NOVEL REVIEW
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07/15 『黄昏の刻4 漆黒の戦慄』 著者:吉村夜/富士見ファンタジア文庫
07/13 『伝説の勇者の伝説9 完全無欠の王様』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
07/13 『ムーンスペル!! 背中合わせの風景』 著者:尼野ゆたか/富士見ファンタジア文庫
07/13 『抗いし者たちの系譜 虚構の勇者』 著者:三浦良/富士見ファンタジア文庫
07/11 『とりあえず伝説の勇者の伝説5 魅力のオーバーヒート』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
07/11 『戒書封殺記 その本、触れることなかれ』 著者:十月ユウ/富士見ファンタジア文庫
07/11 『紅牙のルビーウルフ3 西の春嵐』 著者:淡路帆希/富士見ファンタジア文庫
07/08 『伝説の勇者の伝説8 行方知れずの恩知らず』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
07/08 『白王烈紀 天の獣は清風に舞う』 著者:諸星崇/富士見ファンタジア文庫
07/07 『ご愁傷さま二ノ宮くん4』 著者:鈴木大輔/富士見ファンタジア文庫
07/06 『天高く、雲は流れ4』 著者:冴木忍/富士見ファンタジア文庫
07/05 『とりあえず伝説の勇者の伝説4 魔力のバーゲンセール』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
07/05 『ソード・ワールド短編集 へっぽこ冒険者とイオドの宝』 著者:山本弘・清松みゆき 他/富士見ファンタジア文庫
07/03 『黄昏の刻3 赤熱の巨竜』 著者:吉村夜/富士見ファンタジア文庫
07/01 『ムーンスペル!! 真夏の迷宮』 著者:尼野ゆたか/富士見ファンタジア文庫


2006/07/15(土)黄昏の刻4 漆黒の戦慄

(刊行年月 H18.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:吉村夜/イラスト:すみ兵/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  昨日の敵は今日の好敵手、的な展開が凄く好きだ。長年いがみ合い続けて来た『協会』 と『連盟』が共闘せざるを得ない状況。倒すべき敵は、米国・ロシア・中国の三大国を 裏で操り稀人を滅ぼそうとする赤目。『連盟』の頭領として煩わしい『協会』を滅ぼす 為に強大な力=魔名を欲している……と思ってたのだけど、そんな底の浅いもんじゃな くて。完膚なきまでの稀人殲滅。初期の頃はさっぱり話が進展しなかっただけに、この 堰を切ったような急展開は非常に嬉しいもので面白いと感じられるもので良かった。  とうとう一線を超えてしまった銀嶺と夕姫の兄妹恋愛にうはーとかなってたけど、い つの間にかうはーとか言ってる場合じゃなくなってた。逆に二人の幸せを見せ付けられ た後にこんなんなっちゃったからダメージが酷かったよ。しかしここからどうやって物 語を進展させる? 何十年の時を費やし万全を期して仕掛けられた赤目の策略により、 最悪の増強に追い込まれた銀嶺達に逆転の望みは正直言って相当薄い。唯一の不確定要 素は、まだ赤目が手にしていない魔名の力。これが何らかの希望に繋がるのかどうか、 もし繋がるとしたらどんな力が発揮されるのか。全く先の見えない続きが楽しみ。  既刊感想: 2006/07/13(木)伝説の勇者の伝説9 完全無欠の王様
