NOVEL REVIEW
<2005年03月[中盤]>
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03/20 『Missing12 神降ろしの物語』 著者:甲田学人/電撃文庫
03/19 『爆裂天使2 ガールポップ・インフェルノ』 著者:志茂文彦/電撃文庫
03/19 『ルーン・ブレイダー!3』 著者:神野淳一/電撃文庫
03/17 『ゆらゆらと揺れる海の彼方4』 著者:近藤信義/電撃文庫
03/17 『殿様気分でHAPPY!4』 著者:杉原智則/電撃文庫
03/15 『撲殺天使ドクロちゃん5』 著者:おかゆまさき/電撃文庫
03/15 『ROOM NO.1301 #5 妹さんはヒロイック?』 著者:新井輝/富士見ミステリー文庫
03/13 『バクト!II The Spoiler』 著者:海冬レイジ/富士見ミステリー文庫
03/12 『マルタ・サギーは探偵ですか?2 冬のダンス』 著者:野梨原花南/富士見ミステリー文庫
03/12 『ブラック・ベルベット 病める真珠が愛した司祭』 著者:須賀しのぶ/コバルト文庫


2005/03/20(日)Missing12 神降ろしの物語

(刊行年月 2005.03)★★★☆ [著者:甲田学人/イラスト:翠川しん/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】    いよいよシリーズ最終章。最初のこの少ない頁数を考慮すると前の座敷童のように3冊、 或いは最終章できちっと物語を完結させる為に4冊必要になるかもしれない。毎回スッキ リせずに狐に摘まれたような感触を抱いてしまうので、せめて完結の時だけは終り方が気 持ちの良いものであってもそうでなくても、腑に落ちて欲しいと願うのですが……。  今回は盛り上がりへ向かって駆け出したばかりの状態なので、ストーリーの動きに大き な変化はまだ訪れていない。ただ、見えない恐怖が迫り来る圧迫感は結構盛り込まれてい るので退屈はしないと思う。問題なのはそれがどんな意味を秘めているかという事で、現 状では携帯電話の着信が“得体の知れないもの”という以上の手掛かりは得られてない。  一番の収穫は、詠子の過去(幼少時代の様子)について語れていた点。ここから彼女が この世界に何を望んでいるのか? その為に彼女自身が他の“普通の人間達”をどうした いのか? 霧に包まれていたものが大分鮮明に浮かび上がってきた。まだ信者を動いてる だけで詠子は積極的な行動に出てないのだけれど、存在感の異質さは流石に大きい。  考えてみれば、詠子はいつも空目達を招き入れる受け身の形を取っているように見える のに、気が付くと先に足を踏み入れている空目達の方が後手後手に回っている現実。無意 識のうちに巻き込まれているようで、実は全て詠子の掌で思惑通り踊らされているような 気がしてならない。こんな事に触れるのはもしかしたら今更かも知れないけれど、そうい う思いが遂に明確になって来たかという表れで。もう詠子の行為だと把握出来る所まで目 に見えない限りは、どうやっても空目達に先手は打てなさそうな予感。更に摩津方の暗躍 も決して外せない所で、果たしてどんな風に絡まって終局へ向かってゆくのか。  既刊感想:1011 2005/03/19(土)爆裂天使2 ガールポップ・インフェルノ
(刊行年月 2005.03)★★★☆ [著者:志茂文彦/原作:GONZO/イラスト:白亜右月・海老川兼武・山都エンジ                  /メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  う〜む、文章になって最も目に付くのはやっぱりどうしても“立場無(たちばな)”っ て恭平の名字だな〜。いや、本当にそのまんま立場無いキャラ設定なもんで狙ってやって るのが見事にハマっていて可笑しい。しかしながらアニメでの目立たない上に不幸不運ま みれの気の毒な扱いに比べると、小説版は結構目立って頑張ってるシーンが多いのでそれ なりに優遇されているんじゃないかと思う(活躍しているかどうかはまた別として)。  そんな具合で同名アニメの小説版2巻目。もうアニメ放映が随分前に終わっているので 小説で新しいエピソードが読めるとは思ってなかった。今回もまた前巻と同様で、単純に アニメのシナリオをなぞるのではなく、その合間に起こった出来事を描いたサイドストー リー的なオリジナルエピソードとして描かれている。なので、アニメ視聴済みでも充分に 楽しめる内容に仕上がってます。大体ノベライズがアニメに沿った内容だと、同じような のを文章で読んでも退屈気味になるのですが、そうさせないような配慮は嬉しい限り。  