NOVEL REVIEW
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09/15 『たましいの反抗記 すてるがかち!』 著者:水城正太郎/富士見ミステリー文庫
09/15 『GOSICKsII ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車―』 著者:桜庭一樹/富士見ミステリー文庫
09/12 『かりん 増血記 恥じらいダイアリー2』 著者:甲斐透/富士見ミステリー文庫
09/11 『SHI−NO ―シノ― アリスの子守唄』 著者:上月雨音/富士見ミステリー文庫
09/11 『ぼくのご主人様!?2』 著者:鷹野祐希/富士見ミステリー文庫
09/10 『タクティカル・ジャッジメントSS3 善行くんの弁護士養成講座』 著者:師走トオル/富士見ミステリー文庫
09/09 『楓の剣! 二―ぬえの鳴く夜』 著者:かたやま和華/富士見ミステリー文庫
09/09 『エクスプローラー2 憂感少女』 著者:北山大詩/富士見ミステリー文庫
09/08 『マルタ・サギーは探偵ですか? a collection of s.2』 著者:野梨原花南/富士見ミステリー文庫
09/07 『ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・つー』 著者:新井輝/富士見ミステリー文庫
09/06 『さよならトロイメライ6 恋人のためのエチュード』 著者:壱乗寺かるた/富士見ミステリー文庫
09/05 『バクト!VII The Gambler』 著者:海冬レイジ/富士見ミステリー文庫
09/04 『うぶこい 〜初恋成就戦争なんだからねッ!!〜』 著者:うぶこい応援委員会/ZIGZAG NOVELS
09/03 『かりん 増血記 恥じらいダイアリー1』 著者:甲斐透/富士見ミステリー文庫
09/02 『SHI−NO ―シノ― 黒き魂の少女』 著者:上月雨音/富士見ミステリー文庫
09/01 『遠く6マイルの彼女』 著者:ヤマグチノボル/富士見ミステリー文庫


2006/09/15(金)たましいの反抗記 すてるがかち!

(刊行年月 H18.06)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:水城正太郎/イラスト:ミヤスリサ/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  2ヵ月連続オール新作『初体験(はぁと)project』その1。  初めての富士ミス体験者に触れて貰うのを意図としているなら、せめて一冊完結の読 み切りにしておくのが無難な選択と思うのだけど……なんて触れてみたりするのは余計 なお世話かどうか。先に言ってしまうと、この物語の流れは単発のものじゃなくてシリ ーズ展開構想の序盤戦、シリーズ展開にならなきゃただの尻切れ……なんだよねぇ。  そして読書中の自分の迂闊さに地団太を踏む。途中の学部間会議で「この中で裏切り 者は誰だ?」「謀反を企てているのは誰だ?」とか、謎を匂わせる空気が漂ってたもん だから、ついうっかり身を乗り出してしまったのは大きな間違いだった。ミステリー文 庫なのにL・O・V・E重視のレーベルだってのを忘れてた! そんなに都合良く謎解 き重視な展開になる訳がない。でも“誰が裏切り者か”を主軸に謎仕掛けて物語を展開 させるのが真っ当なものだと思うんだよ……。その辺触れても無駄だろうけど多少は期 待してたから触れずにはいられなくて。結局匂い嗅いだだけで終わってしまった。  お馬鹿な麻紀が絶対合格不可能と思われていた学園に合格した事。そこに何か意味が あるのかと注視してたのだけど何もなかったなぁ。深読みし過ぎたか。でも馬鹿なのに 間違って受かった何らかの意味があって欲しかった(あったけど時間切れで語られず終 わったのかも)。一応続刊待ちの気持ちで。投げっ放しのままじゃあんまりだから。 2006/09/15(金)GOSICKsII ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車―
