとしたなぁ。
既刊感想:1
□2007/11/09(金)西の善き魔女1 セラフィールドの少女
(刊行年月 1997.09)★★
[著者:荻原規子/イラスト:桃川春日子/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
高地の片田舎に住まう少女・フィリエル。十五歳の誕生日を迎えた年。期待と希望に胸
躍る舞踏会デビュー。が、父から貰い受け身に着けていった首飾りによって一転、歴代女
系王位を抱く国の継承権争奪の渦中にいきなり放り込まれてしまう……という概要。
西洋ファンタジーの王道、その風味をしっとりじっくりと堪能出来る充実した内容。今
回はまだ序章段階ながら、フィリエルを中心に目まぐるしく物語が動き続け、最後まで飽
きさせない展開で面白かった。過去の出生に大きな秘密を持つ主人公像(=フィリエル)
ってのは割と秘密を引っ張りに引っ張った末に種明かし、ってパターンを想像してたのだ
けど、結構あっさり明かされちゃったんだなぁ。その辺りがちょっと意外だったかなと。
出生の秘密を引っ張る役割はルーンの方が担ってるのかもね(メガネを外すと整った顔
立ちとか、微かな高貴さを匂わせてる所が非常に気になる)。フィリエルの方は今後の動
向に興味が湧く。よもや落ち着いたばかりで直ぐ逃亡するとは思えないけど……さて。
□2007/11/08(木)有頂天家族
(刊行年月 2007.09)★★
[著者:森見登美彦/幻冬舎]→【bk1】
言動や仕草などが何とも人間くさい、とある化け狸一家の家族愛物語。父は偉大で母は
寛大、しかしながら息子である所の四兄弟は揃いも揃って持ち前の欠点際立つへっぽこ狸
ども。三男・矢三郎が「我々は阿呆だ」と自負しているように、こちら側から眺めていて
も「阿呆だよな〜」と苦笑が漏れる、しょーもなくもどこか微笑ましい出来事が続々と。
でも、後半の狸鍋騒動では一転。“ほろり”と感じて、“きゅん”と胸に切なさが込み
上げて、後に“じわり”と心に染み入る。基本がお気楽極楽な為、悲しい所は随分緩和さ
れているのだけれど、喰われてしまった父・総一郎の話題が出ると、やっぱりぐっと胸に
来るものがあったなぁ。そんな亡き父の誇り高き姿をしっかりと抱きつつ四兄弟、最後は
滅茶苦茶に入り乱れながらも家族の絆見事に炸裂で愉快痛快。スッキリ気分で終幕。
まあ敵対してた夷川の金閣銀閣兄弟や、権威失墜(後に多少回復?)な赤玉先生も、自
由奔放な弁天も、揃いも揃って困ったちゃんなんだが、そこが強調されると面白いので結
局憎めないんだよな。あと、姿見せずな海星は実に素晴らしきツンデレダヌキでした。
□2007/11/06(火)一瞬の風になれ 第三部 ――ドン――
(刊行年月 2006.10)★★
[著者:佐藤多佳子/講談社]→【bk1】
シリーズ三部作の完結編。二年冬から進級して三年へ、インターハイ出場を賭けてのラ
ストチャンス、そしてラストラン。こいつぁすげぇ。すげぇ燃えた! めちゃくちゃ熱か
った! 100メートルはたったの十秒、4継(400メートルリレー)でさえも一分掛
からずに勝敗が決してしまう。文章量にすると僅か2、3頁の描写。それだけの分量に凝
縮された圧倒的な勝負の世界。特に南関東大会のクライマックスシーン。決勝の舞台での
好敵手達との競演に、読んでいて全身が打ち震えた。いやホント素晴らしかったな〜。
新二の戦いというのは、“競う相手に勝ちたい”よりも“自分自身のベストを勝ち取り
たい”思いの方に傾いてたんじゃないかな? 実際新二がどんな相手に勝っても負けても、
今の走りに納得出来なかった時は気持ちが俯き、納得出来た時は高揚感に満ち溢れていた
から。読んでいてそういうのがひしひしと伝わって来たから。しかしこのエピローグの後
って、一体どうなったんだろうねぇ? それを知れなかった事だけが唯一心残りでした。
既刊感想:第一部、第二部
□2007/11/05(月)月光スイッチ
(刊行年月 H19.03)
[著者:橋本紡/角川書店]→【bk1】
真ん中だけを切り取ってみると、優しく穏やかな新婚生活風景。これに前後をくっ付け
ると“既婚男と独身女の不倫関係”の出来上がり、となる。臨月を迎えて里帰りしてる鬼
(正妻)の居ぬ間に、不倫関係で一ヵ月半の新婚生活(仮)をやっちまえー、とかいう割
とどうしようもない男女のお話。ただ、前述のようにこの間の生活風景だけを眺めてると、
本当に新婚さんのように見えてしまう。危機感もなく、焦燥感もなく、ドロドロしておら
ず、自然体でのんびりでサラサラしてる。この辺、奇妙で面白い感触だったかなぁと。
結末は想像通り。多分どこかで壊れなきゃ話は終わんなかっただろうし。まあ修羅場で
もあんまりドロドロ感はなかったかも。極めてあっさり。でも、あっさり切れたから、ま
たあっさりサラサラな不倫関係が戻っちゃいそうな気がする。そんな雰囲気の幕切れ。
□2007/11/02(金)インシテミル
(刊行年月 2007.08)★★
[著者:米澤穂信/文藝春秋]→【bk1】
『インシテミル』=『隠(いん)してみる』……だろか? 最後の謎解きと十二の護身
具(或いは凶器)の種明かしから、何となくそんな風に考えてみたり……。私は大概ミス
テリ読む時「謎を解こう」と意識して読もうとしない(だって分かんないんだもん)。既
に最初から放棄姿勢で「私は後ろで眺めてるから、殺人事件に巻き込まれるのと推理と謎
解きを請け負うのとその他諸々は君等に任すよ」とか、殆ど登場人物達に投げてばかり。
でも、この物語は最初から放棄状態が無かった。何かね、ふと気がつくと、ごくごく自
然に色々と考えさせられてた。「あれ? これってもしかして推理っぽい姿勢と思考で構
えちゃってる?」とか(いや、推理なんてレベルの頭じゃないのは自覚してるから)。
胡散臭い法外なバイト料から始まった“館モノ”の殺人事件、推理、謎解き、真相に至
るまで、余す所なく面白かった。たまには自分の頭を捏ね回すのもいいもんだなと。
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