沖縄から事件が始まり、鹿児島、四国瀬戸内海、広島、神戸、大阪、熱海、そして目的 地の横浜までひたすら厄介事に巻き込まれつつひた走るアクション重視な展開。途中お遊 びで入れたみたいなネット宗教だとかヲタネタだとかがちと引っ掛かったりしましたが、 次から次へと舞台を移しての軽快なテンポはなかなか上々。ただ、今回のオリジナルキャ ラであるシャンシーとシャオドンに関係した部分の描き方がちょっと弱かったかなと。  この辺はもしかしたらメグの一人称形式だから広げ難かったのかも知れない。あくまで 中心にあるのはシャンシーの事情ではなくメグの事情だから仕方がないか。その分メグの 感情描写はてんこもりだったので満足。妙に恭平を意識しているのが印象的でした。  既刊感想: 2005/03/19(土)ルーン・ブレイダー!3
(刊行年月 2005.03)★★★ [著者:神野淳一/イラスト:小川恵佑/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】    ぶちまけると3巻まで続くとは微塵も想像してませんでした。物語の広げ易さを考える と断然『シルフィ・ナイト』の世界の方が可能性は上と思ってたのだけど……こちらのシ リーズを選択して伸ばしてるという事は、あっちはやっぱり終わってしまったのか?  ここまで巻を重ねて来ても、状況説明ばかりでびっしり頁を埋め尽くす文章表現は何ら 変わってないです。というよりいい加減もう慣れた。だからって読み難さに足を引っ張ら れるのが改善されてたわけでもないんだけど。うう、愚痴っぽい感想も毎度一緒だ……。  ただ、今回の内容はこれまでと比べて若干ストーリーの組み立てに纏まりが感じられた かなと。何かこう一本筋を通して描きたい事を充分描き切れていたような手応えで。この 巻でそれを具体的に挙げるとするならば、『家族』と『帰るべき我が家』でしょうか。  今回描きたかったであろう要素の大部分は、表紙も口絵でも大きく扱われているように 初登場のレミア・イレアスに乗っかってます。自らが破壊すべき『敵』と見なした目標な のに、何故か接触したその場所には過去に捨てられた母親の存在を強く感じてしまう次元 潜行艦レヴィアタンの謎。事情を把握して破壊を阻止しようとするグローブと、母の温も りに触れて破壊するか否かで葛藤を続けるレミアとの衝突。最後までどっちに転ぶか分か らない緊張感を孕みつつ、うまく一本のエピソードとして纏まっていたと思う。  もっとも、本来主役である筈のグローブとアン・フィスがゲストキャラ的扱いなレミア の存在感に完全に食われているし、これも毎度の事ながら主役二人の感情の掘り下げがあ まり効いてないような手応えだったし……と微妙な部分も結構ある。まあ一巻よりは多少 上向き調子なので、あとは次巻以降でこの物語の行く先をしっかり定めて欲しい所。  既刊感想: 2005/03/17(木)ゆらゆらと揺れる海の彼方4
(刊行年月 2005.03)★★★★ [著者:近藤信義/イラスト:えびね/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】    本来このシリーズのウリにしている海獣(ラグナ)を用いた戦闘メインの巻よりも、そ ういう要素が殆ど介入しない今回のような政治政策絡みの駆け引きメインの方が俄然面白 いと感じるのはどうなんだろう? と、ちょっとだけ複雑な気分ですが。今回の内容は、 前巻でアールガウ神聖帝国を辛うじて退け、辺境州から独立国家として生まれ変わったロ ーデウェイク初代国王ラシードの結婚問題。或いはバストーニュ大戦編の前哨戦。  周りでどんな事が起こっていようとも、毎度表紙の中心に陣取っていながら脇役的扱い にしか見えないノウラの事が気になって仕方がないのは相変わらず。この物語全般に対し て鍵を握る存在であるのは確かだと思うのだけど(だから活躍の有無にかかわらずノウラ が中心の構図なのだろうし)、しかし本質が分かっただけで正体は依然不明なまま。  ただ、今回は要所要所でノウラらしい見せ場が多かったので嬉しい限り。例えばクロー デットの頼み事に協力してあげたり、自分も危険な状況に居るのにわざわざ立ち止まり振 り返ってどうしようもないバストーニュ現国王ロベール九世に手を差し伸べたりとか。  印象的な見せ場は幾つもありましたが、とりわけ印象に残っているのは、ラシードの為 にと体を張っているクローデットの可愛らしさ健気さ。ラシードの詳細を知る前の、おそ らく直感で惹かれた典型的な一目惚れでしょうね。初めて出逢った時の雰囲気も凄く良か ったし、ラシードも満更ではない様子だったのに……最後は絶対うまく行って欲しい。  興味深かったのが、表面で見えていた世間の評判通りではなかったバストーニュ王国内 部情勢の裏の事実。独裁政治で悪女と畏怖され悪評が絶えないエレディアの意外な素顔や、 ラシード達を蔑んでいた国王ロベールの本性などを垣間見て少なからず驚かされた。  そして遂に表面化してしまったバストーニュの内乱、巻き込まれ重傷を負わされたラシ ード、沈黙を守り好機を窺うアールガウ、ジュラやロイスダールが残ったローデウェイク、 全て一つに交わる予感が増すばかりのバストーニュ大戦編。続きが非常に楽しみです。  既刊感想: 2005/03/17(木)殿様気分でHAPPY!4