(刊行年月 H17.10)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  フェリスに引き摺られて戻って来ちゃった出発地点ローランド。9巻〜11巻は長編 の最重要部分が描かれるらしいローランド編。はいはい繋ぎ繋ぎ今回は。頁の少なさで 読む前から「こんなもんだろう」ってのは大体分かってたから。ただ、今巻くらいから 伏線ばりばり張ったり解いたりと目まぐるしく動かすよ、と書かれているあとがき通り、 この短さにもかかわらず意欲的に伏線敷いたり展開したりな所が結構見られた。  まあそういうのは良い手応えとして残ったのだけど、帰国早々ライナとフェリスが短 編ノリの夫婦漫才始めやがったもんだから話がちっとも進みやしねぇ。シオンの一枚上 手な策によって不眠不休労働させられただけで終わっちまったじゃねぇか! ……と、 無難に終わりそうだったのに、このラストシーンの挿入は卑怯だよ〜(予期せぬ事態で 完全に意表を突かれたので褒めてます一応)。さすがに事態を表面通り受け入れはしな いし出来ないけれど、そりゃ気になるわな〜。“誰がそれをやった”のか? とか。  分からなくて知りたいのは他にも。フロワードを震え上がらせてその場を動けなくし たシオンの本性らしき姿、カラード家を皆殺しにした人物、複写眼を取り除く事が出来 るらしい微かな手掛かり、ミラーとジェルメは何時何処でどうやって結ばれて結婚した のか(これは確かに短編読んでて得だったかも)など。黙って続きを待つしかない。  既刊感想:伝勇伝        とり伝  2006/07/13(木)ムーンスペル!! 背中合わせの風景
(刊行年月 H18.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:尼野ゆたか/イラスト:ひじりるか/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ第4巻。ラスト前……って、え? これでラスト前なのか!? だ、大丈夫か な? 次で諸々きちっと纏まるのかどうか。一番の懸念はエルリーの過去にまつわる事、 王国内部の国王暗殺を企てた反乱分子による騒動、クラウスが葛藤模索を続ける詠唱士 として進むべき道……果たしてこれらの要素全てが終着点まで辿り着けるか、と予想を 巡らせてみて「厳しいんじゃないだろか?」となってしまうこの状況かも知れない。  前より少しだけ上向き加減なのは、ヘタレ野郎だったクラウスがようやく男気を見せ てくれたから。弱っちいのは変わってないけれど、「何がなんでもエルリーを護る!」 と言葉にして意志を固めた意味は大きい。イルミナ、トピィには気の毒だけど、想いが 収まるべき所に収まってくれてホッとした。とは言え、擦れ違う前も後もクラウスとエ ルリーが触れ合い絆を深める部分に物足りなさを感じていたので、満足するには至らず。 せめて対抗馬(イルミナとトピィ)をもっと絡ませてくれてたら良かったのに……。  あと他に心配を挙げるとすれば、最も重点的に描くべきではないだろうか? なんて 感じていたエルリーの過去絡みの話がラスト前に来ても全然詳細が語られてないじゃね ーかっ! と声を荒げずには居られなかった事。いやホントに。深い因縁を持つ筈のジ ョージも殆ど出番無かったし。この点だけでも最後はスッキリさせて欲しいなぁ。  既刊感想:ムーンスペル!!       霧の向こうに……       真夏の迷宮 2006/07/13(木)抗いし者たちの系譜 虚構の勇者
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:三浦良/イラスト:KIRIN/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ第2巻。現魔王の称号を持つ皇帝サラ=シャンカーラ。かつて彼女は勇者と して前魔王ラジャスを討ち倒したのだから、勇者から魔王となったサラに対抗出来るだ けの力を持つ“現勇者”が存在する筈――という書簡が湧いて出たのが事の始まり。  確かに勇者と魔王は常に対となるもの……と考えると片方が健在なのにもう片方が欠 け続けるのはありえない事で、結果的に誰が書き記したかも知れない書簡が後押しとな り、存在が明確でない『虚構の勇者』を追い求めて多くの者が翻弄される羽目に。  興味を抱いて追い掛けていたのは“書簡を放って混乱を起こした首謀者は誰か?”と、 “騒がれている虚構の勇者が本当に存在するならそれは誰か?”のふたつ。