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:桜庭一樹/イラスト:武田日向/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  長編III巻で一弥の姉・瑠璃から届いた手紙の事、長編V巻でクレヴィールの頭が突 然ツインドリルになってた謎、この辺の詳細が語られていた模様……なんだけど。前者 については「そんな事あったっけ?」で既に忘却の彼方、後者に至っては「単に彼の趣 味なんじゃないの?」と信じて疑わずという始末。そういや元々のドリルだって別にク レヴィールの趣味でやってた訳じゃなかったか(趣味ならそれはそれで弄り甲斐のある ネタになりそうだけど)。そんな具合で遡って再確認した方が良さそうな裏話がちらほ らと。さすがに仔馬のパズルは覚えてたけど、これは直ぐに回答に思い至ったから。  今回の短編集はIV巻とV巻の合間を埋める夏休み中のエピソード。一弥は何でもいい から事件を掻き集めて詳細を告げる語り部役、ヴィクトリカは自身のテリトリーから離 れず動かず話を聞いて謎を解く安楽椅子探偵役。行動をそのまま表現するなら一弥は日 傘持ちの使いっ走り、ヴィクトリカはだらだらごろごろぐでぐで探偵ってとこか。  まあ立場は変わらずとも、夏休みとあって周囲の状況が普段のそれとは異なっていた ので、かなりまったりでのんびりな雰囲気が味わえた。主にヴィクトリカのだら〜っと した姿を眺めてそんな風に思ってたのだけど、同時に「外に出て素を晒してるなんて随 分開放的だなぁ」なんて思ったりもした。やってる事は当たり前の日常、だけど一弥と ヴィクトリカの“二人だけの時間”は普段より密度が濃くて良いものだったな。  既刊感想:IIIIIIV       s 2006/09/12(火)かりん 増血記 恥じらいダイアリー2
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:甲斐透/原作・イラスト:影崎由那/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  ドラゴンマガジンで連載された、書き下ろし長編とは別のエピソード。『恥じらいダ イアリー1』からの続き。そういやすっかり忘れてたけど、小説版かりんって原作コミ ックの合間を埋めるサイドストーリー的な役割だったっけ。今回そのコミック版とリン クしてる部分が結構あって、それなのにコミックの方はしばらく読んでなかった(4巻 目くらいで止まってる)せいで、ちょっと知識不足に陥ってしまったのが悔しいな。  表紙から登場してた果林に瓜二つな吸血鬼少女。原作エピソード読んで分かっていれ ば「ああ、小説版にも出てるんだ」となる筈の所、小説版だけだと分からないから“少 女”なんて思い込みをしてしまう。とは言え、知らないなら知らないなりで充分楽しめ るよう配慮が為されているし、逆に私みたいな小説しか読んでない人に原作コミックへ の興味を抱かせるような描き方をしている。そういう仕掛け方が凄く巧いなと思う。  で、やっぱり小説版は長編より『恥じらいダイアリー』の方が好きだな〜。葛城律の 存在感と、果林の増血鬼の正体がバレるかどうかの危機感、この二つが面白さに繋がっ ている大きな要因……って事は律が果林と健太を大いに引っ掻き回して盛り上げてくれ たお陰なのかな。まあ果林と律による健太争奪とかは途中からどうでも良くなってたけ ど、律に果林の正体がバレる? バレない? の辺りで最後の最後までかなり楽しませ てもらえたからそれで充分。知らなかった部分は後でコミック読んで補完しよう。  既刊感想:       恥じらいダイアリー 2006/09/11(月)SHI−NO ―シノ― アリスの子守唄
