NOVEL REVIEW
<2006年01月[前半]>
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01/14 『先輩とぼく4』 著者:沖田雅/電撃文庫
01/10 『銀盤カレイドスコープ vol.2 フリー・プログラム:Winner takes all?』 著者:海原零/スーパーダッシュ文庫
01/09 『銀盤カレイドスコープ vol.1 ショート・プログラム:Road to dream』 著者:海原零/スーパーダッシュ文庫
01/06 『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』 著者:西尾維新/講談社ノベルス
01/03 『マリア様がみてる 未来の白地図』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
01/02 『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
01/02 『マリア様がみてる 妹オーディション』 著者:今野緒雪/コバルト文庫


2006/01/14(土)先輩とぼく4

(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:沖田雅/イラスト:日柳こより/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  嬉し恥ずかし交換日記で綴られた先輩とぼくの夏休み風景。肝試し、お泊り、夏祭り、 海水浴……と定番のイベントに乗せて散々弄られまくるはじめ君萌え。今回はつばさの 趣味とか欲望などがもろに素直に正直に思い切り出た形で、付き合わされているという のか巻き込まれているというのか、突っ込みで疲労困憊のはじめはご愁傷様としか言い 様がないくらいオモチャにされてて、でもそれが結構ツボで面白かったかな。  はじめは表面上で嫌々なんだけど、何だかんだでつばさといちゃついているようにし か見えないじゃないかと。「言葉で拒絶しても身体は正直じゃないかはじめ君」なんて つばさが言いそうな台詞そのままに、一々つばさの望む行為をしてみせてくれるはじめ が妙に可愛く見えたりする。まあ心は男だけど外見はか弱い美少女そのものだし。  脇役連中は相変わらず存在感あるんだかないんだか掴み難い感触だったけど、今回は それなりに自己主張してたような。毎度自己主張が激し過ぎるタッキーとオーラは置い といて、つばさとはじめに対する美香や嵐や双子や道本やのりちゃん、もう一組のバカ ップル真太郎と桜の立ち位置がうまい事定まったような手応えで良かったかなと。  しかし何事も無かったかのように心と身体の入れ代わり生活を馬鹿馬鹿しく満喫して いるつばさとはじめだけど、一体何処まで続くんだろう? つばさは自らの行為の真意 を忘れていないので、もし終わりに向かうとしたらその辺りが鍵になるのかな。  既刊感想: 2006/01/10(火)銀盤カレイドスコープ vol.2 フリー・プログラム:Winner takes all?
(刊行年月 2003.06)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:海原零/イラスト:鈴平ひろ/集英社 スーパーダッシュ文庫]→【
bk1】  これだ! こういうのが見たかったんだよ! こうして小説に触れてみて、アニメの オリンピック編は色々端折り過ぎてるんじゃないか? ってくらいあまりに物語の密度 が違っていて驚かされた。大舞台を前にプレッシャーで押し潰されそうな気持ち、ピー トの支えでそれを振り切って堂々と演技を披露するシーンので高揚感と躍動感、タズサ の一人称に乗せて様々な変化を見せる彼女の感情表現は見事という他に言葉が無い。  前巻の感想でフィギュアスケートの演技描写に触れた時、実際の演技を知らなければ 把握し難い……と書きましたが、今回はそんな風に思う事があまり無かったな〜。確か にジャンプの種類は出されても分からないのだけど、演技描写からタズサの動作をしっ かり頭の中で思い描ける。特に一番最初だったタズサのショートプログラムと、ラスト 前のリアのフリープログラムの描き方は本当に良かった。タズサのフリーは物語に見立 てた演出が入っていて、純粋なフィギュアスケートの演技描写とはやや趣が違っていた から、個人的には上記のタズサのショートとリアのフリーには及ばずだったかな。  それにしてもタズサが己の目標と掲げる程にリアを意識しているとは思わなかった。 また、リアがここまで他者と別格の圧倒的な強さだったのも同様に。演技以外のプライ ベートでタズサとリアのやり取りを見る事はあまり無かったけれど、全てが終わった後 のほんの僅かな会話が堪らなく胸に響きました。『私は貴女の強さを認めた、だから貴 女がここまで来るのを私は待っている』みたいな感じで。物語はピートとの別れと共に 綺麗な終わりを見せてくれたけれど、この後もシリーズは続いているので、ここからど う繋げて行くのか楽しみです。タズサがリアと絡む所が随所にあればいいなぁと。  既刊感想:vol.1 2006/01/09(月)銀盤カレイドスコープ vol.1 ショート・プログラム:Road to dream
(刊行年月 2003.06)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:海原零/イラスト:鈴平ひろ/集英社 スーパーダッシュ文庫]→【