(刊行年月 2005.03)★★★☆ [著者:杉原智則/イラスト:玲衣/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】    前巻読んだ時点では次で完結するなんて考えてもみなくて。どちらかというとまた途中 で話が止まってしまう心配の方が大きかったのですが……ちゃんとした形で終わってたの でホッと一息。ただ、もう次には持ち越せないような、どうしても今回で全部終わらせな ければならないような、そういう切羽詰ったちょっと焦り気味な雰囲気があったかも。  真相を一気に明かしてゆくようなテンポの速さは最終巻に相応しく、それ自体の感触は 決して悪いものではないのだけれど、この大規模な一族の内部事情がどうも複雑かつ曖昧 に描かれ過ぎていて把握し辛い。前々からそんな風に感じる所はありましたが、更に今回 は急展開なシーンが多かった為、事情を飲み込む前に置いて行かれてばかりでした。  だからもう少し先まで持ち越して、人物関係にしても今抱えている状況にしても、色々 とこんがらがった糸を解きほぐせるようなゆとりが欲しかったのですよね。もしかして諸 般の事情とかで先延ばしが出来なかった故に、こういう詰め込み方で描かざるを得なかっ たのだろうか……というのは邪推に過ぎませんが。それだけ一冊に詰めて終わらせるには 勿体無いなと思わされたわけで。しかし一方では性急さと強引さを随所で感じていた割に、 意外と最後はうまく収まるべき場所へ収めてくれたな〜という気持ちもありました。  愚痴はこれくらいにしておいて。一馬と美亜、みづき、壬琴の三人娘との見せ場に関し ては、それぞれ充分にあったのではないでしょうか。特に美亜の目立ちぶりは予想外もい いとこで良かったなと思う(実際には優遇されていたとはとても言い難いのだけど)。  そして何より馬鹿でお調子者でスケベなどうしようもない主人公を最後の最後まで“憎 めない奴”として描き抜いてくれた点。これがこの物語の何よりの象徴なのだと思う。  既刊感想: 2005/03/15(火)撲殺天使ドクロちゃん5
(刊行年月 2005.03)★★★★ [著者:おかゆまさき/イラスト:とりしも/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】    アニメを観た直後に読んだからなのか、勢いに任せて怒涛の如く畳み掛けるようなドク ロちゃんのお馬鹿さ加減が大分ゆったりと感じられた。文章形態でこれを読んで「こんな に緩いテンポだったっけ?」という具合に。まあ別にアニメ観てなきゃ普段通りかも。  しかし毎度よくやると思ったのが、あ〜そういや前巻もあったな〜という電撃文庫内作 家&作品ネタ。今回は『しにがみのバラッド。』ですかね。これは笑い飛ばしたとかじゃ なくて素直に凄いなと唸らされた。作中にある『しにがみのバラッド。』のパロディで、 絵師の七草氏の挿絵をそのまま使用している辺り。何とも贅沢な楽しませ方だなと。  今回面白さの大半は木工ボンド部だったような気がする。取って付けたようなネタかと 侮ってたら実はそんなに奥が深いものだったなんて……。ただ、中身が中身なだけに大真 面目で振舞ってみてもことごとく滑稽に映ってしまうのだけど。桜くんを巻き込んで、強 引なまでに合宿を敢行するドクロちゃん達の無茶苦茶な行為がなかなか可笑しかった。  あと現在メディアミックス展開で乗りに乗っているから終わらせる気もない癖に、また 性懲りもなく最後に[完]とかくっ付けてるし。考えてみれば、これは『完結』の完では なくて『完了』の完なのかも知れないけど。個人的には理屈抜きで好きだから続けば続く だけ楽しみを探すまでだけど、そもそも最初から勢いだけで走り出したものが果たして今 後どこまで持続するのやら。笑わせるなら効果的なザンスの起用を希望。何か今回ザンス のシーンで結構吹き出してたから。他に初登場の新キャラ二人――バベルちゃん(サバト ちゃんのお母様だから“ちゃん”はないだろと思ってしまったけど)と、突発的に桜くん と良い雰囲気になってた弓島千佳ちゃんは、今後も是非登場させて欲しいです。  既刊感想: 2005/03/15(火)ROOM NO.1301 #5 妹さんはヒロイック?