(刊行年月 H18.05)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:上月雨音/イラスト:東条さかな/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  シリーズ第2巻。前巻その表記に首傾げてたのに、またも『純愛系ミステリー』と言 い切るか、付属の帯よ。でも今度は簡単に突っ込む前に、あくまで「そういうジャンル なんだよ!」と押している気がする“純愛系”の意味をよく噛み砕いて考えてみた。  “純愛系”を鵜呑みに出来ない原因は志乃の感情が読めない所。そもそも感情という 要素が、果たして志乃の中に存在しているのかどうか。些細な表情の変化は幾つも描か れているのだけれど、じゃあ浮かべた表情の上に同様の感情が乗っかってるかと言えば 全くそんな事はなくて。表情は変わっても、それはあくまで暗き心の深層を覆う仮面を 付けた上での変化で。要は志乃を中心に見ていると、なかなか純愛系には辿り着けそう もないなぁ……となってしまう訳で(まあ読解力不足も大いにあり得る事だけど)。  ただ、意識して『僕』(志乃で言う所の『彼』か)の側から眺めてみると、不思議と 純愛系って言葉がよく合う。志乃と接して時折やましい妄想に駆られるのが危ういけれ ど、『僕』が志乃に向けるその殆どの感情は、紛れもなく純愛で固められてるんじゃな いかなと。それに『僕』の気持ちが志乃へしっかり届いているからこそ、普段の素振り からは全然そう見えなくても、彼にだけは心を許しているようにも感じられる。  やっぱり“志乃は何故こうなったのか?”の発端が知りたい。でも、志乃にとってそ の部分に触れる事が禁忌ならば描かれる事はないのかも。それならもう一つ気になって いる、“普通じゃない再会”を果したらしい僕と志乃の当時の様子を見てみたい。  既刊感想:黒き魂の少女 2006/09/11(月)ぼくのご主人様!?2
(刊行年月 H18.05)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:鷹野祐希/イラスト:和泉つばす/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  うぎゃーす!! な、なんでウホッな状況に持ってっちゃうんだ〜! もっと他に無 難な組み合わせがあるだろっ! 諒悟の千広(現実世界の方の身体は男だけど中身は女 性の千尋)への感情が変な方へ傾き気味だったから、「こりゃヤバイ……」と危惧して たら案の定。いくら中身が異世界でメイド頭やってた千尋(女)だからって、外見が千 広(男)じゃ嫌だよ! 挿絵付きで○○シーンとかやられてもう大ダメージだ……。  いや、でもこれにショック受けたのが微妙な評点に直結してるわけじゃなくて。性別 逆転のパラレルワールドで、たとえ外見女で中身が男であろうとも、メイドさん出すな らメイドさんキャラとしての魅力を色々描いて欲しかったなと。お約束だろうとパター ン踏襲だろうとありきたりだろうと、メイド中心ならメイド成分が余計にあった方がい い。どうも期待してたのと別の方向に行っちゃって、その辺が不足気味な印象だった。  期待分はやっぱりコメディ要素を多く含んでいるもので、だけどそっち方面では殆ど 楽しめなかった。別の方向ってのは、千広の現世への帰還を主軸に数学パズル的要素を 絡めていた点。白状すると『和算』がどんなものか全く知らなかったから、作中で和算 に関する説明を事細かに受けても眠くなる一方で……。これが千広と千尋の異世界転移 に深く関わるキーワードだと分かっていても、ちょっと受け入れ難かったなぁ。  ただ、二つの世界の相違点については、練り込みが深くてなかなか面白く仕上がって たなと思う。それだけに惜しかったり勿体無かったり。千広が元に戻ったからもう次は ないか? 雑誌掲載されたらしい春生のエピソードとかは読んでみたいんだけどな。  既刊感想: 2006/09/10(日)タクティカル・ジャッジメントSS3 善行くんの弁護士養成講座