前者の方は ちょっと謎仕掛けを含んだ描き方だったけど、著者側の意図としては首謀者が誰かを読 み手に深く考え解かせるよりも、首謀者の行為によって『虚構の勇者』という言葉に深 い意味を持たせる方が大きかったかなと。実際謎は提示されても謎解きと括る程ではな いし、この首謀者が後の『虚構の勇者』の意味を一層深めてくれたと感じたので。  サラが倒されるとすれば、彼女が自分自身をも欺き続けているラジャスへの“恋心” によってか。誰かに暴かれるか、或いは自分から晒すか……なんて愚を犯すとは到底思 えないけど、そうなったらなったで面白くなるかも知れないと思う気持ちもある。  既刊感想:逆襲の魔王 2006/07/11(火)とりあえず伝説の勇者の伝説5 魅力のオーバーヒート
(刊行年月 H16.12)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  この万年居眠り男とだんご狂い女はいつまでイエットに滞在してやがるんだ、って思 うよりも、まだイエットに居やがったのかこいつら、って思う方が先に来た。勇者の遺 物探索そっちのけで遊んでるようにしか見えないなと眺めていて、そりゃ“遊んでるん だから遊んでるようにしか見えないのは当たり前だ”と今更ながらに思い至った。  今回ミルクの出番が少なかったせいで、引き摺られるようにがりがり出番が削られて た『忌破り』追撃部隊のほのぼの〜な人達。ルークなんかライナ暗殺を担わされた長編 とはとても同一人物として見れなくなってきた。それでいーのかルークよ……。  コメディ強調な部分は毎度の如くで流し気味だったのだけど、今回満足度評点を僅か に上げたのは、短編でワンパターンじゃない所が結構目立って面白かったから。タイト ル挙げると『みらくる・はーぶ』と『ぷりんせす・DANGO』。前者はライナ、後者 はフェリスの、珍しくいつもみたいなお馬鹿じゃない少し格好良い姿を拝めたので。  既刊感想:伝勇伝        とり伝  2006/07/11(火)戒書封殺記 その本、触れることなかれ
(刊行年月 H18.04)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:十月ユウ/イラスト:藤丘ようこ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ第2巻。この物語の図書館の雰囲気を想像の中でずっと感じていられたらも う他には何も要らない……なんて訳にはいかない現実。ああ、確かに……「本を粗末に 扱う輩は問答無用で叩きのめす読破自身が本で戦ってるけどそれって思いっきり粗末に してるんじゃねぇのかああん?」て突っ込みたくなった!(あとがき参照の事)  しかしどうやら本を武器にしてもいい例外的な事情があるようで。まあ読破所有のこ の黒本がただの書籍じゃないのだけは前からハッキリしてるけど、詳細は語られてない んだよね。分かってるのは異界図書館を開く鍵のようなもの? って事くらいか。中身 は何が記されているのか、そんな重要アイテムを何故読破が所持しているのか……など、 現実世界に害を為す『戒書』の回収を続けてゆけば謎も明らかになって行くのかな。  もう一つ。期待していた綴の活躍は、まだ何の役にも立てない見習いであるが故に大 して見られず。とは言え、敵対者であり暗躍者であり首謀者でもある『彼』の予定調和 を崩すイレギュラーな存在として、ただならぬ影響力を残す。綴の中のどんな力が発揮 されているかは非常に曖昧なのだけど、この調子で読破にくっ付いて行って欲しい。  睦美も新参者(綴)や古株(真由)に負けじと前巻よりも更に奮闘を見せていたけれ ど、読破が恋愛に無関心な馬鹿者だからあまり報われず(所々で役得はあったから良か ったんじゃない? とは思った)。こっち方面は読破が変わらない限り期待薄か。  既刊感想:その本、持ち出しを禁ず 2006/07/11(火)紅牙のルビーウルフ3 西の春嵐
