NOVEL REVIEW
<2006年01月[後半]>
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01/31 『神栖麗奈は此処にいる』 著者:御影瑛路/電撃文庫
01/28 『山姫アンチメモニクス2』 著者:三上延/電撃文庫
01/26 『座敷童にできるコト3』 著者:七飯宏隆/電撃文庫
01/24 『絶対少年 妖精たちの都市〜横浜』 著者:浜崎達也/電撃文庫
01/22 『乃木坂春香の秘密3』 著者:五十嵐雄策/電撃文庫
01/19 『乃木坂春香の秘密2』 著者:五十嵐雄策/電撃文庫
01/18 『先輩とぼく0』 著者:沖田雅/電撃文庫
01/16 『先輩とぼく5』 著者:沖田雅/電撃文庫


2006/01/31(火)神栖麗奈は此処にいる

(刊行年月 2005.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:御影瑛路/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  神栖麗奈とは誰か? 神栖麗奈とは何者か? 神栖麗奈は誰にとってどのような存在 か? 彼女と大きく接点を持ってしまう四人の少年少女を通じて、『神栖麗奈』を解き 明かしてゆく物語。負の感情、ネガティブ思考、とことん鬱な自分を一人称視点で垂れ 流す描写なもんで、読んでいてどろどろと鬱積したものが積もり溜まってゆくような感 触が私には何とも言えず堪えた。ただ、そういう雰囲気作りをかなり意識してやってる んだなってのもよく分かる内容。各章毎に、この人物は神栖麗奈という存在に何を求め、 そして何を望み、どんな結末を迎えるのだろう? と強く興味を引かれたりも。  神栖麗奈から徐々に繋がりを見せるキャラクター同士の関係、そして神栖麗奈の名を 口にした者達の自殺の連鎖、これらに神栖麗奈がどのような影響力を持ち、それぞれの 結末へと導いたのか? これらの描写が巧妙な興味の引き方で面白いなと思いました。  ただ、三章以降で神栖麗奈の種明かしが語られ始めた辺りから、ちょっと描写が複雑 に入り組み過ぎて何を語っているのか見失ってしまう事もしばしば。成る程こういう事 かと納得出来たのだけど、四章の和亮が神栖麗奈の正体を突き詰める辺りは少々くどい かなぁと思ったり(まあそう簡単にスマートには纏められない問題なのかも知れないけ れど)。まだ神栖麗奈について幾つか解かれていない部分は続刊の方を楽しみに。 2006/01/28(土)山姫アンチメモニクス2
(刊行年月 2005.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:三上延/イラスト:榎宮祐/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  んん? 読む前から何故かこれで完結と思い込んでたのだけど、別に完結という文字 は何処にも無いなぁ。あとがきで次回作の構想があるって部分を読んだからか。元々短 期集中連載みたいな形を取ってたのか、これで“お終い”みたいな締め方だった。  しかし途中までは風花が迷惑巻き散らかしてカズキと翠がとばっちりを喰う毎度のパ ターンで進行してたのが、何か最後のエピソードだけはヤケクソになってたような気が ……手探りでも好きな様にやらせて貰えた結果なんだろか? それでもあの類人猿もと いグレート山姫はないだろ! と唖然となってしまった。いや、その滅茶苦茶な部分が 楽しいとも思ったけれど、カズキと翠が中心のラブコメ展開で進める為にえらい強引な 持って行き方してるな〜とか。状況に流されまくった結果、成り行きで想いを確かめ合 っただけで、肝心の感情描写が軽くすっぽかされてたような手応えだったか。  でもまあカズキと翠が惹かれ合ってるのは確かにしっかり見れたから、ここで終わり としても構わない。風花が一般人には理解し難い性質でカズキにも全く興味なし、と分 かった時点で恋愛絡みでは盛り上がらんだろうな〜、と沈んでたら不意打ちの如くボク っ娘イヅナの登場で、このまま続けても面白そうな要素は色々ありそうだけどね。  既刊感想: 2006/01/26(木)座敷童にできるコト3
(刊行年月 2005.12)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:七飯宏隆/イラスト:池田陽介/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  頁数が多い割にイマイチ盛り上がれなくて物語に惹き込まれないのは、おそらく三巻 分費やしてもハッキリしなくて分からない事が多過ぎるから。三年前の大侵攻とは具体 的にどういうものだった? 座敷童協会とモドキを排出している七層からなる天界が対 立しているのは何故? そもそも七層からなる天界ってどんな存在? どうして座敷童 達は境界宮を奪回しなければならないのか? 神話矯正ってどんな事? ……と、最低 でもこれだけ有耶無耶な要素がぽんぽん出てしまうのはどうかなーと思うわけです。  