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06/18 『タクティカル・ジャッジメントSS2 はじめてのさいばん りろーでっど』 著者:師走トオル/富士見ミステリー文庫
06/18 『バクト!III The Fortuna』 著者:海冬レイジ/富士見ミステリー文庫
06/16 『さよならトロイメライ4 追想の和音』 著者:壱乗寺かるた/富士見ミステリー文庫
06/16 『イレギュラーズ・パラダイス4 白い楽園のムーンダンス』 著者:上田志岐/富士見ミステリー文庫
06/14 『平井骸惚此中ニ有リ 其四』 著者:田代裕彦/富士見ミステリー文庫
06/13 『ロクメンダイス、』 著者:中村九郎/富士見ミステリー文庫
06/13 『ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん』 著者:新井輝/富士見ミステリー文庫
2005/06/18(土)タクティカル・ジャッジメントSS2 はじめてのさいばん りろーでっど
(刊行年月 H17.05)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:師走トオル/イラスト:緋呂河とも/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
逆転無罪を勝ち取り続け全戦無敗を誇る弁護士・山鹿善行。そんな“表向き”の噂だ
けで彼に憧れ彼の下で弁護修習を希望してしまった司法修習生の新ヒロインがこの短編
集2巻目に登場。その名も一尺八寸東鬼(かまつか・しのぎ)……凄い名前だな。女の
子に鬼を付けるか普通……とかいらん文句を垂れてしまいましたが、中身は至って不幸
な眼鏡っ娘です。もう善行に師事しようと思った時点で不幸確定。ああ理想と現実の落
差の悲しき事か。しかしこのシリーズでこれだけまともな思考の一人称文章は多分初め
て(比較対照が善行と伊予と影野しかいない時点で当然の結果だけど)で、一人称視点
のキャラが焦って混乱して慌てふためく姿ってのは結構新鮮な感じだったかも。
短編集らしい割と手頃な事件を扱いながら、法廷劇としてもなかなかどのエピソード
も充実した内容で仕上げているのはさすがに上手い。甲乙付け難い良さでしたが、一つ
選ぶなら童話をこんな風に料理してしまうのかと驚かされた『新説・さんびきのこぶた』
でしょうか。あと変な方向に度肝を抜かれたのは『ノンフィクション編』。馬鹿馬鹿し
い事を真面目にやっているのが更に馬鹿馬鹿しく、しかもそんなお約束なオチかよ〜。
東鬼の修行?エピソードも全部面白かったです。本編は善行のせいで腹の中が真っ黒
な思考の文章ばかりだから、余計に東鬼視点の文章が清々しく感じられる。ちょっとへ
なちょこ入ってますけど、何より華があるのは良い事だ。短編集は東鬼と伊予の半々の
割合でやってくれたら嬉しいかなぁ。本編の雪奈もこれくらい活躍の場があれば……。
既刊感想:1、2、3、4、5、6、SS
2005/06/18(土)バクト!III The Fortuna
(刊行年月 H17.05)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:海冬レイジ/イラスト:vanilla/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
どうしようもね〜よ! この音無素子ってヒト。彼女の一人称なだけに痛々しさも半
端じゃない。いやもうホント蹴っ飛ばしていいですか? ……ただし最大限に愛情を込
めた一撃で。やっぱり前巻辺りから感じてた通り、最初の頃の単なる痛いキャラから愛
着を抱けてしまえるキャラに変貌しつつある。危なっかしくて目が離せなかったり、泣
いてばかりな姿を見ては思わず頭をなでなでして慰めたくなったり、心が迷子になって
いる時に手を引き導いてあげたくなったり(改めて並べてみるとこれって子供への対応
にしか見えないな)。まあかなり苛め甲斐のある……というよりも無意識の内に“苛め
て欲しいオーラ”を放っているとしか思えない迂闊で厄介な行動ばかりなんだけど。
構成が全く一緒な為、誰が臭いかはインターミッションで直ぐに分かるし、素子が警
察に追われる羽目に陥ってるのにも複雑な理由があるのだと先読みし易い。その辺りで
新鮮味を得るのはそろそろ厳しくなって来たけど、毎回違うゲームをメインに用意して
いるのは良い傾向ではないかなと。『クラップス』というゲームを全く知らなかったせ
いか、文章でルールを呑み込むのは結構面倒でしたが、理解した後はなかなか楽しめて
いたと思う。あと好感触だったのはエピローグでヒロトが(非常に捻くれながらも)真
意を表に出したシーン。結局素子の事をよーく考えているのが垣間見れたのでね。
既刊感想:I、II