(刊行年月 H18.04)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:師走トオル/イラスト:緋呂河とも/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  口八丁手八丁で真っ当な証人を強引に捻じ伏せてしまう、極悪非道な山鹿善行の法廷 戦術は今回も健在。さすがに法廷に立っての見せ場は長編より控えめだけど、その分長 編ではあまり描かれない、ぐーたらした日常に舞い込む余計な面倒事をテキトーにこな してゆく善行のダメっぷりが見れるのは短編集ならではの旨味であり特徴であり。  こんな奴の下についてたって得られるモノはロクでもない事ばかりだろうから、一尺 ちゃんは精々反面教師として師事してりゃいいんじゃないの? と思ってみたけど、お およそ弁護士資格とは関係ない所で善行に扱き使われまくってる癖に、それでも「もう 嫌だ」と逃げ出さないのは気弱な性格だけが原因ではないような気も。誰の下であって も「何が何でも弁護士になりたい!」という熱意が心の内にあるのか、或いはたとえ極 悪でも善行の法廷戦術に学ぶべき点を見出しているのか……まあ行く末は分からないけ ど善行みたくならない事を祈るばかり(当分はいい様に扱き使われそうだけどね)。  今回一番面白かったのは、探偵小説風味な書き下ろしの影野のエピソード。失踪事件 については予想通りの結末だったけど、謎を追う過程では影野のキャラクター性が存分 に出ていたお陰で充分に楽しめた。本当は長編で法廷の合間にこういう探偵パートがあ って欲しいなと常々思ってるのだけど、短編集で補ってもらえるならそれでいいか。  既刊感想:       SS 2006/09/09(土)楓の剣! 二―ぬえの鳴く夜
(刊行年月 H18.04)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:かたやま和華/イラスト:梶山ミカ/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  途中まで気付けなかった。美鶴の事だけど。そりゃ初っ端から美貌や胸を楓と比べた り、弥比古に対して好意を示すような素振り(急に態度変えたり恥ずかしげに振舞った り)を見せられたんじゃ、コロッと騙されもするわ。色んな意味で楓の好敵手的存在に になり得そうな“いい女”が出て来たな〜と思ってたら、実は……だったとはね。  まあヒントが提示されたらあっさり思い当たったけど(美鶴付きの彼女は何となく怪 しいと感じてた)。知った上で改めて思い返してみると、確かに楓は恥ずかしさで顔が 真っ赤になるような行為を幾つも取ってた。だからラストの「この私の行き場のない思 いは何処にぶつけりゃいいのよ!?」なんて楓の複雑な気持ちが凄くよく分かる。  でも、美鶴は楓と弥比古の間に割って入るような事はしないんじゃないかな。美鶴の 性格だと、ちょっかい出すのはあくまで二人をからかうのが目当てで、本心は少し年上 の目線で微笑ましく見守りたい……そんな立場がぴったりな気がする。また楓に劣らぬ 剣豪である事も証明しているので、彼女の助力という意味でも続けて登場して欲しい。  楓と弥比古のバカップル振りは相変わらず。夫婦喧嘩は犬も食わぬ。度々の喧嘩も恋 人同士がじゃれあっているようにしか見えなくて、なのに「恋人か?」と問われるとお 互いそっぽ向いて否定しやがって。その辺の“素直じゃない”辺りの徹底ぶりに益々磨 きが掛かっていて、結果「イライラするけど可愛いなこいつら」に落ち着いた。  既刊感想: 2006/09/09(土)エクスプローラー2 憂感少女
(刊行年月 H18.04)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:北山大詩/イラスト:石田あきら/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  前巻のあのぎこちなさって何だったのかな? とか首捻ってしまうくらい、ちょっと イマイチだった部分が飛躍的に伸びていてなかなか良い手応え。普通に考えると“イマ イチなのはデビュー作だから伸びが少々足らなかった”となるのだろうか。特に微妙さ が漂っていた要素――何だか原因がよく分からない癖にどうにも“味気ない”印象を抱 いてた各所の会話シーンも、今回は何の問題もなくしっかり噛み合っていたし。  いや、前巻の感触を引き摺ってしまっていて、続刊のデキがどうなのか読む前から不 安だったと言うのが正直な所で。しかしながら蓋を開けてみれば、そんなのは全くの杞 憂だと思い知らされた。