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08/31 『平井骸惚此中ニ有リ 其伍』 著者:田代裕彦/富士見ミステリー文庫
08/30 『風月綺 江南王都に季節は巡り』 著者:皇城一夢/富士見ミステリー文庫
08/28 『SHADE Lost in N.Y.』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
08/27 『らぶとラブる!? 学園サンクチュアリ』 著者:早見裕司/富士見ミステリー文庫
08/26 『空ノ鐘の響く惑星で7』 著者:渡瀬草一郎/電撃文庫
08/25 『空ノ鐘の響く惑星で6』 著者:渡瀬草一郎/電撃文庫
08/23 『空ノ鐘の響く惑星で5』 著者:渡瀬草一郎/電撃文庫
08/21 『ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター<上>』 著者:天羽沙夜/電撃ゲーム文庫
2005/08/31(水)平井骸惚此中ニ有リ 其伍
(刊行年月 H17.08)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:田代裕彦/イラスト:睦月ムンク/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
シリーズ完結……ん? 完結? と、その事実に半信半疑で首捻り。もしかして打ち
切りになってしまったのだろうか? 頭の中で色々ぐるぐる考え巡らせながら読んでい
ましたが、本編読了してあとがきを読んで初めて『完結』の言葉に納得させられた。
太一が探偵役として成長してゆくのを追い続けるのは読んでいる側にとっても楽しみ
であり、実際成長の証を見れるのが嬉しかったりもする。しかしそれは同時に“平井骸
惚此中ニ有リ”でなくても良くなってしまう。シリーズ初期の頃の約束事として、あく
まで最後の最後で骸惚先生が解決してこその物語というのがあった訳だから、その枠を
外したからには幕を閉じなければならない……という事。富士ミスの中でもミステリ要
素を楽しみながら読める数少ない作品であり、太一と涼とはつ子の関係を描いたLOV
E要素との融合もかなり上手く行っていたと思うので、もうこれで完結してしまうのが
残念でならない(個人的には“河上骸惚此中ニ有リ”でも全然構わないんですけど)。
最後のエピソードは太一側と骸惚先生側、二つに分かれた場所で両方に首切り殺人事
件が発生。一見両者に関係のない状況から、徐々に一本に結ばれてゆく展開。トリック
や謎解きでぐいぐい先へ興味を向けさせる牽引力は相変わらず強く、それ程難解でない
のは逆に軽快なテンポで読めるというバランスの良い感触に繋がっていると思う。
これだけ見れると今後まだまだどんな風にでも続けられそうなんだけど、《この人》
がこうなっては物語の幕引きを受け入れるしかない。ただ、願わくば某知恵の泉を持つ
少女との推理対決、もしくは澄夫人やはつ子のエピソードを含む短編集の実現を。
既刊感想:其壹、其貳、其参、其四
2005/08/30(火)風月綺 江南王都に季節は巡り
(刊行年月 H17.08)★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
[著者:皇城一夢/イラスト:甘塩コメコ/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
中国が舞台で氏名が慣れない読み方なのと、登場人物が一杯で覚え難いのと、話の流
れがあちこちに散り過ぎているのと、散った流れがうまく纏め切れていないのと……そ
んなこんなで読み進め追い続けるのに一苦労。いや、氏名については中国歴史の舞台が
好きな人や慣れている人なら苦にならないと思う。しかしその後の多人数、風箔と探刻
で分けた流れが纏まらない、これらの部分がスムーズに行かず躓きを覚えてしまう。
今回読んでいて最も戸惑ったのが、ふと立ち止まるといつの間にか風箔と探刻の当初
の目的を見失っていた事。本気で「今何の為に行動してるんだっけ?」と首を捻ってい
ました。この中で描かれている殺人事件も最初から用意されていた訳じゃなく、むしろ
後半になってから“何とかミステリ要素を入れなけばならない”と取って付けたような
印象で。目的意識があちこちに揺れて定まらないからぼやけてしまったのかなぁと。
正直ミステリ方向での謎解き要素は要らないんじゃ……うん、まあこれ言っちゃ身も
蓋もないですけど。結局は『侠客党』『紅花党』の抗争メインのアクション重視でやっ
ちゃった方が、この物語には合っていると強く思ったのが全て。追っている感触ではあ
んまりLOVE方向も強化出来なさそうな気がするし。人間業を越えた戦闘能力を持つ
キャラが多いのだから、そこを活かさないのは勿体無いし活かさない手は無い。
共産党が仕切る中国社会に反旗を翻し、真の中国を取り戻そうとする大きな思想があ
る。かつで同志であった『紅花党』との対立関係もある。話を盛り上げる為の目的など
は充分に用意されている筈なので、あとは素直に盛り込んでくれたらいいと思う。
既刊感想:風月綺
2005/08/28(日)SHADE Lost in N.Y.