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:淡路帆希/イラスト:椎名優/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  自国グラディウスに戻ったと思ったら、辺境地域の開拓計画を付近の住民に説明する 為また遠出か。どうにも玉座でじっとしていられない女王陛下だけど、「自分は生涯盗 賊!」と決して譲らない行動派なルビーウルフらしいと言えば実にらしい振る舞い。  ここ一、二年くらいで富士見ファンタジアで賞を取った新人作家さんの中で、この方 は特に高い筆力を持っているなぁというのが受賞作からの私の印象で、それはこの三作 目でも変わらず(とは言え作者の文章表現に対しても個人個人で好みが違うだろうから、 単に筆力の程度だけで面白さが計れるもんでもないけれど)。ただ、シリーズ作品とし ての物語の流れを追っていると、まだ進むべき方向がきちっと定まってないかな? な んて心配が結構大きくて。要はこの先へ繋ぐ為に必要性のあるエピソードだったかどう か……って観点から眺めた場合、どうも微妙な手応えなんだよねぇ前回も今回も。  例えば前巻の出来事はまるっきり今回と無関係だったし、今回の辺境開拓が次巻以降 に繋がるかどうかと考えると、もう殆ど触れられないんじゃないかなぁという気がして ならない。結末を想像するには早過ぎるかも知れないけれど、そこに至るまでの道筋が 少しでも明確になれば、きっと個人的な満足度と評点はもっともっと上がると思う。  自国の復興に力を注いでる部分が強調されているから、その辺りを重視するか。それ ともルビーウルフの女王としての心の成長を中心に据えるか。ジェイドへの好意を描い た部分は凄く好きなので、ルビーが“恋心”を自覚したら面白くなるかなーとか。  既刊感想: 2006/07/08(土)伝説の勇者の伝説8 行方知れずの恩知らず
(刊行年月 H17.06)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ターニングポイントと言うだけの事はある怒涛の展開で久々に抜群の手応え。この物 語(主に長編を指す)は、各人の胸に秘めた記憶や想いを直接にではなく断片的に焦ら しながら描写する手法を取っている……と私は思っているのだけど、それが今回は至る 所で増量されていて、おいてけぼり喰わないようついて行くのがホント大変だった。  しかしそれは愚痴とかじゃなくて。かなり大きな動きが幾つもあったのと、軽快なテ ンポで次々知られざる事実が明かされてゆく感触が心地良かったのと、そういう多量の 嬉しさ面白さに込みで。ただ、特にライナが悩み考え思い至った部分で明確になってな い要素も多いから、頭に理解させるのにちょっと難儀したかなと。その程度の事。  魔眼は残酷なまでの恐るべき強さを誇る――前巻でティーアが示したそれを根底から 覆す驚愕の力。しばらく魔眼の脅威を見せ付けられ続けて来たせいか、その存在をすっ かり忘れていた“伝説の勇者の遺産”……ここで魔眼にとって最悪の相性として存在が 大きくなるとはねぇ。そもそも遺産回収がライナの使命だったのも、本当の所どういう 意図があったのか掴みかねている現状。一度整理(再読)した方がいいのかな〜。  でもそれより何より今回はライナ奪還の為に奮闘したフェリス! 彼女の行動と態度 と言葉がもう凄く素敵だったよ。誤魔化しも偽りもないフェリスの本心なんて初めて聞 いた気がする。彼女がついてりゃライナの精神もしばらくは大丈夫なんじゃない?   既刊感想:伝勇伝        とり伝  2006/07/08(土)白王烈紀 天の獣は清風に舞う