最初は簡単な事件から入り、徐々に危険度が増して行く事件が 相次ぎ、気が付けば抜けようとしても畳み掛けるように起こり続ける事件から抜け出せ なくなり、最後に一見して関係無さそうな個々の事件の連鎖が明らかになり一本の線に 繋がる……このぐいっと先へ引っ張る軽快で小気味良い物語のテンポが実に良かった。  あと注目したいのは、透達能力者の強さのバランスが丁度『面白い』と感じられる所 で良い具合に取れている点。前巻感想でも似たような事書いたけど……透視、聴力、嗅 覚、新戦力である総一郎の情報収集、これだけの能力が揃えば協力して何でも出来るだ ろ? と思わせておきながら、人生経験の浅さとか精神的な脆さとか身体能力の未熟さ などを足枷として際立たせている辺りで、やっぱり面白く仕上がっているなと。  既刊感想: 2006/09/08(金)マルタ・サギーは探偵ですか? a collection of s.2
(刊行年月 H18.04)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:野梨原花南/イラスト:すみ兵/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  この巻かも知れないし前の巻かも知れないけれど……確か何時だったか何処だったか で「マルタはバーチの正体に薄々勘付いてるんじゃないか?」と感じた事があって、だ から幾度かバーチと急接近する事があっても、知らん振りしてすっ呆けてるのだろうか と思い込んでた。でも、無人島に流れ着いて二人っきりになった時のマルタの様子を見 る限り、少なくとも中身は男だと信じ込んでるから全然気付いてないみたいだな。  マルタがどんな謎をも解き明かす『名探偵』のカードを所持しているから、もしかし たらバーチの正体も……? って先入観があったのかどうか。と言うよりその方法で見 抜けないか? なんて思ったりもしたけれど、多分マルタは拒否するんじゃないかなー と何となくの推察。もしバーチの正体が知れたとしたら、そこで充実した対決が打ち切 りになってしなうから。続いたとしても、少なくともマルタはそれまでと同様の気持ち では臨めないだろうから(バーチの正体が“彼女”なだけに)。結局マルタは迷惑被っ た所でバーチとの戯れに楽しみを見出しているから、何時までも終わらせたくないって 気持ちなのかも。それはバーチも同様で、だから正体は絶対知られたくない、と。  ……まあこんな具合で、マルタとバーチの関係を改めてじっくり考えさせられた短編 集二巻目。お気楽な雰囲気なので、別に深刻な対立関係って訳じゃないんだけど、今回 はマルタがやけにバーチの表と裏の両方と接触する機会があったから。正体知ってるこ っちとしては、無人島のシーンで「勿体無い事を……」と思わずにはいられなかった。  既刊感想:       a collection of s. 2006/09/07(木)ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・つー
(刊行年月 H18.03)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:新井輝/イラスト:さっち/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  なんか急にエロス増量。しかも痴漢プレイとか暗闇プレイとか変態チックな方向に突 っ走ってやがる(もっとも暗闇プレイに関しては、あまり直接的描写が無いだけで冴子 と毎晩ヤりまくってるのだけど)。まあそれもこれも「だって綾だから」の一言で納得 させられてしまう辺り、行動が結構予測不能な彼女らしさがよく表れてるのかも。  とは言え、綾がエッチしよエッチしよと迫っても、健一の中の「もう綾とはしない」 という決め事は崩れず。今回は綾相当頑張ったのにね。ここまで行くと逆に何で綾との エッチを頑なに拒むのか? って問い質したくなるんだけど、返答は「何となく」でか わされてしまいそう。綾の場合、冴子との割り切った関係とは違い、ヤったらヤったで 後々引き摺るモノが多くなりそうで、健一がそういう確信を持ってるからなのかな。  