(刊行年月 H17.08)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:南房秀久/イラスト:湊ヒロム/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
家族全員が何らかの特殊能力を有し、どんなに危険が伴う非合法の依頼も難なく解決
してしまうスーパーファミリーが活躍する物語……という印象で固まりました私の中で
は。まあ十八と一九は他の家族と比べると欠点多くて依頼達成度も劣るらしいけれど。
しかしこれがまた完璧であるよりも、ずっとキャラクター姓に面白味があって良いの
ですよね。実際プロの仕事をこなしながらも、実戦の上で欠点や未熟な面が出てしまう
事がある。でも、窮地に立たされるからこそ危機に立ち向かい活路を切り開く展開で面
白さが得られ、合わせて一つ山場を越えた少年の成長をしっかり感じる事が出来る。
勢力関係や場面転換が複雑多岐な割に流れは掴み易く、逃亡と追撃を繰り返すテンポ
も軽快でスピード感があってなかなかの好感触でした。舞台であるニューヨークの地理
をよく調べてるなぁという印象で、それを丁寧に物語の中で活かしている辺りも良い。
ただ、この事件のシナリオを描いた“首謀者”って結局どうなったの? これがちょ
っと引っ掛かり続けてる。十八には裁けなかったから存在してる筈なんだけど……曖昧
なままで片付いたのが少々惜しい。今後またSHADEと絡むことになるのかな?
包み隠さずの姉弟愛、さり気ない家族愛、確かな手応えで感じられました。この方向
で続編出てくれるなら、当然一九以外の姉妹達の活躍も期待するしかないでしょう。
2005/08/27(土)らぶとラブる!? 学園サンクチュアリ
(刊行年月 2005.07)★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
[著者:早見裕司/イラスト:夢野みかん/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
「らぶと、ラブる!?」って何ですかこのタイトルは、読んでるこっちが語尾に『!?』
でも付けたいわ! とか喚いた後に「らぶ、とラブる(トラブル)」だったのね〜と気
付いてあははと空笑い。しかし表紙折り返しのあらすじ見てたら『公認カップル制度』
ですと? 何ですかそのイカレた制度は!? ……今度は思わず語尾に付けてしまった。
おまけに本編では「愛が見える」だの「愛の匂い」だの、そんなに節操無くLOVE
LOVEぶち込みたいのかよ!? と強がっていて実は激しく後退りしながら引きまくっ
てました。まあそれらは理事長の意図であり、圭介の生い立ちや性格などによるもので
あり、後になれば意味も理由も理解出来るのだけど何となく受け入れ難かった。
そんな印象で、肝心の中身はミステリとLOVEの融合。但し前者は軽度でもそこそ
こながら、後者は全然サッパリ。設定だけなら如何にもLOVE特盛りみたいに感じる
のだけれど、実際には夏樹(+恵)の方だけがきゃーきゃーと盛り上がっていて、圭介
側にはそういう雰囲気が皆無なもんで。性格的には仕方ないのかも知れないけれど、あ
まり圭介の素性に深く踏み込んでいないせいか、上辺だけの言葉にしか聞こえない。
愛を語るなら犯人をも赦し愛すべきではないのか? なんて、奇麗事では済まされな
いのだろうけど、圭介の言葉通り手段が反則的なんだよねぇ。敵を罠に落とすと言うの
が……まあ相手にとっては自業自得なんだけど(案外正攻法で進めて馬鹿を見た石動が
実は一番まともに見えたのは笑うべき所か)。妙にスッキリしなかったなぁと。
キャラは結構愛着持てそうな感じなので、圭介に“上辺だけ”とは見られない愛の言
葉を。あと個人的には175Rこと生徒会長・稲子公佳に興味あり。最初は規則規則で
ガチガチに固めたお堅い娘、という印象だったのだけど、意外としたたかで頭の切れる
お方のようですよ。去り際で圭介に向けて浮かべた微笑の意味が無性に気になる。
