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04/15 『薔薇のマリア T.夢追い女王は永遠に眠れ』 著者:十文字青/角川スニーカー文庫
04/15 『天使のレシピ』 著者:御伽枕/電撃文庫
04/11 『狼と香辛料』 著者:支倉凍砂/電撃文庫
04/09 『火目の巫女』 著者:杉井光/電撃文庫
04/08 『哀しみキメラ』 著者:来楽零/電撃文庫
04/08 『お留守バンシー』 著者:小河正岳/電撃文庫
04/06 『ルカ ―楽園の囚われ人たち―』 著者:七飯宏隆/電撃文庫
04/03 『半分の月がのぼる空6 life goes on』 著者:橋本紡/電撃文庫
04/01 『灼眼のシャナXII』 著者:高橋弥七郎/電撃文庫
2006/04/15(土)薔薇のマリア T.夢追い女王は永遠に眠れ
(刊行年月 H16.12)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:十文字青/イラスト:BUNBUN/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
ええっ!? ちょっと待てマリアローズって○の子じゃなくて○の子だったのか早く
言ってくれよそれって詐欺いや何でも無いデス(別に隠す必要もないだろって感じだけ
どまあ何となく)。前から「どんなもんだろか」とちょっと“マリアローズと言うキャ
ラクターが”気になっていて読んでみたかった作品のひとつで突発的に手出してみた。
性別知ったら見方が可憐でか弱い、から軟弱でへなちょこになっちゃったけど。主人
公らしからぬ能力の劣り振りと、心の中で結構言い訳の多いヘタレ気味な性根はちょっ
と興味を惹かれれるものもあった……かな? 何か過去にあったらしい忌むべき色々が
起因してそうな気もするんだけど、今回はそこまで深く踏み込んで貰えなかったし。
内容はパーティ組んでのダンジョン探索RPG、を文章に変換したモノ。それ以上で
も以下でもないそのまんまな直球勝負。最初からある程度経験値を得たパーティで、ク
ランZOO結成の経緯は詳しく描かれず。分かったのはメンバー中でマリアローズが一
番最後に加入したらしいって事くらいか。意外と謎仕掛けは少量だったかなぁ。状況描
写が丁寧過ぎるくらい丁寧だったので、把握し易い反面説明を延々読まされている感覚
とかもあったり。戦闘描写はもうちょい速いテンポで進めてくれた方が良かったかも。
クランZOOメンバーはマリアローズ含め一癖二癖あるやつばかりで、言動や絡み方
が楽しく面白い。多分まだ全員持ち味の一部しか披露してないんだろうなと。それに設
定の底もかなり深そうで、これから徐々に練られた奥深さを見せて行って欲しい。
2006/04/15(土)天使のレシピ
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:御伽枕/イラスト:松竜/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
第12回電撃小説大賞『選考委員奨励賞』受賞作。
元々短編作で応募したものを引き伸ばして連作短編という形に仕上げたのかな。説明
は特に無かったけどそんな感じ。描かれているのは全部高校生の恋愛で、その“まとも
な恋愛”を形成する上で必要不可欠な“何か”を失くした“誰か”を救う為、最終的に
タイトルにある沸け有りな“天使”が介入して解決してゆく。これが基本パターン。
しかしそれぞれの短編の中身をどうこう触れる前に、最初から抱いていた「天使に関
する謎を解かず投げっ放しで幕引く気じゃないだろな?」という心配が見事に的中して
しまってちょっとだけしょんぼり。正確には丸投げではなく、最後の最後で少女天使と
少年天使の関係、何故人間の恋愛事の落し物を拾い干渉しているのかについての理由な
どは必要最低限語られていたけれど、これって結局シリーズ意識した続きものになって
るじゃないかと。やっぱり受賞作にはあからさなま謎は残さず全て明かして一冊で纏め
て欲しかったよと思う訳で(まあこの辺は個人的な拘りなのかも知れないけれど)。
ところで著者の方は女性? 著者近影のイラスト鵜呑みにしたらそうなんだろうけど
……女の子視点(トランキライザーキス、恋愛実験)での描き方が同性っぽく感じたか
ら、と言うよりはもし自分が描いたらこうなるだろうって心理とは違う箇所が結構多か
