NOVEL REVIEW
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05/15 『蟲と眼球とチョコレートパフェ』 著者:日日日/MF文庫J
05/15 『されど罪人は竜と踊る Assault』 著者:浅井ラボ/角川スニーカー文庫
05/13 『されど罪人は竜と踊るVII まどろむように君と』 著者:浅井ラボ/角川スニーカー文庫
05/12 『天高く、雲は流れ2』 著者:冴木忍/富士見ファンタジア文庫
05/11 『魔法薬売りのマレア 千日カゲロウ』 著者:ヤマグチノボル/角川スニーカー文庫
05/10 『アンダカの怪造学III デンジャラス・アイ』 著者:日日日/角川スニーカー文庫
05/09 『"文学少女"と死にたがりの道化』 著者:野村美月/ファミ通文庫
05/08 『天高く、雲は流れ1』 著者:冴木忍/富士見ファンタジア文庫
05/08 『新装版フォーチュン・クエスト6 大魔術教団の謎<下>』 著者:深沢美潮/電撃文庫
05/08 『新装版フォーチュン・クエスト5 大魔術教団の謎<上>』 著者:深沢美潮/電撃文庫
05/06 『新装版フォーチュン・クエスト4 ようこそ! 呪われた城へ』 著者:深沢美潮/電撃文庫
05/06 『聖獣王の花嫁』 著者:高遠砂夜/コバルト文庫
05/04 『流血女神伝 喪の女王3』 著者:須賀しのぶ/コバルト文庫
05/04 『流血女神伝 喪の女王2』 著者:須賀しのぶ/コバルト文庫
05/03 『鋼殻のレギオス』 著者:雨木シュウスケ/富士見ファンタジア文庫
05/03 『彩雲国物語 はじまりの風は紅く』 著者:雪乃紗衣/角川ビーンズ文庫


2006/05/15(月)蟲と眼球とチョコレートパフェ

(刊行年月 2006.04)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:日日日/イラスト:三月まうす/メディアファクトリー MF文庫J]→【bk1】  シリーズ第3巻。今回はグリコ中心ではなく、脇から他の主要キャラクター達――竜 ゑ、御貴(を喰った蛇)、『不快逆流』こと蜜姫、『殺菌消毒』こと美名、を立ててこ れまで語られなかった部分を埋めてゆく展開。主に“七つの大きな欠片”について。  鈴音が肉人形にされてしまってから、もう絶望まっしぐらのバッドエンドしか想像出 来なかった所から、ほんの僅かだけ救われる可能性が見えた感じ。とは言えグリコが掴 まなければならない条件ってのは非常に曖昧で難しいものだけど。ただ、普通に望むな ら鈴音を人間として蘇らせ、彼女と愚龍とグリコの壊れた日常を取り戻して欲しい…… なんだけど、あとがきの「普通と違うフィナーレを予定している」なんて発言がちょっ と怖かったりする。鈴音は鈴音で、愚龍が献身的に世話をしてくれる今の生活にグリコ が介入する事を拒否する呟きを漏らしていたし。嫌な事だと直ぐに訂正したけれど、本 能を垂れ流しての発言しか出来ないからこその正直な想いなんじゃないかな、とか。  しかし今回のラストは前回の事を考えると意外な感じ。救いの鍵である『一人部屋』 の存在を示唆するのが狙いだったとか? 重い状況が増えるよりはこっちの方が断然後 味は良いけどね。物語の全貌がかなり掴めた事で続きが俄然楽しみになって来た。  既刊感想:蟲と眼球とテディベア       蟲と眼球と殺菌消毒 2006/05/15(月)されど罪人は竜と踊る Assault
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:浅井ラボ/イラスト:宮城/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】  い、いやあああああああああああああああああ! く、クエロさんっ! ガユスの阿 呆に精神的引導を渡すにしてもさすがにその表現はどうかと思いますよ!? 同性にしか 分からん、って言うより分かりたくない痛みだ……。なるべく想像しないように読んだ けどマジ萎えたよあははは……はぁ。他にこれとほぼ同等の表現で、オボロホに苦痛を 与えられた報復として、止め刺すべく彼女から放たれた口撃もかなりエグかった。  