2005/08/26(金)空ノ鐘の響く惑星で7
(刊行年月 2005.07)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
「ウルクーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
はぁはぁはぁ……またか! またなのか! くそぉ〜おのれぇ〜何故ウルクばかりが
こんな目に! 大分持ち直していたから、このままフェリオとの強い絆が後押しとなっ
て一気に回復へと繋がるんじゃないか? と大いに期待していた矢先のこの終盤。
傍から見ればリセリナを含めた関係は戦乱の中にあって一層盛り上がって来ていたし、
もうウルクは完全にフェリオに心を委ねていたので油断してた。以前フェリオにどう想
われていたのか、と情緒不安定に揺れる心が更なる悲劇を生む兆候だったのか。ムスカ
の治療で最悪の事態は避けられたものの、最悪に近い状態には変わらない。しかもそこ
まででこの巻が終わっているから余計にもどかしい。ウルクの詳しい容体や現状での表
情などは? 回復する見込みは? など、聞きたい事全て次へ持ち越しとは辛過ぎる。
……などと、終盤のウルクショックで他に語りたいのを失い掛けていましたが。フォ
ルナム神殿の激戦も、ラトロアの介入によって勢力構図が一変。完全に対ラトロアの態
勢となり、来訪者達も袂を分かつという展開。今回も全編余す事無く面白かったです。
とりわけウィスタル、ライナスティ、ハーミット、チェイニーなど、己の信念を貫い
て戦う男達がいつにも増して格好よく映りました(この辺りは大概フェリオに焦点が当
たっていたのでね)。敵方であるベリエにも、狂気に満ちていて実はそれが自ら望んだ
ものという姿に圧倒されてしまいました。最も印象に残る戦いを挙げるならウィスタル
とベリエ。ただ、ライナスティとパンプキンの戦いも負けず劣らずでなかなか。ライナ
スティについては実力未知数だったので、ようやく彼の本領が見れて嬉しかった。
しかし結末はおぼろげに見え始めたけれど、まだまだ終幕には遠いよなぁと思う。向
き合う先がラトロアに定まったのはかなりの前進傾向。一方で多少ちらつかされた世界
の真実が未だ謎に満ちていたりもする。個人的には途中からすっかり萎んでしまった感
のあるカシナートに奮起して欲しい。これまでの印象と違ったものを見せてくれたのは
良かったのだけど、結局ラトロアの波に飲まれてあまり見せ場を得られなかった気がす
るので。おそらくはフェリオ達との共闘となるのかな? 今後の活躍に期待したい。
既刊感想:1、2、3、4、5、6
2005/08/25(木)空ノ鐘の響く惑星で6
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
明かされる時はそう遠くないと言っていた、こちらの世界と御柱と来訪者達の世界の
繋がり。その謎の一端がムスカの口から案外早々と語られた。とは言ってもまだ確証は
無く憶測の域を出ていないけれど、これにシズヤがカシナートに語った事実も含めて、
ようやく点と点が一つの線で結ばれたのかな? 手応えの方は今も曖昧さが先行しては
いますが、異世界からの来訪者達とこちら側の北方民族達、ムスカによる“時間差”の
推察などからじわじわと仕掛けられた謎の真相に迫りつつあって一向に目が離せない。
そして急激に浮かび上がってきたラトロアの不気味な存在。フォルナム神殿の利権争
いを中心に小競り合いを続けているアルセイフ、ジラーハ、タートムが、本当に向き合
わなければいけない相手こそラトロアなのでは……そんな危機感による嫌な汗もじわり
と滲む。ハーミットが飾っていた『リセリナの肖像』も深まる謎に拍車をかける。
一方毎度気になる三角関係。この状態のウルクがリセリナの秘めたフェリオへの想い
に気付いたので、正三角形に近い形で見えて来たような。ただ、混乱の最中に分断され
た上にイリス達の待ち伏せに合ってしまってさあどうなる、と言った状況。そんな中で
興味深く映ったのは来訪者達の考え方。決して皆がイリスのような憎悪に凝り固まって