ただ、冴子との関係は段々“割り切った関係”ではなくなるつつあるような……健一 は自分の中じゃ曖昧にしそうだけど、初めて冴子の方から離れてた間の健一の様子を見 る限り、どうも肉体関係のみと割り切っているにしては“それ以外の感情”が微かに見 え隠れしてたり。この先が見物ではあるのだけれど……危うい気がしてならない。  書き下ろし分は「冴子ってバイトしてたんだ」と、最初に出たのはこれ。ちょっと意 外だったから。健一と接する時とはまた違う表情、だったように思えた。あとは早苗を 起点に「ほほぉ」と呟きが漏れる程のちょっとした繋がりが明らかにされたりとか。  既刊感想:#1#2#3#4#5#6#7       しょーとすとーりーず・わん 2006/09/06(水)さよならトロイメライ6 恋人のためのエチュード
(刊行年月 H18.03)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:壱乗寺かるた/イラスト:日吉丸晃/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  セーラー服に髪おろしの八千代ちゃん……171頁の挿絵は反則だと思った。  既に大量投入しているのにまたもや新キャラ投入するとは何て強気な……。でも登場 人物一杯出しちゃってるのちゃんと著者の方が自覚されている上で、「きっと覚えられ る筈だから頑張って覚えてね。お願い(はぁと)」なんてあとがきで懇願されちゃった ら頑張って把握するしかないじゃないか! 頑張るからせめて相関図付けて欲しい。  新キャラ柿崎津々美、迷惑掛けた兄の罪滅ぼしの為に強引に御城学園に押し入り強引 に冬麻の世話係に納まってしまう。都や八千代に「貴方は流され易いから注意すべき」 と散々念を押されてる冬麻にとって、津々美は最も払拭し難く跳ね除け難いタイプの娘 なんじゃないか? と思ってたら案の定、流されまくった挙句拉致されやがった。  八千代が冬麻とのギクシャクした関係を修復したい為、彼を救うべく北森学院に乗り 込んだものの、結局拉致されっ放しで終わってしまったので次巻待ち。そういや冬麻を 拉致した張本人、津々美の意図も妙にあやふやでハッキリしなくて曖昧な手応えだった かな。表に見せてる性格が非常に直情的なもんだから、本当に「ただ冬麻に安眠して欲 しくて拉致った」と言われてしまうと「あ、そうなんだ」と簡単に鵜呑みにしてしまい そうで。それでいて別の部分では「んな単純じゃないだろ、裏あるんだよ裏が」と勘繰 りたくなったり。ただ、今の所津々美にその裏が殆ど見えないので実際どうなのか。  既刊感想:       Novellette 2006/09/05(火)バクト!VII The Gambler
(刊行年月 H18.03)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:海冬レイジ/イラスト:vanilla/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  シリーズ最終巻。んーあんまし「これで完結」って雰囲気じゃなかったかな? 一応 大きな山場は越えたけど、このまま完結なんて無かったかのように次の巻も出て新展開 で普通に賭け事やってそうな……結末はそういう感触。本筋にインターミッションを挟 む構成が最後まで一緒だったので、特別に最終巻というのを意識しないで読めたからな のかどうか。まあ一般に大きく支持された公営カジノ戦略のからくりと、そこに絡めて の『ダランベール原理』の種明かしはきちっと描かれていたので良しとすべきか。  これまで総じてイマイチ盛り上がりを得る事が出来ずにいた賭博対決。この最終巻は さすがに最後の大勝負なだけあって、「おおっ?」と力の入る描写が割と多く見れて良 かったと思う。サイコロの半丁賭博という至ってシンプルな勝負ながら、シンプルだか らこそ互いの心の内を読み合う心理戦が際立つもので。ただ、正直これでもまだ物足り ない。ヒロトとカガト、そしてバクトとバクト、もっともっと心理戦に描写を割いてじ りじりさせて欲しかった。結局ギャンブル勝負には最後まで悔いが残ったなぁ……。  あとはもうドジでお馬鹿な音無素子の一挙一動、これを微笑ましく眺めながら愛で続 ける事しか出来なかった。これを喜びに変えて楽しむしかなかった。でも実は一番魅力 的に描かれていたんじゃないかな? 目覚しい成長を遂げた彼女に拍手を送りたい。  既刊感想:IIIIIIVVI 2006/09/04(月)うぶこい 〜初恋成就戦争なんだからねッ!!〜
