NOVEL REVIEW
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02/28 『第61魔法分隊5』 著者:伊都工平/電撃文庫
02/27 『輪廻ノムコウ』 著者:あかつきゆきや/電撃文庫
02/27 『ダブルブリッドIX』 著者:中村恵里加/電撃文庫
02/26 『AstralII childhood's end』 著者:今田隆文/電撃文庫
02/21 『シャープ・エッジ3 red for the overkill』 著者:坂入慎一/電撃文庫
02/21 『撃墜魔女ヒミカII』 著者:荻野目悠樹/電撃文庫
02/20 『悪魔のミカタ666 スコルピオン・オープニング』 著者:うえお久光/電撃文庫
02/20 『世界の中心、針山さん2』 著者:成田良悟/電撃文庫
02/17 『E.a.G.』 著者:柴村仁/電撃文庫


2007/02/28(水)第61魔法分隊5

(刊行年月 2004.04)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:伊都工平/イラスト:水上カオリ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  シリーズ最終巻。ごめんなさいごめんなさい最終巻だけ未読状態で何年もほったらかし にしててホントごめんなさい。この自分のあんまりな放置っぷりには呆れ果ててごめんな さい以外に何も言えねぇ……。でも、久々過ぎて沢山の大切な事を忘れてやしないだろう か? なんて戦々恐々としてた割には結構記憶に残っていたのが意外と言えば意外。  ええと。この物語の主要メンバーである61分隊員達が、それぞれの意思で別行動を取る ようになった辺りから、状況が『ベルマリオン計画』を軸にめまぐるしく変化し複雑に絡 み合うように進んで行ったんだっけ? 確か一冊進む度にあっち行ったりこっち行ったり と結構慌しくて把握するのに一苦労……だったような気がするんだけど、今回はそういう 面倒臭さが一切なくて非常にスムーズに読み進める事が出来た。この辺も前巻までの感触 を考えると意外な感じだったんだよねぇ。既に前巻までで語るべき詳細は殆ど語り終えて いて、あとは定められた方向へ真っ直ぐに進むだけだったから分かり易かったのかも。  バラバラに瓦解し掛けていたそれぞれの想いが、ひとつの為すべき事に向かって纏まっ てゆく姿が実に気持ち良く描かれていた。結末もセレイスの未来を憂慮する以外は文句無 しのハッピーエンドで満足。ただ、それぞれの後日談はもっと読んでみたかったなぁ。  既刊感想: 2007/02/27(火)輪廻ノムコウ
(刊行年月 2004.04)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:あかつきゆきや/イラスト:逢川藍生/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  あらすじ眺めて冒頭読んで「吸血鬼モノ?」と思ってたのだけど、魔女や魔女狩りの方 がメインテーマだった。作中で描かれていた魔女の本質について。事前に頭で描いていた “魔女”のイメージとは随分違ってたなぁという印象。口絵の『魔女の修行』なんてのは、 フィクションであっても思わず試してみたくなる遊び心が盛り込まれていて面白い。  もう一つ。メインを張る重要点はリーインカーネイション=輪廻転生。ただ、こちらの 場合は幾つか今回だけでは明確になっていない所があって、その辺りがもうちょいハッキ リ掴める様にならないとな〜。まず転生体に前世の自我を甦らせる方法って結局どういっ たものなの? という疑問が残り、更にアルベールの恋人エレオノールの転生体は一体誰 なの? という謎も残ってしまった。まあ後者は状況考えたら葵以外には有り得そうにな いんだけど、肝心の葵の方で前世の兆候がまるで見られないから何とも言えない現状。手 掛かりがあるとすれば、ヒーリング扱う為の回路が最初から開いていた事だけど、前世と 関係あるかはよく分からないし。しかも続きは出そうにないのでどうしようもない……。 2007/02/27(火)ダブルブリッドIX
(刊行年月 2003.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:中村恵里加/イラスト:たけひと/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  久々に読んでみても、相変わらず大田の喋りは回りくど過ぎて鬱陶しい癖に、聞き入っ てると意外と耳障りにはならず妙な心地良ささえ感じてしまう不可思議さ。一冊の中で割 と何処ででもペラペラペラペラ喋くっているから印象に残り易いのだろうけど、まあそれ はさて置いて。虎司が「どうしても安藤を喰いたい」と欲望を募らせ、それに対して安藤 希がどう応える? メインの展開はこの辺り。何時誰が太一朗に憑いた“童子斬り”に殺 されてもおかしくない状況下で、一人も犠牲者が出なかったのは正直意外だったかな。  ただ、アヤカシを躊躇いなく殺す“童子斬り”が虎司を殺し切らなかったのは、憑かれ ても太一朗の自我が微かに残っているが故、と希望的に捉えるべきなのか。この物語の性 質からんな甘いもんじゃないとは思うんだけど、どうしても希望に縋ってしまうよなぁ。  虎司と希のやり取りはグッと来た。泣きそうになる程胸が詰まってしまったよ……なん て浸りつつも、この束の間の安らぎってやつが、後に繰り広げられるに違いない凄惨さを より際立たせるものでしかない気がするのが怖い所で。あとは優樹と太一朗が再会を果た す為の足固めな展開。あ〜結局優樹は彼の事を思い出せないまま、絶対の敵として闘う事 になってしまうのか……。んでこのラストから何年も待たされ続け。堪らんなぁ。  既刊感想:VIIVIII 2007/02/26(月)AstralII childhood's end
