NOVEL REVIEW
<2004年06月[中盤]>
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06/20 『いつもどこでも忍ニンジャ5 ピンクなキノコの大事件』 著者:阿智太郎/電撃文庫
06/19 『らいむいろ戦奇譚 天乃原学級日誌』 著者:あかほりさとる/電撃文庫
06/18 『銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!7』 著者:あらいりゅうじ/電撃文庫
06/17 『Hyper Hybrid Organization00−01 訪問者』 著者:高畑京一郎/電撃文庫
06/17 『Hyper Hybrid Organization01−03 通過儀礼』 著者:高畑京一郎/電撃文庫
06/15 『AHEADシリーズ 終わりのクロニクル3<中>』 著者:川上稔/電撃文庫
06/14 『AHEADシリーズ 終わりのクロニクル3<上>』 著者:川上稔/電撃文庫


2004/06/20(日)いつもどこでも忍ニンジャ5 ピンクなキノコの大事件

(刊行年月 2004.06)★★★ [著者:阿智太郎/イラスト:宮須弥/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  考え方を柔軟にして、妥協するつもりで読んだけどやっぱりダメだった。だって何時に も増して似たり寄ったりな展開なんだもん。だらだらとしたマンネリ+類似パターンのコ ンボ炸裂でどうしようもなく退屈〜。気軽に肩の力抜いて読めるってのにも限度があるぞ と言いたくて、いやホントもう少し捻ろうよ。我の強い面白キャラは多いんだからさ。  特に今回の内容だけでワンパターンさが鼻に付いたのは、他にネタは無いのかってくら いお馬鹿丸出しな血桜忍群がお馬鹿な行動でお馬鹿に自滅ってのもそうだけど、一番の原 因は涼葉とちゃっかりレギュラー化してるかなでの絡み方がどのエピソードも同じように しか見えなかった点。何でこんなに涼葉とかなでのツーショットが多いんだろ? もしか してこれは今回のテーマとかだろうかと首を捻ってみたものの、相変わらずマコトの鈍さ と一応主人公なのに薄過ぎる存在感が如何ともし難いせいで、どれだけ涼葉とかなでがマ コトを取り合おうとしても今回の全エピソード共通でサッパリ手応えが得られない。  もう手軽さだけしか残らなくなったからどうしよう、と思ってたら次が最終巻か。山場 らしい盛り上がりが全然ないので、逆にどうやって締めるのか予想がつかない。過去から タイムスリップして来た設定が今や完全放置状態なので、そこを起こして使うしか最後に 山場を敷く手段は見当たらない。とりあえず残り1冊は付き合ってみる事にします。  既刊感想: 2004/06/19(土)らいむいろ戦奇譚 天乃原学級日誌
(刊行年月 2004.06)★★★ [著者:あかほりさとる/イラスト:渡辺真由美/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  あとがきの三拍子。読んだ感触として『早い』『軽い』は非常に的を射た表現だと思い ましたが……『安い』かな? 正直中身の面白さで値段分元が取れるかと言ったら、随分 と厳しいような気が(いくらなんでもさすがに『安っぽい』の言い間違いではないか)。  大分前に同著作品を読んだきりで久々だったから試しに手を出して見た所、なんか芸風 が昔とちっとも変わってないな〜という印象。しかもどっちかと言うとイマイチな方向で。  毎度同じパターンの軽いエロ描写とか、地の文が少なく会話ばかりで進むから中身が薄 くて白地と改行がやけに目立つとか。キャラの書き分けによる個性はそれなりに出せてい ても、その大部分が会話だけでしか得られないからやはり物足りないなと感じてしまう。  世に出た順番は確かPCゲーム(18禁)→アニメ→ゲームのコンシューマ移植版。イラ スト描いてるのがアニメ版キャラデザの方なので、私は何となく読んだ時の雰囲気がアニ メ寄りなイメージだった。もっとも、この作品自体に触れてるのはアニメだけでゲームの 方が未体験なので、もしゲームをプレイしていればまた違う感触になるのかも知れない。  小説版はシリアス調らしい戦闘の合間合間の学業風景を、“生徒が日誌に書いたもの” いう設定で綴った短編集。