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:諸星崇/イラスト:桐原いづみ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  結局前巻で描かれていた白凰家関係者の暗躍やら策略みたいなのは無かった事にされ てしまったのか? それにリョウエン師匠は一体どこへ行ってしまったんだ? かつて リョウエン師匠の下で共に暮らしていたテンケイの義姉妹が登場したと言うのに。まさ かお亡くなりになったわけじゃないだろうし、全く姿を見せなかったのは予想外。  何でリョウエンの登場に拘ってるかと言えば、おそらく師匠はテンケイが進まなけれ ばならない道を見越しているだろうから(とは言え師匠自らそれを教える事はまず無い だろうけど)。そういうのテンケイ本人が居ないとこで、訳知り顔の思わせ振りな態度 で呟いてみせる役割を期待してたんだけどなぁ。白鳳天を宿したテンケイの姿を陰で見 ていると思うんだけど……実際どうなんだろう。テンケイの方でリョウエンの行方を全 然気に掛けてないのも、何処かで飄々と生きているだろうと確信を持っているからか。  前述の通り過去にテンケイと共に過ごした事があり、同じ八煌天の霊獣『絶空天』を 宿すリンカと、彼女の妹シャンメイとの再会。何となく物足りなく感じたのは頁数が少 なかったのと、前巻のシドウみたいな強力な敵対者が存在しなかったから。サナを巡っ ての権力争いの深みに入りそうな気配もあるんだけど、今はまだ事が起こる前の段階で、 カンセイの胡散臭さがどう影響を及ぼすかが気になる程度。霊獣を解放する手段は何も 見付けられず。次で手掛かりを得られるかどうか。そして続いてくれるかどうか……。  既刊感想:天の獣に王なる翼を 2006/07/07(金)ご愁傷さま二ノ宮くん4
(刊行年月 H17.10)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鈴木大輔/イラスト:高苗京鈴/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  麗華様による麗華様の為の一冊。麗華様一色で麗華様の独壇場。しかしツンツンなの も度が過ぎてしまうと、その、なんて言うか……ちょっと鬱陶しいかな〜なんて思って しまったりとか……。いやーもー麗華の言動を追っていると、まどろっこしいわ面倒臭 いわでイライラさせられるんだよ! 容易く踏み込めないのは分かってる。特に今回は 麗華にとって如何に十年前の出来事が重く大切なものか――ここを充分に知る事が出来 たし。その上で峻護を好きな気持ちが丸分かりなもんで見ていてもどかしくてねぇ。  今回の殆どが峻護と麗華のツーショットシーンで、麗華のツンケンぶりが十二分に堪 能出来る内容。峻護にとってはかなり理不尽さを感じる筈の物言いなんだけど、「俺に とって麗華先輩のこういう態度はいつもの事」と普通に割り切って考えてしまっている からどうにもならん。結局保坂がお膳立てしてもバレてしまい病院送りになる始末。  ただ、終盤は十年前の出来事を軸に意外な展開を見せてくれて面白かった。峻護と麗 華の記憶が全く噛み合ってないのは何故だ? 麗華の方は一緒に思い出を作ったのは確 かに峻護だと確信を持っているようなので、もしかしたら峻護の記憶の方が書き換えら れているのか? まだこの辺りは不明瞭だけど、今後の展開の牽引力になってくれるん じゃないかなと。ラストも予想通りながら凄い事になっちゃって、続きが楽しみだ。  既刊感想: 2006/07/06(木)天高く、雲は流れ4
(刊行年月 H10.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:冴木忍/イラスト:森山大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ようやく第三藩王領内突入も、この一冊であっさり通過。まあ文字通り通過点って感 じで、次は第四藩王へと向かう模様。でも当面の目的は明確で、ライフォンを追わなけ ればならないという唯一点のみ。最初は何者かに盗まれたサティス大王家の《家宝》を 取り戻すのが目的だったけど、その辺は最近影を潜めている。ライフォンをとっ捕まえ れば自然と《家宝》の行方も知る事が出来る流れになるのかどうか。今はまだライフォ ンが自分を追うようにフェイロン達を挑発している狙いも不明だし、逆にフェイロン達 がライフォンを追う理由も漠然としたもので、互いが再び出遭わない限りハッキリとは 見えてこないのかも知れない。もし全部の藩王を回るのだとしたら先は長そうだ。  んで、横に置いてた今回の内容にちょっと触れてみる。