bk1】  第2回スーパーダッシュ小説新人賞『大賞』受賞作。  先に観ていたアニメとの差異が結構あるなぁという印象。まあ小説が先なので普通な らばアニメを観て小説との差異を感じる所なのだけど。アニメと比較しながら読んでみ て、印象に大きな違いが出たのはタズサ自身の性格。もっと正確に言うと、トリノ五輪 代表を賭けての大会に臨む時の内に秘めた感情の部分。元から天才肌で自信家でプレッ シャーにも強く、表面の性格通り内面も大胆不敵で揺るぎない自信を持っているものと 思ってたのだけど、ちょっと誤解してたかも知れない。むしろピートとうまく噛み合う 前のタズサは、プレッシャーに弱く脆い部分を包み隠すように口で強がって見せている ような。その辺りの感情がタズサの一人称文章だからくっきり見えていたと思う。  1巻目は至藤響子との五輪代表切符を巡っての戦い。気になっていた文章でのフィギ ュアスケート演技の描写は、ジャンプの種類が出た時に実際の演技シーンを頭に思い描 けるくらいでないと、ちょっとイメージ湧き難いかな〜という感触。ただ、知らなくて も何となく滑走や演技イメージを感じ取れる程の充分な描写だったし、演技している時 のピートとの連携に乗せてのタズサの感情表現の運び方は凄く良かったです。  次は内定が決まったトリノ五輪編。アニメではどうも尻すぼみで終わってしまってち と不満が残る結末だったので、原作小説の方に期待したい。世界トップクラスのライバ ル達との競演ってのが観れなかったので、特にその辺が盛り込まれているといいなぁ。 2006/01/06(金)クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い
(刊行年月 2002.05)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:西尾維新/イラスト:竹/講談社 講談社ノベルス]→【
bk1】  既に完結している『戯言シリーズ』の一作目。いーちゃんが戯言戯言と呟くのが癖だ から戯言シリーズと呼ばれてるんだろうか? 著者が定めたシリーズ名ではなく、読者 の方から定着したような感じで。些細な事ですが、そうなんだろうと思っておく。  私の場合、ミステリ作品のトリックがどうだったかを感想で触れようとすると、なか なかうまくいかない。そのトリックが巧いのか拙いのか、綺麗なのかそうでないのか、 実の所良く分からない。どういうトリックを巧いと言うのか、綺麗と言うのか、面白い と言うのか素晴らしいと言うのか。自分でミステリ作品の感想を書く時に悩むのは、結 局「このミステリのトリックは巧く描かれていたのか?」と考えても文章で書き出せな いからなのかなと(富士見ミステリーの場合はミステリでもかなり特殊で異色だから)。  で、ふと思ったのが、じゃあ作中のトリック云々に触れなくても、自分自身が読んだ ミステリ作品のトリックなりストーリーなりで楽しめたかどうか、面白かったかどうか、 それだけでいいんじゃないか? ……とか。てな訳で、この作品は評点の通りです。   本当に「面白い!」と強く感じたのは、連続斬首殺人事件の謎解きのその後。まんま としてやられた感がこれ程心地良い刺激だったのは、やっぱり充分楽しめたという証な のかなと。ただ、個人的に最も魅力を感じ惹かれたのはキャラクター描写の方で。いー ちゃんと玖渚、財閥令嬢に五人の「天才」女性達との掛け合いが実に良いものでした。  続きも追って行きます。いーちゃんと玖渚の過去の事とか気になる点も多いので。 2006/01/03(火)マリア様がみてる 未来の白地図
(刊行年月 2006.01)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第22巻。瞳子の家出騒動から祐巳とぎくしゃくした雰囲気のまま山百合会の クリスマスパーティへと続き、そして遂に祐巳が瞳子へ……という展開。ようやくと言 うのか待ちに待ったと言うのか。でもさすがに一冊ではすんなり行かなかった。まあこ れだけ引っ張ってあっさり決まってたら、「なんだかな……」って印象で終わってたと 思うし。これで祐巳の妹選びはもう後戻り出来ない所まで進展してしまったので、まだ 事情が明かされていない瞳子が抱えてる問題を含めて、続きが凄く気になるな〜。  しかしこの瞳子に対する祐巳の接し方は、瞳子に苦手意識がありまくりと思えるくら い祐巳自身の欠点――内に篭って悶々としたり拒絶を恐れて相手の懐へ踏み込めなかっ たり――が足枷となってしまいちょっと切なかった。だから明らかに祐巳の先走りなこ の結果には納得ながら、こういう風に苦い後味が残る結果は辛いものだなぁと。  ただ、『レイニーブルー』の時みたいに、へこんでも躓いても振り切って前向きに乗 り越えてゆくのが祐巳の良い持ち味だから、きっと最後には自分の望んだ結末を掴むん じゃないかなと。その辺次巻で瞳子を絡めてどう描いてくれるのか楽しみです。  それから数ヶ月後の卒業を強く意識させられた祥子と令のエピソード。令が由乃にさ え告げられない気持ち、それを素直に話せる祥子とは本当に深い友情で結ばれているん だなと実感出来て、寂寥感を覚えながらも温かな気持ちに浸れて実に良いものでした。  既刊感想:マリア様がみてる    黄薔薇革命              いばらの森       ロサ・カニーナ     ウァレンティーヌスの贈り物(前編)  ウァレンティーヌスの贈り物(後編)       いとしき歳月(前編)  いとしき歳月(後編)         チェリーブロッサム       レイニーブルー     パラソルをさして           子羊たちの休暇        真夏の一ページ     涼風さつさつ             レディ、GO!       バラエティギフト    チャオ ソレッラ!           プレミアムブック       特別でないただの一日  イン ライブラリー           妹オーディション       薔薇のミルフィーユ 2006/01/02(月)マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ
(刊行年月 2005.07)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第21巻。紅薔薇、白薔薇、黄薔薇、三組姉妹の物語。祐巳の妹問題とはあま り関係なさそうなあらすじだったので、最初雑誌掲載分収録の短編集かと思ってたらそ うじゃなかった。普段通りのマリみての楽しさには違いないのだけど、果たして今こう いうエピソードを挟む意義があるのかどうかと考えて「う〜ん……」と唸ってみる。  前巻までの繋がりからこれは「あり」と思ったのは黄薔薇編のみ。あの江利子さまの 前での偶然は必然だったと言う事をしっかり裏付けるように由乃と絡めて来たか! と 有馬奈々とのデートを眺めつつニヤニヤ。殆ど手掛かりもらえなかった奈々の性格も今 回は結構くっきり見えていて、「こんな娘だったのか〜」と掴めたのは良かった。でも この二人が姉妹になるには現状ではどうにもならない制約があるので、もし他に妹候補 が現れなければこのまま親睦を深める事になりそう。奈々については令との関係から意 外と由乃と近い繋がりも発見出来たから、結構すんなり安定してしまうかも。  白薔薇姉妹はまさにに現状通りな平和的エピソード。既に志摩子と乃梨子で姉妹関係 が揺るがないものに出来上がっているから、波風を立てたくても立たせようがないとい う感じか。志摩子に歳の離れた全く似てない兄が居た事だけが僅かながらの驚き。  紅薔薇姉妹は祐巳の憂鬱。ただし妹選びの事ではなくお姉さまの事で。長い付き合い で何でも理解している柏木を敵視するも、彼の気遣いを認めてしまえるから、対比して 何も出来ない自分を情けなく思いへこんでしまう。祥子の支えになりたくてもうまく行 かない祐巳の感情の揺れが巧く描けていていいなと思う。ただ、妹選びをほったらかし にしてる所もあるわけで、引っ張り過ぎと不満が出てしまうのも仕方ないのかなと。  既刊感想:マリア様がみてる    黄薔薇革命              いばらの森       ロサ・カニーナ     ウァレンティーヌスの贈り物(前編)  ウァレンティーヌスの贈り物(後編)       いとしき歳月(前編)  いとしき歳月(後編)         チェリーブロッサム       レイニーブルー     パラソルをさして           子羊たちの休暇        真夏の一ページ     涼風さつさつ             レディ、GO!       バラエティギフト    チャオ ソレッラ!           プレミアムブック       特別でないただの一日  イン ライブラリー           妹オーディション 2006/01/02(月)マリア様がみてる 妹オーディション
(刊行年月 2005.04)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第20巻。候補者を一人一人ステージに上げて、祐巳と由乃が審査して妹を決 めるのか……と、そういうシーンを浮かべるだけなら楽しい想像をしてたけど、やっぱ り実際には違うものだった。表向きは姉が欲しい一年と妹が欲しい二年の中で、祐巳と 由乃とお茶会を楽しみたい希望者を募っての茶話会。裏の目的は祐巳と由乃の妹探し。  山百合会メンバーで姉妹になった時の前例を思い返すと、“この人でなければダメだ” “この人以外には考えられない”みたいな運命的に惹かれ合う姿が常だったので、予め 用意された場での選別ってのはどうなんだ? なんて思ってましたが、発案者が由乃っ て事を考えると、どう転ぶかは別として実に彼女らしいやり方だなと納得させられたり も。江利子さまとの賭けの期限が迫って切羽詰ったって事情もあったんだろうな。  てな具合で今回は由乃の妹探しがメイン。どうなる? 決まる? 決まらない? と 終盤まで引っ張られて、最後の最後で待っていたのがこれか! な、なんて行き当たり ばったりな……でもこれもまた由乃らしい行為。それに前途多難の事情ながら運命的な 出逢いには違いないし。一応これで由乃の妹候補は定まったと見ていいのかな。途中、 再登場を果した笙子が由乃の妹に? と思ったけど、彼女はそっちに行ったのね。  一方祐巳の方は、瞳子が妹オーディションに絡まなかったからあまり進展せず。ただ、 可南子の辞退が確定したので、いよいよ瞳子一人に絞られた形になって、これから散々 引っ張られ続けた話がどう動くのか楽しみな所です。次の次あたりで決まるかなぁ。  既刊感想:マリア様がみてる    黄薔薇革命              いばらの森       ロサ・カニーナ     ウァレンティーヌスの贈り物(前編)  ウァレンティーヌスの贈り物(後編)       いとしき歳月(前編)  いとしき歳月(後編)         チェリーブロッサム       レイニーブルー     パラソルをさして           子羊たちの休暇        真夏の一ページ     涼風さつさつ             レディ、GO!       バラエティギフト    チャオ ソレッラ!           プレミアムブック       特別でないただの一日  イン ライブラリー


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