主人公の男先生一人に対して女生徒複数で、どのエピソードも 学校行事でのお約束的ハプニングからエロ展開に持っていきたがるから、あんまり面白味 も楽しみも得られない(コメディ寄りでキャラの特徴は割とよく出てるんだけど)。  これはらいむいろ戦奇譚ファン(ってどれだけ居るのか分からないけど)の為の、コレ クターアイテムの一つとして捉えておいた方がいいのかも。予備知識ゼロだと唯一楽しめ そうなキャラ同士の掛け合いでも楽しめず、面白い部分が全く見出せなさそうなので。 2004/06/18(金)銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!7
(刊行年月 2004.06)★★★☆ [著者:あらいりゅうじ/イラスト:みさくらなんこつ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  もう最終巻なのにこんな頁の薄さだから、このシリーズは最後まで満足のゆく手応えを 得られないだろうなー、と既に読む前から落胆気分一杯でした。が、確かにボリューム感 は随分物足りなかったけれど、最後の締めとしては意外と押さえるべきポイントをキチン と押さえた描写で悪くない仕上がり。何にしてもホッとしたのは、夕子がちゃんと三助に 好きだという自分の想いを告げてくれた事。でもな〜告白すんのが遅過ぎなんだよ! と 思わずこれまで溜まりに溜まっていた鬱憤が激昂となって吐き出されてしまいましたが。  ホントに躊躇い続けて最後の最後に好きと告げたもんで、結局三助とルカと夕子の三角 関係は影も形も構築されずに終わってしまいましたと。三助とルカは既に相思相愛、そし て夕子は三助が好きだけど同等にルカの事も好きな「いいひと」だから、そうなり難いの はよく分かっている。しかしながら恋愛対象として三助を見ている夕子の秘めた想いを、 やはり早い段階で三助に知らしめるべきだったんじゃないかと思わずにいられない。   それを理解した時の三助の動揺ぶりは只事じゃなかったので、たとえルカの方が好きで あっても、心の奥では夕子の存在も無視出来なくなっていたかも知れない。そういう三助 の葛藤が充分に描かれず、またルカに惹かれてゆく過程も曖昧な弱さが目立ち続けていた 為に、本来メインであるラブコメ要素の作りが全体的に甘い印象だったのが少々残念。  今回だけなら試験営業終了後の寂寥感、合否結果待ちの焦燥感、卒業から新しい一歩を 踏み出そうとする期待と不安……など容量足らずで面白いと言うまでに至らないながらも、 割とバランスは取れていて良かったと思う。ただ、個性際立つ四バカ男子生徒達を何で最 初からこの最終巻みたいに上手く扱えなかったのかなとか、終盤の三助の忘却から再び思 い出すまでの間こそ最も頁数を割いて丁寧にやって欲しかったのに、何だかあっさり過ぎ て味気無かったなとか、結局最後まで微妙さが抜け切れぬままのシリーズでした。  既刊感想: 2004/06/17(木)Hyper Hybrid Organization00−01 訪問者
(刊行年月 2004.06)★★★★ [著者:高畑京一郎/イラスト:相川有/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  うおおー宮内が格好良過ぎだ! 同姓が漢の生き様に魅了されるパターンでマジ惚れし そうですよ! 特に終盤での菅田との斬り合いなんかはもう堪りません。導入部分の印象 でこの外伝は一也が主人公と思ったけれど、何かキャラの立ち具合で眺めると今回は宮内 の独壇場という気がする。もっとも、この外伝に関しては主人公固定じゃなさそうなので、 本編に繋がる部分で他の主要メンバー達も徐々に焦点が当たるようになるだろうけど。  と、のっけから興奮気味で入ってしまいましたが。この『00』は本編『01』に対する外 伝のような位置付けで、本編でのユニコーン上層部のメンバーが如何にしてユニコーンと いう名の犯罪組織を築き上げて来たか? その道程を一番最初の出発地点から辿ってゆく ストーリー。とりあえずこっち先に手を出しても問題ないけれど、おそらく本編既刊3冊 読んだ後でこの外伝に入った方が、より一層楽しめる仕組みになっているかなと。  まだ佐々木はいち研究員で藤岡は速水や一也らと同じ側に付いていて、岡崎は速水と敵 対状況で玲奈は一介の医師に過ぎない。