そんな感じでエロス&バイオレンスの過去エピソード。なんかダメージ受ける時にや たらとガユスと同調してしまう事が多かったのだけど、過去絡みで触れたいと望んでた 部分もかなり描かれていたので面白かった。まあ『Tangle sightT&II』だけを眺めて ると「馬鹿じゃねぇのかこいつら」ってツッコミ入れる事しか出来ないんだけど、その 馬鹿馬鹿しさが可笑しくて(ギギナの動作とエロ本とネコミミモードでよくあれだけ話 を膨らませられるなと感心させられて、よく回るガユスの口にも別の意味で感心させら れた)。それでこの頃は幸福が確かに“在った”風景だな〜としみじみさせられる。  でも、この幸福は既に崩壊したものであって、崩壊する事が明確に提示された上で傷 口を抉る様に再度過去の道程を辿っている訳だから、これ程えげつないものはない。だ って大ダメージ喰らうのが最初から分かってるのだから。今回は残念ながら最後まで描 かれなかった。何故この残酷な結末に辿り着いたのか? 知りたくて仕方がない。  既刊感想:IIIIIIVVIVII 2006/05/13(土)されど罪人は竜と踊るVII まどろむように君と
(刊行年月 H17.07)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:浅井ラボ/イラスト:宮城/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】  またくそったれな依頼ばっかり受けてやがるなこのヘタレメガネめ……とか毎度変わ らぬガユスとギギナの腐れ漫才を生温かい目で眺めてたら、途中で黒ジヴ様が美味しい とこ全部持ってっちゃったよ! いや、これはなかなか酷い壊れっぷりですね。ジャベ イラとのぶっちゃけ過ぎな真っ黒会話の応酬にガクガクブルブルが止まらなかった。  元々ガユスがジブを可愛がりつつ苛め抜いたのが原因なのに、あんまりガユスに被害 が及んでなくて、代わりに関わった周囲の奴らがとばっちりを受けてしまっているのも また酷い。それに加えてこれがV巻以降――つまり二人が破局した後に語られているっ てのがまた酷い仕打ちだこと(ギギナの罰ゲームは面白かったけどね)。ガユスに関し てはあまり感情移入せずに、所詮は他人事という視線で追ってばかりなのだけど、今ジ ヴと過ごした戻らぬ幸せな日々を見せつけられるのはさすがに堪えるなぁ……。  しかし今回も雑誌掲載分+書き下ろしで次は過去編だから、しばらくIV〜V巻みたい な書き下ろしの長編エピソードは読めないのかな。それとも雑誌連載メインで進めるん だろうか? まあ短編集でも今回の『三本脚の椅子』みたいにこのシリーズらしい救わ れない話や、『翼の在り処』のように咒式戦闘分を盛り込んでくれるなら充分に面白い のだけど。たまには長編分で更なる奈落の底へ突き落として欲しいとも思ったり。  既刊感想:IIIIIIVVI 2006/05/12(金)天高く、雲は流れ2
(刊行年月 H07.10)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:冴木忍/イラスト:森山大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  サティス大王家の《家宝》が盗まれていた事が判明した頃に不穏な動きを見せていた 第三藩王へと旅立ったフェイロン一行。陸路より着くのが早いと予想して船旅に切り替 えたのが不運の始まり。結局今回は第三藩王の元まで辿り着かなくて、ストーリーもそ れ程進展を見せず。海賊に拉致されての強制的寄り道で、次への繋ぎという感触。  面白いとか興味が湧いたとかの収穫は何だっただろうか? 最初から注目してた魔族 の存在が割と早い段階で重要性を帯びて来た、と感じられた辺りかなぁ。海賊の頭目で あるヴァルマンの言葉は、果たしてどこまでが本気でどこまでがフェイロン達を試すも のだったのやら。《大暗黒》が再び訪れた時の混乱に乗じて新たな魔族国家を建てる、 なんて物騒な言葉はどっちの気持ちから出たものなのか……。一応ロスメスタに協力す る形で一旦別れたけれど、ヴァルマンはまた何処かで再登場するんじゃないかな?  あとやっぱりパジャは不幸キャラだ(不幸に見舞われれば見舞われる程に面白可笑し く見えてしまうのは何故だろう)。船酔いが終始抜けずに全くいいとこなし。子供にま で心配されたり馬鹿にされたりで哀れだ。さて、次はどんな不幸に直面するやら。  既刊感想: 2006/05/11(木)魔法薬売りのマレア 千日カゲロウ