ったから。どうだろう? 些細な事かもだけど好みに差異が出たのはそんな部分で、上
記二編がお気に入り。あとは天使の詳細知りたいので続編出してとしか言えない。
2006/04/11(火)狼と香辛料
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:支倉凍砂/イラスト:文倉十/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
第12回電撃小説大賞『銀賞』受賞作。
可愛いとは……どちらかと言えば狼娘のホロよりも、ホロに手玉に取られまくってい
る時のロレンスの方だと思ったけれどもその辺どうか? まあそれはさておき、読むの
二ヶ月遅れで相当事前情報入れてしまったのを何となく悔やみつつ、それでも読んでみ
てホロというキャラクターの絶大な魅力に「成る程ね〜」と強く納得させられた。
確か劇中でロレンスが感じてたような気がするけれど、ホロは見せる仕草が「幼子」
のそれか「老獪」のそれか、どちらかに極端に一気に傾く事が多くて殆ど中間って感情
が見出せない。頼りなさげな表情なんかはかなーり計算して浮かべている部分はあるに
しても、この極端な変化の落差に男ってやつは擽られて堪らなくなってしまうんだろう
なぁとか、そんな納得。彼女の言葉遣いも魅力を後押ししていて良い感じでした。
もう一つの見所はロレンスの職業である行商について。特に良かったなと感じたのは、
ロレンスが行商人という自分の職業に対して何を思いどう考えているのかが実に丁寧に
描かれていた点。この心構えがしっかり見えているから、取引のシーンが一層引き立ち
面白い手応えが得られると。もっとも、今回メインの取引は大掛かりなもので彼一人で
どうこうとは行かなかったし、美味しい所はホロに持って行かれちゃったけどね。
どうやらこの作品も続刊が決まっているようで。ただ、こっちは狼娘と行商人の旅か
ら次に繋げ易い流れで、むしろ読み手側から続編希望を唱えたかったので嬉しい限り。
2006/04/09(日)火目の巫女
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:杉井光/イラスト:かわぎしけいたろう/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
第12回電撃小説大賞『銀賞』受賞作。
帯裏の橋本さんのコメントにある“良くも悪くも電撃らしくない”ってとこ。明確な
提示がない為か、読了しても今感想書いていてもどの辺りだろうかとずっと気になって
考えてるのだけど、自分の解釈では常盤の扱いか、或いはこの結末か。どちらの要素も
共に自分が想像していたのとは全く違っていたので、そう思ったのかも知れない。
あとは、うーん、そうだな……主人公である伊月があまりに無力であまりに“御明か
し”の能力を振るえず何も出来なかった、と感じた部分とか? 伊月は化生との戦いに
おいて潜在能力みたいなものをどこかで覚醒させる事もなく、また戦う度に己の弱さ無
力さを噛み締めて傷付くしかなくて、強い想いは走っているけれどそれを為すべき力が
伴わないというのかな。殆ど何も救えず何も救われず、そういう無力感に打ちひしがれ
てばかりで崩れ落ち続ける主人公像ってのも割と珍しいんではないかなぁとか。
佳乃の危うさはずっと滲み出てたから予想通りだったけど(とは言えあの出生の秘密
は読めなかった)、常盤の扱いには驚かされた。と言うよりは本当に予想とは反対の描
き方で凄くショックだった。まあこんな突き落とし方も実は嫌いじゃないんだけど、そ
の前に“御明かし”三人娘の火垂苑での触れ合いをもっと余計に見たかったかなと。
しかしこれで終わりかと思ってたけど、どうやら続きが刊行されるようで。この結末
でどう繋げるんだろ? 残った問題は佳乃絡みだけだからその辺を広げるのかな。
2006/04/08(土)哀しみキメラ
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:来楽零/イラスト:柳原澪/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
第12回電撃小説大賞『金賞』受賞作。
偶然同じエレベーターに乗り合わせた四人の男女が、偶然異形のモノに襲われ、偶然
四分の一ずつそれぞれの肉体と同化してしまい、半人半妖な状態に陥ってしまう……っ