これらは本編での立ち位置と随分異なっているの で、先に本編を読んでいると相違点を比較しながら楽しめるという特典が付いて来る。  ただ、この任侠モノがどうして犯罪組織に転ずるのか、現時点ではサッパリ分からない 進展の遅さが難と言えば難(刊行ペースを考えるとね……溜息出そう)。宮内にどんな意 図があって、アメリカ帰りの3人の科学者に今の所内容が伏せられている研究を見込んで いるのか。そして速水の窮地を救う手立ては一体何なのか? 現在のユニコーンと繋がる ポイントはその辺りにありそうな予感。あとは藤岡がどういう理由で離れてしまう事にな るのかが特に気になる点。良くない意味で手術を受けた恵美絡みじゃなければいいんだけ ど……どんどん順調に幸せを取り戻しつつある所が逆に怖いんだよなぁ……。  あとがきの「これライトノベルでいいんでしょうか?」って、本編2巻で“漢だらけの 訓練生活”を濃く熱く描いて魅せたくせに何を今更仰るか。いや、面白さは確実な手応え なので、別にライトノベルと言ったらライトノベルで押し通してしまっても構わない。  刊行ペースについて。この外伝は電撃hp誌上連載の形を取っているので、もし毎号安 定して掲載され続ければ次の刊行は本編より外伝の方が先かも知れない。まあ読み手とし ては「どっちでもいいからなるべく早く出して欲しいよ!」ってのが本音でしょうかね。  既刊感想:01−0101−0201−03 2004/06/17(木)Hyper Hybrid Organization01−03 通過儀礼
(刊行年月 2003.11)★★★★ [著者:高畑京一郎/イラスト:相川有/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  訓練所の卒業試験を突破し、晴れて犯罪組織ユニコーンの正式な一員となった貴久に降 り掛かる洗礼。それは自らの認識の甘さを突きつけられるものであり、光射す表舞台と闇 に塗れる裏舞台の間に引かれる境界線を踏み越える切っ掛けにもなってしまう。  実戦に慣れていない新人隊員な上に装備不十分な状態で、いきなり命の駆け引きのど真 ん中に放り込まれ、上層部の気紛れによってその真価を試される貴久。今回の一時帰宅の 安らぎや組織の中での意外な程に和気藹々とした雰囲気も、全てはこの終盤の死闘を盛り 上げる為の積み重ねという風に感じられました。恋人の復讐をする為に決意の入隊を遂げ た貴久だけど、まだ心の何処かで“いつかは抜け出せる退路”があると無意識に思い込ん でいたから、本当は最初から退路なんて存在しないと理解した時点で己の甘さに気付いて 打ち拉がれてしまったと。村雨に腕力で立ち直させられたり、実質表舞台との決別を意味 する久美子との別離も含めて、この辺りの演出が凄く胸に響いて良かったなと思う。  ただ、貴久のユニコーンでの活動と大学院通いの二重生活が解除されたという記述は確 かまだ無かったような気がするので、多分表生活の描写は今後も挿入されるだろうし、そ の中で久美子と再会する可能性があるかも知れない。もはや後戻り出来ない貴久にとって、 表舞台に身を置くことは苦痛にしかなり得なさそうですが……果たしてどうなるか。  興味深かったのがユニコーン内での日常。犯罪組織が予想外もいいとこでこんなフツー に体育会系の寮生活っぽい雰囲気でいいんだろうか? と半ば唖然としつつも、奥山が言 っているように「内部で統制が取れていないといざという時足並みが揃わず致命的なミス を犯してしまう」状況にさせないような空気作りなのかなとも思ったり。上層部や正義の 味方サイドから見れば「雑魚A、B、C……」な位置の存在でも、実は貴久や村雨みたく 一人一人違った個性を持っているんだな〜、と思わせてくれる視点がちょっと面白い。  既刊感想:01−0101−02 2004/06/15(火)AHEADシリーズ 終わりのクロニクル3<中>