(刊行年月 2003.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:今田隆文/イラスト:ともぞ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  七月隆文さんの改名前のシリーズ作品。柚に加えて年下キャラの杏奈が準レギュラー出 演を果たした事で、作中における“いもうと”成分が大幅増量増強。今回短編エピソード に登場してるゲスト幽霊さんの中では、1話目の母親キャラ(でいいのか?)の小梅さん が良い味出てるなと思ったのだけど、明に近い位置に居座ってしまった杏奈の方が印象度 は上かな。「明ってマザコンの気あり?」と感じられたのが収穫といえば収穫かも知れな い。義理の妹=柚を全く気にしないのはそれが原因……かどうかは分からないけど。  ツッコミ所は前巻と一緒。見える幽霊が相変わらず少女・女性限定なのは納得いかねぇ ぞおらぁ、と明に詰め寄ってみたくなったり。きっと「関わるなら少女幽霊の方が良いに 決まってる」とかの明の願望から、野郎の幽霊は見えないように無意識の内に視覚遮断機 能が働いているに違いない。……いや、まあ、こちら側も正直その方がいいんだけど。  それと柚の気持ちにこれっぽっちも気付いてやれない明に、手加減無しでゲシゲシ蹴り 入れたくなってしまったのも前巻同様。不憫だ……柚が不憫過ぎる……。でも異性として 意識してたら、面と向かって「家を出て一人暮らしする」とは軽々しく言えないかなぁ。  ん〜。久々に読んでみたのだけど、たった2巻で途絶えているのが凄く勿体無いと思わ されたよ。せめて柚を妹としてしか見てない明と、明を異性として好きになってる柚との 間で何らかの決着をつけて欲しいと望んでるので、いつか続き出てくれないかな〜?  既刊感想: 2007/02/21(水)シャープ・エッジ3 red for the overkill
(刊行年月 2003.11)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:坂入慎一/イラスト:凪良(nagi)/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  『殺人者』と『殺人鬼』。同じようで似ているようで決定的に違う二つの要素を突き詰 めてゆくエピソード。じゃあどこら辺がどんな風に違うのか? ある登場人物の言葉を借 りると、「殺人者は救いがなくて、殺人鬼は救いようがない」だそうな……ってそれじゃ 分からーん! どうやら殺人とは縁遠い大多数の一般人にとっては違いは微妙で気付き難 く、全身が殺人に塗れている存在には決定的な違いがハッキリ見えているらしい。  カナメは一体どちらなのか? と問い掛けられ、考えても明確な答えが出せぬままナイ フを振るう。敵対する“自分とは何一つ同じ要素を見出せない”明確な殺人鬼の少女を瞳 に映しながら、答えを求めるようにナイフを振るう。アッサリ答えが出るようで、なかな か答えに辿り着けず、読んでいるこちら側でも頭を捻って色々と考えさせられる奇妙な感 触だったかなぁ。実際にはどうなんだろうね? どっちも“救い”が見出せ“ない”とす るならば、カナメはどちらにも当て嵌まらないのかも知れない。『殺人者』ではなく『殺 人鬼』でもなく。だって、彼女は現在の時点で充分救われているように見えるもの。  続きは如何様にも出来そうなんだけど、3巻突破の壁は分厚くて高かったか……。  既刊感想: 2007/02/21(水)撃墜魔女ヒミカII
(刊行年月 2003.11)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:荻野目悠樹/イラスト:近衛乙嗣/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  とある空軍基地の中のとある飛行部隊の面々の物語。さすがにこれだけ間が開いてしま うと、前巻のストーリーがどんなだったかってのは感想眺めてみても曖昧だな……。まあ でも今回は(今回も?)電撃hp連載分収録&書き下ろし付きの短編集構成で、ストーリ ー展開で前巻との繋がりは薄めな印象だから、キャラクター達の特徴を軽く把握出来てい れば大丈夫だろう……多分……と、かなり不確かでふらふらと迷うように読み進めた。  短編の内容は第四航空隊の一人一人に焦点を当てたもので、今回は“お嬢”ことハルミ、 キド、ヤナセ、シナノの4名。ただ、他国との戦争中という背景でこれだけ戦闘機乗りが 揃っているのに、実は空戦メインではない所が結構な変り種なのかも知れない(多少は描 写もあるけれど全体の中では微々たる量)。それよりも“魔女”と呼ばれるヒミカの神秘 性の方が上に立つ。様々な憶測が飛び交うばかりで殆どが謎に包まれていた彼女の本質、 今回4話目終盤でようやくその一端が垣間見れた気がする。次巻でヒミカの懐へ特攻掛け るぞ! 的な雰囲気がひしひしと感じられたので、その辺りに期待して次に臨んでみる。  既刊感想: 2007/02/20(火)悪魔のミカタ666 スコルピオン・オープニング