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:ヤマグチノボル/イラスト:TASA/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】  2006年はMシスターが来る! ……かも知れないらしい。超ドMな妹・マレアの キャラクター性は素晴らしく強烈なインパクト。かなり変態さんでどこかおかしくて逝 っちゃってる娘さんだけど、自分で兄貴を煽っておいて虐げられる感触に愉悦を覚えて 悶えてる姿はとても13歳とは思えない妖艶さでくらくら来てしまった。この性癖って ミンシェオシェの影響とかも関係してのかねぇ。眺めてる限りでは元からあるマレア自 身の性癖のような感じもするけど。まあどっちにしても魅力的には違いないと。  マレアの存在の勝利で物語に大きく貢献しているのは確かなんだけど、それを除いて もストーリー内容そのものでかなり良い手応えの面白さが得られた。意外だったのが想 像してたよりずっとシリアスしていた点。普段の兄妹&化け猫のコミュニケーション描 写は極めてコミカルなもんだから、コメディタッチで行くんじゃないかなと思ってたら 大間違いで、実際はシリアスな上に痛みを伴う重い展開の方がずっと多い。面白さの中 に奇妙な雰囲気が感じられるのは、コミカルとシリアスが混じり合っているからか。  収録されているエピソードの中で一番好きなのは、タイトルにもくっ付いている『千 日カゲロウ』。ミソギとヴァイダの惹かれ合う様子に微笑ましさを覚えていたから、こ の結末がもう切なくて切なくて……。この旅を続ける本当の目的と、兄妹が根底に抱え ている存在の関係は当分切れそうもなく。これは続編に期待を寄せるしかない。 2006/05/10(水)アンダカの怪造学III デンジャラス・アイ
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:日日日/イラスト:エナミカツミ/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】  伊依の幼馴染み・仇祭遊登場。目的はこの世から怪造学の存在を殲滅する事。同時に 明かされた伊依の幼少時代。極めて重い絶望に閉ざされた伊依を救い、怪造学の素晴ら しさを教えてくれた遊が何故怪造学を憎み敵対する? 伊依が信じてきた怪造生物との 友情関係を根底から否定され、本当に遊の言う通りどうやっても主従関係にしかならな いのか……と心が激しく揺らぐ。果たして「いつか全ての怪造生物と仲良くなってみせ る!」という夢を追い続ける事が出来るのか? 今、伊依の想いの強さが試される。  ……と、かなりのシリアスムードで展開される第一部総まとめ。遊との顛末を眺めて いて、かつて怪造生物に殺されたも同然の絶望感を植え付けられたにしては随分あっさ り身を引いたなと思ったのだけど、実は半ば操られていたと知って納得。本心ではずっ と伊依の考え方を認めたがっていたのかなと。それはきっと昔荒れていた伊依を諭した 遊自身が同じ気持ちだったから。しかし二人がスッキリ和解したのも束の間、新たな混 乱が。今後は遊に絶望を与えたこの禁忌怪造生物《肉体道楽》をどうにかしなきゃなら ない辺りがメインとなりそう。幾度もの魔王の誘いに抗いながら、戦いによる経験で少 しずつ成長を見せる伊依がどのように怪造学と向き合ってゆくのか楽しみ。  そして今回も変な名前の変人さんが一杯。本質見せない謎な人もまだまだ多い。総長 とか闇宮姉弟とかカービィちゃんとか色々。そんな中で安寿さんがなかなか面白可笑し くて可愛いと思った。あと「くるさだんちゅら」が聞けた! 泣きそうになったよ。  既刊感想:II 2006/05/09(火)"文学少女"と死にたがりの道化