まず脇役が結構多目に登場し てたな〜、全部忘れないでいられるかな〜、どれだけ残るかな〜、ってな事をつらつら と考えてた。ザーデ族の中でツェーリやチェリンカはまだ出番ありそうだけど、他は埋 没しそうな気がしてならない。リェンメイとかはこれから登場する機会あるのかな?  あとは相変わらず出たり消えたりの意図が読めないユメの行方、断片が描かれたパジ ャの過去と、彼が魔族として憎悪に引き込まれる危うさを曝け出してしまった事と、人 格変貌だけ見せて消えたヤト(カジカ)の素性と。気になって終えたのはこの辺り。  既刊感想: 2006/07/05(水)とりあえず伝説の勇者の伝説4 魔力のバーゲンセール
(刊行年月 H16.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鏡貴也/イラスト:とよた瑣織/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  このライナのやる気のなさにもフェリスとの夫婦漫才にもミルク一行の場違いな和気 藹々さにも人の言う事聞きやしないフューレル姉弟にもいい加減慣れたぜ! もうシオ ンに課せられた勇者の遺物探索任務なんて「何それ?」状態だし、精々ライナは楽に寝 る事だけ、フェリスは究極のだんごを求める事だけ考えてりゃいいじゃねーかもう。  ……なんてライナみたく面倒臭げに投げてみたら、今回は『勇者の遺物』って言葉が 忘れた頃に出ていて驚いた。一応僅かばかりでも追い求める意思が残ってたってのが更 に驚きだ。結局情報頼りに探し当てたのは勇者の遺物でも何でもなく、その呪いのアイ テムのようなものはライナに被害を及ぼし、最後はフェリスに斬られたのでしたと。  こんな具合で連載短編のノリは全く変わらず。ただ、そういや感想ではあまり触れて なかったけれど、書き下ろしの“過去編”は長編寄りのシリアス展開もあったりで、毎 回違ったエピソード(主にライナの幼少時の姿かな?)を垣間見れて面白い。実は半分 以上この書き下ろしを読むのが目当て、というのが正直な所。目を背けたくなる程の痛 ましい過去を抱えている(らしい)ライナ。そうなる前の、まだ多少は幸せだったと言 えた頃の話。これから悲惨な方向へ続くのか、それとも別なキャラクターをメインに立 てるのか。どうなるかは分からないけれど、今後もどんな過去が見れるのか楽しみ。  既刊感想:伝勇伝        とり伝  2006/07/05(水)ソード・ワールド短編集 へっぽこ冒険者とイオドの宝
(刊行年月 H17.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [編者:安田均/著者:山本弘・篠谷志乃・藤澤さなえ・清松みゆき  /イラスト:幻超二・浜田よしかづ・かわく・ともぞ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  とある『イオドの宝』を巡っての一風変わったリレー形式の短編集。 ・奪うことあたわぬ宝/山本弘  第一走者。『サーラの冒険』のメンバー。まず『イオドの宝』とはどんなものか? を 提示するのが目的のエピソード。サーラの冒険は未読なので、深いとこまでキャラクター に触れる事は出来ず。でもイオドの宝探しを通してのサーラとデルの触れ合いは、見てる 方が恥ずかしくなる程良いものだった。サーラ本編にも興味が湧いたのが収穫かな。 ・へっぽこ冒険者とイオドの宝/篠谷志乃  第二走者。『ヘッポコーズ』のメンバー。オーソドックスなダンジョン探索エピソード。 表題作で期待してた割にはイマイチな手応え。伏線が幾つも盛り込まれているので、↓の エピソードで「ああ、なるほど」と思わせてくれる要素はあるのだけれど……。まあこう いうのは短編小説よりリプレイでやってくれた方が断然面白いだろう、という結論。 ・ボックス・ポックス/藤澤さなえ  第三走者。『ぺらぺらーず』のメンバー。先頃短編集を読んだお陰か、このエピソード が一番楽しめた。巡り巡ってイオドの宝らしき箱を手に入れたクレスポのツキまくり豪遊 生活。