2005/06/16(木)さよならトロイメライ4 追想の和音
(刊行年月 H17.05)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:壱乗寺かるた/イラスト:日吉丸晃/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
何はともあれそろそろ詳細な相関関係図をどこかに付加して欲しいぞ。予想と近くて
希望通りに過去の《トップ3》が深く関わる展開で、都と八千代とあれやこれやそんな
とこまで!? な要素も抜かりなく盛り込まれていたから満足度は高い。本人かどうか怪
しい怪しいと首捻りつつ信じた結果、まんまと騙されてしまった件も「うまく仕掛けて
くれたなぁ」と。ただ今後への伏線かどうか、冬麻に関する重要らしき事を断片的な物
言いだけで片付けて去りやがったから、後味は少々スッキリしませんでした。
断片的とか曖昧な描き方という点では、第七期《トップ3》とパートナー間で過去に
何が起こったのかについても同様。まあ幕間のシーンから想像する事は割と容易いのか
も知れませんが、どうも終盤の青の語りだけでは把握し難くて余計もやもやが溜まって
しまう。後々また描かれたりするのでなければこの巻でハッキリさせて欲しかった。
で、最初に戻って相関関係図。特に知りたいのは冬麻と両親、それから冬麻の父親と
御城学園歴代トップ3で因縁深い人達。“華咲瀬”と“藤倉”の二つの姓は、冬麻にと
って“生み”と“育て”の事? まだこの辺がよく分からない。歴代トップ3&パート
ナー内でもかなり複雑な事情で絡み合っていそうだし……でも意図的に隠して興味を引
っ張ってくれるならそれもまた良しか。ちょっと不遇すぎて可哀想だったのが、完全に
弾かれてしまった泉ちゃん。私はやっぱりどう転んでも泉=妹にしか見れてないから、
恋人役としての巻き返しはあまり期待出来ないのです。ただ、冬麻を支えるパートナー
は彼女を置いて他に居ないと思っているので、次はもっと活躍してくれたらなと。
既刊感想:1、2、3
Novellette
2005/06/16(木)イレギュラーズ・パラダイス4 白い楽園のムーンダンス
(刊行年月 H17.05)★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
[著者:上田志岐/イラスト:榎宮祐/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
……ううむ、こんなに早々とシリーズ完結するとはちょっと意外でした。4冊分で重
ねて来た中身の事や刊行ペースなどを考慮すると、決して短命で切れてしまったわけで
はないし、中途半端で終わらずきちっと最後にケリを付けた終わり方だったと思う。
それでも何かもっとのんびり続くんだろうと思い込んでいたせいか、随分あっさり終
わってしまったな〜という印象が大きくて拍子抜けしてしまった。ケリポット図書館会
員を千人集めるまでの経緯も、今回のような展開をやられてしまうと「じゃあ今まで報
われない苦労ばかり背負ってちびちび会員集めして来た努力は何だったの?」と不満が
残ったり。どうも読んでいた感じでは、最初から想定していたのではなくて、この巻で
終わらせなければならない事情からの処置だったのかなと。まあこの辺りは勝手な解釈
だけど、あとがきを読んでみても終える事に未練を残してるような感じがあったので。
何とか纏めて終わらせる為、どうしても全ての流れが急ぎ足の駆け足に映る。敵役の
ベトノワールの嫌らしい性質の存在感が充分描き切れていない。だからレクトとの最終
決戦でも軽くあしらわれているようにしか見えない。残念な点はこんな具合でした。
個人的に早い完結が悔しいと思う一番の原因は、この作品が第6回『龍皇杯』で優勝
しているからなんですよね。「こんなに簡単に幕引いちゃっていいの?」と。未完で終
わるよりは余程マシと考えれば多少は気も紛れるけど、やっぱり残念でならない。
既刊感想:1、2、3
2005/06/14(火)平井骸惚此中ニ有リ 其四
(刊行年月 H17.06)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:田代裕彦/イラスト:睦月ムンク/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
初めて骸惚先生不在の中で連続殺人事件に遭遇してしまう太一の奮闘と、関東大震災
を背景にしたストーリー展開が今回の鍵。先にミステリ要素についてですが、これまで
と同様に手軽な仕掛けで先読みし易い内容。加えて真犯人が初期の段階でかなり絞り込
めてしまえる程。いや、さすがにこれはちょっとヒント出し過ぎですよ〜と思わず唸っ
てしまいましたが、この最後の締め方が非常に好みだったので良し。まあこのシリーズ