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:うえお久光/イラスト:藤田香/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  オラずーっと待ってたぞ! な待望のシリーズ再開。しかもコウは10巻以降の『ザ・ワ ン』との戦いでは不在が続いてたから、明確に主役的ポジションに立つのは8、9巻『ド ッグデイズ』以来じゃないか? だから、すげー久々にコウの立ち振る舞いに触れている 筈なのに、何故か意外にそう感じさせない辺りはさすが真の主人公の存在感ってやつだろ うか。ともあれ期待感に浮き足立つ気持ちを抑えつつ「お帰りなさ〜い」とお出迎え。  で、お出迎えしたはいいが……何だこの盛りのついた犬みたいなコウは〜。加えて綾、 イハナ、小鳥遊までもがコウに対して積極的だったり妙な感じだったり(この理由につい ては後の展開で分かったけれど)。二学期の幕開けはどいつもこいつも発情期だな。  しかし、シリーズ開始当初は「魂集めで必要量に達するまで一体どれだけ掛かるん?」 なんて思ってたもんだけど、今や溢れ返る程に満ち足りてしまった。なのでこれでようや く本来の本題である(だよね?)“冬月日奈を蘇らせる”方向へ話が進んで来たぞ! と いう確かな手応えが得られて、まずは満足の再開オープニング。ただ、提示された“蘇ら せる条件”ってのが非常に曲者で。どう考えても真っ直ぐには進まなさそうだよなぁ。  既刊感想:『悪魔のミカタ』感想一覧 2007/02/20(火)世界の中心、針山さん2
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:成田良悟/イラスト:エナミカツミ&ヤスダスズヒト/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  『柏木クロスの真っ赤な死』のあとがきによれば、それぞれの短編執筆時点では“他の 短編とどう繋げるか?”なんてのは一切考えていないそうで……まじですか? 収束ポイ ントである『柏木クロスの真っ赤な死』をどれだけ振り返ってみても、とてもそんな風に は感じられなかったのだけど。むしろ最初から後に文庫で纏めるのを前提に、各エピソー ド同士の繋がりを予測計算して描いているものと思ってたよ。これがまさに『うまくピー スが嵌った』って事なんだろうなぁ。いや、本当に見事に繋がっているから凄いなと。  最後のエピソードでバラバラのピースが徐々に組み合わさってゆく為、初読みでは一部 「んん?」と軽く首捻り程度の分からなさがあったりもしたんだけど(間章1とか375 64人目の悲劇でクロック本部を壊滅させた存在とか)、軽く再読するだけで「あ〜なる ほどそういう事だったのね」で落ち着く。一粒(一冊)で二度美味しくなれる仕組み。  針山さんは相変わらず目立たない癖に、各種重要人物達に与える間接的影響力は並外れ ているという不可思議な存在。一度でも名前が挙がるとその都度ニヤリとさせられ、次は 一体何処で出て来るのか……それを想像するのが何時の間にやら楽しみになっている。   既刊感想: 2007/02/17(土)E.a.G.
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:柴村仁/イラスト:也/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  例えば。『人間』と『それ以外』という二つの枠を作ってみて、大雑把に括り分けてそ の中へ放り込むとしたら、お稲荷さまの大霊狐も今作の進攻体も『それ以外』だから似た ようなもんだろう? ……と、理解が難儀な領域を無理矢理ねじ伏せて読んでみたけれど、 やっぱり難儀な事には違いなかったよう。何にしても、Dも面倒臭がらずにもうちょい詳 しく自身の存在を語ってくれてもいいじゃないのさ〜、ってなっちまった訳で(とは言え、 ありのままに話された所でゴドーみたくちんぷんかんぷんに陥るのがオチだろうけど)。  この物語におけるゴドーの存在意義や行動理由なんて部分。最初の内はDに間借りされ たキアラの身体を護る事“だけ”と思ってたから、割とへなちょこなオッカケ君でしかな いのかなぁ? という印象だったのだけど、さすがにそんな単純ではなかった。まあ途中 から怪しげな行動取るようになるので、何となく妙な雰囲気は直ぐに感じ取れるかな。  穢れ切って殺伐とした空気の中、ゴドーとDとスモールの掛け合いは何とも言えず小気 味良い。それにDは非情非道を通しているようでいて、どこか徹し切れないお人好しな面 を覗かせている辺りでニヤニヤさせられたりとか。とりわけゴドーに対するDの振舞いを 眺めてると時折微笑ましくなるよなぁと(殲滅すべき敵には一切容赦なしだけど)。  しかし、この物語って皆が遠回りし過ぎてる気がするんだ。もっと直球放ってくれよと 何度叫んだ事か。残されたままの謎もある事だし、次行ってみてもいいんじゃない?


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