しかしウマい話には裏がある……というもの。これも最後の話を読んだ後で「そう いう事だったのか」と思わされる伏線色々。クレスポはご愁傷様としか言い様がないな。 ・赤い鎧IV 毒を食らわば/清松みゆき  最終走者。短編集で何度か描かれているミステリ連作シリーズらしい。ここまで溜め込 まれた伏線が一気に解き放たれる『イオドの宝』を巡る物語の最終章。じっくり推理を展 開しながら次々と謎を解いてゆくテンポがなかなか小気味好くて結末にも満足。これもサ ーラと同様、他のエピソードも読みたいと思わせてくれる魅力が感じられて良かった。 2006/07/03(月)黄昏の刻3 赤熱の巨竜
(刊行年月 H17.09)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:吉村夜/イラスト:すみ兵/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  詳細が殆ど語られてなかった銀嶺の持つ黒い円盤。ようやく少しずつながら情報が出 始めてホッとした。これでまた出し惜しみしようものならどうなっていた事か……いや ホントに(最も知りたい部分がいつまでも隠され続けるってのも、あんまり良い印象を 抱けなくて困ってしまう)。多分ハッキリ出されたのは初めてだと思うけど、一応名前 と能力と、それを使用する際に銀嶺が負わなければならないリスクの程度など。  名称は『魔名』。銀嶺は『魔名』代々受け継ぐ一族の末裔。能力については未知数な 部分もあるのだけれど、使用者の思うがままの力を振るえるらしい。ただし使いこなす にはキーワードが必要で、更に使用者の命を削らなければならない。これが万能の力を 使う代償であり、銀嶺が負うリスク。『連盟』の赤目が執拗に『魔名』を狙う明確な理 由は未だ不明だけど、これだけ謎が開示されたのなら今までの不満もほぼ解消。  あとは『魔名』の力を巡ってどう物語を盛り上げてゆくか。今回の米軍とのいざこざ で、稀人への反発心が膨れ上がりそうな動きもあるので、稀人対稀人だけでなく稀人対 名子人という展開にもなり得そう(今回みたく突発的な軍事訓練ではなく、もっと大規 模な勢力関係で)。なんか銀嶺の命がやばいって触れてる辺りが嫌な予感が……。  既刊感想: 2006/07/01(土)ムーンスペル!! 真夏の迷宮
(刊行年月 H17.09)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:尼野ゆたか/イラスト:ひじりるか/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ第3巻。既に全5巻完結している作品なので、丁度中間地点のこの巻がター ニングポイント的な内容。なんだけどなぁ……今回妙に文章描写力がレベルダウンして る気がしてならなかったのだけど。それともクラウスと教え子達の合宿と、エルリーと 因縁浅からぬ研究所の事が全く噛み合ってないストーリー構成の方に問題ありだったの か。とにかくこれまで面白いと思っていたこの物語の旨味を全然味わえずで残念。  前巻感想で今後クラウスを追うかエルリーを追うか、どちらを主軸に置くか注目して いた所、どうやらこの展開だとエルリーの方がメインで描かれて行きそう。それはそれ で一向に構わないのだけど、今回のこの脆弱な描き方は何なんだ? と首を傾げたくな る程の物足りなさはどうにも受け入れ難くて。研究所の事やも内部事情なんか前フリ全 く無しの唐突さで、エルリーとの関係もよく分からない内に有耶無耶にされてしまった 感じ。まあエルリーの隠し事の件は次できちっと描いてくれるの待つしかないか。  三角(ターヤも入れたら四角)関係のラブコメ展開は更にいかん。クラウスが呆れた 愚鈍さでいつまでも乗ってこないからもう期待出来ないかな……。あとは自分を卑下す るうじうじ君に戻ってしまったクラウスが今後立ち直れるかどうか。そこが見物。  既刊感想:ムーンスペル!!       霧の向こうに……


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