てのがこの物語の始まり。四人が己が生きる手段としてどうしても異形の『モノ』を喰
らい空腹を満たさねばならず、その為には『モノ』の退治を強制的に請け負わざるを得
ない現状。その辺りの設定面は割とすんなり把握出来るような描写で良かったかなと。
しかしながら四人が『モノ』との同化を受け入れ覚悟を決めて、その後いきなり一年
も時を進めたのは大きなマイナスと感じてしまったのだけど。そりゃ一年も経てば腰も
据わるだろうし『モノ』を退治する仕事も慣れてるでしょ。そういう純達の落ち着き払
った安定感はあまり求めていたものではなくて、軽くすっ飛ばされたその一年間の方が
見たかったんだよ〜という具合。これは想像の域を出ない言い分だけど、七倉に事実を
告げられて覚悟を決めたとは言え、それから一年後の精神的安定を得るまでには随分心
の揺れや葛藤があったんじゃないかと思う。純だけでなく、綾佳も、水藤も、十文字も、
それぞれに別々の心情が。そういうのをもうちょい重点的に描いて欲しかったかも。
とは言え後半は追い詰められたり葛藤したりな個々の感情描写が随所で的確に効いて
いて、結構挽回してくれたかなと感じたりとか。ラストはあっさりな感触だったから、
もっと余韻あった方が良かったかな? 続きは出来そうだけど、どうだろうね。
2006/04/08(土)お留守バンシー
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★★☆(9/10)
[著者:小河正岳/イラスト:戸部淑/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
第12回電撃小説大賞『大賞』受賞作。
ちょっと待った! “吸う”って表現は乳○より乳○の方が適切だと思うわやめろな
にをする。……しかし実年齢ん歳だけど外見永遠の十二歳なアリアたんに向かって、恥
も外聞もなく真面目な顔して“乳○吸わせろ”とは何のたまいやがるこのエロリコンジ
ジイがっ! とか何とか、色んな意味でハァハァ息を切らされた衝撃のシーンに大コケ
してしまいましたとさ。いや、正直そこで「やっちまったか?」と思っちゃったよ。ま
あくそ真面目に変態行為に走ってるとしか思えなかったルイラムにも、ちゃんと切羽詰
ったそれなりの事情を抱えてた訳で、決して変態性癖があるのではない……多分ね。
主人の命で屋敷の留守を預かる事になった『バンシー』アリアの奮闘記。最初からこ
の物語に派手さは要らない、と望んでいて実際その通りの希望通りで期待通りのデキに
非常に満足。ほのぼの〜でドタバタでアットホームな、人間から見たらとことん異常で
も魔族達にとってはごくごく当たり前な日常生活。ルイラムの襲来とかトファニアの破
壊行為とか無茶やりたい放題で派手になりそうなシーンでも、どこか緊張が緩んでしま
うような(勿論良い意味で)、読んでいて常にホッとする安心感が得られる物語。
こんな風になるのも、きっとアリアの健気で甲斐甲斐しい一生懸命な姿が絶大な影響
力を及ぼしてるんだろうなと(個人的にはアリアにコキ使われまくってる新参者のフォ
ン・シュバルツェンも好きだな〜)。続編決定しているようなので続きも楽しみ。
2006/04/06(木)ルカ ―楽園の囚われ人たち―
(刊行年月 2005.02)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:七飯宏隆/イラスト:巳島ヒロシ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
第11回電撃小説大賞『大賞』受賞作。
去年の読み残し。電撃の受賞作って、その殆どがシリーズ化による続編を意識した作
りをしているから、実は何も知らずにこの作品も「続きが出たら一緒に読もう」とか考
えてました。でも二作目である『座敷童』の方がどんどん巻数進んじゃって、受賞作の
方はどうしたのかなー? と首捻ってる内に結局読む機会を逸してたという訳で。
んで、読了して納得。続編“出ない”じゃなくて“出せない”のかこれは。見事なま
でにこれ一冊で終わりな物語。次に繋げようとしない組み立ては受賞作の中では珍しい
方だと思うのだけど、個人的にはこういうの非常に好み。応募作への一発勝負で描く物
語はこうあるべきだ、みたいな感じでね(勝手にそう望んでるだけだけど)。
多分このラストシーンさえ先延ばしにしておいたならば。第三者視点の『ルカ』との
和解後の、人間であるまゆと人間ではない家族達との生活とか、ヒロが旅立った地上で