はミステリ側が甘くても、もう一本の矢の方が強力だから些細な事かも知れない。
もっとも、手軽とは言えしっかり読ませてくれる文章表現力は相変わらず安定して高
いので、最後まで面白さが途切れることはない。更に今回は殺人事件の推理ばかりでは
なく、事件の切っ掛けとなった関東大震災の生々しい悲惨な爪痕が描かれているのも大
きな見所。あとがき読んだ感じではかなり悩んだ上で控えめに留めたようですが、実体
験していない身にはこれでも充分な描写ではないかなと思いました。涼が風邪で寝込ん
でいる際に突如降り掛かった大災害で混乱極まる中、太一の頑張りもまた見所です。
で、上記の“もう一本の矢”とは勿論L・O・V・E! の事。実際『L・O・V・
E!』と叫びながら執筆してたらしく(あとがき参照)、その力の入れ具合に期待を寄
せて間違いない素晴らしい仕上がりでしたよ今回も。病気で珍しく気弱な涼や、兄様の
助けになりたいと願う健気な撥子や、初恋の気持ちを持て余している太一など。
殺人事件を扱っていても、何処かに必ず和やかで穏やかな気持ちにさせてくれる場所
がある。このシリーズの救いであり純粋な良さなのかなと。「平井家ごっこをしよう」
なんて涼の発言に唖然とさせられましたが、探偵役になるのが正しいのかどうか迷う太
一に明確な道を示す辺り、結局彼の心を最も理解しているのは涼なんだろうなぁ。
既刊感想:其壹、其貳、其参
2005/06/13(月)ロクメンダイス、
(刊行年月 H17.06)★★★★★☆☆☆☆☆(5/10)
[著者:中村九郎/イラスト:dow/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
んん〜。表紙折り返しあらすじの“純愛ラブストーリー”って部分に期待を寄せると
かなり手痛い目に合います。と言うより合いました。あとがき読んで、一体この物語の
どこら辺が“こっ恥ずかしい”のか教えて下さい! とか突っ込みたくもなりました。
内容的にこっ恥ずかしいと感じる部分はあったかも知れませんが、それを感じる以前
に引っ掛かり躓いてしまう点が多いのには参った。文章の表現描写が非常に尖ってはい
るんですね。ただ、あまりに読み手が楽しめるような配慮が為されていないから、尖っ
ている分だけ余計悪い方向にばかり印象が残ってしまうと。謎や仕掛けの置き方が結構
「おっ?」と思わせてくれる良さだっただけに、何でわざわざこんなに理解するのが疲
れる面倒臭い描き方してるのかなと勿体無い気持ちで一杯。主人公ハツの一人称なのに、
ここまで感情移入を拒絶させてくれる文章ってのも良くない意味で新鮮でした。
読んでる途中で何度も何度も「あらすじ通り素直にハツとチェリーの恋の行方を描い
てくれたらいいのになー」と思っては、「でもそれだとありがちで平々凡々な印象にな
ってしまうからあえてこうしてるのかなー?」と思いふらふら揺れてました。しかし意
図がどうであれ、個人的には読み進め辛かったのが大きな足枷だったので仕方ない。
2005/06/13(月)ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん
(刊行年月 H17.06)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:新井輝/イラスト:さっち/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
やっぱり最も知りたくて興味を引かれたのは、あまり触れられる事の無かった鈴璃と
刻也のエピソード。過去に何があったかは軽く避けられてしまいましたが、そのせいで
鈴璃が刻也に対して余りに劣等感を抱いているのが切な過ぎる。まあ刻也がお見舞いに
来て語り合った時点でちゃんと繋がっているのが分かるので、「結局ラブラブしてんじ
ゃねぇかこのやろう」と唸って終わりでした。あと精神的に崩れそうな鈴璃を支える刻
也の妹の狭霧や、ひねくれた性格でも意外と姉思いな流輝の存在感も好印象でした。
綾の記憶喪失(と言うより人格変貌?)イベントは、結局“階段から落ちて頭を打っ
た”のが原因で済まされましたが、本当の所は謎のままだったりする。健一が思ったよ
うに、この綾夜の性格なら母親との確執は生まれなかったのかも――そんな願望が綾の
奥底にあるせいで起こった事ではないだろか……なんて、深読みし過ぎだとは思う。
ホタルと宇美のスパリゾート体験イベントを読んで強く思った事は唯一点、本当に物
凄く未練タラタラだなぁと。しかしホタルがあまりにも不安定で弱々しくて儚げに見え
て、こちらも切なくなってしまった。健一の前では気取られないように相当我を張って
いたのかな……。本編での『巻き返し』とやらがあるのなら期待してみたいですな。
既刊感想:#1、#2、#3、#4、#5
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