他にも克喜にことごとく絡む柏木兄妹と座敷童の接点や、克喜が見る夢の中の過去と 現在の座敷童達との関係とか。この辺は前にも結構疑問を投げ掛けたような気もする。 これが駆け出しの一巻目なら曖昧な点が多くても受け入れられると思うのだけど、さす がにこれだけ重ねて不明点が多いと付いて行くのが難儀になってしまうので、一度腰を 落ち着けてもうちょいきちっと整理をつけて欲しい所。現状では読み手側は状況を掴み たくても掴ませて貰えず、キャラクター達が様々な事情を知った顔で勝手に話を進めて いるような印象だから。でも、このもやもやした霧が晴れれば、一気に惹き込ませて貰 えるんじゃないだろうか? 今回の事件は完全に解決しておらず、次巻へ持ち越すよう な締め方だったので、次こそ色々解いてくれる事を期待しつつ続きを待ってます。  既刊感想: 2006/01/24(火)絶対少年 妖精たちの都市〜横浜
(刊行年月 2005.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:浜崎達也/イラスト:戸部淑/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  既に放映終了している同名アニメの小説版二巻目で完結編。歩が田菜を去ってから二 年後の横浜が舞台。それぞれに様々な想いや悩みや迷いを抱えた新たな少年少女達と、 真実を求めて田菜から横浜へマテリアルフェアリーを追って来た須河原晶の物語。  アニメと比較して読んでみて、個人的に“こんな事を感じでこんな風に思った”と書 こうとしてた事が、実は今回のあとがきで殆ど触れられてました。例えば小説での描写 の利点を活かしたアニメより勝っている点、またその逆の部分、この物語が描こうとし ていたものについてなど。とりわけ『マテリアルフェアリーの正体を解き明かすもので はない』という記述を読んで、ああ成る程ねと胸のつかえが取れた気分でした。  アニメも含めてこれまでずっと、まさにそのマテリアルフェアリーの正体を知りたい と追い掛け続けてた訳で、その部分は結局アニメでも小説でも曖昧なままで幕を閉じた から少々不満で物足りなく思っていたのですね(こういう視聴者&読者心理でさえ見透 かしたかのようにあとがきで書かれていたのには脱帽)。でも本当に描こうとしていた のはマテリアルフェアリーに遭遇した少年少女達の成長。そして確かにその言葉通り少 年少女の心の成長過程をしっかり描いた物語……と納得させられる程の内容でした。  個々の感情描写は前巻同様小説版の方が上を行っていたように思う。自分に対する悩 み、気になる誰かに対する思い、その辺りがうまく乗っていたんじゃないかなと。  既刊感想:妖精たちの夏〜田菜 2006/01/22(日)乃木坂春香の秘密3
(刊行年月 2005.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:五十嵐雄策/イラスト:しゃあ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  裕人と美夏で春香の誕生日プレゼントを買いに秋葉原へ。とらのあなとかアニメイト 店内とかが現実と寸分違わず忠実に描かれてた。よく行く人なんかは、裕人と美夏がど の場所で何を眺めているのかパッと頭に浮かぶんじゃないだろか。特にアニメイトは忠 実に再現し過ぎていてにやりとさせられましたが、実際に取材までされてたとは。  春香の対抗馬としては今の所妹の美夏しか居ない気がするんだけど、この春香のプレ ゼントを買うという名目の秋葉原デートは結構いい雰囲気。でもきっと姉の恋愛を心か ら応援してる美夏が、裕人を春香と取り合う事にはならないと思う。本心はお兄ちゃん 以上の好意かも知れないけれど、二人を祝福する気持ちの方が大きいだろうなと。  プレゼント選びに引き続き春香のサプライズパーティ。前巻で夏休みなのに海水浴イ ベントががねぇ、とか言ってたら水着サービスは今回だった。春香に群がる有象無象の ボンボンどもはこんなもんか。裕人のライバルにもなりゃしない。結局おじいちゃんに も認められた裕人と春香の仲は深まるばかりで「はいはいごちそうさま」と。キスだけ は未遂の寸止めで終わってしまったけど、あのタイミングは狙ってただろ葉月さん。  で、前巻のピアノコンクールで思わせ振りにちょこっとだけ登場してた天宮椎菜が滑 り込みで参戦。しかしまともに対抗出来るんだろうか? どう見ても裕人と春香は揺る ぎ様もないんだけど……その前にちゃんと次巻出るのかどうかの方が心配だ。  既刊感想: 2006/01/19(木)乃木坂春香の秘密2