(刊行年月 H17.03)★★★★ [著者:新井輝/イラスト:さっち/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】    シーナ編の後編。とは言え、今回もまた日奈と佳奈をメインとした部分を全部描ききら ないまま幕切れた感じだったので、もうちょいと続くのではないでしょうか。最後にシー ナと擦れ違った佳奈が彼女と出逢う事で、更に深くて複雑な関係にこじれてゆくとか。  単純にそういう展開を望んでるのもあるんですけど、やっぱり佳奈が日奈の秘密に迫ら ない限りはこれ以上シーナ絡みで話の広がりが見えて来ないというのか。でも今回ラスト の擦れ違いによってシーナでいる時の日奈と佳奈の二人が出逢う予兆はあったので、そこ に健一を絡めての盛り上がりに期待していて大丈夫だろうと思うのですが……さて。  この巻ではシーナと日奈の両方の姿をそれぞれ充分に描いてくれていたから、そこだけ で満足出来ていたかも知れない。このシーナというキャラと日奈というキャラの違い過ぎ る特徴ってのは本当に面白い。同一人物なのにどうしてもシーナ=日奈で結べない。  二重人格でないのはハッキリしてるから、きっと本人はお互いの別の性格をちゃんと認 識していると思うのですが、読んでいる限りでは全くそう感じさせない辺りとか。シーナ の時は日奈の事を、日奈の時はシーナの事を、それぞれ少しでも自分の内で考えたりしな いのかな? と、想像の域で色々巡らせるのもまた楽しい。そんな風に楽しめるのは、意 図的にかそうでないかは判断出来ないけれど、シーナと日奈がお互い自身の中の相手の事 をどう想っているか――そういう感情に殆ど触れていないのが効いているからだと思う。  日奈と佳奈の件はまだ全部解決していないけれど、これで健一の周囲の女性関係につい ては大分出揃ったんじゃないだろうか? という手応え(もっと複雑に膨らむ可能性もあ るだろうけど)。今回は意外と千夜子の出番が多かったのが嬉しい所でした。この物語に とっては『本命』と言える彼女なのに、相変わらず健一の付き合い方が他の誰よりも余所 余所しいのが何だかもう微笑ましいと思える程。多分ずっとこのままなんだろうなぁ。  既刊感想:#1#2#3#4 2005/03/13(日)バクト!II The Spoiler
(刊行年月 H17.03)★★★☆ [著者:海冬レイジ/イラスト:vanilla/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】    伝説の賭博師バクトが残した奥儀書『ダランベール黙示録』の謎を絡めながら、ギャン ブル勝負メインで進むストーリー展開や、本編の合間にインターミッションを挟んだ構成 などは前巻とほぼ一緒。今回のゲーム内容は、全編に渡って描かれている四十八時間耐久 の『ホールデム・ポーカー』。相変わらず目指している所が違うのでミステリ要素は皆無 ですが(あえて挙げるなら、インターミッションで張られている伏線が軽い謎を含んでい る程度か)、ギャンブル勝負の内容としては前巻よりも数段楽しめる仕上がってるな〜と いう印象でした。ホールデム・ポーカーの説明描写も丁寧で結構面白かったです。  ただし、これは前巻から続けてずっと引き摺っている事なのだけど、やっぱり音無素子 が一人称で実況解説やってるのは色々な意味で凄く微妙。私の中では頭の弱いちょっと鬱 陶しいだけのキャラから、徐々に妙に愛すべきお馬鹿キャラへとイメージが塗り替えられ つつあるのは割と良い傾向。なんだけど、全般的に頭の弱いままの軽いノリで実況解説や らかしてるもんだから、例えばヒロトと対戦相手とのサシの勝負で緊張感が最高潮に張り 詰めているシーンでも平気で台無しにしてくれる。まあこの辺りが微妙なわけで。  今後も本編が素子の一人称実況解説スタイルは変わらない気がするので、このシリーズ はそういうもんだと割り切るべきか。素子のへなちょこぶりだけはいい具合に描かれてい るので、いっその事彼女のお馬鹿さ加減の観察を無理矢理楽しみに変えて読むとか。  今回は一応追っていた事件は解決を見たものの、幾つか謎が残されたまま次巻へ続くよ うな幕切れ。知りたいのは未だにあまり語られてないヒロト自身の詳細と、初代バクトの 『ダランベール黙示録』についてと、素性が不明なまま去ってしまった沙都里の事など。  既刊感想: 2005/03/12(土)マルタ・サギーは探偵ですか?2 冬のダンス