(刊行年月 2004.06)★★★★ [著者:川上稔/イラスト:さとやす/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  もし全竜交渉部隊と3rd−Gだけの衝突だったら、上下巻でも収まってたような気が する。しかしそう簡単にいかないのがこのシリーズの面倒臭い所で、他に1stのブレン ヒルトや2ndの鹿島と月読、更には9th−G関係らしい“軍”と呼ばれる者達――詩 乃や命刻や竜美までをもフォローしているから一冊が満杯に膨れ上がってしまう。まあそ んなだから歩みは遅いが満腹感は得られるので、結局その辺もいいんじゃないかと。  外堀を埋めながら着実に3rd−Gの核心へと近付いてゆく過程で、言ってみれば今回 は終盤戦に向けての中継点な役目。それでも、この頁の多さで中身はぎっしり詰まってい ながら、あまり中だるみ感を抱かせない読み応えは今回も充実してます。3rd−Gが持 つ“第二の穢れ”の秘密を解き明かし、その上で祓い取り除く事が出来なければ、やはり 交渉までこぎつける事は難しい。この中巻終わった時点でも、まだそこまで辿り着いてい ないので「本当に次できっちりケリがつくのか〜?」なんて心配も大いにありですけど。  今回の佐山は戦闘状況における活躍度が意外と低く、交渉役としてもあまり目立った理 論攻めは展開されていない。なので彼に関してだけ目を向けたら物足りなさがちょっとあ ったかもだけれど、この野郎はとある一部分で非常に満ちたりていたらしく、それだけで 妙な存在感を醸し出している所が相変わらずだが何か嫌だ(当然新庄とのあれやそれ)。  佐山の3rd−Gに対する進撃ってのは下巻に期待するとして、やはり私は“思い立っ たら突き進む”傾向な京さんの行動力を眺めているのがとても気持ち良いのですよ。  本当は心を掴んだと表現したくても自動人形達は心を持たないから、京の「名前を与え る」という行動によって見えない壁が取り除かれたと言えるのかな? 出て行くかどうか でのアポルオンとの対話も良かったし。おそらく現時点で最も3rd−Gが抱える穢れの 秘密に近い一人は、テュポーンの側に在り得体の知れない何かに接触しつつある京だろう から、彼女が今後どこまでその秘密に迫れるのか? そして最終的に3rd−Gと運命を 共にするのか? それとも何処かで袂を別つのか? その他諸々の決着が待ち遠しい。  既刊感想:1<上><下>、2<上><下>、3<上> 2004/06/14(月)AHEADシリーズ 終わりのクロニクル3<上>
(刊行年月 2004.04)★★★★ [著者:川上稔/イラスト:さとやす/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  1つのGの設定密度でさえ相当奥深いものなのに、それが10G+Low−G分。この 作者さんの場合、もう既に構想段階などではなく全ての設定をきっちり決め終えていそう で、出しても出しても尽きる事の無いようなネタの底が全く見えない所に驚嘆(まあ私は まだ川上作品にあんまり触れてないから「何を今更」となるのかも知れないけれど)。  今回から全竜交渉の相手は機械人形と武神の世界3rd−G。で、これまでと大きく異 なっているのは、最初の段階で既に3rd−Gが交渉を拒絶しているという点。現状維持 で積極的に歩み寄りを見せていた2nd−Gとは対照的でしょうか。その場合は佐山が波 風立てて引っ掻き回した為に面倒臭い方へ向かったけれども、結果的には双方が納得のゆ く結末へと収まったわけで。対して今回は交渉に漕ぎ付ける以前に、まず3rd−Gの素 顔をこちら側の真正面に向けなければ始まらなくて、これがまたなかなか難儀な模様。  佐山達と、概念核の半分を宿した神砕雷を持つ竜司&美影と、もう半分の概念核を抱い たテュポーンを持つ3rd−Gとの三つ巴の構図。実際にはちらほら横槍が入ったりして るので更に複雑化しつつありますが、何となく一番最初の頃と比べて「随分読み易くなっ たかも」と感じられたのは、果たしてキャラクター同士がしっくりと噛み合って来たから なのか、それとも単に読み慣れて来ただけなのか。ともあれ、読みながら随所で躓いてい た感覚が徐々に薄れ続けていて、逆に面白さは増している手応えは良い傾向……かな?  今回は佐山にとってもまだ手探り段階の3rd−G、なので本格的にストーリーが動く のは中巻以降か。2つ目の“個人的な穢れ”に誰が深く関係してるかってのはまだ明確じ ゃないけど、予想範囲内で絞り込む事は出来そうなので、あれこれ考えを巡らせながら次 を捲ってみる事に。個人的には3rd−Gへ巻き込まれ役として気張っている京が好きな ので、佐山達にとっての敵側内でどんな風に動いてくれるのかも大いに楽しみな所。  既刊感想:1<上><下>、2<上><下>


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