(刊行年月 2006.04)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:野村美月/イラスト:竹岡美穂/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】  太宰治ラブ。厳密には太宰治の『人間失格』ラブな作品。これを読めばきっと太宰治 の『人間失格』が読みたくなる。私は読みたくなった。それに太宰治作品を全くまとも に読んでないのが残念で悔しいと思わされた。『走れメロス』は確かに小学校の教科書 にあったような気もするけど細部までは記憶が鮮明じゃないし。せめて『人間失格』だ けでも事前に触れてたら、もっとこの物語に深く踏み込んで浸れたただろうなと。  しかしその口惜しさを抜きにしても凄く面白かった。こういう展開は予想も付かなか ったんだけど、これって実は非常に良質なミステリじゃないだろか? あとがきで「こ れまでとは違う傾向を」と書かれていた通り、今までの野村美月節とは明らかに違う色 がハッキリと出ていて、こんな風にも描けるんだな〜という新境地を見た気がした。  基本的にお得意としているコメディ要素は、他作品と同様の持ち味でしっかり描かれ ているのだけれど、物語の組み立て方に“巧さ”を感じたのはもしかしたら初めてかも 知れない。特に『人間失格』を元にした手記の仕掛けはお見事。これは正直気付けなか ったよ。二転三転の仕掛けで最後まで真相を追い続けさせて貰えて満足でした。  あとは遠子先輩が可愛過ぎる件について。キッパリ“変人”ではあるんだけど、心葉 の前でだけ見せてくれるような様々な表情の一つ一つが本当に可愛らしい。今後も遠子 先輩のそういうとこだけ見せて貰えたら本望と言っても言い過ぎじゃない。まあまだ語 られてない事もあり、充分描けなかったキャラクターも居るので続きに期待ですな。 2006/05/08(月)天高く、雲は流れ1
(刊行年月 H07.07)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:冴木忍/イラスト:森山大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ふと懐かしさを感じたくて。平成7年産シリーズスタートの巻。うあ〜もう10年以 上も前になるんだな〜。最初に表紙折り返しあらすじ部分の「今度の主人公は不幸じゃ ない!?」に笑った(冴木作品と言えば“不幸な主人公”だったからなぁ)。確かにこの 物語の主人公・フェイロンは不幸じゃなかった。むしろ他人に不幸を振り撒く方じゃな いか? 不幸役を担うのはパジャに違いない。何かこう不幸オーラが漂ってる感じ。  1巻目の展開は『カイルロッド』の時と似たような印象。世界を揺るがす程の大きな 問題が立ちはだかり、何人かの仲間達と共に解決に向けて旅立つまで。目立った伏線ら しきものはフェイロンとパジャが出逢った金色の虎の存在くらいで、躓きが殆ど無くす んなり物語に入って行ける。序章段階としては手堅い描き方でなかなか面白かった。  ただ、細かい所にまで目をやると気になる要素は幾つかある。とりわけパジャやユメ のような魔族の存在かな。この世界における立場や王族との確執などはこの巻だけでも 結構語られていたけれど、果たしてどれだけの数がいてどんな生き方をしているか、魔 族の中でも対立関係なんてものがあるのかどうか……これらが重要なのかどうかは分か らないけど。あとはフェイロンの奥さん(=ユンファのお母さん)の事が凄く気になっ てる。でもこれだけ話に上がってると、逆に最後まで登場しないんじゃないだろか? 2006/05/08(月)新装版フォーチュン・クエスト6 大魔術教団の謎<下>