(刊行年月 2006.09)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:うぶこい応援委員会(児玉新一郎、柴はすみ、わかつきひかる)     /イラスト:屡那/株式会社リーフ ZIGZAG NOVELS]→【bk1】  ZIGZAG NOVELS編集部の方より献本して頂きました。  初恋(うぶこい=純情で世間ずれしていない不器用で初々しい恋)、そして初恋(は つこい=初めての異性への恋)の意味を掛け合わせたものがこの『うぶこい』というタ イトル……と勝手に解釈してみる。容姿も性格も主人公・榎本成太との関係も全くバラ バラな五人の女の子視点から、彼女達が望む望まないにかかわらず、皆がとある理由に よって引き寄せられるように成太と心を通わせてゆく事となる恋愛ストーリー。  素直じゃない幼馴染み(妙香)、引っ込み思案で消極的な妹(華鈴)、高飛車なツン ツンお嬢様(薫)、無愛想な文学少女(光音)、知的電波系で発明家な先輩(依子)の 五人。基本的に一人が主役を張っている間は他のキャラがあまり絡まない(例外は成太 の隣に住んでいる従姉妹同士の妙香と華鈴)ので、各エピソードとも主役となる少女の 感情の揺れ動きをじっくり描いているのが特徴。でも他のエピソードで起こった出来事 と少しだけ交錯するシーンがあったり。そういう所で思わずにやりとさせられたりも。  贔屓キャラは当然ながら幼馴染みの妙香なのだけど、エピソードで特に好きなのは柴 さんが担当されている華鈴と光音の二つ(ちなみに児玉さんは全体プロットと妙香と依 子担当、わかつきさんは薫担当)。コンプレックスを抱き、他人を拒絶し、傷付く事を 恐れて自分を偽り、本当は積極的に歩み寄りたいのに全然前に踏み出せず……そんな臆 病で不器用な手付きで恋心を育む華鈴と光音の感情描写が堪らなく良かった。  ただ、“成太の恋愛を成就させないと何故彼が世界から消滅してしまうのか?”とい う部分で果たして明確な回答が得られるのかどうか……これが最初からずっと気になっ ていたのだけど、結局ハッキリ分からず曖昧なままで終わってしまったのが残念。もっ とも、今回は少女達の集結と“決意表明”までで、ここから本当の戦いが始まる? み たいな締めだったから、成太に関する謎解きも含めて続きが描かれるのかも知れない。  関連サイト:ZIGZAG NOVELS公式サイト        『うぶこい』特設ページ 2006/09/03(日)かりん 増血記 恥じらいダイアリー1
(刊行年月 H18.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:甲斐透/原作・イラスト:影崎由那/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  ドラゴンマガジン連載分+書き下ろし短編を収録。タイトルに『ダイアリー』と付い てたもんだから、これまた富士見ファンタジア文庫フォーマットで「○月×日、今日は あんな事やこんな事があってまた鼻血ぶーしちゃって雨水君にも迷惑掛けちゃった。ど うしよ〜嫌われちゃったかな……」とか何とかうじうじと綴られた、果林の日記調に見 立てた短編集かと思ってたんだけど、実際には想像してたのとはちょっと違ってた。  一話完結の短編集ではなくて、連載を纏めて一本の長編に仕上げた感じ。だから内容 的には書き下ろしの長編版と殆ど変わらない手応え。むしろ私はこの連載版の方が数段 面白いなと思った。元々長編ではずっと安定した面白さ楽しさを得られてたのだけど、 この連載版では多分長編で登場したどのゲストキャラクターでも満足に演じ切れなかっ た“果林の恋のライバル”的存在=葛城律の影響力が非常に大きなものだったから。  