る訳ではなく、ムスカみたく話の分かりそうな人もいれば、パンプキンのように戦いは
好むけれどその言動が何となく憎み切れない人もいる。もしかしたらフェリオと分かり
合える可能性もあるんじゃないだろうか? と時折思う事もあるのだけれど……。
既刊感想:1、2、3、4、5
2005/08/23(火)空ノ鐘の響く惑星で5
(刊行年月 2004.11)★★★★★★★★★☆(9/10)
[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
「ウルクーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
(はぁはぁ)と息切れするまで叫びたい程ショックは大きかったのですよ。でもそれ
なのに、それなのに、エンジュの問い掛けでフェリオへの淡い想いを自覚するリセリナ
にもドキドキさせられてしまう。彼女に関しては、とある条件が引き金で力を開放する
“昇華”効果により猫みたく甘える姿を見せられた時なんかもドキドキでした。
ウルクがこうなってしまったので変則的な三角関係に縺れていますが、フェリオの中
でリセリナの存在がもっともっと大きくなってくれば更に面白くなるに違いない。と言
うより、ようやく来訪者の面々が目立って表に出始めたので、リセリナの存在感が増え
続けて行くのは確かだと思う。あとはウルクがどうなるかだよなぁ。ムスカの言で残酷
な事実を突き付けられたのだけど……彼女の中でフェリオへの想いが在り続ける限り、
救いの道は決して断たれないものと信じたい。普段と変わらない微笑を浮かべながら無
意識にフェリオの残滓を感じて涙を流すウルクの姿が堪らなく切なくて切なくて。
……とまあどうしてもフェリオ、ウルク、リセリナに視線が集中してしまうのですが、
フォルナム神殿を巡るストーリー展開も充分見所多数ありの読み応えありで面白い。と
りわけ上記の通り、イリスを始め来訪者達の見せ場が格段に増えて来ているのが大きな
要因か。来訪者側の世界の事やこちら側の世界との繋がりについては未だ不明点ばかり
ですが、隠されているものが明かされる時はもうそう遠くないのかも知れない。
既刊感想:1、2、3、4
2005/08/21(日)ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター<上>
(刊行年月 2005.07)★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
[著者:天羽沙夜/カバーイラスト:大峡和歌子
/本文イラスト:広瀬総士/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
以前読んだファミ通文庫版との比較を目的の先頭に置いて読みました。もしこれが外
伝的な小説オリジナルエピソードとかなら違う意欲も持てたのだけど、ゲームシナリオ
を辿るノベライズって部分はこちらも一緒なのでね。ファミ通文庫版は上下巻でもちゃ
んと収められるのか、と物足りなさをかなり心配しているのだけれど、こっちはそれよ
り更に頁数が少なくてどうしたものかと。実際読んでみた感触は紛れもなくゲームのダ
イジェスト版。これだけがりがり削って省略してくれると却って清々しいです。
物語を楽しむという意味では全くお薦め出来る要素が見当たらいのですが、ゲームシ
ナリオを手っ取り早く思い返したい時には辛うじて役立ってくれそう。ただ、地の文に
よるだらだら〜っとした説明描写はそれ程でもなく、逆に会話文が多いので意外とキャ
ラクター同士の掛け合いを楽しめたりする。まあ重要所は押さえているにしても、さす
がに端折り過ぎだろうと言わずにはいられない内容ですが、私自身はゲームで後半部分
はプレイしてない為、どんな展開になるだろう? という興味はあります。とりわけこ
の電撃版は、訳有りなラクウェルの事情をチラつかせている辺りが妙に気になってる。
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