(刊行年月 2002.07)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:深沢美潮/イラスト:迎夏生/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  前巻の続き。大魔術教団教祖クアーティの陰謀を暴け! 大切な仲間であるノルを救 う為に必要不可欠な彼の双子の妹メルを救い出せ! と、声を大にして叫ぶ程の勢いと ノリ任せの大作戦決行。お調子者のトラップをリーダーに、彼とキットン中心で練られ た作戦は大胆かつ無謀に見えるようでいて意外ときっちり計算された緻密さ。普段あま り活躍の場が与えられてない気がするルーミィやシロちゃんも含めて、これぞまさにパ ーティプレイと拍手を送りたいくらいの一致団結を見せてもらえて面白かった。  所々で初心者冒険者のラッキーみたいな部分もあったりしたけど(ギャミラ像を隠し てある金庫の暗号調べるとことか)、その辺はご愛嬌。クアーティの間抜けさも充分描 かれていたから無理はなかったし、むしろルーミィよく頑張ったと称えるべきかな。  ノル兄妹の絡んだエピソードは無事に閉幕。いや、終盤で事を起こすシーンで「大丈 夫なんだろうな? モジーラさんよう」と詰め寄りたくなったのも、色々と記憶が薄れ てたせい。とにかくホッとした。ノル良かったよ〜。欲を言えばノルとメルが二人きり で何を話してたのか知りたかったかなぁ。まあ想像で補って楽しんでおくとします。  既刊感想: 2006/05/08(月)新装版フォーチュン・クエスト5 大魔術教団の謎<上>
(刊行年月 2002.07)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:深沢美潮/イラスト:迎夏生/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  前巻の呪われた古城クエスト攻略直後からのスタート。ノルがずっと探し続けていた 行方不明の双子の妹に関する手掛かりを得た事から、そのまま一行はノルの妹探しへと 進む。で、この巻で起こった結構衝撃的な出来事を、読み返すまですっかり忘れてしま っていてちょっとショックを受けた。出来事そのものにも、忘れてた事自体にも。  今更ネタばらしぶちまけてもあんまり影響なさそうだけど、まあ一応伏せとく。ノル の妹・メルの行方は意外な程あっさり掴めたが、彼女の置かれている状況が厄介な事に なっていると。大魔術教団とは名ばかりの、実は信者を手品で騙して金を巻き上げてい るインチキ教団。その悪徳教祖に何故か人徳者で信頼も厚く心優しいと噂されるメルが 加担しているらしい。騙されているのか、事情があって協力しているのか、弱みを握ら れて強要させられているのか、それともパステル達も読み手側も全く疑ってないけど実 はメルは悪い人なのか。メル救出と同時に教団村の真相を探るべくの潜入捜査。  具体的な作戦実行は下巻の方で。しかし死者蘇生術なんて結構いい成功率で出来る上 にそんなに大っぴらに広まってるもんなんだ。と、あまり考えられなかったものが随分 あっさり盛り込まれている興味深い事実。そこがこの物語らしいと言える部分か。  既刊感想: 2006/05/06(土)新装版フォーチュン・クエスト4 ようこそ! 呪われた城へ
(刊行年月 2002.07)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:深沢美潮/イラスト:迎夏生/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  久々に新装版読書進行。角川スニーカー文庫版を読んだのはいつの頃だったか……あ あ〜どうしても遠い目になってしまう。前後編構成が多い初期のフォーチュン・クエス トの中では数少ない1冊完結形式なこの4巻目。私は実際のテーブルトークRPG経験 ってのは皆無なんだけど、リプレイを読んだ印象を思い返すとやっぱりテーブルトーク RPGの色が非常に濃い物語だなと(でもこれってそういや元々テーブルトークRPG が原型だったんだっけ?) まあこのシリーズはきっと何処まで行っても面白いより懐 かしいが先行しちゃうと思う。新しい独自性が次々に溢れて出て来る現状を思うと、や っぱり古き良き時代の作品って印象が強いし、ストーリー性も新鮮味は薄いから。  それでもキャラクター同士の掛け合いによる楽しさは極上。その辺りは全く色褪せて なくて読んでいると凄くホッとさせられる。今回の場合だと幽霊城クエストでアンデッ ドモンスターぞろぞろなのに、恐怖感よりもドタバタ駆け回る騒々しさの方が上を行く 感じで。終いには事情抱えたアンデッドキャラと仲良くなっちゃったりしてたしね。  既刊感想: 2006/05/06(土)聖獣王の花嫁