まあ結局誰が割り込んだ所で、「あーもー毎度毎度じれってぇんだよおめぇら!」と 叫びたくなる程むずむずしてしょうがない果林と健太の強固な関係が崩れる事は無いん だろうけど。それでも果林を二重の意味(健太への恋と吸血鬼の正体)で脅かす律は美 味しい役所じゃないかと。あと長編では一度も無かった「次巻へ続く」をやられてしま ったよ。律が欲してる吸血鬼、それは虚弱体質の父親の為? 決定的な証拠はないけれ ど、かなりの手応えを掴んでいるらしい果林の正体。次でバレてしまうのか?  既刊感想: 2006/09/02(土)SHI−NO ―シノ― 黒き魂の少女
(刊行年月 H18.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:上月雨音/イラスト:東条さかな/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  「どうして生きるの?」と問われたら「死にたくないから」と答え、「じゃあ何故死 にたくないの?」と返されたら「生きていたいから」と投げ返す。人は何故生きようと するのか? 生きる意味は? 目的は? 理由は? 逆に死にたくないと抗う意味は? 目的は? 理由は? 不可解な事件――集団自殺事件と、関連する自殺志願者が集うサ イト『デッドエンドコンプレックス』を通じて、人間の生と死について深く複雑に語り 通してゆく物語……じゃないかと思う多分。いや、正直よく分からない……ってよりは 途中からややこしい講釈を理解しようと頭を捻るのが面倒臭くなったのか。  どこが『純愛系ミステリー』だコラ、と帯に突っ込み入れて少々憂さ晴らし。本作の テーマは『永遠の生』、裏テーマが『命の軽さ』だそうで、言われてみれば成る程と頷 かされる箇所は結構あれど、どうもこっちを置いてけぼりで小難しく自分語りを披露さ れてるみたいな感触があって、そういうのがちょっと鬱陶しくて鼻についたりとか。  志乃ちゃんが可愛いと思ったのは、寝てる僕(彼の氏名って出てないな)の鼻をつま んで起こしたシーン。何となく年相応の仕草が出てた気がしたそこだけで、他は近寄り 難い空気が濃くて敬遠しがちだったかなぁ。端々で『彼』を特別視してる部分があるの は見えたのだけど。何故志乃ちゃんはこんなになったのか? 次はその辺を詳しく。 2006/09/01(金)遠く6マイルの彼女
(刊行年月 H18.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:ヤマグチノボル/イラスト:松本規之/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  表紙折り返しのあらすじ読んだだけで「もろに好みだ」と物語に惹かれてたので、当 然ながら予想に違わず大好きな内容だった。ただ、より感じ入ったのは、最初届きそう になかった年上の女性との距離が徐々に縮まってゆく部分ではなくて、ずっと誰かと自 分とを比較しながら抱き続けてた“劣等感”という呪縛から逃れようとする姿。  悩み苦しみもがきながら、「こんな自分の劣等感をどうすればいいのか?」と答えを 求め日常を生きる姿が凄く印象的で。特に良いなと思えたのは、それが研だけでなく京 子の方でもしっかり描かれていた点。もし京子が“死んでしまった研の兄貴の彼女”と いう立ち位置で固定されていたなら、彼女の中に“劣等感”なんて感情は多分見えて来 なかった。そうではなく実は……と明かされて、初めて単に“兄貴の彼女”ではない京 子の本質に触れる事が出来た感じで。その辺の仕掛け方がうまいなと唸らされた。  個人的には、年上の女性で死んだ兄貴の彼女――京子との距離を徐々に縮めて行く恋 愛模様には思ってたよりも惹き込まれなくて。やっぱり研の劣等感、そして京子の劣等 感、それぞれ抱えたものをお互い曝け出し合った末にようやく理解し合えて……そんな シーンが好きだな。日立三部作って事らしいのでこの路線のを是非またお願いします。


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