果たして生存者が存在したのかどうか? その捜索の過程や最終的な結果などを続刊で
出せていたような気もする。全体的に少々肉付けが足らないと感じたのは、おそらくそ
の辺りの部分ではないだろうかと。ただ、私はこのどうしようもなく“終わり”を感じ
させてくれるラストシーンの描き方がとても気に入ってしまったので、幾つかの細かな
不満点は「まぁいいや」で済ませました。結末は直接「こうだ」と描写しているのでは
ないんだけど、ぼかしながらも明確に伝えてくれる表現の仕方が堪らなく良かった。
2006/04/03(月)半分の月がのぼる空6 life goes on
(刊行年月 2006.02)★★★★★★★★★★(10/10)
[著者:橋本紡/イラスト:山本ケイジ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
夏頃にあと2冊短編刊行するそうですが、本編はこれにて完結。前巻で終わった時に
危惧していた続きを出す事による蛇足感、少なくとも私は全く抱かなかった。と言うの
は裕一と里香の未来をここまで描いて欲しい、という望みが少なからずあったからかも
知れないけれど。或いはあとがきによる作品に対する著者メッセージを読んで思った後
付けのものかも知れないけれど。それでもこの“普通のごく当たり前の日常”こそがき
っと一番最後に描かれるべきもの、と強く強く感じさせてくれるエピソードだった。
シリーズ中の感想で幾度も触れて来た気がするのだけれど、この物語は何処まで行っ
ても一人の少年と一人の少女の触れ合いを描くもので、それ以上でも以下でもない。た
だ、こんなありふれた日常をありふれたまま心に残る面白さで描いてみせるのって、凄
く大変で難しい事なんじゃないかなぁと。この辺は最初の頃から思ってた事だから、今
更と言えば今更なんだけど。最終巻でもそんな日常描写の巧さが際立っていたと思う。
考えてみれば、病院での入院生活とか里香や裕一の病状って全然“普通の日常”では
なくて。それより先にある、少年にとって大好きな女の子と一緒に登校してたわいない
会話を交わす事こそが、何よりも手にしたかった最高で極上のありふれた日常。
友人知人の旅立ちに寂寥感を覚え、同時にならば自分はこの場所で好きな人と共に歩
んでゆこうと意識する裕一。何の根拠も無いけれど、最後の戯れの場で夏目が言ってい
た「百戦未勝利の馬に全財産賭けるような大バクチ」、躊躇わず賭けるだろう裕一は見
事に当ててしまうんじゃないだろうか。里香との歩みはそんな未来であって欲しい。
既刊感想:1、2、3、4、5
2006/04/01(土)灼眼のシャナXII
(刊行年月 2006.02)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:高橋弥七郎/イラスト:いとうのいぢ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
最愛の恋人ヨーハンを強く激しく求め、悠二の中から取り出そうと迫る“彩飄”フィ
レス。前巻で抱えてたもやもや〜っとしてたものが、フィレスの事情を知ってようやく
解消された感じ。復讐鬼と化したマージョリーの暴走や、フィレスの友でありシャナの
育ての親でもあるヴィルヘルミナの珍しく垣間見せたどっちつかずな躊躇い、それにシ
ャナと一美の間に初めて生まれたわだかまりのない女同士の友情など。伏せられていた
裏の事情も結構掴めたし、前巻の物足りなさを充分補う盛り上がりで面白かった。
しかし前巻の感想で今回のエピソードも前後編で中は多分ないって書いてたけど……
ありやがったー。しかも今回凶悪な幕引きしてくれやがった上に次は少し間が開くとか
何とか。突然の幕切れでこのまま悶々と先の展開を頭に巡らせながら待たなきゃならん
のか……。この終わり方に唸ってしまったのは、あまりに唐突であまりに状況が飲み込
めなさ過ぎだったから。中心に居た悠二もフィレスも同様の気持ちなんじゃないかなぁ
とか思ったり。まあシャナでこういう幕引きした時は大抵次の巻できちっとフォローし
てくれるから、満たされない部分はありつつも不安は殆ど抱いてないんだけど。
既刊感想:I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X
XI、0
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