(刊行年月 2006.04)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:高遠砂夜/イラスト:起家一子/集英社 コバルト文庫]→【bk1】  本当は『レヴィローズの指輪』から興味を抱いた作者さんだったのだけど、そっちは 巻数多いし丁度新シリーズが立ち上がったという訳でふと手が伸びた一冊。いきなり妹 姫が主人公リージュの婚約者と駆け落ち、唖然としたまま残されたリージュは代わりに 聖獣を召喚する為の贄として妹の婚約者へ嫁ぐ羽目に。……と、その辺りの事情が序章 らしい形でつらつらと。シリーズ展開なので、伏せられている部分も徐々に明かされて くんだろうと思いつつ、もうちょっと余計に見せて欲しかったなぁとかぼやいたり。  リージュは勝気に逆らう意気込みを示しても、まだ大した事しか知らされないまま流 されっ放しの状況だし。他に結局逃亡したシルヴァーナとリージュの元婚約者の行方や、 ゼルフォンがシルヴァーナの力に拘り聖獣王としての力を欲する理由など。見落として はいない筈……多分。イオの二つの人格とゼルフォンとの三つの存在が、花嫁=リージ ュを奪い合う展開で進んでゆくのかな? 或いは一応リージュの力を使っての聖獣を呼 び込む儀式みたいなものは済まされたようだから、その力を巡っての争いとか? 2006/05/04(木)流血女神伝 喪の女王3
(刊行年月 2006.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:須賀しのぶ/イラスト:船戸明里/集英社 コバルト文庫]→【bk1】  なにこの子煩悩パパ。エドってば、カリエが修道院からミゼーマ宮へ発つ時にセーデ ィラの手を握って“バイバイ”の仕草とかやってるし! ホントにエドか? イ、イメ ージが形作れねぇ。まあ人間なんてその時々の状況によって変われば変わるもんだよね という話。でもエドが常時側に居るこの状況だと、トラブルを呼び易いカリエの行動も 安心して見守っていられる。これがたとえ束の間の平穏だとしても、今までなかなかこ んな風にはなれなかったから、凄く幸せそうに見えていいな〜と強く思わされた。  そういやこのユリ・スカナ編に入ってから、カリエが本来持つ明るさや前向きさが目 立って表に出るようになったかなと。そう見えるのは前のザカール編があまりにもあん まりだったせいかも知れないけど、マネイエとの喧嘩なんて久々に素のままのカリエを 見た気がした。もっとも一寸先は闇なので、良い時のカリエがいつまで続くかは分から ない(妙にサルベーンの底知れない闇の面を強調している辺りも嫌な感じだし)。  ユリ・スカナ中心部の方はバンディーカが主役。一冊か二冊彼女主役の外伝エピソー ドが挿入される予定もあったらしいけど、結局それは挟まずにこの最終章を始めたとの 事(今回のバンディーカの過去エピソードだけでも充分読み応えあったけど、もっと長 めに纏めたものも読んでみたかったかも)。そしてネフィシカにやられっ放しだった女 王が遂に動いた。果たしてカリエへの接触がどんな波紋を生み出す事になるのやら。  既刊感想:流血女神伝 帝国の娘 前編後編             砂の覇王              女神の花嫁 前編中編後編             暗き神の鎖 前編中編後編             喪の女王        天気晴朗なれど波高し。 2006/05/04(木)流血女神伝 喪の女王2
(刊行年月 2005.11)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:須賀しのぶ/イラスト:船戸明里/集英社 コバルト文庫]→【bk1】  初っ端のエドとサルベーンの会話に思わず吹いた。勝手に生まれてきただのカリエが しゃがんだ拍子に生まれただのってあんた……事実だけど身も蓋もない物言いだな。あ り得ない事が起こるってのもカリエの波乱万丈人生をもろに表わしていて、傍観してる 方にとっては退屈しない(と言ったらカリエに悪いかもしれないが)としても、赤ちゃ んくらいゆっくり生ませてあげようよ、とか思わずにはいられなかった。って既に前巻 で済んでる事だけど。あとサルベーンのポカーンな表情はなかなかお目に掛かれないだ ろうから収穫だったかも。