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:五十嵐雄策/イラスト:しゃあ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  もう秘密が秘密じゃなくなりつつある秋葉系な超絶お嬢様乃木坂春香と、いち平凡男 子学生綾瀬裕人のラブコメストーリー2巻目。そういや今回のメインは夏休みイベント なのに、その中にお約束の海水浴が入ってないのは何故だ!? とか唸ってみましたが、 オタクにはそんなものよりもっと重要で熱い夏の一大イベントがあったのでした。  まあどのエピソードも裕人と春香が微笑ましくいちゃいちゃいちゃいちゃ青春を謳歌 していて、そりゃ意識してなくても他人から殺意を抱かれるわ、と裕人の行為を眺めつ つ思う。ただ、極めて一般的ではないが春香の性質にとてもよく合うイベントがこの中 に一つ。彼女なら決して外さないだろうと確信していた有明まんが祭り夏の陣。  いや、このエピソードは絵師さんのサークルが実名で出てたりなんて遊び心もあって 本当に読んでいて楽しかった。実際自分で体験しているってのもあるのだろうけど、妙 に巧く『夏こみ』の雰囲気掴んでるな〜と。春香みたいな娘があの汗に塗れた大混雑の 空間に身を投じている姿はどうだろう……なんてシーンが容易に想像出来たりとか。  初登場の春香パパンは凄みを利かせてた割に最終兵器によってあっさり折れてしまっ たので、もうちょっと二人の障害になってくれてたら良かったかな〜。でもこれで裕人 と春香の仲は家族公認という事か。裕人の姉のルコも春香を気に入ってるようなので、 あのウェディングドレス姿もそう遠くない未来の姿かも? あとこれ以上盛り上げるに は二人の間に割って入るライバルキャラの投入しかないような気もするけど……。  既刊感想: 2006/01/18(水)先輩とぼく0
(刊行年月 2005.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:沖田雅/イラスト:日柳こより/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  現在の状況から、ふと今とは幾つもの事が違っていた過去を思い返しながら描かれる 番外編。普段の一人称がはじめかつばさだから、最初の語りに「はじめとは何か違うな」 と違和感を覚えて首捻ってたら道本だったのか。彼が目立つ位置におかれるのは意外な 感じだったけど、はじめと出逢う前つばさとの関係を見せられてああ成る程ねと。  今回のラストに“一巻へつづく”とあったので、ちょっとその頃の記憶が薄れかけて いる私は再読せにゃいかんかなぁとか。どんな風に繋がってたっけなぁ……。でもはじ めとつばさのキャラの性格は入れ代わる前でも何ら変わってなかったので、性別は違っ ても中身の本質はそのままだな、と考えてみれば当たり前の事を興味深くしみじみと感 じたりしてましたが。良かったと思えたのは、本編で割とはじめ&つばさの陰に隠れが ちな脇役達へのフォローが利いていた点。番外編らしい、と言えばいいのかな?   中でも本編ではあまりお目に掛かれなかった組み合わせを見れたのが収穫。最も大き く取り上げられていた道本とつばさ、はじめと同学年(のりちゃん、真太郎、タッキー、 オーラ)だけの集まり、美香と桜の女同士の友情など。これらの関係は過去絡みだけで はなく現在進行形な部分も含まれていますが、今まで見れなかった繋がりなどが把握出 来て、相関関係の幅も結構広がったんじゃないかなと。まあ一番の収穫ははじめとつば さのファーストコンタクトでしたが。この二人は最初から相思相愛だったんだなぁ。  既刊感想: 2006/01/16(月)先輩とぼく5
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:沖田雅/イラスト:日柳こより/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  おい! タッキー野放しにし過ぎだろ! とかはじめみたいに突っ込みたくなった秋 の恒例行事学園祭。つばさの欲望を満たす為の企みが満載。今回もはじめ君は程よく弄 られておりました。新キャラの生徒会長はやっぱりと言うか何と言うか、強烈な個性揃 いのメンバーとドタバタ騒動に紛れてすっかり存在感が埋没してしまってた。  とは言え会長の一人称パートも結構あったのに、全てにおいてつばさに踊らされてい たせいか、あらすじにあったような腹黒さがあまり見れなくて自己アピールさせてもら えなかったという印象だったかな? きっとオーラに告白して成功させる為にあんな策 こんな策を考えてただろうに、見事炸裂したのはミスコン終盤のタッキーに対してのあ れだけだもんなぁ(あの非常にやばいシーンで思わず吹き出してしまったよ)。  まあ今回も色々と騒動を楽しませてもらいました。結局最後ははじめとつばさのラブ ラブバカップルが目立ってしまうんだよな〜。つばさの言動やはじめの突っ込みでとて もそうは見えないけれど、真剣になるとお互い相手にベタ惚れなのが良く分かる。性別 入れ代わってると理解していても、最後のキスシーンとかは凄くいいなと思えた。  あとはラストの含みがちょっと気になる所。これだけじゃ何も分からないけど。新た な騒動の種になるのか、新キャラが登場するのか、何か動きがありそうな予感も。  既刊感想:


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