(刊行年月 H17.03)★★★ [著者:野梨原花南/イラスト:すみ兵/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】    長編はどうも物語の展開にスムーズに乗れなくて楽しめない。もしかして波長が合わな いのか? それならどうしようもないのですが、2巻までを読んだ感じでは、何をメイン に据えて進めて行きたいのか未だに分からない。フィランシュ教室って何? コンファー メイション派って何? 最も諸事情に近い位置にいそうなドクトル・バーチですら分から ないとか言ってるんじゃお手上げ。終始置いてけぼり喰らってるような感覚でした。  今回はマルタの助手リッツ・スミスの過去の事情に迫ってゆくエピソード……の筈なん だけど、何か素直に浸れないというのか描き方が上手くいってないというのか。更に多過 ぎる不明点が邪魔をしてくれているので、結局リッツ・スミスの過去に何があって、誰が 彼にどんな風に関係しているのか、頑張っても頑張っても頭に入らないんですよ……。  マルタとリッツ・スミスとドクトル・バーチとジャックとトーリアスとジョセフ犬、日 常生活で絡んでいる内は各々の反応だけで結構楽しめているのになぁ。あ〜だから結局短 編集の方が面白いと感じるのか。長編はもう少し話の方向性を定めて欲しいと思う。例え ばカードバトルの描写をメインにして、何故カードバトルをしなければならないのか?  という謎を追う方向とか。或いはマルタの能力で探偵もどき稼業をメインに描くとか。  既刊感想:       a collection of s. 2005/03/12(土)ブラック・ベルベット 病める真珠が愛した司祭
(刊行年月 2005.03)★★★☆ [著者:須賀しのぶ/イラスト:梶原にき/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】    レインボウ超最高。  もう感想これだけで充分じゃないかと思わなくもないシリーズ第2巻。この巻自体が次 への繋ぎみたいな印象で、前巻同様普通に面白いには違いないんだけど、何だかやけに締 め方が中途半端だったような。まあ終わりが近付いてもファウラーで起こった事態は一向 に纏まる気配が無かったので、「今回はどの辺で区切るんだろうか?」という気持ちはあ りましたが。若干下がっているのはその辺のスッキリしなかった点。些細な事だけど。  三人娘が旅先の新天地でそれぞれ自分のペアとなる人物と巡り合う。組んだ相手が後々 運命を大きく左右する事になるかどうかは分からないけれど。今の所はキリとハル神父、 ロキシーとシュトラール、ファナとレインボウ、と言った具合で(最初はもう少し三人一 緒に行動するかと思ってたんだけど)。三人とも単独行動を取らざるを得なくなったのも、 偶然ではなくて何か抗い難い強い力に導かれたような感じで。今回は三人がファウラーで 別れたまま終わってしまったので、今後どういう状況で再会を果たすのか楽しみ。  で、種明かしされるまでBBの素性に気付けなかったのは私だけですか? 前巻のドラ ッカー・ノワールの仕掛けと似たような形だったのに。いや、今回は『変装』ってキーワ ードがある分気付き易かった筈なのに……納得して頷いた割にそこだけ妙に悔しかった。  いやでもその後のBBのリアクションで楽しめたからいいか。あと、これまで圧倒的な 強さを見せ続けていたキリの弱さ脆さばかりが際立っていたのも印象的でした。多分この ままでは、まだ顔見せ程度しか登場していないディートニアの総教主ヴァルカーレや何か と因縁深そうなエイセルの足元にも及ばないのだろうなと。これから出番が増えるであろ う彼等の能力に対し、強くなる為の足掛かりを得たキリがどこまで迫れるかも見物。  既刊感想:神が見棄てた土地と黒き聖女


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