頭の中で唖然とした彼の顔が直ぐに浮かんでしまった。  本題のユリ・スカナの内部事情はもう加速度的に泥沼化が進んで行ってる様で、結構 な重さに圧迫されているような感覚。でも多分まだまだこんなもんじゃないだろうと身 構えてはいるけど。ネフィシカが微笑を絶やさずに恐るべき牙を剥き、着々と地盤固め を進めてはいるけれど、バンディーカがこのまま崩れ去るとも思えず。グラーシカやイ ーダルも今の立場から何処に歩を進めるのか気になる所。カリエはきっとフィンルとの 繋がりで望まずともユリ・スカナの中心に引き擦り込まれて行くんじゃないかなぁ。  既刊感想:流血女神伝 帝国の娘 前編後編             砂の覇王              女神の花嫁 前編中編後編             暗き神の鎖 前編中編後編             喪の女王        天気晴朗なれど波高し。 2006/05/03(水)鋼殻のレギオス
(刊行年月 H18.03)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:雨木シュウスケ/イラスト:深遊/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  3月、5月、7月と隔月で連続刊行が決定している新シリーズ。そういや前シリーズ は1巻読んだだけで止まったままだな……なんてどうでもいい事思い出しつつ。1巻目 はまだ何もかも始まったばかりで、これから徐々に加速してゆくのかなという印象。  主人公レイフォンは絶大な能力を有している。でも絶対に振るいたくはない。それは 何故? 過去の経緯が原因だが詳細はまだ語られていない。だからもっと踏み込みたく ても踏み込めない……概ねこんな感じ。レイフォンに限らずニーナにしてもフェリにし ても、過去が大きな枷となったり強い影響を与えていたり、そういうのが重要である限 りは掘り下げが必要不可欠で、今回だけではもうちょい足らず。とは言え大まかな部分 では結構掴めているから、詳細は今後徐々に埋めていってくれればそれでいい。  そしてその今後の展開について。度々話題に上がっている学園都市対抗戦がメインイ ベントとなりそうだけど、一体どうやって自立型移動都市同士でそれを行うのか今の所 想像がつかない。そもそも自立型移動都市のシステム自体、まだ色々と意図的に隠して いるからなのか充分な描き込みではなかった気がしたからなぁ。ただ、想像出来ない部 分も勝手に予想して待つのが楽しみな事には違いないので、続きに期待してます。 2006/05/03(水)彩雲国物語 はじまりの風は紅く
(刊行年月 H15.11)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:雪乃紗衣/イラスト:由羅カイリ/角川書店 角川ビーンズ文庫]→【bk1】  名家・紅家のお嬢様、紅秀麗。貧乏生活からおさらばすべく突如降って来た美味しい 話にかぶりつく。しかし美味い話には当然の如く裏があり、それも秀麗が当初想像もし てなかったとんでもない裏があった……という展開。物語の中にも登場人物達の中にも 様々な裏がある。考えてみたらこの中で裏表がハッキリしてるのって秀麗くらいじゃな いか? 絳攸もあまり裏の顔は持ってなさそうだけど、他の奴らは裏があり過ぎて胡散 臭さの固まりだよな〜とか思ったり。秀麗の親父さんとか静蘭とか楸瑛とか。  劉輝についてはあらゆる面で「騙された」かもしくは「一杯食わされた」、と秀麗の 気持ちを代弁するならこんな感じか。無能が演技ってのは読んでいれば途中で分かるも のだけど、逆にこれを自然に平然とやってしまえる辺りは凄いを超えて畏怖すべき事な のかも(一方で実は男色家ではなかったの知って身構えてた分だけホッとしたりも)。  一応教育係としての仕事は無事終了。秀麗も劉輝と別れて閉幕。なんだけど、現在も 続いてる長編シリーズだから当然次があるわけで。どう続くんだろう? まだ伏線敷き っ放しや謎残したままの所もあるので、その辺りを気にしつつ続きを追ってみる。


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